教場

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863551

作品紹介・あらすじ

君には、警察学校をやめてもらう。

「こんな爽快な読後の悪さは始めてだ! 警察学校が担う役割とはなんだろうか。篩にかけられた友もまた、警察官を育成するために必要なものだったのだろうか。校庭のすみに育てられている百日草が示すものが、警察組織を守るための絆ではなく、市民を守るための絆であることをただただ願いたい」
――さわや書店フェザン店・田口幹人さん
「復興を続ける警察小説ジャンルから飛び出した、突然変異(ミュータント)。警察学校が舞台の学園小説でもあり、本格ミステリーでもあり、なにより、教師モノ小説の傑作だ。白髪の教師・風間は、さまざまな動機で集まってきた学生それぞれに応じた修羅場を準備し、挫折を演出する。その『教育』に触れた者はみな――覚醒する。もしかしたら。この本を手に取った、あなたも。」
--ライター・吉田大助さん


【編集担当からのおすすめ情報】
長岡弘樹氏は、2008年に第61回日本推理作家協会賞(短編部門)を選考委員満場一致で受賞、「歴代受賞作の中でも最高レベルの出来」と評された短編「傍聞き」で知られるミステリー作家です。同作を収録した文庫『傍聞き』は、現在39万部に達しています。本書は長岡氏初の本格的連作長編にして、好事家をもうならせる、警察学校小説。
2013年ミステリーナンバーワンを射程に入れた勝負作です。

感想・レビュー・書評

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  • 警察学校の学生達と教官•風間が織りなす警察官の育成を描いた連作短編集。
    警察学校を舞台とした警察小説というモチーフはユニーク。巻末の参考文献を見ると、相当な調査と取材を経て書かれた小説であることが伺える。警察学校は私には無縁の世界だが、本書に描かれているように「必要な人材を育てる前に、不要な人材をふるい落とす場」だとすると、実に過酷な世界だ。
    全6話構成で各話で視点となる主人公の学生が入れ替わる。一癖も二癖もある学生達が、腹の探り合いをしながら苦難に直面して乗り越える。それを並外れた観察力と洞察力で見通した上で見守る風間教官。過酷な修羅場にそこまでやる?と訝しむ場面もあったが、最終話で語られる彼の矜持があってこそだと考えると腑に落ちた。
    「警察官という仕事には度胸が欠かせない。ぎりぎりでの戦いを経験できなかった人間にはそれがないから、第一線では使い物にならない。」

    そこかしこに伏線が張られているのと場面が急に切り替わる構成のため、読みやすくはなかったが、職務質問や臨場など実習を通して警察官の仕事のノウハウが垣間見れる部分は興味深く読んだ。

    クセの強いキャラクターが多いので映像化向きだと思ってたら、2020年にドラマ化済みで風間役はキムタクですか…適役。

    週刊文春ミステリーベスト10 1位
    このミステリーがすごい! 2位
    本格ミステリ・ベスト10 22位
    本屋大賞 6位
    ミステリが読みたい! 4位

  • 警察学校を舞台にしたスリリングな話。
    教場とは、警察学校の教室のこと。
    緊密な出来で、読み応えがあります。

    「職質」
    警察学校では、職務質問の想定実習を何度もやらされる。
    刑法犯は、職務質問で摘発されるケースが4割と多いので、重要なのだ。
    宮坂は雪道での事故にあったとき警察官に救われて、警察官を志した。
    新しく来た風間教官に、憧れているようでは駄目だと指摘される。見回りで気づいたことを報告しろと言われ‥

    「牢門」
    仕事を辞めて警察官を目指すことにした26歳の女子学生しのぶ。
    花粉症を抱え、厳しい訓練に苦労しつつも、二つ年下の沙織とは仲が良かった。
    しかし‥?

    「蟻穴」
    耳がいい鳥羽は、白バイ警官を目指していた。
    警察学校では、日記を書かされる。嘘を書いたら退校になるほど厳しい。警察官は決して嘘の報告をしてはいけないから、その心得を叩き込まれるのだ。
    教場で親しくなった稲辺のことで、問いただされたときに‥

    「調達」
    元プロボクサーの日下部は年長なので級長をやっているが、成績はあまり良くない。
    なんでも金次第で調達するという樫村が接近してきて‥?

