ゲノムの国の恋人

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 74
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863599

作品紹介・あらすじ

愛は遺伝子を越えるのか! 異色の恋愛小説

現役遺伝子研究医にして第23回太宰治賞を受賞した気鋭の作家である著者の書き下ろし長編作品です。昨年のノーベル賞授賞以来、注目のiPS細胞、ヒトゲノムなど最先端科学の要素が盛り込まれており、しかも非常にわかりやすい表現でそれが描かれています。アジアの独裁国家を舞台に作者独特のユーモア感に溢れた巧みな筆で、お世継ぎ問題、遺伝子研究の限界、人間の幸福などのテーマを描いています。現代テーマ満載で話題必至の作品です。
主人公のタナカは食い詰めた遺伝子研究者。政府の高官という男に請われ、あやしいアジアの小国に好待遇で招かれた。何億円もする研究設備と有り余る予算を用意され、提示された仕事は、七人の女性のヒトゲノムを解析し、一人の男性の遺伝子とのマッチングを調べることだった。その男性とは同国の絶対権力者。極秘裏に花嫁として最適な女性を見つけることが使命だったのだ。仕事の一方で、魅力的な女性兵士に惹かれ恋に落ちていくタナカ。そして七人の女性はそれぞれ、その国の物政治家、軍人の血縁らしく、さまざまな圧力と懐柔がもたらされる。しかし、解析が進んでいくうちに、どの女性の遺伝子にも欠陥のある要素が見つかって…

感想・レビュー・書評

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  • (No.13-49) ジャンルはなんと言えばいいのか・・・とりあえず冒険小説かな?

    『指導教官と折り合いが悪かったタナカは、日本の大学を飛び出しボストンの大学で博士号を取得、そのままアメリカで遺伝情報解析をするベンチャー企業に就職した。鳴り物入りで日本市場に参入したタナカの会社は、通貨危機で破綻の瀬戸際に。
    そうでなかったらこんな妖しい話には乗らなかっただろう。
    タナカにとって馴染みのない国で、遺伝子解析をして欲しいという依頼。この解析のために新しい研究所を丸ごと作る。ウン千万の高速シークエンサー、解析用のスーパーコンピュータ・・・・、必要なものは何でも思うさま資金を使ってラボを整えることから始めて欲しい。ギャランティーとは別に百万米ドルの用意があり、3倍程度の上積みも可能。
    仕事の内容はクライアントと複数の花嫁候補の遺伝子を解析し、遺伝学的な観点からベストな花嫁を選ぶこと。
    胡散臭すぎる依頼だったが、人生の袋小路に嵌っていたタナカはその依頼を受けた。

    日本とはまるで違うかの国での生活。戸惑いながらもタナカは真面目に仕事に励む。
    思いがけない秘密を知ってしまってもそれは明かさず、何とか解析結果をまとめようと頑張るタナカ。
    しかし権力闘争に巻き込まれてしまい・・・・。』

    初めて読んだ作家さんです。この本はテレビで紹介されて興味を持ちました。私は遺伝子とかのテーマにとても惹かれるのです。
    瀬川さんは現役の遺伝学研究者。研究者の置かれている立場とか研究施設や研究のやり方について、すごくリアルな感じを受けました。(実際のところは私は知りませんが・・・)

    主人公のタナカは、はっきり言ってそれほど魅力的な人物ではありません。でも真面目な理系男子そのものなの。恋愛には臆病で、マッチョな男たちを嫌悪。
    仕事ぶりは誠実で、直接関係なくても遺伝子を解析するチャンスがあればついやっちゃう。
    魅力的でないはずのタナカにだんだん思い入れしてしまうの。だ、大丈夫か~、生き残れよ~、って。

    この国は小説の中では地理的に日本とはずいぶん離れたところにあることになってます。
    でも実は、現実の日本とごく近い北のある国を連想させるように書かれています。だからつい、知っている映像を登場人物に当てはめて読んでしまいました。

