きみはだれかのどうでもいい人

著者 :
  • 小学館
3.31
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  • (21)
  • (2)
本棚登録 : 778
レビュー : 54
  • Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865517

作品紹介・あらすじ

人とわかりあうことは、こんなにも難しい。

税金を滞納する「お客様」に支払いを促すことを仕事とする県税事務所の納税担当に、同期が休職したことで急遽異動させられてきた若手職員の中沢環。彼女は空気の読めないアルバイト・須藤深雪を始めとする周囲の人間関係に気を遣いながら、かつての出世コースに戻るべく細心の注意を払って働いている――(第1章「キキララは二十歳まで」)
週に一度の娘との電話を心の支えに、毎日の業務や人間関係を適当に乗り切るベテランパートの田邊陽子。要領の悪い新米アルバイトや娘と同世代の若い正規職員たちのことも、一歩引いて冷めた目で見ていたはずだったが――(第3章「きみはだれかのどうでもいい人」)
同じ職場で働く、年齢も立場も異なる女性たちの目に映る景色を、4人の視点で描く。デビュー作『名前も呼べない』が大きな話題を読んだ太宰治賞作家が描く勝負作。
職場で傷ついたことのある人、人を傷つけてしまったことのある人、節操のない社会で働くすべての人へ。迫真の新感覚同僚小説!


【編集担当からのおすすめ情報】
言葉にならずにわだかまっていた感情が、豊かな言葉で、繊細に描き尽くされた傑作!島本理生さんと穂村弘さんも大絶賛!!明日から、職場の見え方が変わるかもしれません……。

感想・レビュー・書評

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  • まずタイトルにやられた
    ドキッとした
    なかなかの度胸のあるタイトルである
    (「きみはだれかの大切な人…」が一般ウケなはず!)

    ある職場のストーリーを4人の女性視点から描いている

    人間のもつ無意識な残酷で辛辣な部分
    誰しもが隠したり誤魔化したり気づかないふりをする奥底に潜む本心
    情けなくて弱くて痛ましい存在
    誰もが隠し持っている本心
    この4人は私たちの代表選手だ
    多かれ少なかれ何か感ずるものが誰しもあるはずだ

    人を思いやりましょう…なんて話しではすまない人の奥底の凶暴さを感じた
    良かれと思ってした行為が誰かを傷つけ、
    正しいという思い込みがその人を歪め、
    価値観の押しつけが不調和を生み、
    そして…
    「だってきみはだれかのどうでもいい人だから」

    自分の常識にとらわれ過ぎていないか
    人をいつも評価していないか
    自分と違う価値観を受け入れているか
    一番の恐怖は傷つくことよりも
    何の意識もないような錯覚で無意識に誰かを傷つけていることに気付かないことではなかろうか
    いやもしかしたら正しいと思って行った行動かもしれない
    そんなことが人の足元をすくうような恐怖を与えることがあるのだ

    人はとても残酷で弱くちっぽけな存在である
    生きていくだけで結構いっぱいいっぱい
    不器用で混乱して破茶滅茶で…
    だからこそ共存し合っているのだろう
    そして勝手に許し合って無意識に手を取り合っている

    多くを考えさせられ、心に響いた
    この本と出会ってよかった

    作品はテンポ良く、読みやすくまるでミステリー
    良くも悪くも矢継ぎ早にたたみかけるように進行する文章
    英語のように感じる各センテンスの構成である
    個人的にはもう少し「間」とか「空間」的なものがあると読みやすいのだが…
    1文ずつの濃度(中身ではなく言葉的な部分)が高く少々疲れる
    きっと頭の回転の速い方なのだろう
    もう少し押しと引きのバランスが良いと心地いいのだがと感じたがこれも個性だ
    どこかでこの人の文章を見たら気づける気がする

    鋭い感性と巧みな文章
    今後どのように成長されるかとても楽しみな作家さんである

    • やまさん
      ハイジさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      ハイジさん
      こんばんは。
      いいね!有難う御座います。
      2019/11/08
    • ハイジさん
      こんばんは
      こちらこそいつもありがとうございますm(_ _)m
      こんばんは
      こちらこそいつもありがとうございますm(_ _)m
      2019/11/08
  • 地方の県税事務所に勤めるそれぞれ立場の違う同僚女性たちの群像作品。
    各章で語られる出来事が、他の章で全く別の視点で語られ、全体像が薄っすらと浮き上がる。
    一つの事象が複合であり、認知の仕方も人によって異なることが自明となる。

