ヒトリコ

著者 :
  • 小学館
3.77
  • (25)
  • (79)
  • (50)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 484
レビュー : 83
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864176

作品紹介・あらすじ

小学館文庫小説賞松本清張賞W受賞の快挙!

深作日都子は小学5年生の時、教師から金魚を殺した濡れ衣を着せられ、熾烈ないじめの対象となった。そのときから日都子は、誰にも心を閉ざし、「みんな」には加わらない「ヒトリコ」として生きていく決心をする。
田舎の小学校の生徒達はそのまま中学校へ持ち上がる。ヒトリコの心の支えは、ピアノとピアノを教えてくれる偏屈なキューばあちゃんだけ。合唱の盛んな中学では生徒の間にカースト制度が生まれ、激しいいじめや陰口が横行する。「みんな」に属している限り生徒間の闘いは続く・・・。
地元の高校の入学式。小5で転校した冬希の姿がそこにあった。モンスターペアレントの母親との暮らしに疲れ切った冬希は、母親を棄て、父親の地元に戻ってきたのだった。何も変わらぬ故郷、仲間。ただ、一人だけ全く変わってしまった日都子の姿に冬希は驚く。そしてその原因が自分が飼い、置いてきた金魚と知り・・・。
誰もの心に突き刺さる、青春の残酷さ、閉塞感・・・・・・。絶望的な孤独の末に見えてくるうっすらとした光。必ず誰もの心の奥の奥に入り込み、内側からあなたの心を揺さぶる、苦くて新しい青春小説です。

【編集担当からのおすすめ情報】
全くの新人作家の方がほぼ同時期に2つの新人発掘の大賞を受賞することは、いまだかつてないことです。最終候補作に残っている、という連絡は奇しくも同じ日だったとのこと。2015年4月頭に第16回小学館文庫小説賞受賞決定、その直後に第22回松本清張賞も受賞。
これを記念して出版社の枠を飛び越え、二つの受賞作品をダブルデビュー作として刊行することになりました。この彗星のように現れた新しい才能のきらめきを、是非お確かめください。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 深作日都子は小学5年生の時、担任の女性教師から
    金魚を殺した濡れ衣を着せられ、クラスメイトから苛められるようになった。
    その時から、日都子はいつも一人で誰にも相手にされない。
    誰とも関わろうとしない。「ヒトリコ」として生きていく事を決意するー。
    時が経ち高校に進学した彼女達のもとに、いじめの原因となった
    金魚を置いて転校した冬希が戻って来るー。

    ヒステリックな教師の決めつけで、苛められ小学5年生で「ヒトリコ」として
    生きて行く決心をし、それを貫く日都子の強さや覚悟が凄い。
    あの年齢の女の子にとって、一人で居る事ってとっても辛い状況のはずなのに、
    辛さを感じさせない。背筋を真っ直ぐに伸ばし凛としている。
    でも平気なんかじゃなかった…。脆さも描かれてるのが良かった。
    中学の部活から逃れる為に習い始めたピアノ。
    ピアノの先生・キュー婆ちゃんが居て本当に良かった。
    そして、お母さんの理解も。
    担任のヒス柳には怒りしか湧かなかった。
    こんな人が先生で居て良いはずない。
    苛めた側の嘉穂の気持ちも丁寧に描かれている。
    ほんの少しのズレが大きく大きくなっていった…。
    嘉穂や智代や美香子…女の子の嫌な姿をこれでもかって位描いてる。
    こんな女の子達大っ嫌い!
    この年齢の頃にこんなに暗い感情に支配されていなかったなぁ…。
    そして、日都子が彼女達に投げつける言葉が的確でスカッとしました。

    冬希もモンスターペアレントの母親の存在に悩み
    窮屈な学校生活を送ってきていた。
    それなのに、母との繋がりを絶てずにいる。
    全く変化のない故郷で、一人だけ全く変わってしまった日都子の姿に驚き、
    自分の残した金魚が原因だと胸を痛める。
    「関わらなくてもいい人とは、関わらない」と、言い切る日都子の姿が眩しい。

    頑なに心を閉ざしてた日都子が、冬希のお蔭で
    他人と交流し、少しずつ少しずつ変わっていく様子は、
    これから先の日都子の未来を明るく感じさせてくれて
    心がじんわり温かくなりました。

    「もし金魚が死ななかったら、私は多分すごく嫌な奴になったと思う」
    こう言える日都子が素晴らしいって思ったし、印象的でした。

  •  「ヒトリコ」日都子は読み終わって、凄く強い女の子だったんだと、実感しました。
     普通だったら、金魚を殺した犯人にされた時点で、登校拒否か自殺していると思う。
    それを、『関わらなくてもいい人とは、関わらない』と完璧に割り切って、学校生活を送っていく。
     それには、キュー婆ちゃんの存在がとっても大きかったのもある。
     キュー婆ちゃんに教わったピアノが心の支えとなって、冬希君が戻ってきたことも重なり、日都子の周りが元に戻っていく希望の見えるラストも良かった。
     日都子をいじめている、友達だった嘉穂にも彼女の中のコンプレックスと嫉妬があり、冬希にも母親という大きな存在を消してしまいたいくらい酷い干渉があった。
     みんないろいろな悩みを抱えて生きている。
    自分もいろいろな悩みがあるけど、前を向いて生きて行きたいと思う。

  • 理不尽で、ほんとに理不尽で、でも人間ってそう。嫉妬するし、贔屓するし、みっともない。「みんな」の中で清々しいほどに凛としたヒトリコはかっこいい。そして何より、各々影を抱えた登場人物全員がちゃんと人間だった。血が通っていた。ああ、青春だなあ。ほろ苦い。でも、ちゃんと道筋は照らされた。すきです。

