空は逃げない

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 230
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865494

作品紹介・あらすじ

神様はいるかもしれない。とぼけた顔をして

佐藤倫太郎と佐藤林太郎。ふたりは同じ大学陸上部の棒高跳びの選手。周囲からは紛らわしいことこの上ないため、しだいにA太郎、B太郎と呼ばれるようになっていた。
かたや平凡な記録保持者、かたや全国レベルの花形選手のふたりの前に、練習風景を熱心にスケッチしていた芸術学部の女子・石井絵怜奈が、突然、自分も棒高跳びの選手になりたいと志願した。
そんな3人の前に、ある日大きな転機が訪れる――。大学時代と数年後の現在、ふたつの時代を往還しながら、物語は、次第に思いもよらぬ場所へと読み手を誘う。

感想・レビュー・書評

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  • 自分が空を飛べないと気づいたのはいつだったか。自分の背中に羽がないことを知ったのはいくつのときだったか。
    それでもいつかきっと、と自分の可能性を信じて空を見上げて飛ぼうとしていた。でも、飛べなかった…
    どんなジャンルであっても、そこに自分の可能性を信じて必死に努力し続けた日々がある人は、そしてそれがかなわない現実に叩きのめされたことのある人は、きっとこの小説に心を動かされるだろう。そこに自分もいたんだ、と。
    青春小説が大好きで、特にマイナースポーツ小説に目がない私にとって、この『空は逃げない』は正真正銘ど真ん中の大好物である。たまらん。棒高跳び、なんと地味な競技だ。いや、種目自体は派手だ、なんつったってめちゃくちゃ長い棒をもってすんごい高さを飛ぶんだから。でも、実際に見ることは少ないし、テレビでもあまり目に留まらない。そんなマイナー競技(失礼だな)に青春をかけた二人のリンタロウと、その二人を追う絵怜奈の三人それぞれの8年間。いくつかのすれ違いと勘違いが新しい人生へとつながりそしてまた重なる、魔法の棒のもたらしたかもしれない奇跡を素直に信じたい。
    かつて空を飛ぼうとしていた大人たちへ、そして今、まさに飛ぼうとしている若者へ、贈りたい。空は逃げないぞ、安心しろ。

  • 初めて読む作家さんです。さわやかなんだろうなと思ったらさわやかでした。でもそのさわやかさの中には苦さも大分量含まれています。
    同姓同名の棒高跳びの選手、林太郎と倫太郎。7年後に車椅子のカメラマンになっているのはどちらなのか?指導者になっているのはどちらなのか?分からない状態で進んでいくのでミステリー要素も有ります。さらりさらりと読めますが、軽い訳ではありません。
    表紙に内容との関連性が全くないのが気になる所です。もうちょっと内容に即した装丁の方がいいのになと残念に感じます。
    次回作も読もうと思います。

    • koharakazumaさん
      表紙、僕も気になりました。さわやかっぽい雰囲気は伝わるけれど、主人公の一人はカメラマンにもなっているわけで、表紙にどういう写真を選ぶかという...
      表紙、僕も気になりました。さわやかっぽい雰囲気は伝わるけれど、主人公の一人はカメラマンにもなっているわけで、表紙にどういう写真を選ぶかということも主題とつなげていけそうなところなのに、もったいない。小学館の編集者、もっと作品大切にしようよ
      2020/01/24
    • ありんこゆういちさん
      コメントありがとうございます!
      せっかくのよい話が表紙で伝わらないと手にとって貰えないですからね(゚o゚;;作家さんを大事にして欲しいもので...
      コメントありがとうございます!
      せっかくのよい話が表紙で伝わらないと手にとって貰えないですからね(゚o゚;;作家さんを大事にして欲しいものです!!
      2020/01/24
  • 読後の清涼感がある。
    挫折したとき、限界を知ってしまったとき、どうやってそこから方向転換していけるのか…
    すごい葛藤に苦しむけど、できればスマートに乗り越えたい、外面的だけでも

