- 本 ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863223
作品紹介・あらすじ
「100回泣くこと」作者の新たなる代表作
小学生のアキオ、大介、麻里は、夏の学童キャンプで、夜、ホタルを見るため、宿を抜け出し、川に向かう。ようやく川にたどり着いた3人は、偶然ラジオから流れる謎の深夜放送を耳にする。その後、中学で野球部に入ったアキオは、一学年先輩の放送部員・里崎さんを好きなるが、告白できないまま、時間が経過する。高校生になったアキオは、夏休みに、かつてのキャンプ場を訪れ、再び謎のラジオ番組を聞き、あることに気づく。そして、さらなる時間が流れ、アキオたちは大人になった。物語は、大きく動き始める――。
【編集担当からのおすすめ情報】
07年刊行の絵本「星空放送局」から着想を得て、約5年の歳月を経て出来上がった小説が本作になります。イラストレーター宮尾和孝さんとのコラボレーションが、本小説でも堪能できます。
感想・レビュー・書評
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真面目に素直に生きることが大切。
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【私達は偶然の生に自分で意味づけをし、人と交わりながらやがて大切なものや生きる意味を見つけていく】
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小学生の夏、宿泊体験の夜に宿を抜け出し、蛍を見に行った大介・麻里・アキオ。
迷子になった真夜中の森で不思議なラジオ番組「星空レディオ・ショー」を聞いて…?
自然の音、部活の掛け声等臨場感をある音に、紡がれる星や宇宙の話、うさぎとカラスの物語といった神秘的な話が混ざりたい、物語全体としてとても不思議な雰囲気を纏っていました。
メビウスの輪の話など、数学的、哲学的な話があちこちに星のようにちりばめられていて、非日常な空間に身を置かなくても、考え方ひとつで世界はとても不思議な場所に変わるのが面白いなと思いました。
また、特に好きなのが星空の描写。
同じ中村先生のBang Dream!では、主人公の香澄は幼い頃星を見た体験を「星の鼓動を聞いた」と生き物のように表現しているのですが、今作では哲学的に、星や宇宙を自分の認識している「世界」の一部として捉えており、中村先生の描写・捉え方ののバリエーションに舌を巻くと共に、一人一人それぞれに星の解釈って変わるんだなと思わされました。
反対にどちらの作品も音楽や歌詞が多様されているところ、「聞こえる?」という言葉で誰かに語りかけているところは、中村先生の作風スタイルや思いを伝えることへの信念が見えて、やっぱり好きだなあと思いました。
皆さんの夜空にも、優しい星が流れますように。 -
すごく優しくて、ロマンチックな物語。
第一章から第四章まで、別々の人の物語が少しずつ繋がっていく。
語りの息継ぎの間に、謎のラジオ『星空・レディオ・ショー』が聞こえる。
優しい『星空・レディオ・ショー』の語りに導かれるように物語は進んでいく。
最初は物語と関係ないように思えた『星空・レディオ・ショー』が、だんだん物語に近付いてきて、時々物語の中の迷える人達も『星空・レディオ・ショー』から前に進むきっかけをもらう。
そして最後にくるりときれいな輪っかになった時には、とても幸福な気持ちになった。
「遠くを見るってことは、過去を見るってことだ。」
この言葉が1番印象に残った。
でも読み終えた今は、過去とか未来とかそんなのあんまり大した違いはないなという気持ちだ。
物語のラストで幸せいっぱいの未来を確信している2人の未来には、現在も過去も含まれているのだから。 -
隠喩に満ちた言葉の数々は、昼間の空に見えない星のよう。
キザったらしくなく、淡々と摂理を歌うような、なんともいい難い文体。
森や星空の闇が出て来るが怖くはない。あたたかな闇。
生まれてくる前にいた深淵なところに潜り込む感覚を味わえる。
読後感がいい。 -
恥ずかしくなるくらい純真な気持ちを、きれいな言葉で綴るとこの本になるのだと思う。
小学生の大介、中学生のアキオ、そして海辺のミニ放送局の留守番DJの「掌」。この3つの物語が星空放送局で結ばれていきます。
なんかもやもやしたものがスッと消えていくような感じです。読後感はあったかでスッキリした感じです。
星空放送局の言葉は読み返すと、きっと君の心に届くと思いますよ。 -
とにかく中村航さんの本には悪人が出てこない。読んでて、クスッとさせられて、温かい気持ちにさせられて、とても切なくなれる。この話は、なかなか話が見えてこなくてやきもきしたけれど、最後はスケールの大きな‘願い’の話だと分かり、優しい気持ちに包まれる。
少し経ったら、また絶対読むだろうなーと思う。ステキな物語をありがとうございました。 -
星空の見方が変わる本。星の散りばめられた夜空は無数の人間の願いや祈りをばら撒いた夜空な訳で、無数の、届かぬ手紙が空に見える。でも、夜空を見上げれば、空を通じてその人に届く気がする。
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小学生のキャンプ、中学部活、そして、ん、いつ?って感じになって、最後は成人。
パラレルワールドの具体化が印象深い。
マンションのホタルさんの部屋はらせん階段で2階に上がったところに寝室があり、ひとつ上の階のミニーの部屋は、らせん階段を降りたところに寝室があり、壁を隔てて二人は眠っている。その建物の構造、断面図が、二人の姿が目に浮かぶようです。
DJは「…だぜ」の口調が佐野元春っぽくて、夜空にぴったり。 -
最初は、あぁまた少年時代のノスタルジック系かな、と思ってたのですが、この物語の神髄は第3話以降にあったのですね。そしてそのためのタネは、第1話から周到にまかれていたのでした。
これはパラレルワールド?というような描写もあって、SFとしてもいろんな解釈をしながら読めます。
いずれにせよ、2回読みたくなる本です。2回目はまた、違う景色が見えると思います。特に、第1話のホタルが。
著者プロフィール
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