金米糖の降るところ

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863100

感想・レビュー・書評

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  • 江國香織さんの独特な世界観に浸れる一冊。

    佐和子、ミカエラ、達哉、アジェレン、それぞれの視点で描かれる恋愛物語。そこにファクンド、田渕、と更に話を広げる登場人物達。

    姉妹、夫婦、親子、上司と部下、不倫相手。
    立場や関係があるだけで、それは誰かにとっては悦びでももう一方では悲しみであったり、憎しみの一方で愛であったり、たくさんの『想い』が交錯しながらそれぞれの人間模様が描かれています。

    美しい情景が浮かぶ、長編でありながらシンプルな小説でした。

  • 久しぶりに再読。

    不倫ですらないんだろうな、と思う。
    ただの男女の恋愛で、それがただの味付けとして描かれることに対する違和感が、読後の疲れの原因かも。

    もともと彼女の書く話は世間の価値観を度外視したものが多くて、それは彼女が自分の価値観しか信じてないからかな、と思う。
    小さい頃の世界こそが真実と思う価値観。

    田淵を「かわいそうに」と同情する達也の言葉が表す佐和子の不変性。姉妹が互いしか信じていない。

    彼女の書く女性はアダルトチルドレン的なところがあると思うし、姉妹で姉がいる私は、すごく理解できてしまう。好きか嫌いかは別にして。

    男を家族にしない。いつまでも恋愛が描けるのはそのためで、だからこそ女性に人気があるのでは。

  • 久しぶりに江國さんを読みましたが、相変わらずの世界観。
    登場人物のそれぞれは激しい感情が描かれているのだけど、
    読んでいる限りそれは感じられず、どこまでも穏やかでアンニュイ。
    そして膿んでいる。

    この人の本は主人公の女性が性格は違えど、
    みんなどこか狂気を含んでいて膿んでますね。

    普通の感覚の登場人物の個性が消えてしまううほどに
    主人公が膿んでいる。

    それでも初期の作品はこの穏やかな起伏のない世界観が狂気よりも勝り、
    読んでいてとても心地よかった。
    しかし最近の作品は膿んだ狂気の方が表面に出過ぎているのかな・・・?

    何か上滑りしていて噛み合わず、読めば読むほど気持ちが悪い。
    主人公に好感が持てず、ただの理解不能な人にしか思えない。
    心地よい読後感を感じることが出来なくなったのが非常に残念です。

  • ブエノスアイレスで育った姉妹、佐和子とカミエラは男を共有することをルールに二人の世界を構築してきた。
    でも、本当は自分だけを見つめてくれる男を探していたのかもしれない…。ある日、日本に住む佐和子が旦那でない男を連れ帰る。不確かな気持ちを抱えながら…

    という話。
    生々しいの内容なのになぜかファンタジックという不思議なストーリーだった。
    面白く読んだが、再読しないし、読んだことを忘れそうな話だった。

  • 途中までおもしろかったんだけど、最後の一ページで一人の男を二人で共有するということと、好きなのに妹のための手放すというのが急に理解できなくなって、気持ち悪くなった。
    多分わたしは達哉が気に入っていたんだと思う。

  • 久々の江國さん。
    たびたび思うのだけど、江國さんの作品は、時々、タイトル負けしてるように思います(私の主観です)。この作品も、タイトルに惹かれて手にしました。

    姉妹で男を共有するという、なんともありえないことをさらりと書いてしまう江國さん。この人が書くと、非現実的なことも、なんだか現実的に思えてしまいます。でも、よくよく考えるとやっぱりありえないですよね。

    共有することを拒んでまで結婚したたっちゃんより、たぶちんを選んだ理由が、最後までわかりませんでした。読む限り、たぶちんがそんな良い男にも思えなかったし。まぁ、たっちゃんも浮気ばかりの男ですが(佐和子を迎えに来たのに、ミカちゃんと寝ちゃうし)。

    印象深かったのは、佐和子とお友だちになった小さい女の子。お母さんが、「この子はちょっと・・他の子と違うんです」というところ。達哉が眉を上げたとき、私は思わず笑ってしまいました。私も同じことを思ったからです。今の日本社会をうまく表現しているようで、なんだかおもしろかったです。

    それから、かわいかったのはアジェレン。あの頃特有の恋をしていて、なんだか懐かしかったです。離れていても同じ本を読むというのは、とても素敵だなと思いました。私も彼と遠距離恋愛をしていたことがありますが、本の趣味が違うので同じ本を読むことはありませんでした。でも、私の一番好きな本(江國香織さんの『神様のボート』)を、絶対読まないであろう彼に貸し、彼の本棚の片隅に置いておいたりしたのは、ファクンドとアジェレンが同じ本を読むことと、同等の意味を成していたように感じます。アジェレンが達哉の言葉を聞き流しているところも好きでした。ファクンドのずるさが見えないアジェレンの若さが、とてもうらやましいです。

    ラストはこの前読んだ『真昼なのに昏い部屋』と似たような印象を受けました。ずっと執着していたのに、最後には手放してしまっているような感じ。そのあっさり加減が最近の江國さんらしく、また、わたしが心から恐れるものです。

  • 旅に意義を見出してくれる本でした。

  • 江國さんワールド久しぶりだわーと思いながら読了。

    女の人は難しい。
    達哉ってなかなか最低だと思うんだけど、
    ラストに向かうに連れてこの人が可哀想に思えてくる。
    なんかその戸惑いに共感を覚えるのかな。不思議。

    ラストは私にとってはちょっと意外で、
    この人たちの物語はこれで終わりじゃないんだよなぁと思った。
    本として続きが出るだろうとかそういうことじゃなくて、
    あぁこの人たちの人生はこうやって続いていくんだ、と。
    前にも江國さんの本で同じようなこと思ったなぁ。

    外から見るとどろどろした物語なのに、
    江國さんの文章で語られると全然そう見えないんだよなぁ。
    柔らかさと、穏やかな喪失感みたいなもので覆われてるからか。

    タイトルと物語中の金平糖の話がとても好き。

  • 久しぶりに江國さんの作品を読んだ。
    江國さんの作品を読むと、映画でもみているみたいに情景が映像として浮かんでくる。登場人物は私の価値観とは違いすぎて、共感できる部分は正直あんまりないけど、でも、私の知らない大人の女性の話ってかんじで楽しめた。

  • この季節に丁度良いお話でした。
    ボリューム、内容ともに良いバランス。
    佐和子とミカエラは魅力的。

著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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