  • ああ、小説ってこういうのだったよね。エンタメやミステリー、SFにラノベと乱読しているしもちろんそれらは面白いのだけど、こういう純文学に通じる作品を読むと、ホームに帰ってきた安心感がある。重厚さにこそ欠けるが丁寧な表現で、きっちり心を抉ってくる。キャラ性や展開や構成に目新しさはないが、茨城の集落の情景や、小さいコミュニティにおける心象を、これまた丁寧に(あえて言うなら丁寧過ぎる程に)書いていて、誰もが少年少女時代に抱えた心の痣を、どの立場かはそれぞれだが思い浮かべるかもしれない。記憶を掘り起こされる一作。

    余談だけど。筆者はワシの大学の、同じ文芸学科で、卒業間もないらしい(から、会ったことはもちろんないけど)。そう、ワシの同期もそうだけど、やはり学年に何人かはこのクオリティで書ける人がいるんだよな……そこから大成するかには運も絡んでくるけど。引き続き、勝手に応援したい作家さん。

  •  「大丈夫。ほどほどに頑張るから」
     表紙の折り返しに書かれたそんな言葉。
     ヒトリコはひとりで生きる子だ。胸を張り前を向いていきる。

     個人的に主人公が追いつめられる系の本は苦手なんだけれども(読んでいて辛くなるから)、これは作家さんを信じて読み進められた。屋上のウインドノーツもそうだけれども、音楽が重要なモチーフになっているなぁと。
     怪獣のバラードが聞きたくなる。


     しかし、個人的にはなぜ彼女があそこまで強く在れたのか、それは少しわからなかったりする。ヒトリコにとって少々都合がよすぎるような気もしないでもない。

  • 一人でいることが平気なヒトリコ。
    小学生時代の、ある出来事がきっかけで、日都子はヒトリコとなる。
    茨城県の田舎町。ヒトリコととのクラスメートたちが、小学生から高校生になるまでの、心の中の物語。
    すごく嫌な描写や、暗い場面も多いけど、読後感はそんなに悪くない。
    すごく暗いところを歩いてくると、ほんの少しの明かりでも、とても明るく感じられるように。
    屋上のウインドノーツの明るさとは少し違ったけど、これも青春小説。

  • 今の子たちってこんなごたごたの中でいきてるんだろうか。
    気にしないで凛と生きなというのは無茶なことなのかな。

    自分もくらーい時代を思い出して、心がきゅーーーっとなってしまた。
    合唱曲の、怪獣のバラードと信じるを聞きたくなってきいた。そのあとは流れで証もきいた。

  • クラス全員から無視されるいじめのターゲットになってしまった日都子に、付けられたあだ名が『ヒトリコ』。
    物語の始めは小学生だった子供たちが、それぞれに成長していく経過が、日都子と、同級生3人それぞれの視点から語られる。

    子供たちはもちろん、教師も親もストレスでいっぱい…だけどそれが、どれもすぐそこにありそうで、今の子供達のリアルを感じさせる。

    他人を拒んで孤高を保つ事で自衛することも、実の母を切り離して自立することも、初恋を終わらせる事で子供時代を終わらせることも、その時その時の彼らの選択が鮮烈。
    最後に、受容すること、赦すことで、より自由で晴れやかなあしたを予感させて、読後感が良い。

  • 『ヒトリコ』になる前の日都子と『ヒトリコ』になってからの日都子は、自分のことしか考えなかった子供から周りの人々を見ることが出来る少女へと変わった。
    それでも相手にズバリと痛いところを突いてしまうところが日都子なんだけど。
    嘉穂の方が正直で理解出来た。好感度は低いけれど。
    特に冬希、あんなエキセントリックな母親に育てられながらもこんな好少年によく成長してくれたなと感心。
    『ヒトリコ』の日都子、『ヒトリコ』にしてしまったきっかけの元同級生たち、それぞれの成長が苦く切なく爽やかに描いてあって、粗削りなもののインパクト大な良い作品だった。

  • 小学生のときのある事件をきっかけに「関わらなくてもいい人とは、関わらない」を信条に、たったひとりで生きてきたヒトリコ、深作日都子。

    彼女が負った傷は深く深く心に根を張り、彼女の感情を養分として、四年間の間に彼女を飲み込むほど肥大していた。そうなるとその傷はもう癒しようがない。彼女が救われる方法、それは誰かが無理に張った根をこじ開け、彼女が自ら外に出る道を作ることだけ。

    傷つくことと、人を傷つけること、そのどちらかを選べと言われたら、わたしは一体どちらを選ぶのだろう。その場面が来ないと分からないが、日都子は後者を選択させられた人生を、良かったと感じている。誰かを傷つけ、それすらも無関心な自分でいるよりは、誰にも関わらないことで誰も傷つけず、自分だけが傷つく生き方。日都子はとてもかっこいい。

全83件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

額賀 澪(ぬかが みお)
1990年生まれ、茨城県行方市出身の小説家。日本大学藝術学部文芸学科卒業。2015年『屋上のウインドノーツ』で第22回松本清張賞、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞。2016年刊行の『タスキメシ』は第62回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書に選出され、さわや書店の「さわベス」第2位を獲得。
小説を記す一方、自らの来歴を紹介しつつ、自著を増売するための方法を求めるルポ『拝啓、本が売れません』も刊行している。
ほか、『さよならクリームソーダ』『君はレフティ』『潮風エスケープ』『ウズタマ』『完パケ!』など。近刊に『風に恋う』。

ヒトリコのその他の作品

ヒトリコ Kindle版 ヒトリコ 額賀澪

額賀澪の作品

ヒトリコを本棚に登録しているひと

ツイートする