- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093863933
感想・レビュー・書評
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R1.10.23 読了。
サトラコヲモンサマの正体、姉の奇行と世界をめぐっている間に見つけた大切なもの、父と母の離婚の理由、自分の身体に生じた変化への戸惑いなどなど、激動する展開に目が離せなくなり、一気読みしていた。自分とは?家族とは?それぞれの想いとは?を考えさせられた作品でした。すぐには消化できないかもしれない読後感。良い意味でやられた。
・「信じられるものなら、何でも良かった。あらゆる人の、たくさんの苦しみ。決して解決出来ないものもあったし、どうしても納得できない残酷な出来事もあった。きっとそういう人たちのために、信仰はあるのだろう。自分たち人間では、手に負えないこと。自分たちのせいにしていては、生きてゆけないこと。それを一身に背負う存在として、信仰は、そして宗教はあるのだろう。」
・「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない。」
・「自分だけが信じるものを見つけなさい。」
・「大切なのは、人が、ひとりひとり違うことを認めることだ。」
・「僕が生きていることを、生き続けてゆくことを、僕が信じているということだ。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文庫本3冊を読み終えて
現実は変わらなくても気持ちは変わる。歩は次第に幸福感を失って行くが、家族という集合体の中で、気持ち次第で世界を変えていくことができると西加奈子さんが訴えていると思うのである。
男女の違いはあるが、西加奈子さんは歩を通じて、人の人生は気持ちの持ち方で随分変わることが伝わってきた。
ネットでの拡散はウイルスに例えられるケースが多いが、ここでは「イナゴの集団」、昭和のレトロな感じが出ている。
御神木は崩壊の呪文、全巻を通して、この呪文により場面が変わる。しかし、しかしだ、御神木は御神木であって、御神木ではなくなったことに、戸惑いを感じた。
そして家族のひとりひとりの思いを歩が知ることになる。家族や友人との関係は必ずしも形式や言葉ではわからない。それぞれが心の中に想い描いている事が、見事に描写された作品だった。サラバ! -
ある家族の再生の物語。そもそも再生なのか?
みんな何かを探してもがいている。幸せなのは時間の流れの中でも大切な人達が誰も離れていかなかったこと。それこそ「サラバ」なのじゃないか。 -
飄々としている外面の下で周囲の動向を感じやすい少年の、少しエキセントリックな家族、そして友人との日常を描く。
情景描写は控えめで、ひたすら「僕」の思いを滔々と綴る。
『i』もそうだったが徹底した一人称の視点。
上巻は、他人が読んでも退屈しない日記といえるかもしれない。
下巻…「僕」は青年から大人になる。
いつも受け身で生きてきた「僕」。
容姿の衰えをきっかけに、加速度的に、冴えない毎日と、こんなはずじゃなかったという思いを強くしていく。
物語の終盤、「僕」は自分が連綿と続くこの世界の流れ(ナイル川が象徴)に生きるひとつの「化け物」なんだと気づく。そしてそれを誰かに知らしめたいと思うに至る。
「僕」は受け身ではなく、積極的に僕を知ってもらいたいと思う。こうして書くことを決意する。
「日記」は「物語」になった。
生きることは物語を語ること。
『サラバ!』は文学そのものを提示する作品だった。 -
初めて読んだ西加奈子さん。
面白かった。
主人公は男だけど書いてるのが女性作家だからかな、ものすごく理解できることが多かった。
なぜ今まで読まなかったのか後悔。
他の作品も読もう。 -
歩はときどき私と同じで、人に依存し過ぎていたり、ひとつになりたいと思ってしまったり、受動的だったり、人の評価を気にしたりする。
自分から、嫌な気持ちにさせる一言を言ってしまったり、気持ちは分かる。というシーンもあった。
初めは面白く描かれている小説だと思って読み進めていたら、生き方、をこの本に見つけた気がした。
他人の幸せは決められない。その人にはその人の幸せがある。
大切なのは、人が、ひとりひとり違うことを認めることだ。
「僕とヤコブは、大きく隔てられている。」
自分のことは自分で決める。と言うよりも、
「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」
と言われる方が、自分の中に入ってくる。
私の信じるもの。 -
上巻は冗長に感じたが、
下巻の後半以降は物語に強く引き込まれた