起終点駅(ターミナル)

著者 :
  • 小学館
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レビュー : 176
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863186

感想・レビュー・書評

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  • 「晴れ渡った空は青いビニールシートと同じ色をしていた」

    ひとつの映画が作れたほど印象い深く内容の濃い短編でもある、桜木柴乃さんの短編「起終点駅 ターミナル」文末尾の一節

    北海道釧路のカーンと晴れ渡ったときの空らしい描写でもあり(いつもは霧も濃いらしいのだが=原田康子『挽歌』)この短編の初老の弁護士の来た道の人生をくくればそんなふうに思うような印象も受けて(といってもこの短編を読まない人にはわからないが)

    たまたま、森干絵都さんの短編「風に舞いあがるビニールシート」を読了したばかり、 なぜあの場違いのような青いビニールシートがこの短編に描かれているのか?
    国連難民高等弁務官事務所で働く悩み多い女性の主人公が、 そのビニールシートでなぜ「なごむ」のかわかり、ストンと腑に落ちたところで。

    昨夜はNHKで「UNHCR国連難民高等弁務官事務所」で働く女性のルポを見、シリアの難民問題もさることながら、それを手助けする人たちの苦労に、 またまた殺伐たる印象を受け、どこに希望があるのかと、時宜を得た印象

    あのくどくどしい青い色のシートは決して美しくない。 ホームレスの小屋を作るし、災害の時屋根をおおうのもそれ、 ほんと、よく見かけるおなじみだけど。

    ビニールシートは便利、ピクニックのお弁当の時にも
    花見宴会のござにもなるし、工事場のちょいおき材料にも雨露しのげる。

    でもでも、 あの色は美しくもない、味もそっけもない。

    桜木柴乃さんも初めて読む
    この作家さんのハッとするようなフレーズに心ひかれた

    例えば
    「すべてが自由に見える生活は、案外不自由でこころもとない」(「起終点駅」)
    とか
    「花が大きいほど、できる影もまた同じ」(「たたかいやぶれて咲けよ」)
    など

  • 淡々と描かれた文章なのに、すごく共感できたり、ぐっと心を揺さぶられたり、秘めた力強さがある作品だと思った。
    様々な理由で一人で生きている人達。それが当然のように生活しているけれど、誰かがいてくれると、それがすごく暖かくて愛おしかったりして。
    読んでいると、「人生って思い通りに行かない、難しいものだよなぁ」と悲しい気持ちになるけれど、最後まで読むとなんとなく前向きな気持ちになれるのは、この短編のそれぞれの主人公達が皆「それでも明日もがんばろう」と、前に進む生き方をしているからなんだと思う。そこにとても励まされた。
    短編なのに、すごく長い人生のストーリーを読み切ったような気分。

  • どの短編も、人が死んだり、死んだ人に心が囚われたりしている人の、重そうな題材だけど、海風に倒されず前を向く人たちを暖かくも厳しく描いている。良い

  • 北海道の寂れた、寂しいストーリー。何故だか、しっとりして、悲しい出来事があり、小さい幸福があり、こんな幸せもあったんだなって気づかせてくれる。悲しくもあり、面白く読める短編だった。

  • 6つの短編集。
    何故か作者が直木賞を獲る前に、何かで衝動買いをしたにも関わらず、読んでなかったので、映画化してるという文庫本の帯を見かけ、そういえばまだ読んでなかったなと思い、引っ張り出した。読み終えてから、今まで読まなかったことを後悔するくらい良かった。
    いずれも、男女の、恋愛ともまた違うが、それぞれの人物が抱える内面にあるものを揺るがす再生の物語だった。
    決してどれも明るい物語とは言えないが、ひたむきに生きる姿、これからの姿というものを、想像させる内容だった。
    北海道を舞台にしているが、それが都市部では無く、地方を中心に繰り広げている、退廃した空気がまた一層に作風を彩る。

  • 短編集。登場人物の考え方や性格に同調できない部分が多くて、話も単調で退屈だった

  • 重たいし、寂しい。ドライな文体が余計にそれを感じさせる。

    最後の「潮風の家」が良かった。
    でも全体的には合わない作家さんかなぁ。

  • 北海道出身の作家、桜木 紫乃さん。
    親が、ラブホテル経営をして、そこが、住まいであり、学校から帰宅したら、そこで、手伝いをしたと言う。
    しかし、ラブホテルを経営している子として、後ろ指さされないように、凄く真面目で、過ごしたのでしょう。
    この本からも、生真面目な主人公が、描かれている。

