ボニン浄土

  • 小学館
4.07
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本棚登録 : 294
感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865777

作品紹介・あらすじ

刺客は、思わぬところからやって来た。

1840年、気仙沼から出航した五百石船・観音丸は荒天の果てに、ある島に漂着する。そこには、青い目をした先住者たちがいた。彼らは、その地を「ボニン・アイランド」と告げた。
時を隔てた現在。すべてを失った中年男は、幼少期、祖父が大切にしていた木製の置物をふとしたことで手に入れる。それを契機に記憶が蘇り、彼は、小笠原行のフェリーに足を向けた。物語は、ゆっくりと自転を始める。

感想・レビュー・書評

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  • ボニンアイランド、19cの小笠原諸島の歴史と民族性を丁重でミステリアスな物語とされていました。
    無人(ぶじん)から英語圏でボニンへと変化していったようです。
    舞台は、父島あたりで良いのかな。
    長い間、無人で、どこの国にも所属していなかった島。そこに流れ着いて居着いた者、ポリネシア系から舟で渡ってきた者。さまざまなルーツを持つ住民の豊かな浄土だったようです。
    その後、日本が国土宣言をして、住民は日本に帰化することになりました。
    “無人島に生きる16人”を読んだ時、遭難した日本人の中に数人帰化した船員が書かれていて、不思議に思っていましたけど、このあたりの人達だったんでしょうか。
    宇佐美さんが、こういった史実を基にした作品を書かれるとは知らずにいました。みんみん曰く、「もうこの話が事実でいいし」小説。私もこれで良いです。
    美しい海の世界遺産程度の認識でしたが、太平洋のあの位置からしても特殊な歴史があったことでしょう。
    小説は、小笠原諸島の時間の流れと共に、母親のルーツを探す男性と音を失ってしまった少年のミステリーが盛り込まれ、それらも本当に島での出来事のようでした。

    • みんみんさん
      地理苦手だったから新鮮♪
      地理歴史ダメダメだし( ̄▽ ̄)
      地理苦手だったから新鮮♪
      地理歴史ダメダメだし( ̄▽ ̄)
      2023/06/01
    • みんみんさん
      原田マハのゴッホとかも良かったよ〜♪
      朝井まかての北斎やシーボルトも_φ(・_・
      原田マハのゴッホとかも良かったよ〜♪
      朝井まかての北斎やシーボルトも_φ(・_・
      2023/06/01
    • おびのりさん
      朝井さんは、恋歌良かったです。
      日本史は、戦国時代から江戸末期がねえ。
      この前、南町奉行所と北町奉行所後あたりを回ってきました。江戸城のお堀...
      朝井さんは、恋歌良かったです。
      日本史は、戦国時代から江戸末期がねえ。
      この前、南町奉行所と北町奉行所後あたりを回ってきました。江戸城のお堀の跡とかね。
      今の東京の基礎は徳川家康のおかげなんですって事です。戦争やら震災やらの瓦礫はお堀に埋め、大名屋敷をきっちり作っていたから、緑も多い街。
      江戸を作る時、たしか奇門遁甲を使って街作り。
      そんなの読み始めちゃうと、小説読む時間が足りなくなるから、節制してます。
      2023/06/01
  • なんだよもう!
    とんでもなく良かったじゃないか!

    ボニン・アイランドに行きたくなるわ!
    ボニン・アイランダーに会いたくなるわ!
    そんな★5じゃ足りない物語

    綺麗にエピソードが繋がっていく感じがめちゃめちゃ気持ち良かったです
    なんかね繋がっていく過程にエグみがないんよね
    これは秀逸です
    並の作家さんじゃないですよ

    そして宇佐美まことさんが並じゃないのは、やっぱりその多彩さだよね
    まだ3作品しか読んでないけど、ほんと趣きがぜんぜん違う
    ダルビッシュじゃん
    例えて言うならダルビッシュ有じゃん!(また分かりにくい野球例えw)

