- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093862929
作品紹介・あらすじ
下町ロケット
主人公・佃航平は宇宙工学研究の道をあきらめ、東京都大田区にある実家の佃製作所を継いでいたが、突然の取引停止、さらに特許侵害の疑いで訴えられるなど、大企業に翻弄され、会社は倒産の危機に瀕していた。
一方、政府から大型ロケットの製造開発を委託されていた帝国重工では、百億円を投じて新型水素エンジンを開発。しかし、世界最先端の技術だと自負していたバルブシステムは、すでに佃製作所により特許が出願されていた。宇宙開発グループ部長の財前道生は佃製作所の経営が窮地に陥っていることを知り、特許を20億円で譲ってほしいと申し出る。資金繰りが苦しい佃製作所だったが、企業としての根幹にかかわるとこの申し出を断り、逆にエンジンそのものを供給させてくれないかと申し出る。
帝国重工では下町の中小企業の強気な姿勢に困惑し憤りを隠せないでいたが、結局、佃製作所の企業調査を行いその結果で供給を受けるかどうか判断するということになった。一方、佃製作所内部も特に若手社員を中心に、特許を譲渡してその分を還元してほしいという声が上がっていた。
そうした中、企業調査がスタート。厳しい目を向け、見下した態度をとる帝国重工社員に対し、佃製作所の若手社員は日本のものづくりを担ってきた町工場の意地を見せる。
感想・レビュー・書評
-
血湧き肉躍る物語です
下町ロケットシリーズの1冊目
2011.11発行。字の大きさは…大活字。
ロケットエンジンのキーパーツであるバルブシステムの開発に賭ける佃製作所の奮闘が描かれています。
この物語は、宇宙ロケットの打ち上げを行う種子島の宇宙科学開発機構、開発主任・佃航平が、宇宙衛星打ち上げ用ロケット「セイレーン」の発射に失敗して責任を取って辞職する、所から始まります。
そして、父の死亡に伴って東京の下町で家業のエンジン開発を行う佃製作所の社長として7年の歳月が過ぎたとき。会社の売上高の1割を占める主要取引先であり、日本を代表する機械メーカー「京浜マシナリー」から、エンジンの内製化を理由に取引を切られようとしています。
そんな時に、競争相手の「ナカジマ工業」から特許侵害の訴状が届きます。京浜マシナリーの売り上げ減少で営業赤字に陥っている所に、ナカジマ工業からの特許侵害の裁判で、佃製作所は、必要な運転資金3億円の調達をメインバンクの白水銀行から断られます。
白水銀行から出向してきている殿村部長が、3億円の調達を他の銀行で探すが、何処もメインバンクが手を引いたところに手を差し伸べる所がありません。そして、売上減と裁判の記事が新聞に報じられると、取引先が不安になり離れて行きます。もう裁判の判決を待たずに資金繰りが行き詰まり倒産の危機が囁かれる様になります。ナカジマ工業の作戦は、裁判を引き延ばし、佃製作所の倒産前に、救済して子会社化して、会社を乗っ取ることにあります。
そんな時に、天下の帝国重工が、宇宙ロケットの打ち上げを行う「スターダスト計画」の主要ロケット部品のバルブの特許の開発で佃製作所に先を越されたのが分かり。担当の財前部長が、高圧的に特許の買い取りか、それが駄目なら特許の独占的使用を打診してきますが。
佃社長は、製品の供給を打診すると、工場を見た財前部長が、その優秀さに驚愕し、帝国重工に帰り、直属の上司である水原本部長に佃製作所の部品の購入を提案しますが。帝国重工では、主要部品は内製化する方針のため部長の採決が下りず、担当者を変えて佃製作所との交渉を進めようとしますが、これが大変な事になります。
【読後】
いきつく間もなく次々に山場があり、飽きることなく、テンポ良く、進んで行きます。会社の倒産の危機が来るなか、佃社長の信念が、社員に行き渡り、京浜マシナリーの売上減をカバーし、敏腕弁護士の活躍で裁判も有利になるとき、突然の新聞報道により、驚愕の和解金が入ります。売上高100億円弱の会社に56億円の和解金が入ったのです。今迄の会社の団結が崩れ社内がバラバラになります。
そんななか佃社長の信念が、帝国重工への部品供給の道を開いて行きます。東京の大田区で資本金三千万円、売上高百億円弱の中小企業を舞台に、この物語が書かれています。
音読で読んでいて、気持ちが入り、高揚し、とても楽しく読めましたが、あまりにも多くのことが書いているので感想を書くのが、なかなかできずに困っていました。本の返却期限が来て、やっと書くことが出来て、ほっとしています。そして感想を書き終わって体が熱くなっています。
【連載、直木賞、テレビドラマ化】
「週刊ポスト」2008年4月18日号~2009年5月22日号まで連載され。2010年11月に単行本が小学館より刊行されました。大活字本は、この単行本を定本にして2011年11月に発行されたものです。第145回(2011年上半期)直木三十五賞(通称「直木賞」)受賞作品、および、第24回(2011年)山本周五郎賞候補作品です。これを原作にテレビドラマ化・ラジオドラマ化されました。
【音読】
2021年3月10日から3月26日まで音読で読みました。底本が、小学館のため登録は、小学館「下町ロケット」で行います。
2021.03.26読了
2021.04.11感想を書く詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やばい!めちゃくちゃおもしろかった!!
