もう二度と食べることのない果実の味を

著者 :
  • 小学館
3.42
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本棚登録 : 173
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865395

作品紹介・あらすじ

15歳、一生忘れられない人に出会った

『ふたりを誰よりも深くむすびあわせ、同時に破滅をもたらしたもの。
それが、セックスだった。』

17歳で「女による女のためのR-18文学賞で鮮烈なデビューを飾った雛倉さりえ。あれから6年たった今、満を持して刊行する衝撃作。

高校受験のために勉強に励む冴は、学年で2位を誇り、クラスの中で近寄りがたいと浮いた存在。ある日、クラスの女子に掃除当番を押しつけられた冴は、学年トップの土屋くんと教室で二人きりに。受験のストレス、クラスで浮いた存在、姉へのコンプレックス、様々な鬱屈が絡み合い、好きでもない、ただそこにいただけの土屋くんにキスをしてしまう。二人は、その後、学校や家の人に隠れて逢瀬を重ね、危険な遊びへ身を投じていく。二人に切なすぎる結末が待ち受ける。

刊行前から話題騒然。3月よりデジタル少女漫画誌「&フラワー」でコミカライズ連載開始。4月よりCanCam.jpでも大型試し読みを予定。装幀写真は今、話題沸騰の写真家、岩倉しおり氏。





【編集担当からのおすすめ情報】
これほどまでにみずみずしく、リアルに思春期の思いを綴れる作家がいただろうか。雛倉さんの描く、冴と土屋くんが放つ15歳の繊細さと剛胆さ、不器用さが胸に迫る。恋だったのかどうかわからなかったけど心をざわつかせてくれた人に、もう一度、会いたくなる物語。

感想・レビュー・書評

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  • ブクログの献本で頂きました。性的な描写は確かに全面に出ているのですが、あまり下品な印象もなく、透明な水の底で交わらされているような、不思議な陶酔感がありました。これから磨かれていく作家さんだと思います。

    正直、性愛でしか埋まらないなにかもあるように、性愛でなくともどうにか出来る問題も、あるので。

    この時期の冴と土屋くんには、この方法しかなかったのでしょう。此処から先、どうやって「それ以外」の鬱屈との向き合い方を知るのか、そしてそれを身に着けてから、もう一度愛する人とのベッドに身を投げる時、大人になった冴は何を思うのか、の方を、私は読みたい気もします。

    読み進めてゆくと、土屋くんは離れていくし、冴も死にはしないだろうな、と、ある時点ではっきり解ります。そして、そのことがとてもつらかったですね。

    女は結局、いくつであっても、好きな人でなければ抱かれないし、身体で表す愛情だけだと思っていても、気が付ないままに、こころも惹かれているものだと、つくづく思い知らされる作品でした。男性は、ここまでにしておかなければ、俺にとってヤバイな、と思えば「好きだったよ。さよなら。」で終われます。そして、綺麗にそれを脱いで、次の女を愛することも出来るでしょう。

    女の心の中の葛藤とか、振り向く思いとの戦いは、その底からが本番。あの時の絶頂感は、あの時のせつなさは、と、こうして言葉に出せるようになるのに時が必要で。そんなこともあった、と無色透明な思い出にするには、もう一段階時が必要です。

    冴がいつか、何も失わない交わりに、幸せに溺れていける日が来ますように。その時彼女が、別れなくていい大人でありますように。

    • 大野弘紀さん
      その先、そして過去になった時にどう振り返るのか。

      今という点だけを描いたと言えば刹那的ですが、そういう広がりの可能性を十分に秘めた、壊...
      その先、そして過去になった時にどう振り返るのか。

      今という点だけを描いたと言えば刹那的ですが、そういう広がりの可能性を十分に秘めた、壊れそうな作品なのだと思いました。

      レビューに、はっとする。
      作品には描かれなかったあえての裏側が、垣間見えたような気がして。
      2019/05/12
    • 瑠璃花さん
      >大野様
      はじめまして。瑠璃花です。拙いレビューにお目を留めて頂き、ありがとう存じました。切り取られているのは現在ですが、愛した記憶は未来...
      >大野様
      はじめまして。瑠璃花です。拙いレビューにお目を留めて頂き、ありがとう存じました。切り取られているのは現在ですが、愛した記憶は未来の自分にも、深く残るものだと思います。残酷な別れでも、美しい別れでも、別離は既に、その時点で何かを壊して行き過ぎていきます。だって、愛しんだひとには、もう会えないのですから…。けれど、だからこそ。振り向いた時、その時をどう思い返すのか…叶うならば、それは。憎しみや後悔に染まっていなければいいと思うのです。この作品の主人公達は、まだうら若い。汚れぬ水晶のような記憶に、変わっていけば素敵ですね。
      2019/05/12
  • 中学三年生、多感なあの時期。
    繊細な感情の波、
    家族や友人との関係、その中にある自分の位置。

