- 本 ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864466
作品紹介・あらすじ
あなたの知らない若冲をお見せしましょう。
若冲没後百年を経た明治37年、セントルイス万博に突如〈若冲の間〉というパビリオンが出現する。この時〈Jakuchu〉の名を世界に広めたのは誰だったのか?京の図案家神坂雪佳は、若冲の末裔という芸者から、〈若冲の妹〉と呼ばれた美しい女性の話を聞く。
宝暦13(1763)年、京都錦の青物問屋〈枡源〉に、一人の少女がやってきた。主の若冲が飼う鶏や、珍しい鳥、美しい毒草などの世話をするために。その名は美以。体からは不思議な芳香が漂っていた。若冲はその匂いに、かつての異国の女の面影を重ね合わながらも美以を自分の弟に与えてしまう。若冲を慕う美以は、以後〈若冲の妹〉として思いを秘めたまま生きていくことになる。
『動植綵絵』の完成間際に錦市場を揺るがす事件が起こり、その弟が謎の死を遂げる。彼は本当は若冲の何だったのだろうか。さらに天明の大火による被災……だが、若冲が本来の絵師として蘇生するのはそれからだ。そして、いつも傍らには〈妹〉の姿があった。
心の中の〈奇〉を描かずにはいられなかった絵師、若冲。時空を超え魅了し続けるその素顔と秘密に、江戸と明治の二つの時代軸で迫った渾身の書き下ろし小説。
感想・レビュー・書評
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伊藤若冲のバイオグラフィをベースにしたフィクション。
明治36年セントルイス万博に若冲作品とそのモチーフをつかった新たなデザインものを出展するという話でスタート。富田屋玉菜という若冲の子孫/舞妓が出てくる、若冲の子孫で玉菜(キャベツ)、どこまでも野菜です。若冲自身が妻を娶ったとか子孫を残したという明確な文献が今の所ないです。ともかく、その玉菜(実似子)の祖母が美似で、その息子に嫁いだ極子(玉菜の母)がお姑さんの美似の話を語るという流れ。風来山人(平賀源内)が出てきて、高橋克彦本かっとツッコミ入れたくなりました。時代的には同時代の人ではありますが、。ともかく、文章的に個人的に相性悪く、ストーリーの組み立てもあまり好みではなかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今でこそ、「若冲」と言えば~
なのでしょうけれども
きっと、それほどいろいろなものが「絵」以外に遺されていたわけではないのでしょう
さまざまなものに遺されてきた若冲さんにまつわる断片から想像をふくらませて、ここまでの物語に仕立てていく河治和香さんの筆力が素晴らしい。
なんとも魅力的な若冲さんがまた一つ生まれましたね。 -
まず若冲を書くのではなく,明治時代のセントルイス万博でワンクッションおいて,そこから遡って若冲にせまる.200年後に評価されたいという願いのかなうところも書きたかったのはわかるのだけど,そのまま若冲で始まっても良かったのではと思った.美以の視点で語られる丁寧な心情描写が,そのまま若冲の作品解説になっている.ただ宗右衛門の屈折した心模様が残念でかわいそうだった.
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天才「絵師」若冲ではなく、一人の男としての「若冲」がここにいる。
澤田瞳子の描く若冲が剛の人なら、この若冲は柔の人。
河治和香の作品





