- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864282
作品紹介・あらすじ
駅伝×料理男子。熱涙間違いなしの青春小説
陸上の名門高校で長距離選手として将来を期待されていた眞家早馬(まいえそうま・高3)は、右膝の骨折という大けがを負いリハビリ中。そんな折、調理実習部の都と出会い料理に没頭する。一学年下で同じ陸上部員の弟春馬、陸上部部長の親友助川、ライバル校の藤宮らは早馬が戻ってくることを切実に待っている。しかし、そんな彼らの気持ちを裏切って、心に傷を抱えた早馬は競技からの引退を宣言する。それぞれの熱い思いが交錯する駅伝大会がスタートする。 そのゴールの先に待っているものとは……。
高校駅伝、箱根駅伝の臨場感溢れる描写とともに、箱根駅伝を夢見て長距離走に青春を捧げる陸上青年それぞれの思いと生き様が熱く描かれる。青年達の挫折、友情、兄弟愛・・・。熱い涙、しょっぱい涙、苦い涙、甘い涙が読む者の心を満たします。
読後は爽快感と希望に溢れる熱血スポーツ小説です。
【編集担当からのおすすめ情報】
誰よりも何よりも駅伝が大好きな著者が心を込めて紡いだ青春小説です。息詰まる駅伝シーン。スポーツ小説の枠だけにとどまらない人間ドラマ。料理を通して感じる人の温もり。そして・・・・。
現在青春まっただ中の世代にも、かつて青春だった世代にも、誰かのために料理を作っている世代にも、スポーツ観戦が大好きな方々にも、多くの方の心に感動を呼ぶこと間違いなし!
2作同時デビュー作で話題を呼び、早くも青春小説の旗手と歌われる著者のすべてが詰まった、青春小説の傑作誕生です。
感想・レビュー・書評
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“あなたの夢をあきらめないで”
サビの歌詞が有名なこの曲、岡村孝子さん「夢をあきらめないで」。さて、例えばこの作品が発表された1994年という時代に青春を送られていたそこのあなた。この歌詞に胸を熱くしたそんなあなたはあの時夢見たその先の未来を今生きているでしょうか?それとも、そんな夢のことを遠い目で見やる今を生きているでしょうか?
“夢を叶える”という言葉には、聞いている側にさえ何か勇気を分けてもらえるような力があるように感じます。夢に向かって突き進み、困難に一つひとつ向き合い、それを乗り越え、夢を現実のものとする。それはそれで素晴らしいことだと思います。しかし、夢を叶えるということは一筋縄ではいきません。私たちの人生は試練の連続です。思いもよらなかった落とし穴がすぐそばにあなたを待ち受けているかもしれません。それは、スポーツの世界でも同じことです。『十位で襷をリレーしたのに八人を抜いて二位に躍り出た』という大活躍を見せた兄。『出遅れた弟の分を、兄が懸命な走りで挽回した』という美談の結果のその先に『右膝を剥離骨折した…』とまさかの展開が待ち受けていることだってあり得ます。“夢を叶える”という言葉の先にある未来へと続くためには、そんな状況からそれでも這い上がっていかなければなりません。『もう引退したようなもんなんだ』と、リハビリから逃げるような毎日は決して未来には繋がりません。しかし、夢とはなんでしょうか?人生のある時点で思い浮かべた未来。それをいつまでも守り続けることだけが夢の全てなのでしょうか?
