燃えよ、あんず

著者 :
  • 小学館
3.60
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本棚登録 : 289
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (418ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865227

作品紹介・あらすじ

人生、何が起こるかわからない(本当に)

下北沢の小さな書店・フィクショネスには、一癖も二癖もある面々が集っていた。癖の強い店主、筋金入りの「ロリータ」愛読者、大麻合法を真面目に主張する謎の男、大手企業で管理職に就く根暗な美形男性、そして、決して本を買わずに店で油を売り続ける、どこか憎めない女子・久美ちゃん。
そんな彼女に新婚間もなく不幸が訪れる。それから十数年。ある日、久美ちゃんがお店にふらりとあらわれた。同じく懐かしい顔の男を伴って――。

感想・レビュー・書評

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  • 久美ちゃんを、騒ぎに巻き込まれた本屋の店長目線で書かれたお話。
    登場人物みんなどこかポンコツで、憎めない人たちだった。

    久美ちゃんは一般的に言う頭のいい人ではないが、愛情に溢れていたり、由良さんの歪んだ思想も理解できなくはないものだったり(歪みすぎだが)...
    キタノさんやピンキーなどクセの強い人もみんななぜか久美ちゃんのことを応援し、最終的には由良さんの歪んだ思惑は獅子虎(素直すぎる人)に崩され大団円に。

    終盤は笑えるところもあり、最後の獅子虎の話を読んだ後は想定外でうるうるしてしまったり、、
    もう一度読み返したいと思う作品だった。

  • なぜこの本をブクログの本棚に加えたのか、忘れてしまったが、タイトルに惹かれ(文学的知識が浅過ぎる為、これが室生犀星の詩からとったものだと全く知らなかった)読んでみたが、正直、予想外に面白かったし、深く心に刺さった。

    初めて読んだ作家さんだったが、自分の読書の幅の狭さを改めて思い知った。
    ちょっと西加奈子さんの描く人間像を思い出した。割とボリュームのある話だと思うが、一気に読んでしまい、家のことはほったらかし…。2019.8.3

  • 由良の手帳辺りで一旦憂鬱になって、これはあんまり好きじゃないか?と思ったけど
    そっからまたくみちゃんの話やおさむさん視点になって、どんどん引き込まれて、おさむさんと桃子さんの掛け合いが面白い。

    くみちゃんと新宮さんが無事結ばれて幸せになるのも、新宮さんのお父さんが無茶苦茶そうで実はめっちゃ良い人だったのも、本屋に集まるみんなが優しくて、由良さんも最後はちゃんと笑ってくれてて、幸せな気持ちになる最後だった。
    面白かった 

  • 愛すべき登場人物たち。みんながポンコツなのに大切な人たちのために奔走する姿が微笑ましくもあり感動すら覚える。本屋さんの店主から見たという設定もなかなか面白い。
    そして謎に包まれた獅子虎さんの章が個人的にはとても好きだった。本編ではどうしようもない人として描かれているだけに彼の背景を知ることで物語に深みが出てきて。
    ドタバタ喜劇のようであった両親対決に
    こういった思いがあったのかと
    妙に納得して、易しい気持ちで読了することができた。
    人を想い続ける易しさにあふれるお話だった。

  • まったくもおなんなんだよこいつら
    T^T

  • 帯に書いてあるほどの大傑作では無いけれど、それなりに面白く読めた。
    主人公の「久美ちゃん」がいい味出してる。
    脇を固めるオサムさんや桃子さん、キタノヒロシや由良さん、ピンキーちゃん{此処まで書いてきて思ったけど変な登場人物ばっかり)も見事なチームワークで久美ちゃんを盛り上げる。久美ちゃんのご両親や旦那さんになる新宮さんは、ある意味常識人ではあるが久美ちゃんに絡むとどいつもこいつも人情喜劇になってしまう。
    そう、「花登筺」の世界なんだよ。漢字あってるのかな、勝手に変換したけど。なにか懐かしさとノスタルジーを感じる人情長編でした。泣けるほどではないけどジワっとくる。
    おススメ!

  • 普通に書いたら
    久美ちゃんという女の子が
    人生の荒波を越えて幸せをつかむ話
    …だと思うのですが。
    なぜか、その人生に関わった
    書店主(たぶん著者本人)と
    常連客たちのドラマまで入ってくるので
    ずいぶんとにぎやかです。

    久美ちゃんのまわりの人々が
    常識的には大丈夫か?なところはあるものの
    みんな温かい人で良かったよ。

  • タイトルがどこで効いてくるのかと思っていると、殆ど最後だった。

    あんずよ
    花着け
    地ぞ早やに輝やけ
    あんずよ花着け
    あんずよ燃えよ
    ああ あんずよ花着け ー室生犀星

    「わしはなんの報告があるとも、思てへんかった。久美子がふらーと遊びに来てくれただけで嬉しいんや」
    久美子の義父の言葉を読んだ時、朝日新聞で紹介されていたのを思い出した。
    温かさが滲み出したような、想いが隠せないようなフレーズ。

    私なら由良は許せないし、事故を起こしそうな桃子に運転はさせないだろうし、ましてや初対面の父親を結婚相手に会わせること(人物としても普通じゃないし)も断固やらないけど、それを少しずつ許容することで想定外の幸せも運ばれてくる。そしてクスっという笑いも。
    、、フィクションとはいえ、考えさせられるなぁ。

    でもこんな温かみに溢れた人が多いのに、みんな、自分は友達が少ない、という。何だろうな。

    最後の獅子虎のセリフは、予想はしてたものの締めとしてイイ重しになっている。

    久美子との出会いとその成長を追う書店店主の目線を中心に書かれた物語。途中、会話形式で進む箇所は冗長に感じられたけど、人の温かさがじんわり伝わってくる本だった。

  • うまく言えない。でも読んでほしい。

  • いやあ、面白かった。
    簡単に言えば個性的でかわいい女の子が悲しい出来事を経験して中年になり、苦労してきた若者と恋愛して結ばれるって話で、あらすじだけならごく普通で、なんでこんなに長い小説になるの?と言われそうだけど、必要にして十分な長さなのだ。読み出したら止まらない。
    登場人物全てが生き生きとして魅力的な上、語りが巧み。本当に上手い。読んでいて、登場人物たち、特に久美ちゃんとマサキくんを応援せずにはいられない。
    二人が人間としてちゃんとしていながら、過去のせいで必要以上に世間に冷遇されるのが切ない。そんな中でも二人がおずおずとお互いを知り合い、好きになっていく様子が歯がゆいくらい純情。恋愛小説に特に興味はない私でもグッときた。
    そして何度も言うがキャラクター造形の巧さね。特に獅子虎。こんなに汚くてとんでもない、それでいて愛すべきじいさんは滅多にいないよ。
    中年になって初めて会社勤めした久美ちゃんがエクセルと格闘するシーン、みんながミラ・ジーノに乗り込んで獅子虎に会いに行くシーンは笑える。
    上手い脚本で映画にならないかな。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。2003年、『アンダンテ・モッツァレラ・チーズ』(小学館)でデビュー。2014年、『世界でいちばん美しい』(小学館)で織田作之助賞を受賞。主な作品に『おがたQ、という女』(小学館)、『下北沢』(リトルモア/ポプラ文庫)、『いつか棺桶はやってくる』(小学館)、『船に乗れ!』(ジャイブ/ポプラ文庫)、『我が異邦』(新潮社)、『燃えよ、あんず』(小学館)など多数。エッセイ集に『小説は君のためにある』(ちくまプリマ―新書)など。

「2021年 『睦家四姉妹図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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