希望荘

著者 :
  • 小学館
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レビュー : 341
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864435

作品紹介・あらすじ

探偵・杉村三郎シリーズ、待望の第4弾!

その部屋には、絶望が住んでいた――。
宮部ファン待望の14か月ぶりの現代ミステリー。特に人気の「杉村三郎シリーズ」の第4弾です。
本作品は、前作『ペテロの葬列』で、妻の不倫が原因で離婚をし、義父が経営する今多コンツェルンの仕事をも失った杉村三郎の「その後」を描きます。
失意の杉村は私立探偵としていく決意をし、探偵事務所を開業。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年に起きた女性殺人事件を解決するカギが……!?(表題作「希望荘」)
表題作の他に、「聖域」「砂男」「二重身(ドッペルゲンガー)」の4編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 杉村三郎シリーズ第4弾、再読。
    オチを覚えている、途中まで覚えている、など記憶がスカスカ。己の脳細胞の死滅にゲンナリしつつも、新鮮さを失わずに読めたのだから良しとするか。

    ○聖域:僅かな年金さえも宗教?にはまった娘に搾取され、身を隠す老女が、自殺を仄かして失踪する。暫く後、身綺麗に着飾ったその老女らしき人物を、元同じアパートの住人が見かける。果たしてその老女はあの老女なのか…。

    ○希望荘:長いこと生き別れになっていた父。実直で優しい父が亡くなる前に話した過去の事件。父は本当に罪を犯していたのだろうか…。

    ○砂男:杉村三郎が探偵事務所を構える前、暫く実家で過ごしていた時に関わった事件。これを機に探偵事務所を開業する決心をする。宮部さんの過去の作品「火車」を思い起こさせる。

    ○二重身(ドッペルゲンガー):東北の大震災の前日に東北地方へと向かい、消息を絶った財産家でもある雑貨店のオーナー。彼は出掛ける前にシングルマザーの女性に求婚をしようとしていた。手掛かりが少ない中、杉村三郎が彼の消息を掴もうと苦闘する。

    杉村三郎が財産家の妻と離婚し、探偵事務所を始めるまでの経緯と、初期の依頼について描かれている。
    離婚については気の毒だけれど、彼が本来の自分を取り戻すことができたようで、読者としては良かったような気がしている。

    どの話も悪意に満ちた物からくる事件ではなく、日常に潜む人の欲、自己中心的な考えがそれを構成するピースとして組み合わさっているように描かれている。
    根底にはやはり、格差社会に対する作者の視点があると思う。また、そういう時代を生きる我々への問い掛けでもあろう。2020.1.4

  • 相変わらず好きな、杉村三郎シリーズ。

    いよいよ探偵職も少しづつ板についてくる、
    頑張れ、としか言えない、
    どうしても俳優の顔が浮かぶから依怙贔屓?

  • 杉村三郎シリーズ、4冊目。
    短編連作というか、中編連作というか。
    離婚の衝撃の、その後、を描いています。

    社誌の編集をしていた杉村は、時おり巻き込まれて調査のような仕事もしていました。
    財閥令嬢の妻と離婚して職も失い、今は私立探偵になっています。

    「聖域」
    亡くなったはずの女性が目撃された事件。幽霊なのか?
    杉村が調べていくと、じつは‥
    娘を訪ねてアパートに行くと、そこにいたのは?
    頼りなげな杉村だが、既にご近所さんに親しげにされ、かっての勤め先で常連だった喫茶店のマスターまで近くに店を出しているという。
    あたたかな環境にほっこり。

    「希望荘」
    息子からの依頼で、老人ホームで亡くなった父親が生前、殺人をしたかのような告白をしていたという。
    本当なのか‥?
    起きていたことを淡々と順々に調べていく杉村。
    希望という名は皮肉なのか、何なのか‥

    「砂男」
    離婚後、一度故郷の山梨に帰っていた杉村。
    もともと結婚には反対されていて、口の悪い母親には当たられるのが強烈‥でも、こういう人はいる気もします。
    周りは仕事口を探してくれて。
    行方不明になった人物の謎を解いたことから、蛎殻という名士に見込まれ、調査員になるよう勧められることに。

    「二重身(ドッペルゲンガー)」
    古い建物にあった杉村の事務所は震災で倒れ、広い屋敷に間借りしています。
    家の様子をうかがっていた黒ずくめの少女は?
    東日本大震災が起きてから、行方がわからないという男性がいた‥

    基本は現実味のある設定ですが、普通は起こらない、思いもよらない展開になるのが、さすが宮部さん。
    日常の中に潜む悪意というか、最初は悪人というほどではなかったとしても、状況に応じてやることがだんだん‥
    何考えてるんだかという人物がいろいろ登場します。
    人間は勝手な思惑でぶつかり合うものなんだねー、と。

    大人しく真面目でのほほんとしているようで~実は結構変わり者かもしれない杉村。
    杉村の味方がだんだん増えていく のが、救いとなっていますね。

  • 杉村が離婚後探偵になるまでの経緯かな?