    いったいタナカはどうなるのか心配でしたが、奇麗に着地してくれました。私としては満足です。
    とても面白かったので、テレビで紹介してくれてありがたいと思いました。

  • 遺伝のパターンは複雑な、というよりは大量の種類と表現したほうがよいかもしれない。一つ一つの最終的なこの単位に名前があり、存在もするが、目で見ることはできず、最終的な生命として形成される。
    著者は遺伝子、人、国という単位で同じ事を繰り返し説く。国家単位であろうとDNA単位であろうと、ルーツや未来を気にする割に、意外に今に関しては、直感的に活動するそのいくつもの「生命」のあり方のおかしさと悲しさに否定も肯定もしない。一見すると北の国で起こりうる話が具体的すぎて、話にすんなり入れすぎることが難点か。あまりにもキレイな話しすぎて、話の筋を構築する二重螺旋がシンプルなはずなのに、変に難しくなってしまっている感もある。それがゲノムなのだと言われたらそれまでなんだけど。

  • 私は楽しく読めました

  • 失望。つまらない。
    何ひとつ面白くない。

  • とある独裁国家で遺伝子解析で花嫁を決めるという仕事をする主人公タナカ。
    盛り上がりには欠けるが、作者が現役の遺伝子学者だけあって、解析や病気に関しては細かかった。

  • ストーリーにも登場人物にも興味が持てず。結末がご都合主義すぎ。

  • ノーベル賞受賞で注目を浴びたiPS細胞に続き、新たに日本人による発見が発表され、なにかと耳にすることの多い遺伝子研究の話題。この小説の主人公も遺伝子研究者。ひょんなことから7人の女性のヒトゲノムを解析し、ある男性の遺伝子とのマッチングを調べることに。近い将来、日本でも起こりうるのではないかと思えるリアリティがあり、まさに今、旬の小説です!

  • 現在のDNA分析の知識や技術をフルに使ったらどうなるか、架空の国を舞台に事件が起きていくのだが、ラストはほんのりと温かくなる。小説とは言え、同様のことが世界のどこかで行われているのではないかと思わせるリアリティがある。博士号を取得した生命科学者の生き様や、DNA分析における手作業が細かく描かれており、さすがは専門家が書いた本。

  • 専門知識のある著者が書いてるだけあって、ゲノム解析の手順や意味など細部にきちんとリアリティがある。ラストも登場人物に対する愛情があってじんわりきた。

  • ゲノムの解析を行い、潜在的にその人物が持つ病気のリスクを調べ、さらにはその人物がどういった人物と子どもを作ると子どもに病気が発症しやすくなるのかを分析する仕事をしているタナカは、不思議なコーディネーターを経由してアジアの小国へ働きに出る。
    貧富の差が激しく、何もかもが日本とは異なる国で最新の設備を与えられ、タナカは花嫁候補7人の少女とクライアント男性のゲノムを調査する。
    ゲノムという「先天的に人がもっているもの」と後天的に人が得るものの対比や、どこがモチーフとも知れない閉鎖的な国の描写がおもしろい。ありそうでありえないホラ話の面白さというか。
    下町に暮らす人々から食べ物を次々と与えられるシーン、葦の原の向こうのトーチカがとても印象的だった。
    この人の作風ってなんていうかとても不思議だ。
    詩的で、音楽のように連なる言葉が美しい。
    爽快なラストに人間のたくましさを思った。

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著者プロフィール

瀬川 深(せがわ しん)
1974年、岩手県盛岡市生まれの小説家、医師。イェール大学に研究の職位を得て渡米し、アメリカに在住している。栃木県立宇都宮高等学校、東京医科歯科大学医学部卒業。
2007年、「mit Tuba」で第23回太宰治賞を受賞、受賞作を含めた作品集『チューバはうたう』で単行本デビュー。以降、『ミサキラヂオ』『我らが祖母は歌う』『ゲノムの国の恋人』といった著作を刊行。

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