    裏切り、やっかみ、ぬけがけ、手のひら返し、嫌み、蔑み…。全編、不愉快で不快なやり取りが連なる。
    もっと正直に言おう。胸糞が悪いやり取りのオンパレードだ。容赦ない。

    狭い職場、さらに税金の督促に関わる部署ゆえの住民からの理不尽で身勝手な言い訳や暴言を浴びるストレスフルな日々。

    職員たちの不平不満のガスが、細い針の一突きで爆発しそうなほど充満し、その攻撃性という勢いが、互いの小さな綻びを見つけては暴走する。

    家庭でも、プライベートでも各人それぞれしっくりいかない不全感を抱えている。
    直喩、隠喩を織り交ぜながら、人物造形や細やかな心情を言葉で絵を描くようで、伊藤さんの筆力は健在だ。

    成熟した情報化社会で、共感、共有、協調がことさらSNS等でも声高に求められる時代。

    弱者に寄り添い、互いに助け合い…という正しさ優しさが王道のようでいて、近頃若干強迫的で、息苦しさも感じる。

    被害者は弱いだけの存在なのか。実は、被害者が必ずしも弱いばかりではなく、攻撃性を持っていたり、他の誰かに対しては加害者になっていたりすることもある。

    極端な善悪二元論の限界、人間の複層性等を様々な出来事や科白から、繰り返し感じた。

    これは私の読解力の欠如によるものかもしれないが、特に後半の展開する部分で、誰の科白か、読み取るのが難しかった。

    また表現がとても巧緻なので、もう少し間引いても充分伝わるのではないかな。各章の転結の部分になると、抽象度がぐんと上がり、畳みかけるように表現が重なるので混乱してしまった。

    言葉だけではなく、余白や行間が語る作品が好みなので、私見です。

    最後の章で、総括的に物事が見えてくるが、英語も加わり、若干観念的になって、伝えたいであろうことがぼやけてしまった印象。forgiveとforgetのくだりで、理解をこえてしまった。残念。

    納税者が主体的であることは大事だが、クレーマーと対峙するような業務に携わる公務員は全然楽ではない。日々のお仕事、ありがとうございます。

    献本企画でサイン本をいただきました。
    伊藤さん、ブクログさん、小学館さん
    ありがとうございました。

  • “君は誰かの大切な人”という言葉は、よく聞きますが、この本のタイトルはそれと真逆の「きみはだれかのどうでもいい人」です。

    だからこそ、タイトルのインパクトがとても強いのですが、内容もまさに「タイトル通り」でした。

    県税事務所に勤める4人の女性が、この小説の主人公です。
    4章からなるこの物語は、1章ずつ主人公を交代し、それぞれの立場からみた毎日が書かれています。

    4人の人間関係は決して良いものではなく、語る立場が変わっても、その関係性は続いていきます。

    そのため1冊を通して漂い続ける「閉塞感」がとても強く、読んでいる間中、気持ちがひどくよどんでしまい、心の中に黒い闇が広がっていくようでした。

    ホラーやサスペンスとは違う、人間関係のただならぬ闇の部分を、ここまで見せられると、読み手にもどろどろとした感情がたまっていくのだな、と感じました。

    ☆1つとしたのは、物語に問題があるわけではなく、心にたまった負の感情を放出できる穴が、わたしの場合は極端に小さいことが原因です。
    読み終えたあとも、心にたまったどす黒い感情がなかなか抜けきらず、次の本に進めませんでした。

    はっきりした言葉としては出てこないものの、「どうでもいい」という言葉は、とても力のある負の言葉です。
    タイトルを眺めているだけで、自分まで「どうでもいい人」に思えてしまい、しんどかったです。

    読む前から心が沈んでいる方は、要注意という意味でも☆1つとさせていただきました。

  • タイトルに惹かれました。
    「君は誰かの大事な人」とかそういうフレーズはよくあるけど、この毒の利いた感じ、このミもフタもない感(笑)、たぶん自分は好きなヤツ、と感じました。
    改めて考えてみたら、多くの人にとって「大事な人」よりかは「どうでもいい人」の方がはるかに多いはず。ただどうでもいい人は普段は意識しないからそんなことも考えないでしょう。
    そしてここでは「どうでもいい人」は職場の同僚と来たと。なるほどなぁと。