    短編集なのでそれぞれのお話の毒は少し軽めだったし、宮部さんの語りがうまくてあっと言う間に読めた。

    聖域では身勝手な娘に振り回される親とその周りの人達。ラストはある意味ハッピーエンドっぽいけど、今後また娘の都合でどうなるか分かったもんじゃない…

    希望荘、二重身は何処にでも居そうな一般人がフト殺人に手を染めてしまう話だけど、やっぱり犯人には自分勝手な思い込みが強いなぁと思う。

    希望荘のおじいちゃんも、人生に2回も殺人犯に会う事になったとは……自分の可愛がっていた若者が殺人を犯してしまうとは、どんなにか衝撃な体験だったろう
    自分もこんなふうに魔がさす瞬間が有るのだろうか?宮部さんの筆力がリアルに怖い。

    一番怖いのは砂男。本当にサイコパスを子供に持ったらどうなるのか?時折ニュースでチラリと垣間見るけど震え上がってしまう。
    巻き込まれた人達も気の毒だしその後失踪した人がどうなったか、考えても胸が痛む。

    しかし杉村の周りに居る人達の暖かさが救いになる。杉村本人の人柄が引き寄せるのか?周りの人達は毒舌でもみんな暖かい。これからも探偵業頑張ってほしい。

  • 杉村三郎シリーズ第4弾!

    家族と仕事を失った杉村三郎は、東京で私立探偵事務所を開業する。
    ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を
    調査してほしいという依頼が舞い込む。
    依頼人の相沢浩司にによれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで
    30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。
    35年前の殺人事件の関係を調べていくと、昨年発生した女性殺人事件を
    解決するカギが隠されていたー。「希望荘」より

    杉村が4つの事件の謎を解く連作短編集。
    ・聖域
    ・希望荘
    ・砂男
    ・二重身
    460頁という結構ボリュームのある本書に4つの短編。
    一話一話がとても丁寧に描かれていて読み応えがあった。
    本作は、前作「ペテロの葬列」で、妻の不倫が原因で離婚。
    義父が経営する今多コンツェルンの仕事を失った杉村の「その後」を描いている。
    杉村ファンの私は、あの結末にショックを受けその後どうなるんだろう…って心配してた。
    だからその後を知る事が出来たのは凄く嬉しかった♪
    冒頭は、東京の北区の築四十年の完全〝しもたや〟で杉村探偵事務所を開いていた。
    途中の事件では、離婚直後は山梨の実家に戻って半年位働いてたんだってわかる。
    そこで事件…謎…に巻き込まれてそれがきっかけで東京で探偵事務所を開く
    決意をしている事も明かされている。

    杉村の相変わらず穏やかで優しく、気弱にも感じられる雰囲気。
    鋭い洞察力に心の芯に温かさや大きな優しさを抱いてる姿やっぱり素敵です
    そして、下町の温かい人情溢れる人々に囲まれている。
    大家の竹中夫人。睡蓮のマスターの水田さんまで…(笑)
    そして、力強い味方「オフィス蛎殻」の社長さん。
    竹中夫人の三男のトニー
    これから助手として活躍するのかなぁ…次作は長編が良いなぁ。

    全てのお話が、う~んあまり幸せは言い難い人々が事件を起こしてしまう。
    何とも救いのないお話ばかりで、切ないのに読む手が止まらなかった。
    宮部さんの筆力によってかなぁ…決して読後感は悪くなかった。
    とっても不思議です。
    人生は全く平等ではないという事を改めて突き付けられた気がしました。
    人は自分の人生を生きるしかないのですよね。

  • ペテロに続いて読んだ杉村三郎シリーズ第4弾。いろいろあって探偵稼業を始めた杉村三郎の事件中短編集。出てくる周りの人間がおもしろい。前からのつながりの睡蓮のマスター。杉村三郎の大家一家の面々。私立探偵になるきっかけとなった蠣殻所長。
    特に印象に残ったのが「砂男」の中の失踪した夫。生れながら(か実際分からないけれど)の悪人よりも悪人に取り憑かれてしまった男。罪を犯したのには変わらないけれど、悪人は罪を犯そうが人を傷つけようが何も変わらないのに対して、取り憑かれてしまった方は自身の罪に耐えかねてしまう…その人と人でなしの境界線というものを興味深く感じた。

  • 中編4編の作品です。逆玉に乗ったものの離婚の憂き目を味わい、バツイチ 無職 唯一7歳になった娘とのたまの面会が楽しみな38歳の杉村三郎の話。当たり外れがあったけど、タイトルになっている'希望荘'が良かったかな。戸籍売買の話'砂男'は先日読んだばかりの'ある男'(平野啓一郎)を連想させられたけど、作者は意図しなくとも題材がバッティングすることがあるのだ と再確認しました♪

