バスを待って

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863544

作品紹介・あらすじ

町の景色と人情が心に沁みる石田千連作小説

<いちばんまえの席があいた。となりのおじいさんは、いそいで移動して椅子によじのぼった。男のひとは、いつまでもあの席が好きでおかしい。> 夫をなくしたばかりのお年寄り、自分の進路に迷う高校生、上司とそりが合わず落ち込むサラリーマン、合コンに馴染めないOL……、季節、場所、人は違えど、バスにゆられて「明日もがんばるか」と元気を回復する二十篇。
第一回古本小説大賞、2011年、12年芥川賞候補の石田千氏の最新小説。「お洒落なイタリアンより酒肴の旨い居酒屋が好き」「流行のファッションより古着やナチュラル系の服が好き」という女性を中心に人気を博している小説家・エッセイストの、人情に溢れ、ほろっときたり、ほほ笑んだりしながら読める物語。


【編集担当からのおすすめ情報】
路線バスには、他の乗り物にはないゆったりとした時間の流れがあります。そして、バスにゆられている乗客ひとりひとりに、それぞれ抱えている人生があります。穏やかに、でもじわーっと心にしみてくる石田千氏の小説は、思わず涙がこぼれそうになります。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わるのにずいぶんと日数を要してしまった。
    というのも、この短編集は先を先をと急いで読むようなものではない。
    寝る前に今日の一編を読み余韻に浸りながら眠りにつく。
    そんな読み方が理想的だ。
    言うなれば大人のためのおとぎ話。
    心地の良い流れるような文章とそこはとない郷愁。
    心がほっこり温かくなって一日を終える幸せ。

    こんな読み方をしていたら図書館の貸し出しを一度延長してまだ返却もせず。
    ごめんなさい、どうしても全部読みたくて。
    いやいや、手元に買って置いておけばいいんですけどね(笑)

    石田千の文章を絶賛している方がいていつかは読みたいと思っていた。
    なるほど、わかりますね。
    主語がないし会話文の括弧もついていない。
    それでいてよどみがない軽快なテンポ。
    これは癖になる。他の本も読まなくちゃ。

    で、本書。
    バスに乗る人達の小さな日常の話。
    都バスがほとんどかな。
    整理券を取る描写もあったから中には田舎のバスもあったのかも。
    バスを題材にできるのって東京だけかなとも思ったり。
    バスの乗換えとか電車の代わりにバスに乗るとか、田舎じゃ考えられない話。
    お上りさんが使いこなすのは地下鉄がせいぜいで、バスはなかなか難しい。
    こういうの読むと気負ってない都会が垣間見れてちょっぴり羨ましくなる。

    次は何を読もうかな。
    長編の石田千も気になりますね。

  • 石田千さんの、紡ぐ言葉が好きです。

    なにげない日常のひとコマが、
    心地よいリズムで、じんわりと心にしみてくるんですよね。

    全部良かったんですが、特に好きなのは、
    #お年玉 #弁当番長
    #おむかえ #中條さんは、バスに乗る
    #びしょびしょの窓 #みどりちゃんの友だち
    それと最後の#帰り道もほっこり。

    バスの匂いに弱く、よく酔ってヘロヘロになっていたことや、
    塾の帰り、他の乗客が全部降りてしまい、車内は運転手さんと自分だけ。
    外は真っ暗で心細くなったこととか…
    いろいろと思い出しました。

    心にゆとりのあるときに、一話ずつ、ゆっくり味わいたい一冊。

  • 同じ言葉を何度も言い続けていると
    終には
    はて?それって一体何であったか?
    なんて、
    わからなくなったり

    2本の指で触れている、
    のは知っていても
    脳では
    (一本の指!)
    なんて頑固に認めなかったり、

    人の感覚には
    「盲点」が存在するのではないか?

    と、私は思っている。

    その最たるものが
    「日常」。

    来る日も来る日も、生命維持の為、体への奉仕活動を必死で行っている、というのに
    「昨日、何してた?」なんて、聞かれても
    全く答えられない…

    私には、大切な日々の積み重ねが全く
    見えていなかったのだ。

    バスを待つ人に
    これから起こる事、と言えば
    バスがやってくる事。

    そんなほんのちょっとの間、
    彼らの人生を垣間見ているだけなので、
    当然
    大事件が起こるわけでもないが、

    (ささやかに日々を過ごす)
    事の素敵さが、脳が感知できないもう一本の指で突かれた様にじんじん、と胸に響いてきた。

    バスが彼らを乗せて走り去り、
    私ひとりが
    取り残された後も
    「寂しさ」
    が残らない、すごくいい短編集だった。

  • 短編集。どれもとてもよかった。
    むきたての卵みたいな心模様に沁みながら
    心があたたまる。
    ふだん隠されているような
    でも本当は隠すようなことじゃない胸の裡を
    なんてことないように日々に映し出す。
    いろいろひっかかったり浄化できないままの汚れた心が
    文字でカラカラと磨かれた。

    「埠頭から」のプロポーズのくだりがいい。
    恵介とやよいといっしょにわたしも「えへへ」と笑ってしまった。

  • バスを待ち、そしてバスに乗る。
    バスは街のアチコチを寄り道しながら、その人の行きたい場所へ運んでくれる。
    時に景色を眺め時に本を読み時にグチり…人はバスの中で思い思いに時を過ごす。
    夫を亡くしたお婆ちゃん、進路に迷う高校生、ツイてないサラリーマン、泣き虫の女の子、未練たらたらの三十路女…幼い子供からお年寄りに至るまでバスに揺られながらの20通りの人間模様。

