希望荘

著者 :
  • 小学館
3.80
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本棚登録 : 1950
レビュー : 310
  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864435

作品紹介・あらすじ

探偵・杉村三郎シリーズ、待望の第4弾!

その部屋には、絶望が住んでいた――。
宮部ファン待望の14か月ぶりの現代ミステリー。特に人気の「杉村三郎シリーズ」の第4弾です。
本作品は、前作『ペテロの葬列』で、妻の不倫が原因で離婚をし、義父が経営する今多コンツェルンの仕事をも失った杉村三郎の「その後」を描きます。
失意の杉村は私立探偵としていく決意をし、探偵事務所を開業。ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を調査してほしいという依頼が舞い込む。依頼人の相沢幸司によれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。35年前の殺人事件の関係者を調べていくと、昨年に起きた女性殺人事件を解決するカギが……!?(表題作「希望荘」)
表題作の他に、「聖域」「砂男」「二重身(ドッペルゲンガー)」の4編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 杉村三郎シリーズ第4弾!

    家族と仕事を失った杉村三郎は、東京で私立探偵事務所を開業する。
    ある日、亡き父・武藤寛二が生前に残した「昔、人を殺した」という告白の真偽を
    調査してほしいという依頼が舞い込む。
    依頼人の相沢浩司にによれば、父は母の不倫による離婚後、息子と再会するまで
    30年の空白があった。果たして、武藤は人殺しだったのか。
    35年前の殺人事件の関係を調べていくと、昨年発生した女性殺人事件を
    解決するカギが隠されていたー。「希望荘」より

    杉村が4つの事件の謎を解く連作短編集。
    ・聖域
    ・希望荘
    ・砂男
    ・二重身
    460頁という結構ボリュームのある本書に4つの短編。
    一話一話がとても丁寧に描かれていて読み応えがあった。
    本作は、前作「ペテロの葬列」で、妻の不倫が原因で離婚。
    義父が経営する今多コンツェルンの仕事を失った杉村の「その後」を描いている。
    杉村ファンの私は、あの結末にショックを受けその後どうなるんだろう…って心配してた。
    だからその後を知る事が出来たのは凄く嬉しかった♪
    冒頭は、東京の北区の築四十年の完全〝しもたや〟で杉村探偵事務所を開いていた。
    途中の事件では、離婚直後は山梨の実家に戻って半年位働いてたんだってわかる。
    そこで事件…謎…に巻き込まれてそれがきっかけで東京で探偵事務所を開く
    決意をしている事も明かされている。

    杉村の相変わらず穏やかで優しく、気弱にも感じられる雰囲気。
    鋭い洞察力に心の芯に温かさや大きな優しさを抱いてる姿やっぱり素敵です
    そして、下町の温かい人情溢れる人々に囲まれている。
    大家の竹中夫人。睡蓮のマスターの水田さんまで…(笑)
    そして、力強い味方「オフィス蛎殻」の社長さん。
    竹中夫人の三男のトニー
    これから助手として活躍するのかなぁ…次作は長編が良いなぁ。

    全てのお話が、う~んあまり幸せは言い難い人々が事件を起こしてしまう。
    何とも救いのないお話ばかりで、切ないのに読む手が止まらなかった。
    宮部さんの筆力によってかなぁ…決して読後感は悪くなかった。
    とっても不思議です。
    人生は全く平等ではないという事を改めて突き付けられた気がしました。
    人は自分の人生を生きるしかないのですよね。

  • 中編4編の作品です。逆玉に乗ったものの離婚の憂き目を味わい、バツイチ 無職 唯一7歳になった娘とのたまの面会が楽しみな38歳の杉村三郎の話。当たり外れがあったけど、タイトルになっている'希望荘'が良かったかな。戸籍売買の話'砂男'は先日読んだばかりの'ある男'(平野啓一郎)を連想させられたけど、作者は意図しなくとも題材がバッティングすることがあるのだ と再確認しました♪