この作品は、『それって、空っぽになった場所を、料理をすることで埋めた気になってるだけなんじゃないの』と、かつて全力をかけて取り組んだ陸上を捨て、料理に向き合う兄・早馬の姿を見る物語。『あの日、早馬はどんな気持ちで藤宮の背中を追ったのだろう』とあの日の兄の姿を今の自分に照らして『箱根駅伝』の今を走る弟・春馬の物語。それは、そんな二人の生き方に〈”諦めた”あとの景色〉を見る物語です。
『来るぞ』と『隣から、そんな呟きが聞こえてきた』のを受けて『頭から被っていたウインドブレーカーを静かに剥いだ』のは眞家春馬(まいえ はるま)。『一月の二日と三日。箱根駅伝の行われるこの二日間、一区から二区へ襷をリレーするこの場所は観戦客でごった返す』という『鶴見中継所』。『眞家、頼んだぞ』という先輩の声に『わかってますよ』と応えた春馬は『藤澤大学!』というスタッフの声に立ち上がります。『コースの先に、一区のランナーの姿が見えた』とき、『ああ、そうだ。これが箱根駅伝だ』と、『今年で三度目の経験なのに、改めて』思う春馬。そんな先頭の『ランナーに遅れること10m、二人のランナーが走って』くるのが見え、スタッフが『日本農業大学、英和学院大学』と二つの大学の名を告げました。『鮮やかな臙脂色のユニフォームをまとった英和学院大学の助川亮介と、純白と深緑色のユニフォームを着た日本農業大学の藤宮藤一郎』の二人と並ぶ春馬。『お久しぶりっす、助川先輩。最後だからって花持たせてあげたりしませんから。あ、それは藤宮さんも一緒ですからね』と言う春馬に『お前からの花なんているかよ』と返す助川。『そんなことしてみろ、走り終えた瞬間、お前の兄貴にぶっ飛ばされる』と肩を竦める藤宮。『過去には七年連続の総合優勝を誇り、今年は三年ぶりの総合優勝を狙う藤澤大学』。そして『はせがわぁー!ラスト、ラスト』と叫ぶ春馬は『長谷川から襷を受け取』り一歩先へと駆け出します。『後ろの二人に注意を払いつつ、できる限りの差を作って三区の走者へ襷を繋ぎたい』と考える春馬。『藤澤大学の総合優勝を、俺が引き寄せる』、『エース区間である花の二区を任された意味は、よく理解している』と意気込む春馬。『自分の前を走る選手はいない。誰も、いない』と思う一方で『自分がどんなに速く走ろうと、誰より前を走ろうと、そこにはいつも彼がいた』と兄のことを思い浮かべる春馬。そして、場面は春馬が高校二年だった時代へと遡ります。『放課後に担任に肩を叩かれ』たことをきっかけに、担任の名を冠した『通称「稔の畑」』を手伝い始めたのは眞家早馬(まいえ そうま)。刈り取ったアスパラガスを調理実習室へと届け『それ、今から料理するの?』とそこにいた女子生徒と関わったことから『私一人しかいないけどね』という料理研究部の井坂都(いさか みやこ)と二人で放課後に料理と向き合う日々が始まります。弟の春馬と共に練習に明け暮れた陸上部での日々。しかし『去年の冬に、右膝を剥離骨折した』ことで『仮に競技に戻れるまで回復したとして、きっとその頃には三年生は引退だ』と考えリハビリに背を向ける早馬。そんな早馬、春馬、そして都の高校時代と、箱根駅伝の今を駆け抜ける春馬の青春が描かれていきます。
「タスキメシ」という一見、”?”となってしまう書名を冠するこの作品。基本的には、表紙のイメージ、そして上記した駅伝の襷リレーの場面に象徴されるように、新春恒例の『箱根駅伝』を舞台とする作品です。”青春もの・学園もの・部活動もの”を描いた作品の中でも陸上は王道中の王道です。瀬尾まいこさん「あと少し、もう少し」、佐藤多佳子さん「一瞬の風になれ」、そして、三浦しをんさん「風が強く吹いている」ともう感動作が目白押し。表紙のイメージからこの作品もてっきりそういった世界観の作品だとイメージしました。
しかし!しかし!しかし!そこに展開したのは全く予想外の思いもよらなかった世界観を描く物語でした。
そんな予想外の世界こそが、〈カブと手羽元の煮物〉、〈シシトウと茄子の炒め物〉、そして〈チンゲンサイとハムの炒め物〉…と次から次へと登場する料理の数々です。この作品は上記した冒頭の『箱根駅伝』真っ只中の緊迫したレースの場面がまずあり、そのシーンの間に、そのレースに至るまでの高校時代の早馬、春馬、そして都の姿が描かれていくという二階層の構成をとっています。そんな高校時代の早馬は、『右膝を剥離骨折した』ことをきっかけに陸上の練習から離れ、料理研究部で都と料理に向き合う日々を送ります。そこに登場する料理の数々は、まるでこの作品が”お料理小説”になったかのように絶妙な食の描写に満ち溢れています。