    随分前に通り過ぎた年齢なのに
    読んでいると心がその頃に引き戻されて
    胸がキュッとなります。
    苦しい、でもない…甘くもない。
    ただ、締め付けられる気持ち。
    懐かしさを感じました。

    私はすごく引き込まれました。
    感情が静かに揺さぶられる、そんな本。

  • 人間が持つ欲望とそれが満たされる快感にひょんなことから中学生で気づいてしまった。性行為って改めて何だろうと思う。愛の表現でもあり、快楽を満たす行為でもある。動物としての役割としては、子孫を残すための行為なのに、なぜここまでの衝動が呼び起こされるのだろう。

  • 青春 閉塞と衝動と疾走

  • 雛倉さりえさんの最新作。
    ジェリーフィッシュは途中で挫折してしまったけど、今度こそ…!と意気込んで読んだら、全然そんな必要もなくみるみる世界にどっぷり入り込んでしまい、あっという間に読了。

    性の目覚め。自分の中に眠っていた欲望に気づき、それらを爆発させる術を覚えてしまうこと。自分の以外の体温の心地よさを知ってしまうこと。
    優越感や、多幸感や、背徳感や、罪悪感や、そういうものをずっと抱えながらも貪るように性行為に耽っていたあの頃。神社の裏で、自分たちだけ大人になったつもりで、あれほど神聖で特別で禁忌だったはずの行為は、本物の大人になった今は一体何に変わってしまったのだろう?
    これは物語だから、正直どこかで先生や親にバレたりしてほしいな〜なんて意地悪く期待するところもあったけれど、まぁ冴と土屋くんの世界が守られたままで良かった。破滅ってほどじゃないよ。

    大人になってからの方が人生は長い。
    一瞬重なりすれ違っただけなのだとしても、きっといつまでもその交差した瞬間の、まるごとの全身で体感した熱は、傷跡のように消えることはないのだと思う。私も作者とともにそう確信している。

  • うん。すごかった。
    本の中の世界は、青色でも緑色でもないような
    グレーが少し混ざったようなドブのような色。
    一度入ると抜け出せない世界。
    一気に読んでしまわないと
    自分のこの現実の世界にもそのドブ色が
    侵食してきそうな感じがして、
    一気に読み進めました。
    大人でもない、かといって子供でもないあの時期だからこそ、先のことも考えず、行動してしまうことはあるし、自分の周りのあらゆることをあまりにも深く考えてしまう。私も10年ほどまえの学生時代を思い出してしまいました。
    ほんの世界にどっぷり浸れるような作品でした。

  • デビュー作のジェリーフィッシュ、ジゼルの叫びと両方読んでいます。今回はブクログさんからの献本でいただき一足先に読ませていただきました。感謝。
    前二作は未熟すぎる部分が出すぎていて読める作品ではなかった、けど、読者であるわたしの心に何か残る、後味の悪さがあったのだけど、今作は言い方変だけどちゃんとしてた。というものの、わたし自身も子供の頃から性への関心が強かったからかもしれません。冴とどこか自分を重ねてしまったからかな。
    土屋君とのラスト綺麗だった。再会がありそうだとしてもまた同じ道を交わらせないところも好き。土屋君の、僕も、山下さんのこと、好きだったよ。も好き。逃げ腰の好きだよに返す言葉がだった、がよかった。
    淡くて、今にも壊れそうなほど脆い中学時代の恋とも呼ばないもの。セックスを怖いと思うかそうでないか。不安定な中学時代、たまに切なく、悲しくなる。

  • ブクログさんから当選いただき読みました。

    んー読みやすいけど、漢字が難しくて読めないところが多かった。ルビ振っててほしかった。
    表現方法も難しくしすぎちゃう?って思った。

    セックス依存症の人ってこんな感じなんかなー。
    思春期特有の苛立ちは良く理解できた。
    自己中な感じ。
    で、結局あれ?どうなったの?
    最終、よく分からない。残念。

    ただ、土屋くん、めちゃくちゃ良い人。
    気になる人。

  • その年代特有のあがき、みたいなものの話だったような。

  • いつもそばにある出口のない地獄。
    冴のもつ地獄はどことなく共感できる。
    だけど土屋くんのもつ地獄は深く暗い。
    それは土屋くんの地獄が生きていくための生きがいのようなものと重なっているからだと思う。
    それが自分の意思なのか、亡き父の意思なのか、母である美由の意思なのか、それとも誰も願っていないのかさえもわからない恐怖がある。
    だから自分が自分であることからは逃れられないことに誰よりも気付いている。
    土屋くんの将来の姿が幸せかどうかはわからない。
    だけど幸せになって欲しいと願ってしまう。
    一人一人そばにある地獄は異なる。
    他人から見ると重い地獄と軽い地獄がある。
    だけど本人からすれば地獄は地獄で、重いも軽いもない。

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