    「異物」
    由良は体格がいい一匹狼タイプ。
    コンビを組む安岡は小柄。
    運転技術の実習で起きたことに由良はこだわるが‥
    風間教官は「小学生か」と、皆お見通し。

    「背水」
    卒業が近づくにつれ、緊張が高まって来た都築。
    大きな失敗はなく来れたのだが、目指す成績をあげるにはまだ足りない。
    卒業文集に何を書くかも悩んでいた‥
    挫折を知らない人間は警察官には向かないと風間教官が指摘する。きっちり挫折を経験したほうが良い警察官になれると。

    なんて恐ろしい教場!
    と思うのが最初のほうのエピソード。
    わずか半年ほどの期間、一つのクラスにこれほどの確執が渦巻き、生徒間で犯罪まで起きてしまうとは?
    個々の事件はともかく、警察学校独特のやり方は、事実に基づくのでしょう。
    身につけなければならないことをガッツリ叩き込むだけでなく、向いていない人間は容赦なくふるい落とす。
    警察官とは将来、それだけ厳しい試練にさらされることになるのですね。
    警察官になった同級生のことを思い出しました。何年も良いおまわりさんだったと思うのですが、ついに病気になったとか。

    予想外の展開で読ませます。
    一部だけどホラー並みに怖いので、どなたにでもオススメというわけにはいかないかなぁ‥ということで、★4.4ぐらい。
    結城中佐の「ジョーカー」ものが好きな人にはオススメ。

  • 再読。
    シリーズ第4作の「風間教場」を読もうとして、第1作「教場」の宮坂が登場したので読み直すことにした。
    さて、初めて本作を読んだのは約10年前。当時は警察学校を舞台にしたミステリが珍しくもあり、面白く一気に読んでしまった記憶がある。
    今回改めて読み直してみると、当時の物珍しさだけでなく、やはり作品としてのミステリ要素や緊迫感が十分にあり読み進めさせる力強さがあることを再認識した。現在シリーズとして第5弾まで出ていることを考えれば当然といえば当然か。
    唯一疑問に思った「実際の警察学校もこんなに次々と問題を起こして辞めるのだろうか」という点についても、ネットで検索してみれば脱落率は20%とも30%とも言われており、満更リアリティのない設定とも言えないのだなと納得した。
    これだけ過酷な指導を受け、卒配後も現場で任に当たっている警察官に思いを馳せれば、以前ほんのちょっとだけの一時停止違反でキップを切られ、「冗談じゃないよ、もっと他に捕まえるべき奴がいるだろうが」とムカついた過去の経験も、彼らの真面目な職務遂行のお陰で日常が平和に保たれているのだと思うことにした。

  • 2020(R2)1/7-1/9

    警察学校を舞台とした、群像劇なような、連作短編集のような小説。

    こんなに警察学校って厳しいの!?
    警察学校の中では、こんな事が本当に起きてるの!?
    警察官って、こんなに法律を知ってないとなれないの!?

    …と驚きの連続に加えて、登場人物の人間ドラマにも惹かれて、一気に読み終えてしまった。

    『踊る大捜査線』の青島俊作も、こんな警察学校を卒業して刑事になったと思うと、ちょっと尊敬したくなった。

  • 警察官の採用試験に合格し、現場に出る前の警察学校での「授業」を生徒のエピソードでつなぐ。

    4月にTVドラマを見て原作も、とメモに書いてあるのだが、ドラマをまったく覚えていない。4月のは風間教官の警察学校赴任前のこととある。ともあれこの「教場」は警察学校ものでは第1作。この実態が本当に近いものだとすると、晴れて警官となった人たちは、修羅場の授業をくぐりぬけた人、逆に言うと、選ばれたものが警官として現場にいどんでいるということなのか。

    生徒同士のさや当てがえぐい。

    2013.6.24初版第1刷 図書館

  • これってイヤミス?