訴訟だの特許売却だのといろんな問題がある中で、中小企業の佃製作所はどう切り抜けていくのか、ドキドキしながら読みました(^^)
最後のロケット打ち上げも良かったのですが、社員が一丸となって徹夜してテスト対策したシーンは目頭が熱くなりました(;o;) なんていい会社なんだ!!!! -
面白かった。だんだんとぐいぐい物語に引き込まれ、テンポの良い文章でページをめくるのももどかしく読みました。
中小企業を舞台とした企業小説?で、銀行マンだった作者の経験と知識が大いに活かされた作品かと思われます。
ロケット打ち上げ失敗からの転職、主要取引の打ち切り、特許を巡る訴訟社員間の対立といった、次々と課せられる紆余曲折と難問に耐え抜き、次第に好転させていく様がストレスの大解放となって心地よかったです。(笑)
勝訴の場面やロケット部品納入業者選定を巡る検査での啖呵、そして何よりも最終場面などは大喝さいものですね。(笑)
神谷弁護士や殿村部長、だんだん好い人になっていく(!)財前部長のキャラは好感度抜群でした。(笑)
結末をみれば中小企業の大成功と夢がかなうという物語で予定調和しすぎるきらいがありますが(笑)、大いに元気をもらった小説でした。 -
是非エンジニアには読んでほしい本です。
商品開発や知財をやる人ならなおさら。
一気によめて「いい本読んだな~」と気分よくなれます。(笑)
文句なく★5つ。 -
今、TVで放映中のドラマ「下町ロケット」があまりにも面白いので、
前半が終わった頃合を見計らって、原作を読んでみた。
監督さんによっては
映像用(?)に、原作をいじって変えてしまう方もいる様だが、
嬉しい事に下町ロケットに関しては、ほぼ原作に忠実。
役者さん達もイメージとは若干違うな?と感じた人選だったが、蓋を開ければ
下町…では最も大事な<人の心を動かす台詞>に熱い魂を吹き込んで、大切にしてくれた素晴しい役者さん揃いだったなぁ。
仕事とは何か…
生きるとは何か…
何の為に生きているのか…
ぼ~っと考えていても正しい答えなんか元々無いんだから
自分が納得する答えを生涯かけて探してゆくしかない。
ただ、
下町ロケットには、
誰もが光の射す方に正しい答えがあるんじゃないか?
そう思っても許されるような優しさと希望がある。
重力に逆らって飛び立つのが困難なのは何もロケットばかりじゃない。
座りっぱなしの人間が立ち上がる事にだって、相当な労を要する。
でも、ある種のエネルギーが不可能を可能にする。
そもエネルギーがここにはある、様な気がした。 -
面白かった。本当に。
どんどん読み進んだ。
ワクワクした。
感動が伝わってきた。
感動の滴が落ちた。
宇宙開発研究者の佃が開発した水素エンジンを搭載した宇宙ロケットの打ち上げは...失敗した。
その責任を取らされた佃は家業の中小企業の2代目社長としての日々を過ごす。
そんな佃に大口顧客からの契約解約、言いがかりのような訴訟、次々と舞い込む試練に会社の存続が危ぶまれ、社内の人間関係さえも悪化していく...
大手企業が中小企業を下にみる物言いや態度。
利益のため、自身の出世のためには相手がどうなろうと関係ない。
そして嫌な銀行屋たち。
そんな悪の塊に外から翻弄され、内からもなぜお金になるかならないかわからないものに大金をつぎ込むのか、それは社長の単なるエゴじゃないかと突き上げをくらう佃。
佃を通して、「会社とは何か、なんのために働くのか」を考える自分がいた。
自分がいまできている行動は変わってしまったなと。
今の自分に大切な感情を思い出させてくれた。
一級品のエンターテイメントの物語で。
本が嫌いな人でもきっと楽しめる物語です。
夢の力で。 -
読んだばかりの「空飛ぶタイヤ」に引き続き読んだので構成的にはよく似た作りだけど何しろロケットがテーマだからスケールアップして読者を引き込む。2010.11初版で直木賞を取った作品。
宇宙研究者だった男が理由あって中小工場の経営者に転じ、しかしロケットエンジンの中枢部品の開発を成して それを武器に堂々と重厚長大企業と渡り合って夢を追い続け、冷ややかだった社員達も共に闘う仲間に転じて行き 遂に気持ちいいエンディングへ。お定まりコースの展開だけどスカッと楽しい小説です。 -
自分の好きなジャンルでないにも関わらず、最後まで一気読み!
-
文庫になるまで待とうと我慢していたところ、
会社のお姉さんが貸してくれた1冊。
面白いとわかっていましたが、
やっぱり文句なしに面白かったです。
元研究職、今や中小企業の経営者である主人公が
昔夢見たロケット製作にもう一度チャレンジするストーリー。
最後の山場に至るまでに、
主要取引先から突然の取引停止を求められたり、
悪徳大企業から特許侵害で訴えられたり、
山あり谷ありというよりは、
谷あり谷ありというストーリーですが、
最後は池井戸さんがきれいにまとめて下さるので、
読み終わった後の爽快感はとても気持ちよいです。
400ページを超える超大作ですが、
あまりに面白くて、1日で読み切ってしまいました。
文庫が出ても、保存用で買ってしまいそうな
おススメの1冊です。