希望荘

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864435

感想・レビュー・書評

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  • 前作「ペテロの葬列」で妻に裏切られ離婚。転機を迎えた主人公・杉村三郎が私立探偵としてデビュー。表題作の他、3篇の短編集。前作のラストがあまりに不憫だったので少し元気になってナニより(笑)。彼のもとにやってくる事件は、どれもシリアスで切ない。貧困、格差、カルト、悪意、精神病質者とのトラブルなど…普通の人たちのままならない人生と犯罪との交錯を描いています。人はいくら真面目に生きていても、時に不幸は襲いかかるのです。主人公の心優しさに癒やされつつ、切なくなる濃密な短編集です。

  • 探偵杉村三郎のお披露目的な4編。とても読みやすく、面白かったです。

  • 彼女の周りには調査役がいるんだろうなぁ~『聖域』近所の50代後半の一人暮らしの女性は,薬局の柳さんに相談し,アパートの階下の老齢の女性が死んだはずなのに,上野で車椅子に乗っているのを見掛けたと言い,調べてくれと言う。手付け金は5千円。巡回管理人・家主と辿り,前の住所を割り出して訪ねていくと,聖域に通う女性3人がいるが,女性の娘は行方不明だ。残されたブックカバーから上野の洒落た雑貨店に行き着き,上野のホテルに長期滞在している二人を発見する。『希望荘』池袋で洒落たイタリアン・レストランを営む男から,生前「人を殺した」とスタッフに言い続けていた父の真実を探ってくれと依頼された。昭和50年に魔に憑かれて取り返しのつかないことをしたと言い続けたが,妻の浮気で工場を追い出された男は,工員として職場を転々としていたが,城東区・昭和50年というと,運送会社に勤めていた女性が運転手に交際を迫られて断ったために殺された事件らしいが,犯人は仲の良かったアパートの住人に付き添われて捕まり,服役も終えているが,別人だ。ぶつぶつ言いながら誰に聞かせたかったのと云うと,クリーニングスタッフ…。『砂男』杉村三郎が探偵業を始めた訳は…。大学進学をきっかけに山梨から出て行った三郎は,出版社に勤め始め,結婚して財閥系の冊子の編集室に転身。娘も出来たが,編集室を辞めさせられた女性が逆恨みし,三郎の妻と娘を誘拐する事件やバスジャックに巻き込まれ,妻の不貞で離婚・退職・帰郷した。産地直送の市場に勤めたが,配達先の20代半ばの蛎殻昴氏が時々訪れる斜陽荘に呼ばれ,蕎麦屋の男が東京に住む妻の友だちと駆け落ちしたらしいのだ。調査の手伝いを依頼された。男は中学2年の時,父が出張でいない夜,家に火を付けて母と妹を殺した疑いがあるのだが,それが20年経った姿と重ならない。妻の妊娠を知って,一晩中家の裏で身体を抱えて嘆いたという証言。相手の女性がクレジットカードを利用し,居所が割れた。真相は…。『二重身(ドッペルゲンガー)』四谷でカジュアル・アンティークショップを営む中年男性が震災後に失踪した。付き合っていた子持ち中年女性が嘆くのを見ていられない単位制高校に通う女子が捜してくれと言ってきた。地震で事務所が傾き,大家の家の一角を借りた。震災から二ヶ月,店を始末することが決まり,店を守っていたアルバイトの松岡も仕事を失う。松岡は店主の恋人の娘に無理矢理,万引きをやらせた知り合いにブランドの指輪を処分する手伝いをやらせようと接触してきた…~一人で考えて調べて書いているとしたら驚異的だ。ぼんくらシリーズも読んだが,回りくどいが実際の犯罪捜査とか失せ者探しは時間が掛かるだろうし,勘が働かないと手掛かりを掴めないかも知れない。この作品の前後作ってあるのだろうか??

  • 杉村三郎シリーズ短編集。予想通りというかなんというか、探偵始めたのですね杉村さん。そしてまさかマスターが本当についてきてしまうとは(笑)。
    どの物語も読み心地はほんわかムードではあるけれど、事件は決してほんわかしていなくて。派手さはないものの、かなり重く感じられるものも多いです。だからこそ、杉村さんの温かくけれども飄々とした姿勢がいいんだろうなあ。
    お気に入りは「砂男」。うーむ、このテーマは同じく宮部さんのとある作品に似ている気もしたのだけれど。なおさら哀切に感じました。「まともな人間」っていったい何なのでしょうね。善とか悪とか、そんな単純な言葉でくくることのできないのが悲しいなあ。

  • 杉村三郎シリーズ4。前作で離婚した杉村さんが探偵となる経緯を絡めつつな連作短編集。
    宮部作品によくでてくる下町のお金持ち一族が杉村三郎シリーズにも登場。探偵杉村さんに何かと便宜を図ってくれます。
    どの話もこのシリーズらしく毒気があり読んでいてどんよりしつつもおもしろかった。その中でも杉村さんが探偵となる事件を扱った「砂男」がおもしろかったです。

  • 2016.9.21読了
    杉村三郎シリーズは好きだったんだけど、これまでが長編で読み応えあったからか、短編だと物足りないからなのか、内容も余り頭に入らなくて中々進まなかった。残念。(図書館)

  • 前作の衝撃のラストから待ちに待った新刊。波乱万丈な人生を送りつつも、杉村さんが元気そうで良かった。シリーズも長くなってきて、自分でも思いがけず感情移入していたらしく、前作のあの終わりがショックで。
    人が今いる場所からいなくなるという共通項を持つ事件。それは自発的であったり、やむを得ずという事情があったり、事件性があったりと様々ではあるけれど、そこにいたという事実も人の記憶も変えられないという事はそれが物語になるんだなあと思った。
    杉村さんの体験を思い起こさせるような事件の連続で、特に表題作の「希望荘」は明るく見えるタイトルながらも杉村さんの人生を感じる切なさもあり。何度も見られた、桃子ちゃんとのやり取りもきっと成長にしたがって変わってくる事を想像すると、見たいような見たくないような…。
    また気長に続刊を待ちます。

  • 杉村三郎。切れ者ではない。巧みな話術を持っているわけではない。押しが強いとは言えない。ひらめき!は‥‥あるのだろうか。
    真実を知りたい心、絡まった物をほぐしたい気持が基本にあるから探偵稼業が何とか出来るのかもしれない。

  • シリーズ第4弾。
    衝撃の結末から、私立探偵として再スタートした姿を描く。
    杉村三郎の元気な現状を読めてよかった。
    人の身勝手さ、悪意、心の闇など、相変わらずざらざらして、読後感は決して良くない。
    それでも、杉村の人の好さが中和してくれる。
    震災をこう描くか、という驚きがあった。

  • 初読。図書館。杉村三郎シリーズ第4弾、でも短編集。シリーズ第1弾を読んだときの質感が戻ってきたかんじ。宮部さんの作品にしては温度が低いなあと。このへんは好みが分かれるところでしょうが、個人的にはこのシリーズが最も宮部さんらしくないところに分類してあります。杉村さん自身が結構大変な人生を送りながらも、淡々と受け流しているように受け取れるのが一因なんでしょう。まあでも探偵になってなんとか新しい生活をスタートしているので、安心しました。子供とつないでいた手を離すときのかさぶたの描写、よかったな。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

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