雨利終活写真館

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 443
感想 : 67
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864602

感想・レビュー・書評

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  • いつの間にか芦沢央のファンになり10冊目。今回はエグイ内容ではなく思いのほかホンワカしていた。ライトな芦沢さんも興味深かった。遺影撮影写真館のお話し。故人の葬式の時に家族を困らすのが遺影。毎年とは言わず数年間隔で事前に撮影する必要がある。祖母が面倒を見なかった母親に遺産を残さなかった謎、孫が母親が転落した時に救急車を呼ばなかった謎、妊娠中の子を想う母親の謎、不倫相手と妻の写真を交互に送りつけようと思った父親の謎。すべてがミステリーであり劇的な理由だった!主人公・ハナは未熟だが熱いハートを今後も期待したい

  • 「人生の終焉を迎える時、本当に大切なものが見えてくる。」
    遺影専門写真館を舞台にした4編の連作短編集。
    ・一つ目の遺言状     祖母の奇妙な遺言が波紋を呼ぶ
    ・十二年目の家族写真   母の死をめぐる、息子と父の葛藤
    ・三つ目の遺品      雨利写真館に残る一枚の妊婦写真の謎
    ・二枚の遺影       末期癌を患う男性の訳ありの撮影

    巣鴨の裏路地に佇む遺影専門の雨利写真館には、今日も死に向き合う人々が訪れる。
    そんな写真館にやってきた4人の依頼人を巡る4つの秘密。
    そんな撮影にやって来る人々の生き様や残された人の人生ドラマやちょっとした想いを
    ミステリー仕立てでスタッフたちが見事に解き明かしてゆく。
    解き明かされるその秘密は大きく、重く、そして優しい。
    知らないままの方がいい秘密もあるだろう、でも知る事で変わるものもある。
    ミステリーなのにとっても優しかった。
    最近良く耳にする「終活」をテーマにした作品ですが、
    「遺影」専門の写真館を舞台にって良く思いつくなぁって感心した。
    遺影を選ぶのって本当に大変だと思う。
    確かに、その日の前にきちんと撮っておくのって残された家族にとってはとてもありがたい。
    漠然と自分の葬儀のシーンを想像した。
    お気に入りの服を着て、綺麗にヘアメイクした遺影を参列者の方に見て欲しいって思ったし、
    いなくなった後も、自分らしい写真を家族に見てて欲しい。
    写真を生前から準備していくのも大切だと思った。

    終活というタイトルから年齢を重ねた人を対象にした本の様に感じられるかもしれませんが、
    読み始めるとその世界にぐいぐい引き込まれました。
    とっても温かい気持ちになれました。
    そして、大切な人たちとの別れについて考えさせられた作品でした。
    スタッフのこれからがとっても気になります。続編熱望です!

  • 急逝した祖母の遺言状には母の名前だけ書かれていなかった。その理由を知るために、祖母が遺影を撮った写真館へと向かう。
    ひょんなことから遺影撮影専門の写真館で働くことになった『ハナ』の目を通して描かれる、家族の物語。


    故人の本心を解き明かすことは出来ない。行き違ったまま別れてしまったとしたら、尚更悔いが残るだろう。終活やら遺影撮影などというのは何だか縁起が悪いように思えてしまうけれど、逝く方も残された者にとっても悔いを残さないためにはあんがい大事なんじゃないだろうかと思えた。
    タイトルから心温まる話を想像したのだけれど、他の作品が頭にあったので少しドキドキしながら読み進めた。一作目はほっとしたものの、二作目はやはりちくりと刺さるものがあった。全体的には柔らかいのに、小さなとげが刺さって抜けない・・・これがこの著者の味なのだろうか。

  • 突然結婚破棄されたハナは、祖母の急死を知らされる。遺言状を手に遺影を撮った雨利写真館を訪れる。

  • 元美容師で二十九歳の傷心のハナが出会った遺影専門写真館の女性店主、似非関西弁のカメラマン見習い、無礼なカメラマン。クイズ好きの祖母の遺言、息子の奇妙な絵、過去の妊婦写真、二人の女性との二撮影。拗れた家族間をそっとほどいていく様子に安心感があり、疑惑を覆す誰もが傷つかない真相達にもぐっと引き込まれた。

  • ミステリーなのか!?

    またまた会社の方から頂いたので、事前情報ゼロで読んでみることに。。。

    有名美容院で働くハナ。そこへ客として現れる高井伸雄。
    四年間付き合い結婚かと思いきや、彼は妻帯者だった。
    彼の「もう俺、絶対ハナと結婚する」という言葉と安物とわかるイミテーションダイヤの指輪に騙され、勤めていた美容院をやめてしまう。

    ひょんな出来事から雨利写真館に採用され、、、

    私の苦手な短編集ではあったが、登場人物がコロコロ変わるわけでなく、割りと読みやすかった。

    写真館を訪れるお客様それぞれのドラマと雨利写真館のスタッフが関わっていくのだが、なかなか個性的なメンバーで楽しく読み終えることができた。

    ミステリー好きではなくても楽しめる一冊ではないかな?と思う(*^^*)

  • 面白かった!
    遺影を撮るっていうテーマが他には無かったし、主人公が抱えてたものがお客さんの問題と上手くリンクして解決していくのが良かった。
    婚約者が既婚やったってのはおいおいおい!ってなったけど。笑

  • 連作短編。

    ちょっとありそうな謎を解明していくのだけど、
    真相はありきたりではない。
    そこがいい。
    その意外性に、ありえないとか、ファンタジーとかの要素もなく
    ちゃんとストンと腑に落ちる。

    そしてタイトルにもある雨利という人がカメラマンで、
    真相に近づく鍵を見つけるのがいつも彼なのだけど、
    主人公はハナ。
    ハナは祖母を亡くしただけでなく、恋人も失い、仕事も失って
    傷は深い。
    そんな彼女が写真館でスタッフとして働き始めて
    ほんの少しだけ前向きになる過程が良かった。

    どんな悲しみも後悔も消えることはないけれど、
    少しずつ癒えていく、
    内面を細やかに描き出してくれて、
    優しい気持ちになれる。

    二話と四話でちょっと泣けた。

  • 遺影専門写真館が舞台の短編集。
    勝手な偏見で、短編集はサラッと軽く読める分、内容は希釈されたものが多いよなあと、あまりに期待していませんでしたが思いの外良かったです。
    それぞれの短い物語のなかにそれぞれの形の温かい想いがあって、この本の性質上それはどれも大切な人の、「死」とリンクしています。

    喪失を前提とした物語はやはり読者の心を揺さぶる王道だし、だからこそ類似したテーマの物語はいくらでもあって、パターンも出尽くしている感がある。
    でもこの写真館で出会うストーリーには、ありきたりだったり容易に展開が読めてしまってしらけるものがありませんでした。
    奇をてらっているような違和感がないのに、いちいち胸のどこかがザワザワしたりジンワリしたりグッときたりするのは、スタッフや故人、死を待つ人、遺族や遠くない未来に遺族となってしまう人達にきちんと血が通っているからだと思います。

    ただ雨利さん、いいキャラだしキーポイントには絡んでくるけど存在感薄い。まあ、タイトルは「雨利さん」じゃなくて「雨利終活写真館」だからこれくらいのさりげなさがいいのか。

  • 遺影専門の写真館での奇妙な短編。
    なかなか奥深い話もあり…胸にせまる話もあり…。

著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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