    まずはさすが太宰治賞受賞された方だなと文章が丹精な印象です。言葉の選び方、心理の描写の仕方、作品数はそれほど多くなさそうですが手練れ感があります。
    それぞれの登場人物の性格が際立っています。

    「かわいそうに。あんたの方が死んでおけばよかったのにね。」ある章で登場人物が心の中でつぶやくのですが、ワサビがつんと利くべきところで利いたようなざわっと感と痛快感がありました。
    第3章に出てくるような人はざらにいますね。でもそれをこのようにあからさまに描写しきるのは中々すごいことだと感じます。ただ、あの子とか、名前を書かないで過去を振り返る部分の描写がちょっとわかりにくく、こんがらかる箇所が何か所か感じられました。
    そして第4章はちょっと哲学的な感じがします。そのせいか、言いたいことはわかるのですがちょっと言い回しや会話が回りくどい感じがしましたね。
    でもとても面白かった。違う作品も読んでみたいと思いました。

    ブクログさんのプレゼントでいただいた一冊です。
    正直、当選しなければ知らないままだった作家さんだったと思います。「ほんとに当たるんだ!」と驚き、そしてこのような作家さんとの出会いをいただいたことに感謝します。

  • 仕事をしていく上で、いや仕事だけでなく生きていく上で人間関係は切ってもきれない。割り切ってしまえば冷たいと言われることもある。甘えていると思うこともある。頑張ってるのだから認めてもらいたいという気持ちもある。それわかるわ!という面もたしかにあったが、なんとも読み終わってドッと疲れる作品だった。それだけある意味リアルな世界なのだけども。

  • タイトルが気になって購入した一冊。
    県税事務所で働く女性達のそれぞれの視点で描かれた一冊。
    読み進める度にモヤモヤして心が重たくなっていったんだけど、それでも読むのを止められなかった。
    モヤモヤさせられながらも最後には不思議とスッキリさせられた。
    社会で生きることの生きづらさをまざまざと見せつけられるけど、どこかで勇気づけられている自分がいた。

  • ◯職場の人間関係について、それぞれの登場人物が語る形式で話が進んでいく。異なる登場人物の視点に移るごとに、一面で捉えていた人物像が異なって見えてきて、「嫌な奴だなこいつ」と思っていた人物も、それぞれ事情を抱えて生きていたことが見えてくる。

    ◯それはまさにタイトルにあるとおりの世界が展開されているのであるが、読むほどに、この悲しいタイトルが自分たちの日常に肉薄してくるほど共感できる

    ◯丁寧な心理描写の先に、それぞれの出来事で見れば大したことのないことでも、積み上げていくこと、生きづらいこの社会において、いつでも崩れそうな危うい自己を発見する。

    ◯この共感性は大衆小説の重要な部分であると思うし、そこには悲しい現代の普遍性が内在すればこそではないだろうか。

    ◯この小説の展開自体には、あまり救いがないように思える。しかし、この個人ごとに視点を移すという構成で生じる共感性にこそ、著者による救いが示されていると思う。

    ◯それはこの生きづらい我々の社会における、1つの示唆になるのではないだろうか。

  • 同じ職場に勤める女性たちの同僚小説。
    人は同じことでもこんなにもモノの見方が違う、そしてわかりあえないもの、なのか。

    ものすごく面白かったけど、この読後の後味の悪さ、というかなんというか。
    リリイシュシュとダンサーインザダークを2本連続で観たような気持ちである……

  • 面白い

  • きみはだれかのどうでもいい人。
    伊藤朱里さん。

    うわぁー。
    こんな人いるー。
    うわぁー。
    苦手ー。
    わかるわかる。
    共感しながら、どんどん話が進む。
    それぞれの章で、
    主役がかわる。
    おもしろかった。
    最後の章は、難しかった。
    読みきれなかった。

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著者プロフィール

一九八六年生まれ。静岡県出身。「変わらざる喜び」で第三十一回太宰治賞を受賞。同作を改題した『名前も呼べない』でデビュー。他の作品に『稽古とプラリネ』(筑摩書房)がある。

「2018年 『緑の花と赤い芝生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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