そんな中から〈鯵のなめろう丼〉の一節をご紹介しましょう。『そうか、もう鯵が旬な時期だ』と思う都は『五月から六月にかけて取れる鯵は小振りで脂がのっている』と考え、手にした鯵を『三枚に下ろし』ます。『粗みじんにして、千切りにした生姜とネギ、味噌を加えてさらに叩く。大葉も細かく刻んで混ぜ込む』というその調理。そして出来上がると、『ご飯に焼き海苔をちぎってのせ、その上になめろうをスプーンでひと掬い』『パリパリの焼き海苔、そしてご飯と共に口に入れると、白米の粘りけと合わさり、口中に鯵の風味が広がる』となめろうを味わう都。さらには『半分ほどなめろう丼を食べ終えたところで、温めただし汁を茶碗へ注』いで、しっかり混ぜて『なめろう茶漬けの完成』と、いや、もうそれ私にください!と言いたくなる美味しそうな食の描写が連続します。そして『美味しいなぁ。私のなめろう』と呟く都。『出汁の風味がなめろうを包み、優しく温かく、体の中へ入ってくる。幸せを運んでくる。ご飯が美味しいという幸せを…』と食のシーンに登場人物の心持ちが見事に一体化するこの描写。まるで食をテーマにした小説かと思えるくらいに食、食、食の描写が全編に渡って登場します。この感覚に慣れるまで、今、私はいったい何の小説を読んでいるんだっけ?という思いに囚われてしまうほどです。そして、改めて書名を見てハッと気づきます。「タスキメシ」、そう、”襷”と”飯”を同格に取り上げたのがこの作品。陸上競技の興奮と、食の美味しさの両方を一冊で楽しめるこの作品。異種組み合わせの妙を楽しめるなんとも贅沢な物語、それがこの作品の最大の魅力だと思いました。
そんなこの作品は、陸上競技の中でも長距離種目である駅伝に光が当たっていきます。高校時代に同じ陸上部で兄弟一緒に駆け抜けた青春。そこに、”兄の怪我”という思わぬ事態が影を落とします。一般的な”青春もの・学園もの・部活動もの”に光を当てる小説では、その”怪我”から這い上がって結末に栄光を掴む過程が描かれる中に幕を下ろすというイメージが王道だと思います。しかし、この作品で額賀さんが描こうとするのは、今まであまり聞いたことのないテーマでした。それが、巻末に、『箱根駅伝』にも出場され『二代目、山の神』の異名を取る柏原竜二さんが書かれた〈”諦めた”あとの景色〉という〈解説〉のタイトルに象徴されるものでした。私たちは、”諦めない”という言葉の響きに心惹かれるものを感じます。襲いくる困難に立ち向かい、何度も倒されながらも、その度に立ち上がり、傷つきながらも最後には勝利を手にする。そこに感動のドラマが生まれる。諦めなかったからこその感動に涙する、それがこういった青春ものの定番の考え方だと思います。しかし、この作品で額賀さんが描こうとするのは、柏原さんがおっしゃる『何かを諦める事は決して逃げでもないし、悲観する必要はない』、『次のステージでしっかりと目標を持つ事ができれば、それは決断に変わる』という考え方の先に続く物語でした。『何か面白い切り口はないかなとずっと考えてきて、私は食べることも好きだし、料理が出てくる駅伝小説があってもいい』と語る額賀さん。そんな額賀さんが〈”諦めた”あとの景色〉に描いたもの。それは、『膝の故障で陸上を諦めかける早馬や、料理をすることで救われてきた都』という人生の分岐点にまさかの料理を重ねていく、まさに”襷”と”飯”の織りなす絶妙のバランスの上に描かれる物語でした。
『前を走る奴とも後ろを走る奴とも、自分自身ともずーっとずーっと、戦わないといけなくて』と苦悩しながらも新春の風の中を駆け抜けていく駅伝の魅力を味わえるこの作品。『甘辛いタレの味と一緒に、噛んだ瞬間にアスパラの水分が染み出してくるのだ。里芋も柔らかく、豚バラ肉の脂がさらに食欲をそそる』といった食の絶品描写が味わえるこの作品。そして、『もう、俺は弟に負けないで済むんだ』という複雑な感情が織りなす人と人との絆を描くこの作品。今まで読んだことのない”襷”と”飯”の組み合わせが編み上げる斬新な物語世界に、青春っていいな!と味わい深く感じ入った、そんな作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もうすぐ箱根駅伝ですね〜♪
「タスキメシ」料理と駅伝?スポーツに食は大切ですし、更に競技を極める人達には重要。
兄弟愛、友情、ライバル、挫折、夢、希望
そしてちょっとだけ恋…
主人公・早馬が立ち直っていく姿は痛々しくもあり過ぎ去った自分の青春を思い出しました。
わたしも姉妹で同じスポーツをしてましたので、気持ちも本当に良くわかって。゚(゚´ω`゚)゚。
さぁシリーズ物です!
