ガラパゴス (下)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 578
レビュー : 110
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864336

作品紹介・あらすじ

平成版『蟹工船』!メモ魔の刑事、再臨場!

警視庁捜査一課継続捜査担当の田川信一は、身元不明のままとなっている死者のリストから殺人事件の痕跡を発見する。自殺に見せかけて都内竹の塚の団地で殺害されたのは沖縄県出身の派遣労働者・仲野定文だった。仲野は福岡の高専を優秀な成績で卒業しながら派遣労働者となり、日本中を転々としていた。田川は、仲野が非正規雇用労働者として勤務していた三重県亀山市、岐阜県美濃加茂市を訪れる。そこで田川が目にしたのは国際社会に取り残され、島国で独自の進化を遂げる国内産業の憂うべく実態だった。
仲野殺害の実行犯を追いながら、田川はコスト削減に走り非正規の人材を部品扱いする大企業、人材派遣会社の欺瞞に切り込んでいく。

【編集担当からのおすすめ情報】
日本中を震撼させた現代の黙示録
28万部のベストセラー
『震える牛』続編!
怒濤の980枚! 上下巻で刊行!

感想・レビュー・書評

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  • 目を背けてはならない派遣労働者の問題や利益優先のために方法を惜しまない企業の実態など、歪んだ社会にメスを入れる本だった。読んで損はない。

  • #読了。
    警視庁捜査一課で継続捜査を担当する田川は、既に自殺と処理されている身元不明者が何者かに殺されたと疑い、再捜査を始める。すると、被害者は派遣労働者として各地を転々としつつ、ある工場で重大な過失に気づく。田川は地道な捜査で犯人へと近づくが。。。
    派遣労働者の厳しい労働条件や、生活環境などがリアルに描かれている。これが殺人の動機などかと疑問を持ちそうになるものの、詳細に描かれた現状を考えると、なんとなくやるせない思いも。「普通に働いて、普通に暮らす」、ますますそんなことが難しくなっている日本への警鐘に感じる。

  • 自分の知り合いにはいないのでよくわからないが、派遣社員の実情は、こんなにも過酷なものなのか。
    職場を転々とする派遣労働者の悲惨な生活が生々しく表現されていた。
    また、企業の発展の裏にある闇の部分にも触れられている。

  • ボクらロスジェネと呼ばれる世代の働き方や現代日本の過酷な社会システムが描かれた小説でした。

    確かに戦後復興を遂げ、高度経済成長期にがんばった日本人は素晴らしいと思いますが、そこから権益の守りに入ってしまったのでしょうか。バブル崩壊の影響は現在にも及び、政治は労働者の現実を全く見ず、大企業の利益優先の政策でしかありません。

    将来に対し希望を持てない生活の中にも、アイデンティティを見失わないという点にボクらの世代に生き方が隠されているのだと思いました。

  • 日本の大企業の病巣にメスを入れる会心作。

    ハイブリッドカーは世界でもトップをいく先進技術だと思っていたのは、日本国民だけ。
    日本の先進は世界の後進、日本の常識は世界の非常識、タイトルのガラパゴスに象徴されている。
    世界に取り残される企業を延命しようとエコ減税がなされ、そのツケは国民が被る。
    派遣切りや非正規労働者の実態、企業撤退後の地方の荒廃等など、よく調査されていると感心した。

    「世界で一番企業が活動しやすい国にする」ことが、国民に何をもたらすのか?じっくり考えたい。

  • 世の中、まだまだ知るべき事が多すぎる。

    失業率という定義も国によって違うと言う事も最近知ったばかりであるが、日本における非正規社員の存在数であったり、扱われ方ということは全くもって知らなかった。

    と言っても、私の周りの非正規社員は決して悪い待遇では無いと思っている、しかし世界と価格競争をしている産業においては、海外との競争、そして製作機械との価格競争、そう生産コスト競争を行っている。

    メーカーは自社で人を雇用せず、派遣会社を通じて期間労働者を雇用する。と言いながらも、実は期間労働者では無く常時雇用であり、売上が落ちたときに採用しないという意味での期間雇用なのだ。

    その期間労働に就いている多くの方は、地方の方が多いという。

    このような雇用環境は、日本国内だけにとどまらず、世界的に似たものがあるのだろう。

    もう一つ大きな気づきは、価格競争は世界的な問題で有り、国の産業を守るために、政府は様々な施策を行っている、それにより幾つかの産業は延命がなされているが、それも数年で息絶えると言うことで有り、それが実際現実になってきている。

    この小説から見えてきたのは、現実を翻ってみる必要があることだ。実に読みやすく、引き込まれていったが、最後に残ったのは、身の回り、世界のことをしっかり見ていかなければならないと改めて思い知らされた。

  • 正社員になるために殺人を犯す。ここまで格差があると雇用の規制緩和は歪んだ社会を助長するだけなのかもと考えさせられる。「普通」ということはとても大切なんだと思った。
    小説として派手さはないがすごく緻密で心理描写も上手く、読者を引き込ませる力を強く感じた。

  • 面白いが最後を先に読むと読む気が失せる。派遣の話が書いてあるようだが、この手の苦しみは古代からあり目新しいことではない。まあ、人類が絶滅して高度な生命体が生まれないと治らないと思う。それよりも犯人を追い詰めていく過程が面白いが巨悪が裁かれないのがつまらない。

  • 二年前の身元不明の死者。
    殺人事件の犠牲者なのに、明らかな初動のミスにより、自殺として処理されていたが、老練の刑事田川の地道な捜査により、身元がわかる。

    殺されたのは、派遣先の自動車工場で感じた製品への疑惑を告発しようとしたから。
    派遣会社と自動車製造会社の力関係のもとに隠された真相に、じわりと迫っていく。

    下巻では、優秀であるにもかかわらず不況の荒波の中、派遣労働者として社会の底辺を歩いた人生が浮き彫りになっていく様子が中心。
    架空の会社ではあるが、思い浮かぶあの会社この会社...
    都会に生まれ都会に暮らし、安いパートと言ってもこんなふうにはならないと絶句する。 
    劇中の刑事が見せる 強い憤りが読者の気持ちを代弁する。

    ガラパゴス、という言葉、上巻ではハイブリッドカーに向けられていたが、もしかすると労働条件の急激な悪化をガラパゴナイゼーションとして描きたかったのかもしれない。
    無理に無理を重ね、嘘を厚化粧で隠してきた日本経済。
    個人では歯が立たない。
    本当に恐ろしい。。

  • 特にどんでん返しなしだか、着実に真実に近づいている感じは、最後まで飽きなかった。リアルではあるがやはり最後は黒幕も罰せられて欲しかったと思う。
    経済や社会について勉強させられた。「限定社員」「無限定社員」考えただけで切なくなる制度だと思いました。

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著者プロフィール

相場 英雄(あいば ひでお)
1967年新潟県生まれ。89年に時事通信社に入社。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。
12年『震える牛』が話題となりベストセラーに。13年『血の轍』で第26回山本周五郎賞候補、および第16回大藪春彦賞候補。16年『ガラパゴス』が、17年『不発弾』が山本周五郎賞候補となる。

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