- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864565
作品紹介・あらすじ
僕らは誰も彼女のことを忘れられなかった。
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
旅の夜の怪談に、青春小説、ファンタジーの要素を織り込んだ最高傑作!
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
【編集担当からのおすすめ情報】
春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸の騒ぐなりけり
--西行法師
感想・レビュー・書評
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かつて仲間が失踪した経験を持つグループが10年ぶりに再会して宿泊先の宿で、離れ離れになった期間に起こった不思議な体験を一人一人語る物語。
修学旅行でみんなでそれぞれ怖い話をするような感じです。
それぞれの章ごとに語り手が変わります。ただ、それぞれの話が一貫して「夜行」という作品群との関連があるのですが、それぞれの話に少しずつ納得いかない箇所があり、あまり没入できませんでした。
「夜は短し〜」や「四畳半シリーズ」とはテイストも文体もだいぶ違います。
好みが分かれる作品のように感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この中の世界のことを何と表現すればいいのか?不思議な世界にどっぷり浸りました。
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曙光と夜行の対になった世界はある銅版画でつながっている。半分ミステリーとも思えるパラレルワールドファンタジーでした。
不思議なことは不思議なままにして、分からないことは分からないままにして読み終わることにしました。 -
刊行後すぐに購入したものの、ホラー要素の強い登美彦氏の作品は覚悟せねばならんぞ…と本棚で温存させてしまった本書。
ようやく(2年ごし!)チャレンジする心持ちになったので読んでみました。
学生時代、仲間と出かけた鞍馬の火祭の最中、長谷川さんが姿を消した。
彼女は見つからないまま10年の月日が経ち、再び鞍馬の火祭に出かけることにした5人の仲間たち。
禁句のようになっていた長谷川さんの名前が話にのぼり、やがて1人ずつ、10年のあいだに起こった不可思議な出来事を語り始める。
そして彼らの話にはいずれも「夜行」という名の銅版画がつきまとっていたのだった…
登場人物たちの語るエピソードは正体不明の不気味さが満ちていてぞわぞわします。
「なぜ」が語られない不条理な恐怖には、やめたいのにやめられない中毒性がありました。
怖い怖いと思いながら読んだ先に待っていたクライマックスは、登美彦氏流の1つの救いの形なのかな、と思いつつ読了。
"今ここ"にいる自分の存在がどうも不確実に感じられる読後感も、少し怖いと思ったり… -
初の登美彦氏。はじめは、登場人物が多く話がまとまっていないと思ったが、最後には全ての話が繋がった。
読み終わると不思議な気持ちになる、ホラー小説。 -
鞍馬の火祭りに集まった学生時代の仲間達。夕食の席で10年前の火祭りの夜に失踪した仲間の女性を画廊で見かけた話をきっかけに、その画廊で開催されていた個展の銅版画家の連作「夜行」に纏わるとも思われる奇妙な話を仲間が一人ずつ語っていく。尾道。奥飛騨。津軽。天竜峡。舞台となる街の日常の横に潜む闇。それに触れた仲間は以前の仲間なのか。仄暗い闇が知らない間に足首から上ってきそうな雰囲気がなんともいえない。永遠の夜「夜行」とただ一度きりの朝「曙光」語り手が踏み込んだ、そして戻ってきた世界はどちらなのか。自分の足元の曖昧さも感じさせる緩やかな締めがまた不思議な感触だった。
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何とも不思議な世界観。
森見作品によくある(?)おふざけ的な展開、思わず吹き出してしまいそうになるセリフは一切なしで、暗く無気味な雰囲気をたたえた夜が永遠と進んで行くような作品です。
私は『きつねのはなし』や『宵山万華鏡』など、ちょっと不気味さを持ち合わせた森見作品が好きなので、今回も引き込まれるように読みました。
ただ、最後の終わり方はちょっとモヤモヤが残るものだなぁと。 -
最初から最後まで不思議な物語だった。雰囲気が似た作品に森見登美彦のきつねのはなしが挙げられるが、それより増した「不思議」が感じられた。
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森見登美彦さんの作品はこれまで何度か挫折しており苦手意識があったが、これは読み終えることができた。
岸田道生という人の描いた絵画を中心にしたファンタジックでミステリアスなストーリーだ。
何がいいかというと
作品の全体的な日本語の美しさだ。
言葉の選び方や表現が実に上品で美しい。
以前、森見登美彦さんの作品を手にした時も感じた独特の描き回し。
それがこの作品の雰囲気と非常によく合っており、全体に透明感と日本語の美しさが流れている。
しかしながら、内容はないというか
夜行列車で不思議な世界をサーーーーっとみたような感じの読了感がある。
何かを見たように思うが、それが手にできないような感じ。
それがこの作品の良さであり、美しさなのかもしれない。 -
かつて仲間の一人が失踪したグループが、再び鞍馬の夜祭に集まる。一人の画家の連作に関連する不思議な出来事をそれぞれが語り出して‥
一人一人が旅先での絵と関わりのあるような不思議な出来事を語っていくが、どれもモヤモヤとした感じで、最後もぼやかされるのが、不穏な感じをかき立てていておもしろい。
ただ、各話で盛り上げた雰囲気が最後の話につなげられていない感じがした。きれいな終わり方と思ったが、それまでの雰囲気と、どうつながっていくか期待していたのもあったので、その点は少し残念だった。 -
初森見登美彦氏。
やわらかい文体の中に潜む
少し狂気じみた雰囲気を纏わりつかせる。
絵画「夜行」の連作を媒介にした幻想的な短編を
最終章で美しくまとめた作品。
ホラーのくくりにしたけど、
どちらかといえば幻想小説、ファンタジーに近いような。
こういう物語の進め方終わり方は好みなので、
他の作品も読んでみよう。 -
森見登美彦初読み。岸田道生が描いた銅版画の連作「夜行」を元に、10年ぶりに集まった仲間がそれぞれの不思議な思い出を語る。久しぶりの怪談ものに、最初は入り込めなかったが、「夜行」の隠された謎に迫るごとに夢中にさせるものがあった。ラストは普通に考えれば、理解しがたいことだけれど、10年前に仲間の一人が姿を消した理由も明らかになり、作品としては十分面白かった。
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初めての森見登美彦さん。図書館でたまたま見つけ、森見さんの作品読んだことないなと思い手に取った。
感想は、こわかった。何度も途中で辞めてしまおうか迷った。でもこわすぎて、途中で辞めたら後々気になってしまうかも?と思って最後まで読んだ。最終章で救われたような、モヤっとしたような感じがした。怖いけど、文章は優しい感じで読みやすく、世界観が面白いなと思う。ただ、こわかった。 -
はっきり言って、面白さや興味、共感を感じることのない本でした。こんな本だった・・・・退屈しました。読み方がいけなかったのでしょうか?