高校、大学と早馬の競技時代は終わりました。
次は?スポーツ管理栄養士として弟や親友達と関わるのかな⁇
楽しみなシリーズ発掘です‹‹\(´ω` )/››
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2024/01/31
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芦原さんのマンガも問題となったドラマも観たことないが、なんだかこの問題、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる。
考えてしまう。
日テ...芦原さんのマンガも問題となったドラマも観たことないが、なんだかこの問題、ボディーブローのようにじわじわ効いてくる。
考えてしまう。
日テレ、プロデューサー、脚本家たちに嫌悪と怒り。
作家を守るべき小学館、担当編集、編集部たちの無能。
話も通じずに独りで翻弄された芦原さんはどれほど孤独だったろう。
暗いダムの淵に立ち、身を投げる寸前に何を思ったろう。
ドラマ化の話なんか断ることができていたなら、今でも、きっと。
哀しくて辛くて怒りに目がくらむ。2024/01/31 -
私も悲しいところから、怒りに変わってきた。
小学館が立ち上がらないのなら、もう読まないって小さな抵抗。
私も悲しいところから、怒りに変わってきた。
小学館が立ち上がらないのなら、もう読まないって小さな抵抗。
2024/01/31
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タスキメシ。
2015.11発行。字の大きさは…小。
膝の故障により、走ることを諦めた兄・眞家早馬は、料理をつうじて弟・春馬の偏食を治しマラソンと係わりを持とうとする。
そして、走るのでなく料理をつうじて選手たちのサポートをするスポーツ栄養士を目指していく、その先には……。-
やまさん♪こんにちは(*^^*)
いつも、コメントありがとうございます。
たまには、こちらからと思いました♪
『うちの旦那が甘ちゃんで...やまさん♪こんにちは(*^^*)
いつも、コメントありがとうございます。
たまには、こちらからと思いました♪
『うちの旦那が甘ちゃんで』は来週は、図書館から早く返却しないといけない本がたくさんくるので、無理みたいですが、再来週あたりだと、大丈夫かもしれません。
今、しばらくお待ちください。2019/11/30 -
こんにちは。
やまさんの本棚を見て、「競歩王」を読もうと思いましたが、図書館では貸出中でした。
今回の「タスキメシ」。
一気に読めそうな内容...こんにちは。
やまさんの本棚を見て、「競歩王」を読もうと思いましたが、図書館では貸出中でした。
今回の「タスキメシ」。
一気に読めそうな内容ですね。2019/11/30 -
やまさん、いつもコメントありがとうございます。私も膝を故障したことが有るのでアスリートとして興味があります。やまさん、いつもコメントありがとうございます。私も膝を故障したことが有るのでアスリートとして興味があります。2019/12/09
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転職の魔王様が面白かったので。
駅伝×料理
陸上だけじゃなく色んなことを「続けていく」のは大変なこと。
続きを読みたい。 -
感動の青春スポーツ物語に、美味しそうな料理がいっぱいで、読んでいてすごく楽しかった。
兄弟や友人がお互いを思い合う姿が素敵。
料理もできる陸上男子、かっこいいなぁ。超偏食の弟が兄の料理に魅了され、それを楽しみに走るのも、いいなぁ。
シリーズの他の作品も楽しみ。 -
陸上、箱根駅伝好きには、たまらんお話です。青春です。そして、タイトル通り料理も出てくる。
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自分がランナーのため、読んでいてめっちゃ楽しかったです。色んな葛藤があってドラマがあって実際の駅伝も走ってるんだろうと。
故障して簡単に諦めるのも選択肢の一つ、
ただ心の中で諦めきれていないなら
どんな形になろうと最後までやり遂げた方が
後々、後悔はしないのかな。
そして、タイトル通りスポーツには飯・栄養は大事だなと…美味しい料理作れるのは大事!!