  • ペテロに続いて読んだ杉村三郎シリーズ第4弾。いろいろあって探偵稼業を始めた杉村三郎の事件中短編集。出てくる周りの人間がおもしろい。前からのつながりの睡蓮のマスター。杉村三郎の大家一家の面々。私立探偵になるきっかけとなった蠣殻所長。
    特に印象に残ったのが「砂男」の中の失踪した夫。生れながら(か実際分からないけれど)の悪人よりも悪人に取り憑かれてしまった男。罪を犯したのには変わらないけれど、悪人は罪を犯そうが人を傷つけようが何も変わらないのに対して、取り憑かれてしまった方は自身の罪に耐えかねてしまう…その人と人でなしの境界線というものを興味深く感じた。

  • 杉村三郎シリーズ、4冊目。
    短編連作というか、中編連作というか。
    離婚の衝撃の、その後、を描いています。

    社誌の編集をしていた杉村は、時おり巻き込まれて調査のような仕事もしていました。
    財閥令嬢の妻と離婚して職も失い、今は私立探偵になっています。

    「聖域」
    亡くなったはずの女性が目撃された事件。幽霊なのか?
    杉村が調べていくと、じつは‥
    娘を訪ねてアパートに行くと、そこにいたのは?
    頼りなげな杉村だが、既にご近所さんに親しげにされ、かっての勤め先で常連だった喫茶店のマスターまで近くに店を出しているという。
    あたたかな環境にほっこり。

    「希望荘」
    息子からの依頼で、老人ホームで亡くなった父親が生前、殺人をしたかのような告白をしていたという。
    本当なのか‥?
    起きていたことを淡々と順々に調べていく杉村。
    希望という名は皮肉なのか、何なのか‥

    「砂男」
    離婚後、一度故郷の山梨に帰っていた杉村。
    もともと結婚には反対されていて、口の悪い母親には当たられるのが強烈‥でも、こういう人はいる気もします。
    周りは仕事口を探してくれて。
    行方不明になった人物の謎を解いたことから、蛎殻という名士に見込まれ、調査員になるよう勧められることに。

    「二重身(ドッペルゲンガー)」
    古い建物にあった杉村の事務所は震災で倒れ、広い屋敷に間借りしています。
    家の様子をうかがっていた黒ずくめの少女は?
    東日本大震災が起きてから、行方がわからないという男性がいた‥

    基本は現実味のある設定ですが、普通は起こらない、思いもよらない展開になるのが、さすが宮部さん。
    日常の中に潜む悪意というか、最初は悪人というほどではなかったとしても、状況に応じてやることがだんだん‥
    何考えてるんだかという人物がいろいろ登場します。
    人間は勝手な思惑でぶつかり合うものなんだねー、と。

    大人しく真面目でのほほんとしているようで~実は結構変わり者かもしれない杉村。
    杉村の味方がだんだん増えていく のが、救いとなっていますね。

  • 杉村さんのシリーズ4作目
    ところどころに前作のことや別れた娘のことが出てきたりするので
    シリーズの最初から読んだ方がいいのかも
    探偵になって慎ましく生活しながら色々な人々の相談ごとを解決して行く姿
    それと人間の怖さ
    弱さなどよく描写していると思う

  • 今年最初の作品。ゆっくり読ませていただきました。杉村さんは、私立探偵事務所を開き様々な事件と関わるようになっていきます。探偵なので、関わり方に限界はあるものの、彼の人となりがにじみ出ていてホッコリしたり、切なくなったり... どの事件もそれぞれに良かったです

  • 杉村三郎シリーズの最新刊。
    離婚して独り身となった三郎は、紆余曲折を経て探偵事務所を始める。
    新たな人生を歩み始めた三郎の短編連作集。
    死んだはずのお婆さんが目撃される。幽霊なのか? はたまた何か事情があるのか? 三郎が丹念に事実を辿って行く中見つかることとはーー「聖域」。
    「昔、人を殺したことがある」そう告白して死んでいった父。苦労を重ねて来た父。そんなことがあったとは信じ難い息子からの依頼ーー「希望荘」。
    離婚後、山梨の実家に帰っていた三郎。探偵事務所を開設するきっかけになったエピソードーー「砂男」。
    東日本大震災から二ヶ月。三郎が借りていた築四十三年の事務所兼自宅は使い物にならなくなってしまう。新しく間借りした狭い事務所に、全身黒ずくめの少女がやって来る。「希望荘」の依頼人の息子の友達の友達だという。母の交際相手が震災の直前から東北に旅に出てしまい、行方不明なのだとーー「二重身」。

