虫娘

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863834

作品紹介・あらすじ

あの日、あたしは生き返らなかった――。

シェアハウス〈Bハウス〉には五人の住人がいる。樅木照(ヌードモデルをしながら体を売っている)、桜井竜二(イタリアン・レストランのオーナー・シェフ)、妹尾真人(売れない俳優)、碇みゆき(フリーライター)、鹿島葉子(銀行員)、それにハウスを管理する不動産屋の青年・曳田揚一郎。
照の謎の死が、それぞれの人物に新しい光と影を投げかける。照はその死後も彼らの頭上を浮遊している。

《Bハウスのひとたちは自分以外みんな、不自由だと照は感じていた。あたしの死によって、気の毒なことにあのひとたちはさらに不自由になってしまったらしい》

彼らは、「あの日」のことをそれぞれに回想する。あのパーティは一体何だったのか、そして照はなぜ死んだのか、それは事故だったのか、自殺だったのか、それとも殺人?

《どこからどこまでが本当なの? 私たち、それぞれまったく違うことを、本当のことだと思っているのかもしれないでしょう?》

《みんなが照を嫉んでいたにちがいない。みんな不自由だったが、照は自由だった。俺も彼女が嫉ましかった。でも、俺は殺していない。じゃあ、誰だ?》

《あの日、あのことをはじめたのは自分だった。ただ、はじめたときに悪意があった。悪意の正体は嫉妬だった》

悪意と嫉妬、自由と不自由――小さな染みがじわじわ広がり、みんなが少しずつその染みに侵されていく。そして「あの日」がやってきた。

感想・レビュー・書評

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  • むむむ、ちょっと今回は合わなかった・・・。
    井上さんの新作だけに楽しみにしていたんだけれど。
    仕方がない、井上さんは私のなかで評価の振り幅が広い作家さんだしな。

    シェアハウスに住んでいた照(ひかる)はある日裸で死んでいた。
    彼女の死は謎に包まれたまま。
    死後も彼女の魂は現世にとどまりシェアハウスの住人や彼女の関わった人々の元へ自由気ままに飛びまわる。
    生きている人々と死んだ照の視点それぞれから物語は動いて行く。

    一癖も二癖もあるような登場人物は井上さんならではなんだけれど、ファンタジーめいたというかミステリーというかそんな要素はどうなんだろう・・・。
    私には微妙でした。
    読み終わっても一体何だったんだ!という感じ。
    残念。

  • 四月の雪の日。あの夜、シェアハウスで開かれたパーティで、一体何があったのか?「樅木照はもう死んでいた」という衝撃的な一行からこの物語は始まる。しかも死んだはずの照の意識は今もなお空中を、住人たちの頭上を、「自由に」浮遊している。
    ----------------------------------

    Bハウスというシェアハウスの住人4人と、管理人の曳田陽一郎。住人の1人、樅木照が亡くなった。自殺なのか殺人なのか、住人同士の関係は?など、それぞれの目線と、死んだ照が空中から見ているもので物語が進んでゆく。イタリアンシェフ、自称俳優、ライター、銀行員と個性的な男女あり、それぞれがそれぞれを干渉したりしなかったり。
    誰が殺したのか?謎は解けるのか?と思って読み進めサラっと読めた。

  • シェアハウスで亡くなった照は、死んでいるけどそのへんを飛び回っている。
    勤務する銀行で金を横領する女性、いつも怒ってるイタリア料理のシェフ、たいした仕事もないくせに喋り続ける役者、毎朝赤い茶を入れ続ける女。シェアハウスには変なひとばかりだ。
    シェアハウスを管理する不動産屋の男もなんだか訳ありな様子。

    照は仕事として多くの男と寝ていて、亡くなる前日はシェアハウスで乱交パーティーを行う。
    赤い茶を入れ続ける女とイタリア料理のシェフは元夫婦だった。シェフと行為に及んだ照に嫉妬したのか、赤い茶の女は照の飲み物に薬を入れた。シェフは照が裸で寝ているのを見て見ぬふりをした。

    事実が明らかになっていく様子を、照も浮かびながら見ている。

    -----------------------------------------------

    シェアハウスの掃除ってどうなってるのかな、と思いながら読んだ。トイレとかお風呂はすぐに汚れるから掃除は必須なはず。このひとたちは掃除どうしてたんだろう。当番制なのかな。
    不動産屋の曳田さんがしょっちゅう出入りしていたみたいしだし、彼が掃除してたのかもしれない。

    掃除のことは置いておいて、物語としてはどうだったんだろう。
    おかしなひとが何人もでてきた。色んなことが明らかになったのは、シェフと赤いお茶のひとだけだった。ほかのひとの事情についてはあんまり掘り下げられなった。
    奇妙な役者、妹尾真人についてもっと知りたいような、知りたくないような、そんな気持ちだ。