お腹が空く本でした(^^) -
読み終え、熱いものが込み上げるのを感じた。
人生とは孤独な個人競技だ。ゴールは人によってそれぞれ違い、しかも落とし穴から上り坂、下り坂、さらに「まさか」という罠までついてくる。
心に傷を抱えた陸上選手、彼はクラスメイトと料理で交流する中で段々と自分の事を打ち明けていく。
問題を抱えているのは一人だけでなく、誰もがそれぞれの問題を抱えている。
この作品の中にはそれでも逃げず、何とか立ち向かおうとする人々がいる。 -
自分も学生時代に長距離をしていたし、怪我も経験した。そして姉という立場。
経験者なのかな?と思うような描写で早馬の葛藤の部分がどれもすっごく分かって涙涙。
早馬の空いた部分に料理というものが見つかってよかった。
いつまでも「ちゃんと走る」ことの難しさ。
ラストの方はもう少し苦しまない早馬をみたかったけど...続きはどうなっているのかな
春馬、助川、藤宮、都のその後も気になる!
"あきらめる勇気があったんだ。続ける恐怖なんてきっと乗り越えられる。"
たまには逃げる勇気、諦める勇気も大事。
でも少しでも未練があるならやり切ったと思えるところまでやる方が後々後悔しないのかな
そこの選択は難しい。
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料理と駅伝のお話し。最新作を読む前に一作目の本書をと思い読む。一気に読破、面白かった。二作目も楽しみ。
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気になっていた作家さん。
駅伝前に読めてよかった。
高校生ならではの苦悩や葛藤。
マラソンの描写が思っていたより少なめだったのが少し残念。(まぁ、タイトル通り「飯」がメインってだけなんだけど。) -
2冊目の額賀澪さんは、続編を先に読んでしまい順番が逆になってしまった『タスキメシ』の一作目。
高校3年生の眞家早馬は陸上部の長距離走選手だったが右膝の故障でリハビリ中。ある日、料理研究部の伊坂都の料理を手伝ったことから、都に料理を教えてもらうことに…。一つ年下の弟・春馬とチームメイトの助川亮介と、箱根駅伝を走る現在と高校時代と、時代も視点も交差しながら描かれていきます。
うわ〜ん、やっぱりこれは順番通りに読みたかったです。今回のオチが読み始めてすぐに、あ、あのシーンか…と見当がついてしまいました。都や春馬や助川や藤宮などなど…続編でもその後が語られていたので、ちゃんと順番通りに読めていたら、テンション上がってたんだろうなぁ…。
でも早馬が乗り越えてきた葛藤やその過程が読めてよかったです。好きなことを諦めるのも続けるのも簡単じゃないですよね。早馬に新しい目標ができて本当に良かった。
作られるご飯は特別なものではない普通の家庭料理ですが、とってもおいしそう。あ、でもローストビーフなんて一度も作ったことないし、出汁もいつも市販の粉末です…。豆乳麺は作ってみたくなりました。
駅伝シーンは思っていたよりも少なめでしたね。
そしてなんと!箱根に続き、更に続編『タスキメシ五輪』が今月29日に発売されるようです。千早と都と、もちろん早馬と春馬と…助川や藤宮も⁈これは読まねば。 -
高校駅伝での失敗、挫折そして快走。
どれだけ想像しても予想通りにいかない
ただ走るだけなのに、いつも速く走るのは難しい。だから面白い。
今年も高校駅伝県予選を見に行こう。 -
陸上部長距離で、駅伝に取り組む選手たちの小説。
眞家早馬は、高校二年生の冬の県駅伝で力走するが、そのためなのか剥離骨折をし、陸上部の練習から長期離脱してしまう。そのため、陸上への意欲が薄れている。
そんな彼を見かねた担任の稔が、料理研究部の井坂都に引き合わせる。
都に習うかたちで早馬も料理を始める。美味しくて、長距離競技に役立つ料理を作り続けるうちに、早馬の気持ちも少しずつ変わっていく。