    バスに乗る前は落ち込んだり悩んでいたりモヤモヤしたり。
    けれどバスに揺られている内に心も晴れやかになってくる。
    大丈夫、やまない雨はないんだから。

    穏やかな心温まるショートストーリー。
    20もの短編はテイストも様々だったけれど、甲乙付け難くどれも良かった。
    石田千さんにますますハマりそう。

  • 初めましての作家さん。

    お友達のレビューが素敵で、読んでみたい!と思った作家さんです。

    良いですねぇ…
    文章がやさしくて、沁み入ってきます。

    他の作品もぜひ読んでみたい!

  • 寝る前に数話ずつ読み進める。
    何でもない日常
    そこにいる人
    何でもないんだけど石田千さんにかかるとなんでだろうなぁ
    なんかみんなみんな応援したくなる
    ○あずまや
    ○お年玉
    ○弁当番長
    ○帰り道
    ○スパイス国行き
    がお気に入り。
    どんな話?と聞かれると困っちゃうんだけど。
    ほんわりあったかい

    2013年 小学館
    装画・挿画 牧野三夫
    装幀 有山達也 中島美佳

  • バスに乗るひと、バスを待つ人、バスを降りる人、そのときの心の動きを掬い取った20編の物語。ここには幼稚園児からお年寄りまで、さまざまな男女が描かれています。一人称で、カギ括弧もなく淡々と語られる描写には、心地よいリズムがあります。物語はほんのわずかの時間のことしか語りません。読んでいると、その人物の内側から物語を見ている自分に気がつきました。なかには、驚くようなことをした人もいます。私は幼稚園の女の子の内側から見ているかんじが一番おもしろかった。
    私も中学生のとき、電車の定期券を持ってるのに、わざわざお金を払って、直通バスに乗って帰ったことがありました。どうしてだろう?今考えてもよくわからない。電車と違う、バスから眺める風景が好きだった、座っていると、カーブの動きや揺れる感じが心地よかった・・・。ほかに何だったんだろう?もうしばらくバスに乗っていません。

  • 都内を走るバスが織りなす物語。
    ひらがなが多くてやわらかい文章に、ほんわかします。
    (ともすると、電車内で穏やかな眠りも誘発します。)

    比較的きちきちとダイヤ通りに走っていて、
    たった1分の遅れでもお詫びのアナウンスが入る電車ではなく、
    遅れたりしてちょっとあてにならないところもあるけど、
    待っていればいつかやって来て、
    いつかは目的地に着くことができるバスだからこそ、
    ふっと和んだり、心が落ち着けるのかもしれません。

    たまには電車ではなくバスに乗ってみようかな、と思いました。

    短編集なので、空いた時間にちょこっと読めるのも◎
    それぞれのお話で登場する路線の
    車窓からの景色や乗客の雰囲気がわかると、
    なお楽しめそうです。

  • 石田千さんの随筆が好きで(石田さんの場合は
    エッセーでなく随筆とぜひとも言いたい)
    新刊が出ると必ず読んでいる。

    今回短編集ということでああいう文章を書く人が
    物語を書くとどんなふうになるのかな、きっと
    素敵に違いないと図書館で借りて読んでみた。

    バスに関連するお話で、一話一話、心にぼわーっと
    響くものがあってとても良い。
    最初の一話でじんわりと涙が浮かんだ。
    小さい子の目線の話もとってもよい。
    どの話もすごくよい。心に優しく響く。
    中年男性、老人にさしかかった女性、保育園児、
    更には芋虫?目線まで!!色々な目線で書いていて、
    どの話もとても上手でほんとうにびっくりした。

    牧野伊三夫さんの本のカバーと挿絵も優しくてとてもよい。
    手元に置きたい本なので、早速購入した。
    また何度も何度も開くだろう。
    こういう本は中々出会えないからとっても嬉しい。

    内容のテンポのよさが杉浦日向子さんの「ごくらくちんみ」や
    「4時のおやつ」に似ていた。あちらは短編といっても
    本当に短い話でこちらの方が読み甲斐があるけれど、
    なんとなく本に漂う空気感が同じ感じだった。

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著者プロフィール

石田千(いしだ・せん)
福島県生まれ、東京都育ち。國學院大學文学部卒業。2001年、『大踏切書店のこと』で第1回古本小説大賞を受賞。「あめりかむら」、「きなりの雲」、「家へ」の各作品で、芥川賞候補。16年、『家へ』(講談社)にて第3回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。16年より東海大学文学部文芸創作学科教授。著書に『月と菓子パン』(新潮文庫)、『唄めぐり』(新潮社)、『ヲトメノイノリ』(筑摩書房)、『屋上がえり』(ちくま文庫)、『バスを待って』(小学館文庫)、『夜明けのラジオ』(講談社)、『からだとはなす、ことばとおどる』(白水社)、『窓辺のこと』(港の人)他多数があり、牧野伊三夫氏との共著に『月金帳』(港の人)がある。

「2022年 『箸もてば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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