    ところどころに描かれる三郎と、小学四年生になった娘・桃子との交流が切ない。
    「娘とつないだ手を離すとき、私はいつも、自分のなかで何かが剥がれるのを感じる。それはたぶん、傷がふさがってできたかさぶただろう。そしてまた少し血が流れる」

    現代を深く切り取る、宮部みゆきの真骨頂。

  • 杉村三郎シリーズ4作目。

    「聖域」
    「希望荘」
    「砂男」
    「二重身」

    ペテロの最後、私はちょっとほっとしたんです。三郎のお母さんみたいな強烈な感情はもちろんないし、菜穂子の事は嫌いじゃない。ペテロで起こったことも、どうしても世間一般的な不倫と同じように思えない…。そして桃子もかわいい。でも、どうしてもこの夫婦を見てるのが辛かった。傷だらけになったけど、これでようやく2人の手元に自分の人生が戻ってくるのだと思ったから。


    そして、待望の続編。
    2009年1月のあの結末から2011年の震災後まで、4つの事件を追いながら、彼がどのように過ごしてきたのか少しずつわかってきます。
    菜穂子は再婚はしていないみたい。桃子とは離れながらも温かい交流が続いてる様子。

    園田編集長が好きだったので、彼女がいないのは残念だけど、親族との親交がまた始まり(なかなか毒舌揃い…)、睡蓮改め侘助のマスターとなった彼(思い浮かぶのは、完全に本田博太郎さん)が何故か側にいて、竹中夫人という心強い人に目をかけられ…、坊ちゃんに探偵としての腕を見込まれる。

    これから、どんな人と出会うのか…。


    事件や犯人そのものよりも、他の登場人物の毒気にあてられるところに、ああ、杉村三郎シリーズだなぁ、戻ってきたーと感じ入りました。

  • 長いこと図書館で予約をしていてようやく届き読了。

    ペテロの葬列は正直序盤が長く話が盛り上がるまで遅く感じ読み終わるまでに時間がかかったけれど、これは連作短編ということもありテンポよく読めた。一つ一つの作品の長さがちょうどいい。

    前作のラストは衝撃的過ぎ、感情移入して読む私としては菜穂子に対してとても強い嫌悪感を抱いたのだけれど、この作品では三郎の家族に強い怒りと嫌悪感を抱いた。
    社会を知らないあまちゃんと言われようが、あの家族の態度には理解できないし共感できない。何かもっと接し方あるんじゃないの?と思ってしまう。
    それが人間らしいといえばらしいのかもしれないけれど、私はどうにも好きになれない。
    兄嫁はとくに。でもいるよなこういう人、とも思う。
    そこがやたらにリアルで多分私の琴線に触れるのだろう。

    事件としては帯にあったような「絶望」とまでのものは感じなかった。
    短編だからかそこまで難航することなく事件が解決して行くのでミステリとしては弱い印象。
    ただ三郎のお人好しキャラというか、人情み溢れるキャラクターはとても好きなのでやっぱり読んで良かったなぁと思う。

    事件を引き寄せてしまう、とそこそこ悲観しているように見えるが探偵ならむしろ喜んで追いかけて行くほどの強さを持ってもらいたい。
    人の生死や、心の歪みなどに素直に反応する三郎だからこその弱さなのだろうが。

  • 杉村三郎シリーズ。離婚し、義父の会社を辞め、探偵事務所を開業。場所は大地主竹中家の賃貸物件。ついでに前の会社の1階にあった喫茶店「睡蓮」のマスターも近くに引っ越し開店するという。好きな登場人物だったのでうれしい。連作短編で、1話1話は短いものの、やっぱり宮部作品は重いことや怖いことも書き込まれているなと思った。でも主人公杉村三郎は離婚でうじうじしていないし、毎回思うけど、重い事件に遭遇しても結構淡々としているところが読みやすい。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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