- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863926
作品紹介・あらすじ
西加奈子さんの「サラバ!」は筆者の半生を元に書かれた長編小説です。
第152回直木賞を受賞した本作は、主人公である歩(あゆむ)が家族が抱える問題や人間関係に揺さぶられ、他者との関係のなかで揺らぎ、喜怒哀楽を重ねながら自分というものの存在を作るために歩んでいく、誰にとっても共感でき、そしてともに歩んでいく道標となる作品です。
感想・レビュー・書評
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R1.10.19 読了。
今橋(旧姓:圷)歩の出生時~高校生まで話。個性的な姉や母、背中に弁天様の刺青のある矢田のおばさん、夏枝おばさんや好美おばさん夫婦、おばあちゃんに囲まれた生活、イランやエジプト暮らし、謎の「サトラコヲモンサマ」なるものなどなど、西加奈子ワールド全開。
初めは読むのを挫折したくなるほどの退屈な展開に読破できるか不安だったが、エジプト暮らしのあたりから面白くなってきた。歩の母親が、エジプトから帰国してあらためて触れた日本とエジプトの生活のギャップに「なんやのこの国!」と怒りをあらわにしたシーンは思わず笑ってしまった。
下巻も気になる。
・「僕たちは早々に、教師は『教師』という生き物なのではなく、『教師になった人』なのだと知ることになった。」
・「今俺がおる世界以外にも、世界があるって思える。」
・「自分がしたいこととか思いに、嘘つかずにおるのって、難しいやろ。」 -
本を開いて読み始めると思うこと。
うわー。テンション高っ!
(力技で物語に)ずりずり引きずり込まれる、
ぐわんぐわん巻き込まれる。
アイデンティティーとは。
自分を形作るものとはと考え込む。
活きのいい魚を急に持たされたように、
どうしていいのかわからなくなる。
…結果やっぱり読書って体力いるわ、とぐったり。
それでも面白くて目が離せない。
圷家の息子、歩くん目線の物語。
受け入れ、諦めること。
それに抗いまくる母と貴子。抗わない父と歩。
どちらかというと抗って納得しない私。
歩が家族との生活の反動で惹かれる芯がある人々に、
私も憧れを抱いてしまいます。
母国ではない国で生活すること。
初めての国での母の「嘘やろ」「阿呆か」
帰ってきた日本での「嘘やろ」「阿呆か」
これだけは譲れないってものがいかに脆いものなのか。
価値観がそうなのであれば、
人間の素の部分なんてもっとですよね。
脆いから揺れるから人間なんでしょうけど、
どうしたら芯が通っていくのかを、
歩と一緒に探しています。
歩の「諦観」がどのようになるのか。
自ら引きずり込まれて下巻に進みたいと思います。 -
西加奈子さんの作品は、その特徴として淡々と語られていく文体。エッセイでは感情豊かで関西由来の笑い満載。そのギャップが面白いです。
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直木賞受賞作。
第152回、2014年下期。
エネルギッシュで、溢れんばかりの勢いがあります。
海外生活については、自伝的要素があるらしいですね。
語り手は、圷歩(あくつ あゆむ)という少年。
(両親の離婚後は今橋)
父の海外赴任にともなって、イランで生まれた。
イランに革命が起こったので急に帰国することになり、大阪へ。
穏やかな父、身奇麗で女らしい母。にぎやかなご近所や親戚達。
だが何よりも、姉・貴子が強烈なのだ‥
わがままで、扱いにくく、いつでもどこでも大声で泣き喚く。
人の注目を集めたがり、皆と同じでは気がすまないらしい。
そんな子にくたびれ果てた妻と娘の間で振り回され、やはり疲れていったのだろう父。
歩は、どちらにも関わらずにいようと決め、外でも目立たないように生きていく。
この姉はADHDとしか思えませんが。だからといって、どうなるわけでもなく、それぞれ個性があるわけですからね。
これほど迷惑かけて平気な子は好きになれないけど、まあ小さいうちだしねぇ。成長すると共に、意外な面も見せていきます。
小顔で美人な母に似ず、父に似た長い顔でごつごつと痩せていて、ある時期「ご神木」とあだ名されてしまうのは気の毒。
そりゃ、名づけるほうが性格悪い。
ある男の子とラブラブで有名になった時期もあるのだが‥
歩が小学校1年、姉が5年のときに、父の赴任でエジプトのカイロへ。
二人は、日本人学校に通うようになり、友達が出来ます。
海外赴任では経済的に余裕が出来るので、母は着飾って出かけるようになった。
歩には輝いて見えた母だったが、実は辛いことも起きていた。
歩は、ヤコブというエジプト人の少年に出会い、ほかの誰とも違う大人びた雰囲気にひかれ、親しくなる。
言葉も通じないのに表情や身振りで心を通わせていく。このくだりは美しいです。
ヤコブが気に入った日本語の挨拶が「サラバ!」だった。
歩にも友達が出来、ガールフレンドも出来るし、はっきり物を言うこともあって、自分でわざわざ露呈してるほどには自分を抑えてるだけの生活でもないですよね。
いろいろな要素が次々に出てきて、飽きずにどんどん読み進められます。
ただ、感情移入できるかというと、どの登場人物にもちょっと、しにくい。
そのへんが低い評価も出る理由かな?