章ごとに早馬、弟の春馬、都、チームメイトの助川など、主人公が変わっていきます。そして、それぞれの立場から、陸上や料理を通じて物語が語られています。
また時系列も、高校の時、大学の時期と入り交じっています。
高校生ならではの傷つき、繊細な感覚が感じられます。また物語に出てくる料理がどれも美味しそうで、読むだけでもお腹いっぱいになりそう。
第一線に残っていける人、途中で陸上を離れていく人、当然のことなのですが、どちらの立場でも葛藤があるんだろうなと感じました。
この小説は完全にフイクションだとありますが、モデルになっている高校や大学を想像するのも面白いです。 -
怪我で陸上を諦めるかの葛藤、年子の兄弟としてのそれぞれの思い、都ちゃんの背景からくる料理、チームメイトの気持ち、、、
最後、駆け足すぎかなとも思うけど
青春スポーツものについつい泣いちゃう事を確信しました。
続編読みます。
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いつか読もうと思っていた本を
ようやく読了。
誰が主役かわからずに読み進め、
最後の切ない爽やかさにじんときた。
諦めるのは簡単ではない。
思った形とは違ったかもしれないが、
最後まで自分と向き合い、
戦い続けたお兄ちゃんに拍手。 -
2021.04.26
大好きな「箱根駅伝」の本だ。こんな本があるなんて知らなかった。取材がすごいのか、自分でも走るのか、臨場感と揺れ動く心の内、葛藤みたいなものが心地良く伝わって来る。そしておかずのこと。これがまた駅伝を引き立ててるようにも思う。さあ、次が待っている。読むぞ〜! -
駅伝と料理という、まさに緩急のついた2つの題材。兄の葛藤と弟の想い、友の支え、いろんなものが組み合わさって1つの料理になっている。最後に種明かしもあって伏線が回収されるのも後味が良い。
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箱根駅伝に読了間に合わなかった。こういう本はイッキに読んだ方がいいのはわかっているのだが、思いのほか苦戦した。スポーツ・グルメ・青春、どれも好きな分野なのに、何故??まず、肝心の駅伝シーンは少なく、怪我をして陸上を諦めるか、続けるか、の葛藤が中心のストーリーである。そこに偏食の選手をサポートする料理を絡めてある。4人の生徒の心情で構成されているのだが、正直ちょっと散漫な印象。登場するご飯も高校生が作るから「わあ、美味しそう!」というほどでもなく...って私、ひどいな。でも、ラストシーンはすぅっと感動。
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永遠のライバル兄と弟。
兄側の思いも弟側の思いも、納得。
そういうものよね。近くて遠い。
そして共に走る仲間。
さらに、恋愛では無い男女の友情。
思っていたよりずっと、厚みのある内容だった。
駅伝にかける青春に、料理が絡まるところは意外。
蛇足なのでは?と思ったりもしたけれど、
食とスポーツは切り離せないもの。
作る側も食べる側も、料理にはまっていく様が、なんともわくわくしてしまう。
本人よりも周りに必要とされる存在って素敵だ。
そして、本人も全てを理解した上で貫く意地というか衝動。
ラストシーンは感動的だ。 -
高校陸上部の話で青春しすぎて読むのが辛いか? と思ったけれど、家族との関係、食事を作ることで解消されていく心のしこり、そして大学卒業までと素晴らしく濃縮された物語だった。
食べたもので作られる、カラダもこころも
と思うと、これからも一食一食をさらに大切に丁寧に作りたいものだ。 -
久しぶりの駅伝物語。早馬の料理はどれも気持ちがこもっていて美味しそうでした。元々は都のレシピなんだけど、色々抱え込み、考えながら作る時点でそれはもう彼のレシピなんだろうと思います。作中出てくるメインの人物に嫌な人が誰もいない。春馬も助川もそれぞれに苦しみ、悩み、正に駆け抜ける青春。清々しいったらありゃしない。早馬の箱根はそれで良かったのでしょう。彼が選ぶ道に幸あれ、と思います。都とはどうなるんだろう。今は早馬なのかな。助川の気持ちは今はどこにあるのか。そんなことも気になる読後でした。