    この本は、北海道を背景に、6つの短編からなっている。

    『かたちないもの』は、仕事で、クリスマス、ボーナス、昇給、
    別れ、、、と節目ごとに、自分で、貴金属のご褒美を購入していたが、昔別れた彼を追いかけて、渡した手紙が、彼の死後、封を切られずに、戻って来る。
    生きている限りどんな広い部屋に住もうと、土に還るまでの間の仮住まい。
    だが、仕事を辞めるまで、ローンを払い続けなければいけないマンションを購入して、今日も雑踏の中をヒールの音を響かせながら、まっすぐ、歩いて行く主人公に、頑張れ!と声をかけたい。

    『海鳥の行方』は、主人公 山岸里和が、新聞社入社し、不発弾の取材で行った波止場で、無職の密漁の男と、親しくなるが、不慮の事故で、男が死亡する。
    其の男の別れた家族を捜しに行くのだが、亡くなったことを告げることも出来ず、この妻から、「元気でいてくれるように、、」と伝言されてしまう。
    どちらも、お互いが、気にして生きてきたのに、、、別れてから会う事が、出来ないまま、過ごしてしまった。

    『起終点駅』は、国選弁護しか、引き受けない変わりもの弁護士が、主人公である。
    彼も、バツイチで、息子から結婚式の報告を貰う。
    仕事では、判決の下りたばかりの女が、高熱になり、それを助けてやったり、其の女の 行き倒れかかった彼氏を、見つけ出して、組事務所に渡さず、警察へ引き渡すのである。
    そして、其の女は、彼を捨て、新しい一歩を踏み出すのである。
    人生、起点になるか、終点になるか、其々の道がある。

    『スクラップ・ロード』は、凄く、暗い物語である。
    人生、もっと、市制にゆだねたらいいのではないかと、思ってしまう。
    飲食店経営者から、賞味期限の切れたのとか、ビールケースも、残ったのを、其のままケースに入れて、店先に、置いといてやると、言うのを聞いたことがある。
    アルコールなんか栓が、開いているし、出していて大丈夫なのか?聞いたことあるけど、ちゃんと、綺麗に、ゴミを置いて行かないし、整理整頓してあるよ。と、言っていた。
    この物語にもそんなくだりが、出てきたけど、、、
    最後の父親が、自分の穴を掘っていたと言う所は、なぜか重苦しい感じがした。

    『たたかいに敗れて咲けよ』は、山岸里和が、主人公である。
    短歌会の重鎮であるおばあさんを取材し、其の生きざまを描いている。

    『潮風の家』は、札幌で、老人達にお弁当を宅配する女性が主人公である。
    天塩町に、親と弟の墓を作るためと、昔世話になった小母さ
    んに会いに行く。
    小さな田舎の、噂にならないように、町を出ろと、勧めてくれた小母さんの昔話も、暗いものであるが、最後に大きなテレビを、送ってあげることで、喜んでいる様子の便りが、届くところが、最後にどんよりとした、暗い雲の間から、少しだけ明りが見えた本の終わりで、あった。

  • 6編の短編からなる6人の人生模様だが
    どの人の人生も心にズシンと響きます。


    4人目の人生「スクラップ.ロード」

    ある街のゴミ置き場で廃品をあさる男の姿を見た。
    どこかで見たことのある顔だと思ったら
    7年以上前に姿を消したままになっている
    父親であった。

    面白くて一気読みしました。

    • yoko.nさん
      こんにちは♪ 重い題材ですが、心に響く短編集でしたね。
      ところで「狐狸庵人生論」にコメントいただきありがとうございました。遅くなりましたが返...
      こんにちは♪ 重い題材ですが、心に響く短編集でしたね。
      ところで「狐狸庵人生論」にコメントいただきありがとうございました。遅くなりましたが返コメしておきましたので、よかったら読んでくださいね(^^)
      2012/10/11
  • 北海道を舞台にした6つの作品からなる短編集。
    全体的に物憂げな海を背景に曇天が広がるイメージの北海道で繰り広げられる。

    皆、孤独感や失念、人に言えない過去を引きずりつつも、一生懸命前を見てもがきながら生きていこうとする姿が、もくもくと描かれている。
    全体的に重い内容なのだが、最後に一筋の希望の光を残してくれて勇気がもらえる。

    『起終点駅』『たたかいにやぶれて咲けよ』『潮風の家』がよかった。
    たみこがひらがなで書いた詩の最後”わたしはもう にしんのにおいがしません”という文にぐっときた。
    千鶴子から送られた大きいテレビを喜ぶさまが嬉しく、心がとても温かくなった。

    • ハムテルさん
      早速、図書館に予約しました。
      早速、図書館に予約しました。
      2012/09/03
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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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