別れの時まで

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 157
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863025

作品紹介・あらすじ

その秘密に触れなければ、ずっと愛し合えていたはずだった-。胸が苦しくなる長編恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「水曜の朝、午前三時」の感動再び!と期待して手に取った作品。でも、これは恋愛小説なのかなぁ。

    主人公・松永が舞台女優・伊都子と心を通わせたと思った矢先の不審な出来事。松永を監視し警察に内通しているものの影。伊都子の過去の秘密。作品半ばからの展開は思わぬ方向へと進んでいく。
    戦後日本で本当に起こった重大事件をモチーフに、つい最近まで影を落としていた思想の闘いにまで話は広がりを見せる。

    「明るければ何でもいいという風潮が日本をだめにしたんですよ」という言葉にはうなずくしかない。
    このあたり、右を見ても左を見ても大人になり切れていない人間ばかりの今の世の中を嘆く作者のメッセージがこめられている。

    恋愛小説としては、主人公の魅力不足と二人の恋愛感情の高まりの描写不足が物足りないし、何故二人が別れなければならなかったのか、その理由が今一つ理解できなくて消化不良気味・・・
    ということで、胸が苦しくなる恋愛小説とはなりませんでしたが、むしろ軽薄になりつつある世の中を憂う印象を強く残した作品でした。

  •  手記募集に応募してきた毛利伊都子という三十五歳の女性の作品が優れていて、
    松永が編集者として会いに行く。女性には小学生の息子がいて、シングルマザー。
     父親は亡くなったものだと決め付けていたが(流れで誰でもそう思うと思う)
    実は違うらしいと話していて思う。
     松永の娘の早紀はその息子を気に入り、仲良くなる。やがて二家族はいえを行き来するようになり、松永と女性・毛利伊都子も付き合うようになる。
     
     息子の父親の亡くなり方は伊都子に松永への信頼を失わせた。
     
     伊都子は絶望的なことがあっても倒れることなく、しっかりと立って、
    女優としていき続けるのだ。それがすごい。

     はじめからが公安に話した記録で、最後には松永さんの署名で終わる(公安の五十嵐さんの確認もあり)という流れの一冊。

  • 久しぶりの蓮見氏の作品。やっぱり独特の味がある文を書くなぁ。
    帯に完璧とも言える書評がありました。
    「歳を経てからの恋愛は過去との闘いなのかもしれない。男はただただ囚われ、女はただただ前に進もうとする」
    シンプルで切ない話です。

  • 秘密を共有して共にいることはできないのかもしれない。この作家さんの書く小説はいつも大人だなぁと思う。

  • 水曜の朝、午前三時が好きなのでこの本を読んでみました。
    恋愛小説と言うより色々な家族の物語を読んだ様に感じました。

  • 編集者の松永は家族をテーマとして私記を編纂する時、とてもいい文章を書いた毛利伊都子と出会う。

    女優として舞台で活躍する彼女と、彼女の息子隆。自身の娘早紀と疑似家族のような関係を築き、伊都子とも恋人関係になる。

    しかし、伊都子の周りには公安の刑事が張り付いていた。刑事から「協力するように」と半ば脅迫気味に迫られた松永。隆の父親は左翼の過激派で逃亡犯だった。

    「左翼」と言われても私にはいまいちピンときませんが、たまに駅で「過激派」と呼ばれる人たちの指名手配写真を見たりします。はっきり言って時代遅れとは思いますが、今でもそんな人たちはいるんでしょう。

    公安の刑事がとても嫌な人で暗い印象を持った。実際にはどうかは分からないけれど、人間の暗い部分を見続けると、自身まで暗く染まるのだろうか。

    伊都子母子と松永親子、とてもいい関係だったのに壊れてしまって悲しい。

  • さらりとした文体でとても読みやすかったけれど、登場人物の語り口がみな一緒で最後まで違和感がぬぐえなかった。

  • え、なんで別れたの? 女、ワガママすぎね? いや、それ以前にムスコが奥深すぎね?

  • 「水曜の朝、午前3時」が良かったのでこれも読んでみました。良かったです。

    大人の恋愛小説かと思って読んでましたが、徐々にサスペンスに変わっていきます。恋愛小説にしては軽いというか、すぐに恋仲になってしまうのが何だか軽いなと思っていましたが、サスペンスタッチになってからのがおもしろかったです。主人公が事件を追い、北海道の紋別で青のインプレッサで活躍するあたりが印象的で良かったです。著者は車好きなんでしょうね。「水曜の朝、午前3時」ではベレットがいい味出してましたが、車は小説にいい味を出すと思います。このあたり車に興味のない人には味わえないところでしょうね。

  • 前半は、恋愛ものとして面白いと思いました。
    後半は、何といったら適切かわからないんですけど、違う話?って感じの終わり方でした。

    松永の小市民っぷりは嫌いじゃないし、伊都子も嫌いじゃないけれど、どこか消化不良に感じてしまいました。

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著者プロフィール

1959年、秋田市生まれ。立教大学卒業後、新聞社、出版社に勤務。2001年に刊行したデビュー作『水曜の朝、午前三時』が各紙誌で絶賛されベストセラーになる。他の著書に『八月十五日の夜会』などがある。

「2023年 『美しき人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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