出星前夜

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 392
レビュー : 82
  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093862073

作品紹介・あらすじ

すべての民にとって不満のない世などありえない。しかし、民を死に追いやる政事のどこに正義があるというのか。寛永十四年陰暦七月、二十年にも及ぶ藩政の理不尽に耐え続けた島原の民衆は、最後の矜持を守るため破滅への道をたどり始めた。

感想・レビュー・書評

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  • 天草四郎による島原の乱が背景の歴史小説。寿安という若者がこの小説の主人公で、天草四郎は完全に脇役に。
    徳川幕府によるキリシタン弾圧と長期江戸幕府の中での地方の藩の悪政がこの島原の乱を起こさせたという時代がよく分かり、その反乱を起こした農民逹の心情が時代のひずみと一緒によく理解出来て、歴史小説のおもしろさを再確認した。
    分厚く小さな文字の本だが途中飽きることなく読むことが出来た。

  • 島原の乱を題材にした話。

  • 天草四郎の乱を別の人物からの視点でみた作品。

    登場人物が多く、誰が誰かごちゃごちゃになりながら、なんとか読了。
    どんなに尊い思想を持っていても、多くの人間は自分の欲に負けてしまう。人間の欲望が露わになった姿は、どうしようもないのかもしれないが、虚しい。

  • 天草四郎の反乱で知られているが、天草四郎ではなく、蜂起したその他大勢の物語。面白かった。

  • 島原の乱。
    学校で習うそれは、「天草四郎を中心とした、キリスト教徒の反乱」

    二部構成の第一部は、松倉氏が治める島原の、苛烈を極める庶民の暮らしがこれでもかこれでもかと描かれる。

    元々はキリシタン大名有馬晴信の元、農地に適しているとは言えない土地で神を信じ、助け合いしながら生きてきた人々は、松倉氏に領主が変わったとたん宗教を捨てさせられ、領主や家臣たちの贅沢な暮らしを支えるために水増しされた年貢を納めるために、我慢に我慢を重ねて日々を送っていた。

    しかし、台風や暖冬や水不足で凶作が続いても年貢が軽減されることはなく、そればかりか流行り病で次々と幼子が命を失っているときに、治療に来た医者を追放するという仕打ちをされたとき、有江村の少年たちが立ち上がった。
    年貢軽減を訴えたために処刑された父を持つ矢矩寿安(やのりじゅあん)を中心に。

    が、しかし、彼らは宗教のために立ち上がったのではないのです。
    暴政を行う大人たちに、また、唯々諾々とそれに従うしかない大人たちに怒り、絶望し、死ぬために集ったのです。

    少年たちの気持ちを十分理解しながらも、村が存続するためには事を起こしてはならないと、手を尽くして藩の面子を保ちつつ、庶民の窮状を訴える庄屋の鬼塚監物。
    藩の犬だと、周囲の人たちに蛇蝎のごとく嫌われ蔑まされながらも。

    第二部は、とうとう戦いの火ぶたが切られてからの蜂起軍。幕府がよこした鎮圧軍。それぞれの駆け引きと実情。そして寿安。
    ここから天草四郎が参加しますが、島原の人たちと天草の人たちはキリスト教で繋がっているとはいえ一枚岩ではありませんでした。
    この本を読んだ限りでは、天草四郎がいなければ島原の乱は成功したのでは、と思えてしまうくらいの存在です。

    相変わらずドラマチックとは真逆の淡々とした筆致で、細かい数字なども記されていますので、潜入取材をしたかのような臨場感。
    量がヘヴィー級なら質もヘヴィー級。

    ただ、もう少し文章を整理して書いてくれたら読みやすいのになーと思うのです。
    過剰な装飾はいりませんが、接続詞とか、主語の位置とかで、意味が頭に入りやすいように。
    同じことを何回も書かずにすむように。(それ、さっきも書いてたって思った文章が何回かありました)

    そうそう、以前に感想を書いた『黄金旅風』の主役・末次平左衛門が後半に重要な役どころで出てきます。
    鎖国政策を進め、西国大名の収入減を取り上げて権力を幕府に集中させようという動きに対して、長崎の庶民を、自由を、財産を守り抜いた平左衛門が島原の人たちに何をしたか。

    歴史は一方向からでは語れないものです。
    教科書に書かれていない島原の乱。
    大変に読みごたえがあり、充分に満足できました。

  • 天草一揆の話。だが四郎は脇役。圧政に苦しめられた人達が一揆を起こす前~戦いの終わりまでものすごく丁寧に書かれてます。

  • キリスト禁教令が出てまもなくの天草・島原近隣での物語…ということ以外の予備知識なく読み始めた。
    冒頭は宣教師から医術の心得を学んだ医者が、幼い子の間に蔓延する伝染病に立ちむかう姿が描かれる。ああこれは医者の話か、と思いきや、あっという間にその医者は代官に追い払われていなくなってしまうのである。
    ここから話が一気に転がり始め、ほどなく「島原の乱」へと続く話なのだと気づく。
    圧政に苦しみぬいた揚句に立ちあがった民が愚かな侍たちを片づけていく痛快な場面もあるのだが、読者はその先になにが待ち受けているのかを知っている。
    島原の乱の首謀者とされる天草四郎についての描写は抑え、あくまで乱へと至る道のりを外堀を埋めるように細かに描いてある。ただ、戦の描写はやや冗長ぎみだったのが残念。歴史もの好きにはお勧めできる。

  • よかった!天草一揆の話。

  • 飯嶋和一さんの歴史小説『出星前夜』を読了。出色の作品だと思う。歴史小説が嫌いな向きにはちょっとつらい作品だが、史実と作り上げたお話が見事に編み上げられていてとても重厚でページ数も多い作品だがテンションが落ちる事なく最後まで読み進む事ができた。少し前にも天草四郎らを主人公にした島原の乱を描いた作品を読んだが、今回は天草四郎らは完全に脇役で、圧政に苦しむ農民とくにその中で勇気を持って立ち上がった少年達とそれらを助け大名らに立ち向かうことを選んだ武士達の哀しい運命を描いた作品となっている。アホな政治に苦しむ人民というのは、いつの時代でもある話だが、底で失われていく幼い命が多い事はとても切なく、その事をほったらかしにして自分らの事しか考えていない政治家はすぐにでも消え去ってほしいと思わされた。人は歴史から学んではいないのかもしれない。残念。

  • 歴史物が好きでも今までなかった、遭遇しなかったで読んでいないものがあったことに気がついた。「島原の乱」これって読んだこと一度もないのかもしれません。今回は飯嶋先生の

    「出星前夜」

    を紹介します。書き出しは幕府のキリシタン弾圧により火炙りに処せられた神父から外科の手ほどきを受けた長崎の名医の話から始まり島原の乱の口火を切った旧藩主の有馬家の遺臣の一人である19歳の少年にスポットを当てる…が、テンポが速くスポットライトの当て方が早くじっとしていられない。

    天草四郎時貞などは瞬間の登場くらいでしかなく、今回は舞台の隅に押しやられている。先頭の火蓋が切って落とされると幕軍の窮状を描いているだけで戦闘までの経緯は忘れ去られ、どうやって一揆軍を鎮圧するかだけを描いてるようで訴えたいものが伝わってこないのだが、なんとなく面白い。

    そして口火を切ってしまった寿安と呼ばれる少年が江戸時代の名医の北山友松となるまでを描いている。まぁ~読み始めると面白いのだが、終わった瞬間に長編の割にはの物足りなさが出てきてしまう

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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