その人の感じ方次第かも知れませんが。 -
英会話スクールの仲間たち行った「鞍馬の火祭」、仲間のひとりだった長谷川さんがその夜から姿を消します。
その10年後、再び火祭を見に行くことになり、仲間が集まったところから話が始まります。
集まった仲間はひとりずつ、自分の話を語りはじめます。
その話はまるで百物語のように不気味で、地に足がつかないような浮遊感をもったまま語りが終わり、次の人の話が始まります。
その不気味さは、読み進めるうち、徐々に読み手にもうつってきます。
ひとりひとりの語りは奇妙な話のまま終わりますが、物語全体にただよっている不気味さの正体は、ラストで明かされます。
ですが私は、物語すべてを読み終えたあともなお、夜の世界に漂ったままでいるような、そんな感覚が抜けませんでした。
完全に「夜行」の世界に、つかまってしまったようです。
読み終えたあとの、なんともいえない浮遊感を心地よく感じるかどうかで、☆の数が変わる小説です。 -
『夜行』に関してはまず絶対に言っておきたいのが、必ず単行本を手にしてほしいということ。例えば今後文庫版が発売したとしても最初は単行本を手元に置いてほしい。図書館で借りてくるでもいい。なんでもいいからとにかく単行本に触れてほしい。なぜなら内容よりもまず表紙が好きだから。カバーの絵柄だけなら手にしなくてもわかるけど、『夜行』と言われてこんなにイメージの合致する装丁、触り心地、何を取っても満点。だから騙されたと思って単行本を選んでほしい。騙されても責任とらないけど。
森見本にしては珍しいミステリー系。ミステリーは馴染みがないので読むのにかかるだろうなあと思いきや三日間暇さえあれば読み続けすぐに読破した。ミステリー×森見登美彦なのに文体はとってもマイルドなので正直文体だけで言えば過去作の中でも初心者にオススメ度高いのでは??
ただし内容が森見登美彦節全開どころか振り切ってるまである。
森見作品は総じて気合い入った時に一気に読むのがベストなので、数日間かけてちまちま読むのは内容がぼけるし惰性みたいになるのでオススメできないが、殊この作品はそれが顕著だと思う。
一気に読んでも二週はしないと核が読めてない気がするので小分けに読むと最悪のような感じがする。
追記する -
「よくわからなかった」から読んでほしい、と友人に言われ読みはじめた。本当に「よくわからなかった」。いや、わかってきたかも!と思ったこともあったのだが、結局わからず仕舞い。淡い期待は夜に消えてしまった。
この物語は、読んでいるとどこからか冷気が感じられ、日が陰っていくような気さえしてくる。たまたま台風上陸の日に読んでいたので、自分のどの感覚が本当で嘘なのかわからなくなった。
物語の内容も似たようなものに思えた。
夜と朝、闇と光、夜行と曙光。これらの境界が曖昧なのだ。
パラレルワールドというものなのか。
それとも、この世のすべては虚構なのか。
私たちが普段「よくわかっている」と信じて目にしているものは、本当にここにあるのか、本当に「よくわかっている」のか。
作中の「魔境」と「ガガーリン」のエピソードが印象的であった。
読了後には「明けない夜はない」という言葉が浮かんできた。
総じて「よくわからなかった」のだが、夜が過ぎれば朝が来ることへの感謝、喜びのような気持ちは確かに感じた。 -
「夜行」と題された連作の絵画をめぐる奇譚集。
サスペンス?ホラー?ファンタジー?
短編のようでいてページがすすむごとにそれぞれが根底で繋がっていく。
「世界はつねに夜なのよ」
今この瞬間さえも、世界はくるりと様相を変えるかもしれない。自分がいるのはどちらの世界なんだろうと、考えてしまった。