でんでら国

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093863995

作品紹介・あらすじ

姥捨山のその奥に老人達の桃源郷があった

時は幕末、陸奥国の八戸藩と南部藩に挟まれた二万石の小さな国、外館藩西根通大平村が舞台。大平村には、60才になると全ての役割を解かれ、御山参りをする習わしがあった。御山参りと言えば聞こえはいいが、それは大平村へ戻れない片道の旅。食い扶持を減らす為の村の掟であったのだ。
ある日、代官所は、そんな大平村が、飢饉の年でも年貢をきちんと納めることを怪しく思う。姥捨山に老人を捨てているからだという噂もあるが、それでも老人を減らすだけで、重い年貢を納めることができるものかといぶかしむ。そこで代官所がたどり着いた答えは、「大平村は隠田を開墾しているのではないか」という疑惑だった。隠田を持っていることは、死罪にあたる時代、果たして真相やいかに・・・?代官と農民の知恵比べ。幕末老人痛快エンタテインメント!

【編集担当からのおすすめ情報】
原稿を最初読んだとき、あまりの面白さにページをめくる手が止まりませんでした。今、まさに見直したい「老人力」。老人達の知恵と勇気が詰まった、この小説を読むと、年を重ねる楽しさが伝わってきます。高齢化社会に突入した日本へ、たくさんのヒントが詰まった物語です。

感想・レビュー・書評

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  • お百姓さんとお侍の仁義なき戦い
    いつの時代もお上は勝手なもんですよね
    江戸時代は日本が初めて経験した高齢化社会というし、今こそ国営でんでら国が必要なのでは日本?!

  • 姥捨て山?と、一瞬思ってしまいそうな内容かと、思ってたのだが、・・・

    幕末の老人のそれも農民たちの知恵と、行動力の凄さを物語る話である。

    日本の高齢者も、このようになって行くのだろうか?
    陸奥の国、八戸藩と南部藩の間の小さな国(?)を舞台に、農民と代官所の侍との ユニークかつ、知恵の絞り合いの様子が、記載されている。

    飢饉、飢餓が、起こっても年貢を納めないといけない農民たち。
    子供を間引き、それとも老人を姥捨て山に、・・・どうする?
    年貢を飢饉の年でも、年貢米をきちんと納める。そして、60歳以上の老人が、お伊勢参りで、行方不明という不可思議な村を見つけた代官から、調査を依頼された舟越平太郎。

    でんでら国に住む善兵衛たちの攻防戦が、何故か逞しく感じられる。
    この当時で、60歳は、もう老人の域を越しているだろうけど、皆元気。
    読んんでいて、相手がこう先駆けて来たら、どう受け止めて対抗するのだろうか?と、思いながら、楽しみながら読み進む。
    途中で、舟越平四郎の父親の認知症の様子も導入されて、武士の場合は、屋敷牢だったのだろうか?なんて考えながら、まだ、そこまで現実味のない様子だけど、・・・少しずつ自分の息子も理解できないでいるように描かれている。

    平四郎が、足を骨折し、それで、でんでら国へ連れて行き、手当してもらい養生する間、このでんでら国が桃源郷のように思われる風景に、持ちつ持たれつの精神が伺われる。
    介護出来るものが、介護し、そして、食べ物を作る元気な者は、外で、農作をし、家に居るものは、家事をする。
    昔、当たり前の様だった昭和の時代と変わらないのでは・・・と、思いながら、読み進む。

    最後の方に、渡り狼獲の小五郎戸、野狗手の鰍の言論っが、今の時代の事に思える、
    「生きるために殺生は許される。・・・・美味いものが悔いた、今より少しは楽な暮らしがしたい。その為に・・・商人、侍も同様だ。己に降りかかる不孝以外は、他人事なのだ。・・・」
    この文章は、意味が、深い。

    他人事と、思っていても、自分たちに降りかかって来ること。
    老いも、いずれは、自分たちも たどり着く道。
    平太郎の親への思いも、素晴らしく書かれており、老いて呆けた父親を ただ捨てるのではなく、その恩を命を差し出しても良いという念もいい。

    本当に知恵のよせ集まりのような話を楽しく読んでしまった。

    でも最近思うのだけど、先日、「三千円の使い方」もこのような本の装丁だったけど、本が、開きにくく、読むのに、両手で持ちながら出ないと、読めないのが、私には、難点であった。

  • 飢饉でも子供を間引かない代わりに、60歳になると棄老する、という噂の大平村。
    そこには隠田がある、とにらんだ代官は、平太郎にその調査を命じる。

    幕末の陸奥国を舞台にしたエンターテイメント時代小説。

    年貢を搾り取るくせに、飢饉でも農民を救わない侍。
    その矛盾と、寒冷地の農民の苦しい実情を描いているものの、作品全体のトーンは明るい。

    隠田を探そうとする侍と、秘密を守ろうとする農民の攻防戦が、コミカルなタッチで進む。
    弱った、衰えたはずの老人たちが活躍する姿は、痛快。

  •  姥捨山をテーマにした時代小説。江戸時代、東北の小さな藩の田舎の村に姥捨山があり、農民たちがそこで暮らしているという設定。武士の農民のそれぞれの生き方、高齢者の扱い方など、現代社会の問題にもつながるようなテーマが描かれる。後半は若干冗長な感じがないでもなかったが、でも割と面白かった。