  • 運命は遺伝子レベルで決められたものなのか、後天的な努力で変えていけるのか、偶然の出会いで想像だにしていなかった方向に飛び出していくのか。三人の主人公はそれぞれの経験を通じて、それまでは見えなかった景色を見つけ出していく。
    ちゃんと読み進めないと話の筋が分からないようになっているという心地よいもどかしさや、若い身体が瑞々しく活動する数々の描写、沼田さんをはじめとする魅力的なキャラクターに支えられた、とても気持ちいい作品だった。

    一つ分からなかったのが、山谷くんが絵怜奈を突き放し、最後には居なくなってしまった理由。絵怜奈自身わからないままトラウマになってしまっているが、これはこれで良かったのだろうか。あえてこの立ち位置にした意味が分かる人がいれば教えてほしい…

  • 棒高跳びを通して知り合った。二人の佐藤。A太郎とB太郎。そして、絵怜奈。彼らは、どうして棒高跳びに憧れたのか?。それは空を掴みたかったからなのだろうか?。それは自由を象徴する比喩なのか。B太郎の師匠の陶芸家からもらった竹の棒が運命を変える。弱点克服を考えたA太郎は大けが。B太郎は限界を自覚。絵怜奈は中南米へと留学。それぞれの空を求めて7年後に再会という青春ラブストーリーなのだが、棒高跳びのシーンや前半の面白さが後半になると、シーンの重複や文章の粗さでストーリーがぼやけてしまい。,尻すぼみ状態のまま着地。何かもったいない。

  • 読後,ふと空を見上げている一冊。
    人が空に憧れを抱く理由がこの本には詰まっていた気がします。
    棒高跳の間,空は見えていない。でも,選手達はあのポールをこえた一瞬の間,空を体いっぱいに感じているんだろうなと思いました。
    登場人物の発する言葉は透明感があるのにずっしりと胸に残る強さがあります。人生は不思議。自分の興味関心は自分でも分からない。だから寄り道してみることで見えてくるものもたくさんあるんだなと感じました。
    展開の読めなさ,最後まで読みたくなるような構成も印象的な物語です。過去と現在が入り交じった構図であることに加えて,登場人物の名前を使ったトリックも組み込まれているので,最後まで読みたくなること間違いなしな一冊です!

  • 装丁とタイトルがとても好みで手にとった1冊。
    写真家さん、ググりインスタもフォローしちゃいました。ステキ。

    大学で棒高跳びをする2人の佐藤リンタロウ。
    同姓同名なのでA太郎とB太郎と呼ばれる。
    2人を絵画く芸術学部のエレナとの3人の物語を、大学時代とその7、8年後を交互に。
    競技に挑む苦悩を交えながら爽やかに話しは進むが、A太郎かB太郎のどちらかが練習中の事故により下半身不随になってしまう。

    一体どっちが、、、と思いながら読み進めました。みんな、応援したくなる。
    読後感も爽やか。うん。空は逃げない。

  • 学生時代の思い出と社会人になった現在の時間とが交互に描かれ、話の展開がなかなか読めなかったけど物語の中盤でようやく“ある仕掛け”にはめられていたことに気づいた。そこからは物語の印象が大きく変わって見えた。それぞれに悩み、選んで今を生きている3人の幸せを願ってやまない。最後に、どうして絵怜奈と同じ思い込みをしてしまったのか不思議で仕方ない。作者の仕掛けを解くためにも再読したい。

  • 下半身付随、A太郎とB太郎のどっちにもなってほしくなくて苦しかった。後遺症が重すぎて、その気持ちは読了後も消えない。しかし、それぞれの道でまた空を見つけ、そこに向かっていく姿を見せつけられたのは心にくるものがあった。私にとっての空に挑戦する気持ちを味わってみたくなる作品でした。

    個人的に、恋の行方のその後日談が気になる‼︎

  • 同姓同名(漢字違い)のポールジャンパー2人と、彼らをスケッチする女子。3人の青春模様。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。講談社児童文学新人賞佳作『カラフルな闇』でデビュー。作品に、『青(ハル)がやってきた』、『鉄のしぶきがはねる』(坪田譲治文学賞、JBBY賞)、『たまごを持つように』 、『伝説のエンドーくん』、『思いはいのり、言葉はつばさ』『日向丘中学校カウンセラー室1・2』『零から0へ』『かがやき子ども病院トレジャーハンター』など。

「2023年 『つる子さんからの奨学金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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