    小笠原…行ってみたいな〜

  • 漂着した日本人に手を伸ばす異国人。この島の名を訪ねると異国人の顔のアップから「ボニン・アイランド」って言葉が流れる唖然としながら復唱する日本人と同時にズームアウトしながら180度回転して島全体がスクリーンに収まりる鳥瞰図のようにそしてタイトルが神々しく現れる。
    そんな脳内劇場が始まってしまったww

    1840年江戸時代後期、嵐に遭い命からがら辿り着いた島はボニン・アイランドと呼ばれる島だった。そこは、何処の国にも属していない無人島だったのだがポリネシア系の女性やら欧米人が住んでおり捕鯨船の補給基地として交易も行われていた。水と食料と交換にクジラ油や家畜、工具などを得ていたようです。
    誰の支配も受けず、身分の区別もなく、いろんな国の人が自由に暮らすコミュニティーができていたなんて想像しただけでも夢のよう。そして安心、安全な暮らしは自衛できる能力がなければ成り立たない訳でもある。

    漂着した日本人たちは1年がかりで舟を修理し日本に帰ることになるのだが、イタリア女と恋に落ちた男は1人島に残ることを決意する。

    小笠原諸島にそんな歴史があったなんて知りませんでした。日本の領土として正式に認められた時は帰化した人々もいたとか。単一民族の国家だと思っていた日本もいろんな民族の血が混ざっていたなんて昔はマイナリティでもマジョリティになりつつある現在ではありかなって思える。
    太古は土着の縄文人と大陸から移住してきた弥生人、さらに古墳時代に渡来した古墳人が起源だし。日本人と言っても琉球人やアイヌ人、本土人と分けれるようだし、多民族国家を意識してもいい時代じゃないかって思えたり、国が心不全になりかけると単一民族で独立国家を作ろうとゆう運動がおこるかもしれないし、それを擁護する国がでてくるかもしれない。レアアースとかウランが眠ってたりしたら利権欲しさに支援しそうな気がする。

    ゾクゾクして空想が暴走してしまいましたが、
    ここに目を付けて小説に仕上げるとは最果て好きのマハさんにも書いてほしいなって思ってしまいました。

    時代は180年ほど経過した2020年、チェロの音が聴こえなくなった少年と、自らの出自を知りたいと探る中年男性が導かれるように島を訪れる。
    やっぱチェロなんだ。人の音域に近いとか言われているチェロ、持ち運ぶの不便そうだけど小説では最近の流行りなのかなと思う楽器、その音が聴こえないってなんだか意味深そう。
    中年男には離婚した妻との間に息子がいるけど日本を代表するスイマーになっているとか、そこらへん異国のDNAも感じられてゾクゾクする。

    180年の時を経て繋がる物語、終盤にかけてはちょっと盛りすぎな気がするのですけど、謎解きの説明が懇切丁寧で分かりやすいといえばそうなんですけど、ちとしつこすぎるような。
    少年の物語はスピンオフでも良かったような気もしたりで、2つの物語がすれ違う。
    180年前に島に残った男とどう繋がるのかは謎でした。
    エンド曲はとりあえず「天国に一番近い島」by原田知世だと思ったのですがボニン浄土だけにっw

  • ☆5じゃ足りない‼︎
    もう最高に面白かった〜\(//∇//)

    地理・歴史が嫌いだった私は小笠原諸島って名前と
    たくさんの島…くらい?
    ちょっと読む前に調べてっと_φ(・_・
    父島、母島しか人が住んでいなくて後は無人島…
    江戸時代に遭難した数名が父島にたどり着いた時にはすでに外国人数人が村を作っていた…と

    小笠原諸島の歴史は調べればわかります。
    史実にいかに魅力的なストーリーを組み込むか。
    それにかかってますよ!