  • 四月の雪の日。
    あの日、あたしは生き返らなかった。
    その夜、シェアハウスで開かれたパーティで、いったい何があったのか?
    悪意と嫉妬、自由と不自由―小さな染みがじわじわ広がり、住人たちは少しずつ侵されていく。
    (アマゾンより引用)

  • 死者が語り手だから、ずっと死の気配が漂っていて不思議で暗い雰囲気。
    誰が殺したのかというミステリー要素も少しはあるけど、どちらかというとシェアハウスに住んでいる人たちの生きづらさのようなものが描かれている。
    みんな拗らせてる。

  • どうしようもなく、
    救いがないってこと、ある。

  • シェアハウスに住む4人の男女の悪意と嫉妬が入り混じった夜の出来事。

    4月の雪の夜に、パーティーをしようと提案してきた樅木照は死んだ。

    売れない俳優の妹尾真人。
    銀行員の鹿島葉子。
    フリーライターの碇みゆき。
    料理人の桜木竜二。

    彼らが住むシェアハウスを管理する不動産屋に揚一郎。

    ヌードモデルと体を売ることをして生活していた照は、掴みどころがなくていつも死んでいるように生きていた。

    いつも死んでいるようなものだったから、
    生きていることに苦労しているシェアハウスの住人たちが羨ましく、そして同時に憎たらしくて
    あの夜に照は乱交パーティーをしようと提案した。

    本当は元夫婦だったみゆきと竜二。
    自分の性に不器用だった葉子とお調子者の真人。

    あの夜を堺にギクシャクしだした彼らだったけれど
    照の死後もそれぞれの生き方で生活を続けていった。

    みゆきに薬を飲まされて、竜二に見てみぬふりをされて
    裸のまま雪の上で死んだ照だけが、
    ただ自分の死を後悔した。

    死んだら終わりだ。その時が来るまで、生きることに執着する。

  • シェアハウスでのお話し
    誰より自由で何にも執着しない彼女は本当にそうだったの?

  • 話がとっ散らかっていて読みにくかった。
    特に照視点の話が、ずっとそれいる?って感じで全体のテンポを崩していた気がする。そういうキャラクターだからわざと?

  • しんみりする。『だって冬は寒かっただろう?』『それに夜は暗かっただろう?』寂しかったんだろうな。
    秘密が必要になるのも、そのせいなのかもしれない。
    黙っているままでは駄目なことがあって、でも気づかないまま、その枷を外してくれる誰かをみんな無意識に待っている。
    『平気でいるには、平気でいよう、と決めさえすればいいのだ。』そう思える人間も思えない人間も、じつは互いに相手を羨んでいる。
    最初から最後まで心に突き刺さる内容だった。
    霊になって、ふよふよと漂う主人公の姿が儚く、時折とてもチャーミング。

  • 始まりから女の子が死んでいて、その子の目線で語られる。変わった設定で時間も視点も行ったり来たりの構成で面白いんだが、ミステリーではなく荒野さん定番の人が生きてく難しさを描いていた。

    微妙なバランスで成り立っているシェアハウスの住人達がひとりのバランスが悪い女の子のせいでどんどん堕ちてゆく。
    腐った蜜柑理論。

    死んでしまった子が死にたくなかった、どう生きるべきか気づいてももう手遅れ。
    おざなりや捨て鉢に生きるのを選んでいるふりをしてても虚しいばかり。やはり真面目に生きなくてはね。

  • シェアハウスで変死した照が幽霊になって色んな人について回る。シェアハウスの人もみんなおかしい。元夫婦なのにシェアハウスで暮らしたり…横領したり…とにかく壊れてる。というより井上荒野の本に出てくる人ってどこかしら壊れてる。ラストでは死にたくなかったと切に願うところがよかった。

  • 死者というものは生者のために相対するものとして在るのだとしたら、死者視点の独白というのはひどく奇妙だなあと。
    死んだあとも生きるというのは、哀しいし、やはりそれは蛇足なのだ。

  • すっきりしない後味を残し、主人公・照の涙で終結。自分の人生に100%満足している人間なんて早々いないんだろうということを思わされる本でした。誰しもが誰かに嫉妬心を燃やし憎しみをもって見えない何かに捉われているなぁと。最後に照が死んでいるように生きていたことを後悔することによってさらに報われない感じに。表紙は照かな?

  • わたしは厭だ。


    死んでるように生きるんじゃなく
    生きてるように生きたい。

    死にたくっても悔しくって死ねやしない。

  • 井上荒野は人間のドロドロした部分を書くのがうまいなぁ。はっきり言って登場人物誰にも共感は出来ない。照が死んだのも結局自業自得でしょって思っちゃう。

  • シェアハウスの住む樅木照は、死後も魂はこの世を彷徨う。自由奔放に自堕落に生きた娘は、住人との乱交パーティーの末に、亡くなったことがわかる。住人たちの嫉妬と悪意が、彼女に死をもたらしたのか?

