金米糖の降るところ

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863100

作品紹介・あらすじ

ブエノスアイレス近郊の日系人の町で育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドを"共有すること"をルールにしていた。留学のため来日したふたりだったが、誰からも好かれる笑顔の男・達哉に好意を抱く。しかし達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、日本で達哉と結婚。ミカエラは新しい命を宿してアルゼンチンに帰国する。20年後、佐和子は突然、達哉に離婚届を残して、不倫の恋人とともにブエノスアイレスに戻る。一方、妹のミカエラは多感な娘に成長したアジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけ、アルゼンチンにやってくると…。東京とアルゼンチン・ブエノスアイレス、華麗なるスケールで描く恋愛小説。

感想・レビュー・書評

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  • 南米育ちとは言え、日本人なのにカリーナ、ミカエラって…そのくせ、旦那さん(達哉)のことはたっちゃん、不倫相手(田渕)はたぶちんって…。

    複数の飲食店経営を成功させ、マセラティに乗り、美しい妻(佐和子=カリーナ)を愛していながらスポーツと称して様々な女と情事を繰り返し、妻の妹(日和子=ミカエラ)もその例外ではなく…

    ミカエラの娘アジェレンは母親の上司と32歳差の真剣不倫…でまた、この男もムシが良すぎる典型的な。。

    互いのボーイフレンドを共有する、と決めた美しい姉妹を軸に描かれる世界は私には理解し難いのだけれど…。

    スペイン語教室で佐和子に惹かれ、14ヶ月後本当に、生まれてすぐの息子と妻を捨て、会社も辞めて佐和子を奪いに来る田渕も結局は「そんな思い切ったこと出来ちゃう俺」に酔っているだけのような気がするし。

    見た目は達哉より田渕派ですけどね。
    はた迷惑な酔っ払い集団のお話、という印象。でも、ドラマ化したらそれなりに視聴率伸びそうな。

    佐和子は大塚寧々さんか深津絵里さん、日和子は坂井真紀さんで。

    タイトルと装丁は美しいのに勿体無い。金平糖(この本は金米糖)も金木犀も美しい響きなのに金日成になるとこの不快感。

  • 江國香織さんの独特な世界観に浸れる一冊。

    佐和子、ミカエラ、達哉、アジェレン、それぞれの視点で描かれる恋愛物語。そこにファクンド、田渕、と更に話を広げる登場人物達。

    姉妹、夫婦、親子、上司と部下、不倫相手。
    立場や関係があるだけで、それは誰かにとっては悦びでももう一方では悲しみであったり、憎しみの一方で愛であったり、たくさんの『想い』が交錯しながらそれぞれの人間模様が描かれています。

    美しい情景が浮かぶ、長編でありながらシンプルな小説でした。

  • 久しぶりに再読。

    不倫ですらないんだろうな、と思う。
    ただの男女の恋愛で、それがただの味付けとして描かれることに対する違和感が、読後の疲れの原因かも。

    もともと彼女の書く話は世間の価値観を度外視したものが多くて、それは彼女が自分の価値観しか信じてないからかな、と思う。
    小さい頃の世界こそが真実と思う価値観。

    田淵を「かわいそうに」と同情する達也の言葉が表す佐和子の不変性。姉妹が互いしか信じていない。

    彼女の書く女性はアダルトチルドレン的なところがあると思うし、姉妹で姉がいる私は、すごく理解できてしまう。好きか嫌いかは別にして。

    男を家族にしない。いつまでも恋愛が描けるのはそのためで、だからこそ女性に人気があるのでは。

  • 久しぶりに江國さんを読みましたが、相変わらずの世界観。
    登場人物のそれぞれは激しい感情が描かれているのだけど、
    読んでいる限りそれは感じられず、どこまでも穏やかでアンニュイ。
    そして膿んでいる。

    この人の本は主人公の女性が性格は違えど、
    みんなどこか狂気を含んでいて膿んでますね。

    普通の感覚の登場人物の個性が消えてしまううほどに
    主人公が膿んでいる。

    それでも初期の作品はこの穏やかな起伏のない世界観が狂気よりも勝り、
    読んでいてとても心地よかった。
    しかし最近の作品は膿んだ狂気の方が表面に出過ぎているのかな・・・?

    何か上滑りしていて噛み合わず、読めば読むほど気持ちが悪い。
    主人公に好感が持てず、ただの理解不能な人にしか思えない。
    心地よい読後感を感じることが出来なくなったのが非常に残念です。

  • まずタイトルの美しさはどの作家さんにも負けないのではないかというくらいいつも素晴らしい。金米糖の降るところ。
    佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドを〈共有すること〉をルールにしていた。
    なんて、江國さんじゃなければただのビッチな姉妹の話で終わる。(まぁただのビッチじゃんっていう感想を持つ人もいるだろうけど)不倫話がいくつも重なった感じなのに、そんなんじゃ言い表せないほど蜜の濃さ。
    佐和子もミカエラもわたしは好きじゃない。ミカエラの娘アジェレンの素直さに憧れる。
    そしてまたラストがよかった。真実ちゃんのちいさないたずら。
    ――舌打ちは相手に対する侮辱よ。そしてね、たっちゃんの愛の言葉とそっくり。知ってた? そのこと
    あー怖い。江國香織さんの物語は美しくて怖すぎる。そしてまた結婚が怖くなる物語だ。