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「俺の分まで、お前は走れ」
兄弟陸上選手の物語。
兄・早馬は膝の故障から競技を退き、超偏食の弟・春馬を食の面からサポートする事に。そして舞台は箱根駅伝へ―。
早馬には走る事を辞めるという事に対しての葛藤が、春馬にはずっと追いかけて来た兄の背中が見れなくなるという不安が、チームメイトにはいつも一緒に走ってきたライバルがいなくなるという寂しさが、それぞれにある。
彼らは様々な感情を抱え、思い悩みながらも前へと進んで行く。
走る事が好きで、でも同時に怖くもあり、才能のある弟の存在も早馬を苦しめていく。
それでも自分なりに陸上と関わっていこうとする早馬の、決意と彼の選んだ道。
決して楽な道のりではないけれど、それを乗り越えていける彼の強さを見た気がした。
あとなんだかんだで、みんな早馬のこと大好きだよね。
兄としてライバルとして、そして一人の選手として、周りから愛されて、信頼されているのを感じた。
出てくる料理もなかなか美味しそう。
アスパラと里芋と豚肉の照り焼き炒めとか、カブと手羽元の煮物だとか。あとお茶漬けも。
でも一番印象的だったのは、やっぱりハンバーグかな。 -
最近立て続けに駅伝小説を読んできたのですが、こういう切り口があったのか!と目からウロコ。
けど、考えてみたらアスリートと食べ物って切っても切れない深い関係があるわけで、なぜここをフューチャーした小説が今までなかったのかと、今更ながら思ったりして。
陸上の長距離という孤独な戦いを続けるなかで、誰よりも早く、誰よりも先を走って来た選手にとって、怪我や手術は致命的なブランクとなる。リハビリをして「治った」として、またその孤独な戦いの中に戻って行けるのか、と、その気力は持ち続けられるのか。このまま怪我を言い訳に逃げ出したくなるんじゃないか、しかもずっと自分の後ろを走っていたはずの弟に追い抜かされている状況の中では。
高校駅伝を舞台に、家族、兄弟、友情、といういろんな物語を巻き込んで、額賀小説はまっすぐに突き進んでいく。いろんな挫折や怒り、そして苦しみの中で10代の彼らの涙が光る。額賀さんが描く高校生たちはいつも自分の弱さを誰にも見せないように強がっている。孤独な自分の心を、今回埋めてくれるのは料理。あぁそうだ。人を作っているのは心を込めて作った料理たちなんだ。誰かのために、自分のために、彼らが作る料理の数々。おいしそうだ。食べることを楽しみにしていられる間は大丈夫。生きていける、まっすぐに。強くなれ!君たちの未来はまだまだこれから拓けるんだ!そう思いながらページを閉じました。 -
長距離ランナーの早馬と春馬の兄弟。膝を故障し陸上から離れてしまった早馬。挫折や怖さを味わいながらまた陸上の世界へ戻ろうと決意する。母親目線で感情移入しまくりで辛かった。早馬が気になり一気読みだった。都ちゃんもライバルの助川も藤宮もみんな素敵。仲間っていいな。今をひたすら踏み出していく若者たちの物語。
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長距離走を怪我で断念した男子が一人しかいない料理研究部へ。
あきらめる勇気。
続ける恐怖。
兄弟、親子、周囲の目。
様々な葛藤と闘いつつ自問自答する高校生活。
シリーズのようなので、ここからどう転じていくのか楽しみ。 -
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タイトルと表紙絵からして、スポーツ青春モノって思っていたんだけど、ご飯の話でビックリ。
初めの方はガッチリとご飯の話でした。
現在の話から過去を振り返る話で、面白かったです。
続きもあるようなので読んでみたいと思いました。