もう少しだけ書き方を変えればたぶんもっと感情移入は出来るようになるんだけど、作者の狙いはどこか違う点にあるのかも。
どういう理由でこういう構成になっているのか‥?
下巻を読んでのお楽しみですね☆ -
ザッツ エンターテイメント という感じ。
間違っているかもしれないが、それが読み終えたときの最初の印象だ。
波乱万丈の人生、浮き沈みのある家族関係、人間関係。
下巻が楽しみだ。 -
誤って
24色入りクレヨンの箱を落としてしまった様な読後感。
西加奈さんの作品は
私のなかでとても色彩が豊か。
あくの強い女達に囲まれ
(静観)という処世術を身につけ
要領良く生きている主人公の歩が(白)だとしたら
存在感のない父親はグレー。
多彩な色を持つ煌びやかな母親に
ヒステリックな姉は黒、だが
同じ黒でも黒曜石の様に光を秘め持つ親友ヤコブもいる。
まだ上巻なので
散らばったクレヨンらが
一体どこに転がっていったのか。
拾い集めた時点で
24色だったクレヨンがどんな色に変化するのか。
まるで予想もつかないが
とにかく心はやる。
広範囲に転がっていった
クレヨンを
ひとつ、またひとつと発見してみれば
それは
ほのかに発光し始めているような…
あぁ~、下巻が楽しみ!-
『MISSLIM』のレビュー に”いいね”をいただき、ありがとうございました。<(_ _)>『MISSLIM』のレビュー に”いいね”をいただき、ありがとうございました。<(_ _)>2015/09/24
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冒頭───
僕はこの世界に、左足から登場した。
母の体外にそっと、本当にそっと左氏を突き出して、ついでおずおずと、右足を出したそうだ。両足を出してから速やかに全身を現すことはなかった。しばらくその状態でいたのは、おそらく、新しい空気との距離を、測っていたのだろう。医師が、僕の腹をしっかり掴んでから初めて、安心したように全身を現したのだそうだ。それから、ひくひくと体を震わせ、皆が心配する頃になってやっと、僕は泣き出したのだった。
とても僕らしい登場の仕方だと思う。
──────
僕の中学生時代、12クラス一学年600人もいた生徒の中で堂々と手を繋いで帰宅していたカップルは、覚えている限りたった一組だった。
告白したくてもできない、男同士でつるみながら「お前、誰が好きなんだ」とからかっているだけで楽しいと信じ込んでいる、勇気のない“ガキ”がほとんどだったのだ。
もちろん、向こう側のまだ経験したことのない“男女交際”という世界への願望が全くなかったと言えば嘘になる。
それでも、男同士の付き合いのほうが、皆の注目など浴びずに、気楽で楽しいと思っていたのは事実だったろう。
イランで産まれ、日本、エジプト、再び日本へ。
子供時代の歩は様々な環境の下で人生の航海を始める。
家族には、常人とはかけ離れた行動をし続ける姉。
いつまでも子供のようで、自己中心的な母。
その母に抗わず、ひっそりとおとなしい父親。
歩は姉を嫌い、何処にいても、どんな時でも、“自分を消す”という処世術の下で、上手く生きていこうとする。
幼稚園、小学校、中学校と大きくなってもその考えは変わらない。
その間、両親の離婚をも経て、歩は少しずつ成長していく。
ご神木と呼ばれ、引きこもり、サトラコヲモンサマにすがりつく姉。
エジプトでのヤコブとの出会い。
帰国し、高校生になり、須玖との出会い。
大学に入り、鴻上との出会い。
歩の人生に大きな影響を与える友たちとの出会いと別れを繰り返し、物語は進んでいく。 -
先日、「きりこについて」を読んですっかりファンになってしまった西加奈子さん。
もっと作品に触れたいという気持ちから、手始めに
直木賞受賞歴のある本作を手に取ってみました。
他人事のように淡々と書かれる文章。
かなりレアな体験をしているクセ強めのキャラクターたち。
にも関わらず、なぜかすごく身近な話に感じる不思議。
浮世離れしているような性格を持つ登場人物ひとりひとりにも、「なんだかすごくわかる」ポイントがたくさんあって、グッとくる。
ヤコブが後半に登場してきて、中巻に向けてぐっと面白くなっていくような雰囲気が出てきたので、とりあえず星3つ。早く続きが読みたいです。
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面白いとのウワサは知っていたけど、今までずっと読まずに積まれていた本。
なんとなく読み始めたら、面白いのってなんの!
一気に読みました。
その後、ヤコブとの話しはまた出てくるのかな?
下巻が楽しみです。
著者プロフィール
西加奈子の作品






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