  • 姉妹という関係
    男女間にある、絶対はないこと、永遠はないこと
    江國さんの小説にしては怖い印象でした。

  • 中学生の頃、小学生の恋なんて友達とあの子がかっこいいだのかっこよくないだの言ってるだけの恋だと思ってた。
    高校生の頃、中学生の恋なんて仲の良い異性の友達の中でもとりわけ仲の良い友達といるだけの恋だと思ってた。それか、恋という名前を借りたただの憧れか(ちなみに私は完全に後者だった)。
    大学生になって、高校生の恋なんてまさに恋に恋するような、少女漫画に憧れた恋だと思ってる。
    大人になった私は今の私の恋をなんと思うのだろうか。親元を離れて一人で暮らして、ハタチも過ぎてお酒が飲めるようになって、十分に大人と言ってもいい歳だけど高校生の恋で止まってるような私にとってこの話はまだ早かったみたいだ。もう少しいろんな恋を経験したらもっと分かるのかな。

  • ブエノスアイレスで生まれ育った日系人の姉妹は、とても仲が良く、色んな秘密や、男性まで共有しながら生活していました。

    そんな姉妹の不思議な遊びは、金平糖を地面に埋めることでした。
    なぜそんな事をするのか?
    自分たちの祖国である日本は、今いる場所の地球の裏側にある。だったら、この地面に金平糖を埋めれば、反対側の日本では金平糖が星のように空を照らすだろう。

    そして、日本の大学に進んだ姉妹は、姉は日本で結婚し、妹は成人して間もなく娘を産んで地球の裏側に帰っていった。

    そこからこの物語は始まる。

    本当になんて事のないただの日常劇なんですが、なんとなく読ませるというか、途切れることなく読み続けました。

    最初に書いた金平糖の下りは素敵だと思いました。

  • [内容]
    ブエノスアイレス近郊の日系コロニアで育った佐和子とミカエラの姉妹は、少女の頃からボーイフレンドを<共有すること>をルールにしていた。留学のため来日した二人だったが、誰からも好かれる笑顔の男、達哉と知り合う。達哉は佐和子との交際を望み、彼女は初めて姉妹のルールを破り、日本で達哉と結婚する。同じく達哉に好意を抱いていたミカエラは父親がはっきりとしない命を宿してアルゼンチンに帰国する。20年後、佐和子は突然、達哉に離婚届を残して、語学学校の教え子であった田渕ともに故国に戻る。一方、ミカエラは成長した娘アジェレンと暮らしていたが、達哉が佐和子を追いかけてアルゼンチンにやってくると……。

    --
    まっすぐだけど純粋とはかけ離れた位置にいた二人の姉妹。色々とテーマが盛り込まれたとても長い話ではあるのだけど、これが江國香織さんの作品に触れるはじめてのもの。読みやすかった。とても。というか、テーマがテーマであるために内容的にもどっしりきそうだなと思っていたけど、何故か江國さんの文体がどうしてもうつくしく魅せてしまうので、驚き。登場人物の言葉や、行動ひとつひとつ儚くて危うくて、ついつい読み更けてしまった。言葉をあやつるのが上手い人だなあ。

  • 「家族を愛していても、家族以外を愛せなくなるわけではない」



    久しぶりの、「読んだことのない江國香織」でした。
    かなり分厚い本でしたがすらすら読めたのは、あまり考えなくても良いというか、すっと頭に入ってくるような書き方だからかも。

    アルゼンチンに移住した日本人夫婦から生まれた姉妹、カリーナとミカエラ。
    ふたりは最初の男からずっと共有してきたが、はじめて共有することをカリーナが拒んだたっちゃん。
    そのカリーナがたっちゃんを捨て、一緒にアルゼンチンに移るたぶちん。
    ミカエラが日本の大学時代に妊娠した、父親が分からないけど聡明な娘アジェレン。
    アジェレンが恋に落ちた、ミカエラの上司のファクンド。

    全編を通してアルゼンチンの描写が多いため、アルゼンチンに意識が持って行かれます。この人が書く生活の描写は、読んでて落ち着く。

    不倫をしているアジェレンの、これが本物だと信じているというか、信じている間は本当に本物な感じがとても懐かしかった。
    私にもこれがあったはずだけど、しばらく忘れてしまっていた。

    江國香織を読むと、自分の中の愛について振り返るきっかけというか振り返るはめになり、あと脳内の言語が江國香織化されるので、しばらくやっかいです。

    冒頭に書いた部分と、「愛ではないその何かが、愛より劣るものだと誰に言えるだろう。」という部分がとても好きでした。

    ラストの十字架のシーンは本当にぞっとする。
    所沢の家は「墓場」だったのだという暗喩かと思いますが、アルゼンチンの明るい墓地との比較がなされていて、鳥肌ものでした。

    この人はこういう、女の面倒くさい部分を見事に描いているので、読む時期を間違えなければとても面白いです。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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