サラバ! (上)

著者 :
  • 小学館
3.87
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本棚登録 : 10224
感想 : 766
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  • Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863926

作品紹介・あらすじ

西加奈子さんの「サラバ!」は筆者の半生を元に書かれた長編小説です。
第152回直木賞を受賞した本作は、主人公である歩(あゆむ)が家族が抱える問題や人間関係に揺さぶられ、他者との関係のなかで揺らぎ、喜怒哀楽を重ねながら自分というものの存在を作るために歩んでいく、誰にとっても共感でき、そしてともに歩んでいく道標となる作品です。

感想・レビュー・書評

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  • R1.10.19 読了。

     今橋(旧姓:圷)歩の出生時~高校生まで話。個性的な姉や母、背中に弁天様の刺青のある矢田のおばさん、夏枝おばさんや好美おばさん夫婦、おばあちゃんに囲まれた生活、イランやエジプト暮らし、謎の「サトラコヲモンサマ」なるものなどなど、西加奈子ワールド全開。
     初めは読むのを挫折したくなるほどの退屈な展開に読破できるか不安だったが、エジプト暮らしのあたりから面白くなってきた。歩の母親が、エジプトから帰国してあらためて触れた日本とエジプトの生活のギャップに「なんやのこの国!」と怒りをあらわにしたシーンは思わず笑ってしまった。
     下巻も気になる。

    ・「僕たちは早々に、教師は『教師』という生き物なのではなく、『教師になった人』なのだと知ることになった。」
    ・「今俺がおる世界以外にも、世界があるって思える。」
    ・「自分がしたいこととか思いに、嘘つかずにおるのって、難しいやろ。」

    • suguneruoさん
      感想に書いて頂いてる通り、序盤で挫折してしまってました(笑)
      とても参考になりました。
      再読してみます♪
      感想に書いて頂いてる通り、序盤で挫折してしまってました(笑)
      とても参考になりました。
      再読してみます♪
      2020/04/26
  • 親や兄弟は選べない。父、母、姉の性格が個性的ゆえに、それを受け入れる為の日々の苦労や葛藤が細やかに描かれている。親戚やご近所さんもインパクトが強くて笑える。また、海外での生活や貧富の差、友人との関わり方やその想いが、主人公の成長と共に描かれていて面白い。帰国後の中・高の生活も、男子目線がなかなか面白かった。下巻も楽しみ!

  • 本を開いて読み始めると思うこと。

    うわー。テンション高っ!
    (力技で物語に)ずりずり引きずり込まれる、
    ぐわんぐわん巻き込まれる。
    アイデンティティーとは。
    自分を形作るものとはと考え込む。

    活きのいい魚を急に持たされたように、
    どうしていいのかわからなくなる。
    …結果やっぱり読書って体力いるわ、とぐったり。

    それでも面白くて目が離せない。
    圷家の息子、歩くん目線の物語。

    受け入れ、諦めること。
    それに抗いまくる母と貴子。抗わない父と歩。
    どちらかというと抗って納得しない私。
    歩が家族との生活の反動で惹かれる芯がある人々に、
    私も憧れを抱いてしまいます。

    母国ではない国で生活すること。
    初めての国での母の「嘘やろ」「阿呆か」
    帰ってきた日本での「嘘やろ」「阿呆か」
    これだけは譲れないってものがいかに脆いものなのか。

    価値観がそうなのであれば、
    人間の素の部分なんてもっとですよね。
    脆いから揺れるから人間なんでしょうけど、
    どうしたら芯が通っていくのかを、
    歩と一緒に探しています。

    歩の「諦観」がどのようになるのか。
    自ら引きずり込まれて下巻に進みたいと思います。

  • エジプトについて全く知識がなかったので
    主人公、歩の一家同様、「いや、ちょっとエジプト無理かも(汗)」と、かなりカルチャーショックを受けた。
    例えば「喜捨」の文化だが、理解できなくてちょっとだけ調べた。
    イスラムでは孤児や貧困者に対して、温かいまなざしを持っており、経済的再分配の機能として喜んで施捨する思想があるらしい。
    しかし「喜捨」を教えてくれた父親さえ、それを対価として捉えているようなので日本人には戸惑いそうな行いだ。
    そんな了見が狭い自分でも読み進めていくうちにエジプトに慣れていき、反比例するように「歩の一家、シンドイ(汗)」と思えてきた。怒りと自己顕示欲の塊のような姉の厄介な日々が懐かしい。

    大人になると「何も考えずに過ごしていた子供の頃に戻りたい」と思うことがある。
    もう忘れてしまっているけど、あの頃は今よりもずっと繊細で色んなことにもっと敏感だったはずだ。
    クレヨンで人気投票とか、誰かを好きになる瞬間とか、そんな友達と気まずくなる瞬間とか
    大人には理解できなくなってしまった子供の世界や
    自分ではどうにもできないグチャグチャな感情の微妙な部分も言語化されていた。
    せつなくも甘い気持ちになった読後感だった。

  • 西加奈子さんの作品は、その特徴として淡々と語られていく文体。エッセイでは感情豊かで関西由来の笑い満載。そのギャップが面白いです。

  • 直木賞作品である事よりも、サラバ!という題名に魅かれた。なぜカタカナなんだろう。なぜビックリマークが付いているんだろう。気になる。

    圷(あくつ)歩は逆子で産まれた。産まれたのはテヘランで、家族は両親と破天荒な姉だった。
    家族のそれぞれの考えや生き方が描かれていて、家族とはなんだろうと考えさせられる作品だった。
    第1章は序章に過ぎない。圷家の人柄が歩の回想で叙述されている。この序章が今後の展開に重要な意味を持つのだ。