  • やっと杉村さんに再会した。​「ソロモンの偽証6」​のスピンオフで状況は理解していたけど、杉村さんのホントの人生はこちらの本篇にある。犯罪を未然に防ぐために探偵になった杉村さん。杉村さんに幸せは来るのだろうか?短編集だから一編づつ感想を書いて行ったが、既読の人は「二重身」から読んで欲しい。

    「聖域」
    杉村さんの探偵事務所としての、開業して1年後の初めての依頼報酬は、手つき金5000円と町内会掃除当番一年間の「代行」だった。全くもってささやかな幸せである。けれどもそれが大切なのだ。ベルにとっても、杉村さんの心使いが現実社会を生きていく上でもとても大切なことになるだろう。

    「希望荘」
    犯罪は起きた。杉村さんはそのあとに関わったのだから、杉村さんに責任はないだろう。でも、数人の「心持」を穏やかにすることは出来た。

    「砂男」
    離婚から杉村探偵事務所に落ち着くまでの約1年間のお話。

    蛎殻さんの坊ちゃんは笑わなかった。
    「今回のことは、杉村さんのせいじゃありませんよ。でも、そう思ってしまう気持ちはわかります」
    そして、にっこりした。
    「だったら逃げないで、その呪いとやら(私註‥‥事件を招き寄せる体質のこと)に立ち向かってみたらどうですか」
    驚いて、私は彼を見た。
    「うちで働きませんか、とは言いません」
    にっこりしても、昴氏はやっぱり落ち着き払っている。
    「杉村さんはうちみたいなオフィスの調査員より、フリーで動く私立探偵の方がいいと思います。生活が成り立つように、毎月うちからある程度の仕事を回しますし、サポートもしますから、独立開業したらいい」(323p)

    こうして、心優しい私立探偵が誕生した。シリーズが始まって、なんと4作目にして、である。

    「二重身」
    私は一編一編の短編がそれぞれ独立したものだと思っていた。これを読んだ後に、巻末の初出一覧を見て驚いた。宮部みゆきは、3.11を自ら(おそらく)東京で体験した後、それを3年以上かけて自分の中で咀嚼消化して現代推理小説の杉村三郎シリーズに結実したのだ。初出は2014年12月だった。最初から着地点は決まっている。道理で、全編に日にちがきちんと描かれていると思った。また3.11は、彼女によってもうひとつ​「荒神」​として時代小説にもなった。

    「二重身」には前の3編の全ての要素が取り入れられている。生きているのか、死んでいるのか、わからない人の人探し(cf「聖域」)から始まり、「希望荘」の武藤老人が云っていた「悪いもんに取り憑かれた男がやったんだよ。そういうことはあるんだよ」(96p)という事も、この短編では繰り返される。そして「砂男」も登場する。「人が崩壊する瞬間というのは、さらに目撃したいものではない。瞬間、彼が砂でできた像になったように思えた。端からぽろぽろと崩れ、人としての輪郭を失ってゆく」(455p)サンドマンとは意味は違うが、こういう描写は前編とは無関係ではない。杉村さんにできたのは、せめて事件の周りの人々を少し癒してあげただけだ。そしてそれが何よりもむつかしいことではある。

    確かに、3.11に対する宮部みゆきの語る物語は、物事の大きさからするとあまりにも身近な出来事を描いているかもしれない。しかし、日本文学の1300年間の伝統は、身近な事から世界を描くというものだったはずである。

  • STORY BOX2014年12月号〜2016年5月号の17か月に渡って掲載された3編とオール讀物2015年6、8月号に掲載された1編の中編。「砂男」の改題前の「彼方の楽園」は連載中に既読。杉村三郎は公平で、実に好ましい。陰惨さのない「聖域」が好きです。「希望荘」も救いがあり良いです。4編とも話に無駄が無く、夢中になりました。

  • 杉村三郎シリーズ4作目。前作の終わりに家族と別れ当然のようにコンツェルンの仕事も辞めた杉村がその後私立探偵事務所を開設するようになるあれこれも説明しながらの4つの短編連作。人生の終わりに差し掛かった父に寄り添いたい気持ちもあり実家に戻るも、出て行った経緯と出戻りの理由が理由で、兄嫁や近所の人も面と向かってこそ口に出さないものの厄介者として扱われるなか、親切にしてくれる人たちにも恵まれ、事件を引き寄せる特異体質?を見込まれて調査会社の手伝いをするように。この調査会社の経営者である若者が切れ者で、今後のシリーズのキーマンになりそう。4編とも出てくる人々が妙にリアルでフィクションなのに気持ちがざわざわしてしまうのは相変わらずなのですが、あっという間に読了しました。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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