    本屋大賞にノミネートの話題の作品ということで読んでみたけれど、後味が悪すぎる。
    警察学校が舞台というのは新鮮だし、登場する人物描写も個性があって面白かった。

    でも実際の警察学校というものがどういう場所なのかまったくわからないだけに、
    「警察官の卵って、こんな人ばっかりなの?」
    と、思い込んでしまいそうな自分が怖かった。

    まあ、現場は思っている以上に過酷なんだろうなとは思うけど・・・。
    私には絶対無理(-_-;)

    やっぱりなんだかんだいっても、かっこいい正義感溢れる警察官が見たいし、読みたいのだと気付かせてくれた作品。
    おまわりさん、ご苦労様です。

    • vilureefさん
      nejidonさん、再訪問大歓迎!
      とっても嬉しいです♪

      「薔薇の名前」、全く存じ上げませんでした・・・。
      ちょっと調べてみたら、...
      nejidonさん、再訪問大歓迎!
      とっても嬉しいです♪

      「薔薇の名前」、全く存じ上げませんでした・・・。
      ちょっと調べてみたら、面白そう!だけど難しそう(^_^;)
      西洋史を知らなくても楽しめますか?
      前々からひそかに(?)思っていましたが、nejidonさん博学ですよね~。
      ブクログにはそんな面々がわんさといて、私の知識のなさに凹むこともしばしば。
      開き直るしかありません(笑)

      私、ブクログを始める前は本に対する自分の評価って割と絶対的だっと言うか。
      でもブクログを初めて、私が面白いと思う本も評価が低かったり、逆もしかりで、なんというか目から鱗?
      そんな評価の差が面白いなって。
      なので、正直につまらなかったって書いてあるレビュー好きなんですよ(*^_^*)

      nejidonさんのように、良かった本だけでたくさんの本棚もまた素敵ですよね☆
      でも、個人的にはnejidonさんの裏本棚を覗いてみたい気もする。
      表舞台に出られなかった本たちを (≧ω≦。)
      これこそ悪趣味だ~(笑)
      2014/02/19
    • nejidonさん
      vilureefさん、こんにちは♪
      調子に乗ってまたやって来てしまいました(笑)

      【薔薇の名前】は、とても出来の良いDVDもあります...
      vilureefさん、こんにちは♪
      調子に乗ってまたやって来てしまいました(笑)

      【薔薇の名前】は、とても出来の良いDVDもありますので、そちらでざっくり輪郭を掴んでからでも良いと思います。
      と言うのは、私がその流れだったからなんです(笑)
      原作はかなりペダンティック臭があり、キリスト教の流れを知らないと辟易してしまう恐れがあります。
      知っていればフムフムと読めるのですが、難解な部分は飛ばしてしまえばいいやと考えていると、結局何故こうなったかもつかめない、実に面倒な大作なのです。
      読後の満足感は、かなり深いんですけどね。
      他には、(かなり違う傾向ですが)ジョン・アーヴィングも好きで、ずいぶん読みました。
      vilureefさんにもお読みいただけたら、嬉しいなぁ。

      いやぁ、私は知ってることと知らないことの落差がすごく激しいですよ。
      たぶん身近でお付き合いさせていただいたら、vilureefさんの開いた口が10年くらい塞がらないと思います。えへへ。

      そうですねぇ、豊富な知識を持つ方って大勢いらっしゃいますよね。
      そういった方々との出会いも含めて、ブクログの楽しさがあるのでしょうね。
      vilureefさんの選書とレビューはとても好きなので、どうかこれからもスタイルを変えずに続けてくださいませ!
      私の方こそ、いつも色々勉強させてもらってますよ。

      そうそう、本棚はこれからもあのポジションでやらせてください。
      お話ボランティアのお仲間さんたちも読んでおりますので・・・
      裏本棚なんて開設したら、誰も一緒に組んでくれなくなりますよ~(笑)
      2014/02/20
    • vilureefさん
      nejidonさん、こんにちは。

      今日の真央ちゃんご覧になりましたか?
      胸がいっぱいで眠れなくなりました。
      おかげで寝不足です(笑...
      nejidonさん、こんにちは。

      今日の真央ちゃんご覧になりましたか?
      胸がいっぱいで眠れなくなりました。
      おかげで寝不足です(笑)

      あ、全然話がそれましたね。
      私、どうも翻訳ものが苦手で(^_^;)
      アーヴィングもカーヴァーもアップダイクも全然読んでません。
      食わず嫌いですかね。
      良い翻訳者の本だったら違和感なく入れるのでしょうか・・・。
      今後の課題ですね。