  • 人間って怖ーっ((((;゚Д゚)))))))という気持ちにさせられた。なんつうか…人間関係が病んでて恐ろしい。でも実際こんなもんかも❓

  • 「生きることは淋しいに似ている」死んでも尚シェアハウスや不動産の食品曳田に寄り添うように見守る主人公照(ひかる)のつぶやいたひと言が身に染みた。

  • +++
    あの日、あたしは生き返らなかった――。
    シェアハウス〈Bハウス〉には五人の住人がいる。樅木照(ヌードモデルをしながら体を売っている)、桜井竜二(イタリアン・レストランのオーナー・シェフ)、妹尾真人(売れない俳優)、碇みゆき(フリーライター)、鹿島葉子(銀行員)、それにハウスを管理する不動産屋の青年・曳田揚一郎。
    照の謎の死が、それぞれの人物に新しい光と影を投げかける。照はその死後も彼らの頭上を浮遊している。
    +++

    樅木照(もみのきひかる)の目を通して語られる物語なのだが、当の照はすでに死んでいる。Bハウスという凝っているのか投げやりなのか判らない名前のシェアハウスの住人たちに何があったのか。あのパーティーの日に。そしてそれまでの日々に。照が生き返らなかったあのパーティーの日からの日々は、Bハウスの住人たちにとって、それまでとは全く別のものになった。照から解放されたようでいて、がんじがらめに絡めとられているような。そして照自身さえ恨んでいるのか妬んでいるのか、心残りがあるのか、どうなりたいのかわかっていないように見える。ミステリのような心理劇のような一冊である。

  • ラストは、結構よかったけど、全体的には好きではないし、あの感じの主人公は苦手。

  • 発想がかなり独特。
    乱交パーティーの末に元妻に恨まれて薬を飲まされ、雪の中に全裸で寝ていて死んだ、なんて頭おかしいし。

    誰にも同情も共感もできないまま、シェアハウスの住人同士の関係性がわかりかけてきたところで終わった…

  • 冒頭から主人公が死んでる。幽霊。
    でも、ホラーっ気は全くなし。
    全体的に良い雰囲気だが、何も解決せず終了?

  • 「虫のような」女で「食べると空腹になる特殊な食べものみたいな」女が、雪の日に全裸で死んだ。
    なんなんだ。いったい何があったんだ。
    死んだはずの女がふわふわと浮かびながら自分の死んだあと、まだ生きている自分とかかわりのあった人たちを見ている。
    その日、そこで何があったのかが明らかになっていくのだけど、何があって彼女が死んだか、それはそれでどうでもいいことのように思えて来る。
    生きているときの無関心さも、死んでからの異様な生々しさも、きっとそれも彼女にとってはどうでもいいことだったのだろう。

  • 死んだ照(ひかる)を巡るシェアハウス同居人たち。奇妙な味わい。

  • いつもとは一味違い、ややミステリー風。が、誰もが根本的にひとり、という描き方はやっぱり著者らしいといえるか。

  • なんだー、これ?
    死んだ後もその場に残ってしまうのはちょっとイヤだな。
    ただ、他人の生活が覗き見できると考えると、生きてるときにはできなかったことができるのだからアリ!?
    シェアハウスって人との距離の取り方が難しそう。

  • 樅木照は雪の上であっけなく死んだ。
    その後は、フワフワと自由に飛び回ることができた。
    照が住んでいたシェアハウスの住人たちは
    彼女のことを考えない日はなかった。
    照と住人の間に何があったのか。
    読み終えて、悲しくて淋しくて、少しだけ優しい気持ちになれた。

  • シェアハウスの庭で、雪の日に裸で横たわって死んでいた樅木照。
    死んでいるように生きていた彼女が幽霊なのか霊魂なのかとにかく「死者」となって、生前暮らしていたシェアハウスの住人たちや不動産会社の男たちのまわりをうろつきながら、その日常や秘められた影を知っていく物語だ。
    井上荒野らしいざらざらした人物描写やゆがんだ人間関係、やたらにおいしそうな料理たちが混沌として出来上がる不思議な世界だった。

  • 2014 10/7

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著者プロフィール

井上荒野
一九六一年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。八九年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。二〇〇四年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、〇八年『切羽へ』で第一三九回直木賞、一一年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞、一六年『赤へ』で第二九回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に『もう切るわ』『誰よりも美しい妻』『キャベツ炒めに捧ぐ』『結婚』『それを愛とまちがえるから』『悪い恋人』『ママがやった』『あちらにいる鬼』『よその島』など多数。

「2023年 『よその島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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