転生回遊女

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 61
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093862653

作品紹介・あらすじ

天涯孤独、自由奔放。交わりながら、前へ、前へ。著者初の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 不思議なお話。
    母親の突然死によって新しい生命を与えられたかのように、さなぎから蝶になるように動き出した桂子。
    樹木の名前を持った少女は樹木と交わり樹木から生命力を授かる。
    そして樹木と交わるようにごく自然と男たちと交わっていく。

    一人の男にとどまることなく次々と複数の男たちと関係を持って行くけれど、そこにはいやらしさは微塵もない。
    奔放というのはちょっと違う。
    彼女はそうすることが必然であり、そうしなければ生きていけないような。
    男たちと樹木と交わりながら果てしなく旅を続ける彼女。
    それが彼女の宿命。

    ふわふわとした漂うような感覚のまま終わってしまった。
    絶賛されているレビューも読んだので楽しみにしていたが、ちょっと苦手な部類かも。

  • 「山の斜面を転がり落ちて行く人がいる。あ、母だと思っていると、その人は泥土に汚れ丸くなって、やがて最後は目鼻を失い、小さな石のかたまりになった。石ころになった後は、落下の速度も速まり、みるみるうちに小さくなって、谷底に吸い込まれていくのだが、そこからが夢の変なところで、どんなに落ちても、それが見える。つまり谷底に届かないのだ。なかなか死ねない、というように。そのことが深い哀しみを呼んだ。しかも石ころは落ちながら、からからと乾いた笑い声をたてていた。」-『乳をたらす古木』

    何度も書いていることだけれど、小池昌代の詩が好きだ。それはとても感覚的なことなのだけれど同時に理屈のあることのようでもあり、恐らく、小池昌代の紡ぐ言葉の内側に潜む水気のもたらす多湿さに由来するものだろう、と自分のことながら訝しく考えてみたりする。

    言葉を一つひとさし指とおや指の間につまんで、ぎゅっとつぶしてみる。中から透明な液体がじわりとにじみ出す。とても透き通ったその液体は、その屈折率の低さを感じる透明さには全く似つかわしくないくらいに、ねっとりとする。二つの指をそっと開くと、すっと細い糸を引くような粘り気がある。それが、もちろん、性的な衝動を喚起することは言うまでもない。たとえ小池昌代が具体的に性的なできごとを描写してもしなくても、その匂いのようなものは間違いなく言葉に沁みついている。それは絡みつく水のイメージ。

    (実は、言葉のない世界を切り取り、やはり水のモチーフを多用する今日マチ子の「センネン画報」にも同質の湿度に由来する性的な刺激を感じるのだけれど、この二人には何かもっと深い類似性もあるように思う)

    小池昌代の小説には、どこまでいっても動きがなく、切り取られた連続写真を見せられているような印象がある、と前にも書いた。そして、これでもかと動きを描いたこの「転生回遊女」でも、不思議とその印象は払拭されなくて、むしろ人間がいよいよ人形のように見えてくる。重ねられる言葉は、ある瞬間の体勢のまま留め置かれた人物の周りをぐるぐる回りながら描写しているものと同質であるように感じる。小池昌代の言葉は写生的なのだ、と思いいたる。

    つまり、小池昌代の描く人物には、単純に言えばプロセスのようなものがない、と思うのだ。そしてそれは、瞬間を切り取ることによる必然的な帰結なのだろう。人物の受け止める、言葉、感情、環境などの入力は、いきなり、何の脈絡もないような別の言葉、感情、となって出力される。プロセスは時間の経過の中で生まれるのだから写生ではその過程は写し取ることは叶わない。

    (写生的であること、そして、意外な出力が待っているところ。実は、この二つの特徴が小池昌代と今日マチ子に共通することだ、と気付いた)

    しかし、いくら結果が意外でも、間に存在する筈の過程が描かれていなくても、その間ににある因果を、読むモノ(そして観るモノ)は、きっと、嗅ぎつける。それが、決して太く丈夫な論理の糸で結ばれたものではなく、透明な液体が作り出す、ひとさし指とおや指の間をかろうじてつなぐ、もろいきずな、でしかないとしても。男の大きな靴の中に自分の足を入れその余っている感じを、エロティックなことなのだわ、と表現する小池昌代の、心の動きに対する写生能力の高さを持ってしてなし得る描写なのだ、と思うのである。

    「母もいない。父もいない。兄弟姉妹もなく、親戚のおばさん、おじさんも知らない。どこへ、と聞いてくれる人もいない。ましてや、お帰り、と言ってくれる人も。この文字通りの自由さに、時々、悲鳴をあげたくなる。空を飛ぶたった一羽の鳥が、狂わないでいられるのはなぜだろう。あの鳥のように自由な母は、どうやって、自由の真面目さに耐えていたのだろう。」-『カジュマルの裏庭』

  • 文章表現で良いな、という部分もあったけど、基本的に自分の好みとは違う種類の作品ですね。

  • スピリチュアルと何かが混ざったようなかんじ? よくわからない。

  • 役者だった母親がなくなって、そのあとを追いかけるように役者になっていく自然体の桂子のお話。おおきに銀杏の木と不思議な一体感を感じられる彼女は、役者の桂子の始まる前に沖縄に駆け落ちしていった女友達のもとを訪ねて、さらに自分らしい生き方を手探りで求めていく。女と男と自然と触れ合うところで、性や死の話もごく当たり前のように出てくる。

  • 艶かしい冷たくツルんとした感触な文章だと感じました。入りは良かったんだけど、中盤からは退屈に感じました。私に、合わなかったかな。

  • 全体的な主人公の変化は面白かったが、終盤の物足りなさというか雑さが無理に伏線回収したようで気になった。

  • 星4つにも近いんだけど、ぎりぎり3つ

    全ての表現、特に性的な表現が何処か抽象的で、詩を読んでるみたいに美しい言葉の羅列

    文章によってありありとその景色が脳内で浮かぶ小説

    ハワイの朝の海を、見てみたいと思った

    桂子はこれからどうなるんだろうか、
    きっと、タビを続けてゆくんだろうな

  • とてもつるつるしている小説だと思った。感情であったり関係であったりがするすると通過していき、言うなればサルスベリのごとく登るものを滑らせていく。もっと摩擦が欲しいと思った。ざらざらと、そしてごつごつとして、飛び出た枝や幹に引っ掛かり、その都度皮膚に痛さを感じるような摩擦が。
    小池さんの書く、小説や詩や随筆が好き過ぎて、初めての長編に対し、少し貪欲になってしまった。けれども素敵は素敵であるし、どっかりと大きな小説であるとは思う。実は表紙の網中いづるも大好きなのでとても嬉しく、つい定価で買ってしまった。

  • 主人公が若いのに驚いた。50代じゃないんだー。

    いろんなことが次々起こって、それが多すぎるような気がした。
    各地でどんどん新しい男性と出会って、関係を結んでいって、戻ったりしないで、また次へ進む。
    でも読み終わってその展開について考えていたら、こういう”状況”自体が人生そのものなのかもと思った。そういうふうにどこにも根を張らずに転々とする人の人生ってもしかしたらこんな感じなのかも。

    ああそうだ、家とか引越しとかがこの小説には全然ないな~。
    うん?これもしかして新聞かなにかの連載だったのかー。

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