      ブクログやっていると、次から次へと読みたい本が増えて(とくに新刊)、なかなか文豪作家の作品や翻訳ものに手がまわりません。
      あー、ゆっくり本を読む時間が欲しいです(T_T)
      2014/02/21
  • 警察学校が舞台
    ある教官が生徒たちを正していくという短編推理小説

    実際は知りませんが、警察学校がこんなパワハラ天国だったらたまりませんね
    かなり、イヤミスな部分もあります
    街のおまわりさんを見る目が変わるかも

    ラストは続編を期待させます

  •  成績の振るわない者、腹に一物抱えた者、将来への不安や過去のトラウマを抱えた者……様々な警察官の卵が集う警察学校。学生たちの陰に潜む問題を、老獪な教官・風間は見逃さない。

     図書館本。ドラマ化の影響で、借りるまでかなり時間が掛かった(笑)。
     最初に抱いた印象よりもずっと読みやすかった。長編のように見えるが、オムニバス短編集といった趣き。
     旧弊なしごき指導や、学生同士の子供じみた嫌がらせが描かれ、「お前ら何やってんの……」と言いたくなるが、まずまず面白く読めた。
     ただ、続編は読まないかなあ。
     単行本の帯には『既視感ゼロ!何もかもが新しい』とあったが、そこは疑問に感じる。警察学校を舞台にした作品が少ないだけで、内容に新味があるかというと……。

  • 私の場合、映像を先に観てから原作を読む方が、その逆より少ない。
    本書はその少ない方の、映像が先のパターンだ。
    初めて読む作家さんだが、先に映像を観ていることもあって読みやすく、面白かった。
    風間教官は原作の方では怖い人ではなかった。

    鳥羽であるべきところが稲辺と間違えて書かれているところがあった。(初版本p153)

  • 説明
    内容紹介 (Amazonより)
    君には、警察学校をやめてもらう。

    「こんな爽快な読後の悪さは始めてだ! 警察学校が担う役割とはなんだろうか。篩にかけられた友もまた、警察官を育成するために必要なものだったのだろうか。校庭のすみに育てられている百日草が示すものが、警察組織を守るための絆ではなく、市民を守るための絆であることをただただ願いたい」
    ――さわや書店フェザン店・田口幹人さん
    「復興を続ける警察小説ジャンルから飛び出した、突然変異(ミュータント)。警察学校が舞台の学園小説でもあり、本格ミステリーでもあり、なにより、教師モノ小説の傑作だ。白髪の教師・風間は、さまざまな動機で集まってきた学生それぞれに応じた修羅場を準備し、挫折を演出する。その『教育』に触れた者はみな――覚醒する。もしかしたら。この本を手に取った、あなたも。」
    --ライター・吉田大助さん



    木村くんで映像化と聞き 読み始めました。
    読み始めて 何度も目にする〝白髪〟という文字に シルバーヘアの画像は見ていたんですが 木村くんとはあまりにもマッチしなくてなかなか想像しづらかったです。
    それにしても風間教官の観察力や洞察力は本当に鋭いです。その鋭い教官と生徒の話なのか...となんとなく思っていましたが エピローグの『片手の人差し指を、右の下目蓋の中へ挿し込んでやる。そのまま視線を下へ戻すと、義眼の外れる感覚があった。』って部分を読んだ時 衝撃過ぎて無意識のうちに「ゲッ...キモっ」と言葉にしてしまっていたみたいです。
    子供に「お母さん、本にツッコんでんの?」と言われるまで 自分が発したことに気がつきませんでした。
    この役を木村くんがやるのか...と思うと急激に映像化が楽しみになりました。
    サイトには“謎に満ちたヒール”に挑みと書かれてあるけど それだけではない印象なんだけど...

    本の内容については 警察学校のことを調べて書いてあるのだろうと思うと なんだか警察が怖くなりました。



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著者プロフィール

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、05年『陽だまりの偽り』でデビュー。08年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。13年刊行の『教場』は「週刊文春ミステリーベスト10」の1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

「2022年 『殺人者の白い檻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

長岡弘樹の作品

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