  • 大平村では、60歳になると全ての役割を解かれ、爺婆がお山参りをする習わしがある。近隣の村人は、それを姥捨・棄老といい、忌み嫌う

    だが、その実際は、「でんでら国」という老人だけの村を作り、過去の執着から解き放たれた爺婆は、元気に野良仕事をこなし、お互い助け合い生き生きとした毎日を過ごしていた

    水色の空を映す田の周りには、つつじの橙色、藤と桐畑の薄紫色、菜花の黄色の色とりどりの花が咲き乱れ、桃源郷を描いた一幅の絵のよう

    しがし、代官所は、どんな飢饉の年もきちんと年貢を納める大平村を怪しみ「隠田」を開墾しているのではないかと調査に入る

    代官所と老人たちとの知恵比べが、めちゃくちゃおもしろい
    お互い、してやったり!、くそっ、今に見ておれとほくそ笑む
    爺婆たちは、白装束の亡魂・物の怪に扮して脅かすは、狼や熊に襲わせるは、手を変え品を変え武士を翻弄する

    方や火縄銃・火矢に対して、老人は懐に隠した野うさぎを放したり、熊や鹿の糞を投げつけたり、水鉄砲で陣の焚き火や松明の火を消すなど、なかなかの健闘ぶり、チームワークやフットワークも老人とは思えない

    老人の知恵者(リーダー)善兵衛が、調査に入った別段廻役の平太郎に言い放った言葉が的を射ている

    検地も年貢も武家の勝手でやっていることではないか。百姓に養ってもらっているくせにでかい面をするな。

    世の中は勤皇だ佐幕だとかまびすしい。その前後、侍は民百姓のことなど忘れて、新しい世での己の身の置き場所ばかり考え奔走する。侍と侍が戦うのだから、勝つのは侍。百姓が安心して暮らせる世など永劫に訪れぬ。だから大平村にはでんでら国が必要なのだ

    権力に屈することなく、自分たちで知恵を出し合い、より良く生き延びるすべを考え出した農民のしたたかさ、たくましさに拍手を送りたい

    さらに、老いを嘆くのでなく、執着を捨て自分たちの辿る道を見極めその中で楽しく暮らしていく老人たちの姿に潔さと清々しささえ感じた






  • 「でんでら国の爺婆たちは、生き生きと生き、生き生きと死んでいく」
    大平村では60歳に達すると、男も女も誰もが生まれ育った村を離れ「でんでら国」へ旅立つ。
    それまで背負ってきた重圧を全て降ろし、晴れてのびのびと余生を楽しく生きるために。
    「周りに若い者がいると、その眩しさに己の辿る道を見失う。周りが爺婆だけだと、己の辿る道がよく見える。明日は我が身という言葉を身に染みて感じ取れるのだ」

    幕末の、勤皇だの佐幕だのと侍同士が争う混沌とした世の中。
    どちらが勝っても結局は侍が政を牛耳ることとなり、百姓は理不尽な思いが晴らされることはない。
    どんな政になっても、百姓が安心して暮らせるように創り守られてきた「でんでら国」。
    この考え方は現代の混迷している政にも当てはまり、高齢者社会の手本になり得ると思った。

    幾つになっても世間の柵や重圧が無くならない現代社会。
    人は幾つになればそれらから解放されるのだろうか。
    いつも軽やかで朗らかな「でんでら国」の爺婆たちは羨ましい限り。
    こんな桃源郷が身近にあれば誰しも歳をとることを恐れず、余生を楽しみに待つに違いない。
    けれど。
    「でんでら国に入りたくば、自らの手で作ることだ」
    ラストの言葉は現代を生きる我々へ向けた忠告だ。
    桃源郷「でんでら国」は探し求める場ではない。
    自分の手で作り上げなければ意味はないのだ。

  • 2018.5.19完了
    読みやすい、話も分かりやすい。
    ハズレではない。
    ただ登場人物が把握しきれなかった。
    似たような名が多い。少々困惑。

  • 昔も今も年寄り問題は大変

  • いい!私のツボガッツリ押すタイプ( ´艸`)
    私も年をとったら、でんでら国に入国したい

  • 幕末老人エンタテインメントとある
    深刻な問題をはらんでいるのに痛快で楽しめた
    老人たちの桃源郷
    厳しい現実を闘いつつ
    ≪ 百姓の 気概をみせて 姥捨ての ≫

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著者プロフィール

1960年、岩手県生まれ。大阪芸術大学芸術学部を卒業後、2000年に『エンデュミオン エンデュミオン』(ハルキ・ノベルス)でデビュー。『エリ・エリ』(ハルキ文庫)で、第1回小松左京賞を受賞。14年には「風の王国」シリーズ(ハルキ時代小説文庫)で、第3回歴史時代作家クラブ賞・シリーズ賞を受賞。「採薬使佐平次」シリーズ、「江戸城 御掃除之者!」シリーズ、「よこやり清左衛門」シリーズ(ともに角川文庫)や「草紙屋薬楽堂ふしぎ始末」シリーズ(だいわ文庫)、など、多岐にわたるジャンルにて活躍している。

「2023年 『大一揆』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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