    日本人の多くにとっては稀有なシチュエーションだが、その状況がこの作品の幅を広げている。
    子どもの夢を打ち砕く子どもっぽい大人はタチが悪い。それが母である。暴れん坊の姉貴子とそれを見て育つ歩、父親と一緒の風呂の中でエジプト行きを告げられる。イランから帰国し次はエジプトでの生活だ。エジプトもイスラム教が9割を占め、国民性は細かい事を気にしない。日本では今話題の夫婦別姓だ。
    平穏そうな圷家に不穏な出来事が起こる。歩は卵絡みでヤコブと出会う。

    エジプトでの圷家のゆくすえは、どうなるのか?
    現地でできた友人のヤコブとの関係はどうなっていくのか?そして「サラバ!」の意味が最後にわかる。
    ひとつひとつの出来事が、意味を持っていて繋がっている構成の良さを感じさせられた作品だった。

  • 直木賞受賞作。
    第152回、2014年下期。
    エネルギッシュで、溢れんばかりの勢いがあります。
    海外生活については、自伝的要素があるらしいですね。

    語り手は、圷歩(あくつ あゆむ)という少年。
    (両親の離婚後は今橋)
    父の海外赴任にともなって、イランで生まれた。
    イランに革命が起こったので急に帰国することになり、大阪へ。
    穏やかな父、身奇麗で女らしい母。にぎやかなご近所や親戚達。
    だが何よりも、姉・貴子が強烈なのだ‥
    わがままで、扱いにくく、いつでもどこでも大声で泣き喚く。
    人の注目を集めたがり、皆と同じでは気がすまないらしい。
    そんな子にくたびれ果てた妻と娘の間で振り回され、やはり疲れていったのだろう父。
    歩は、どちらにも関わらずにいようと決め、外でも目立たないように生きていく。

    この姉はADHDとしか思えませんが。だからといって、どうなるわけでもなく、それぞれ個性があるわけですからね。
    これほど迷惑かけて平気な子は好きになれないけど、まあ小さいうちだしねぇ。成長すると共に、意外な面も見せていきます。
    小顔で美人な母に似ず、父に似た長い顔でごつごつと痩せていて、ある時期「ご神木」とあだ名されてしまうのは気の毒。
    そりゃ、名づけるほうが性格悪い。
    ある男の子とラブラブで有名になった時期もあるのだが‥

    歩が小学校1年、姉が5年のときに、父の赴任でエジプトのカイロへ。
    二人は、日本人学校に通うようになり、友達が出来ます。
    海外赴任では経済的に余裕が出来るので、母は着飾って出かけるようになった。
    歩には輝いて見えた母だったが、実は辛いことも起きていた。
    歩は、ヤコブというエジプト人の少年に出会い、ほかの誰とも違う大人びた雰囲気にひかれ、親しくなる。
    言葉も通じないのに表情や身振りで心を通わせていく。このくだりは美しいです。
    ヤコブが気に入った日本語の挨拶が「サラバ!」だった。

    歩にも友達が出来、ガールフレンドも出来るし、はっきり物を言うこともあって、自分でわざわざ露呈してるほどには自分を抑えてるだけの生活でもないですよね。
    いろいろな要素が次々に出てきて、飽きずにどんどん読み進められます。

    ただ、感情移入できるかというと、どの登場人物にもちょっと、しにくい。
    そのへんが低い評価も出る理由かな?
    もう少しだけ書き方を変えればたぶんもっと感情移入は出来るようになるんだけど、作者の狙いはどこか違う点にあるのかも。
    どういう理由でこういう構成になっているのか‥?
    下巻を読んでのお楽しみですね☆

  • 話題の本。上巻と下巻いっきに読みました。とても読みやすい物語ですが、最後の終わり方はちょっと哲学的。自分を信じること。言葉でいうと簡単に聞こえるが、人生で何を信じるかを見出すのは難しいテーマ。その時に最終的には自分でどう考えて、どう行動するか。
    モノ語りは一人の主人公の37年間の人生を通して、人生の尊さを描いている壮大なある意味冒険ストーリー。登場するキャラクターがどれもしっかり個性があり、強烈な印象が残る。特にキーパーソンのお姉さんはそのキャラクターがとにかくユニークで面白い。両親の離婚の裏に隠されたストーリーはなんとなく予想は出来るが、やはり人を好きになることで人生は大きく変わる。誰を大切にするか。
    色々考えさせられる一冊でもあった。

  • ひゃー。面白かったな。
    さすが直木賞受賞作。

    西加奈子さんの作品は初体験。
    物語に出てくる風景全部が、色や匂いまでもリアルに目の前に浮かび上がってくる感じがした。
    歩と一緒にイランで生まれて、日本で育ち、エジプトでヤコブと遊びまわり、女の子と付き合ったり、須玖くん(私のどタイプ男子)と仲良くなったり…まるで第二の人生を経験したような気分。
    ちょっと下ではどうなっちゃうんだろうな。
    サトラコヲモン様のことも、歩の家族のことも、須玖くんと歩がどうなっちゃうのかも、色々と気になりすぎるよ………そして私は須玖くんと付き合いたいよ…………(好きすぎ)

  • 思ってはいけないと自分で思い込んでいるが、自然と思ってしまうことは、多々あると思う。

    そういった自分の意思とは反する感情を丁寧に書かれた本であると思う。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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