    私の好きな「もうこの話が事実でいいし」小説♪

    原田マハのリボルバー!
    浅田次郎の壬生義士伝!
    そしてこの「ボニン浄土」*\(^o^)/*

    江戸時代に遭難者達が日本に帰るまでの話も超面白い!現代の1人の男が自分のルーツを知る為に小笠原に行く話も面白い‼︎そして過去と現代が繋がっていく話!もう最高に面白い‼︎‼︎‼︎

    行きたい〜ボニンアイランドに!フェリーで24時間かかるけど…泳げないし水着ムリだけど( ̄▽ ̄)



    • 1Q84O1さん
      宇佐美さんにハマってますね♪
      私でよければボニンアイランドにお供しますよ(≧∇≦)b
      宇佐美さんにハマってますね♪
      私でよければボニンアイランドにお供しますよ(≧∇≦)b
      2023/05/01
    • みんみんさん
      珍道中*\(^o^)/*
      珍道中*\(^o^)/*
      2023/05/02
    • 1Q84O1さん
      迷子にならずに辿り着けますかね〜w
      迷子にならずに辿り着けますかね〜w
      2023/05/02
  • 余韻に包まれた、一冊。

    天保の時代で幕開け。

    今後の展開への不安感と共にページをめくる。

    小笠原諸島に刻まれた歴史、この地を訪れた一人の中年男性、一人の少年。

    全てがどう交錯しこの地で一体何を見せてくれるのか…宇佐美さんの物語の旅へ心を預けた時間だった。

    終盤は自然と加速する鼓動。

    全てを見終えた時、めいっぱい深呼吸をし鼓動を鎮めたくなる、そんな余韻に包まれた。

    知らなかった歴史を知ると共に、いつだって時の流れはその地を愛した人々の魂、誰かの負の想い、涙さえも包み込みながら次へと繋がっていくことを噛み締めた。



  • ボニン・アイランド(現在の小笠原諸島)。
    それは祖国を離れ遥かなる海を渡り、苦難に耐え忍んでようやく辿り着いた人々が創り上げた、日本の最果てにある理想郷。
    来る者を全て受け入れ、立ち去る者を温かく見送る、懐深い優しき楽園。

    自分のルーツを探るため辿り着いた島・小笠原諸島。
    バカンスに訪れる人の耐えない魅力溢れる島に、まさかあれ程の悲惨な過去があろうとは。
    どこの国にも属さない”自由な浄土”のはずだったボニン・アイランドも、時代の波や国々の私利私欲に翻弄され、その姿も次第に変容を遂げていく。
    自由は不自由。
    そんな矛盾に胸塞がれる。

    ボニン・アイランドは悲しい歴史も楽しい記憶も、全てが次世代へと受け継がれていく”許し”の島。
    島で息づく魂は永遠に消えることはない。
    それこそが海の浄土。
    昔も今も、これからも、ボニンブルーは静かに訪れる者を待つ。

  • 小笠原を舞台に3人のドラマ。
    1840年、観音丸は嵐に遭い、ボニンアイランドという島にたどり着いた。そこは、日本人だけでなく西洋人も住んでおり、交易の場所でもあった。観音丸の人々は、帰国を諦めず暮らしていたが、一人の男が、イタリア人の女性と恋に落ちた。仲間が帰る中、彼はこの島に残ることを決断した。
    現在。男が、祖父が大切にしていた置き物を偶然手に入れる。その置き物は小笠原諸島のみで採れるクワで出来ていた。男は幼い頃母を亡くし、戸籍には父親の名前がなかった。自分のルーツを探りに小笠原へと旅立つ。
    そして現代にもう一人。事故を起こしてチェロを引けなくなった少年。フリーカメラマンである父と一緒に小笠原へ撮影旅行へ。少年は無垢な少女と出会う。
    現在と過去のつながり、再生、出発の物語。
    過去から現在までの流れ、男の先祖の謎、引き込まれたわあ。小笠原に行ったことはない、それがさらに想像を掻き立てたかも。誰が過去の人の子孫でとか想像したり、物語の中の事件を追ったり、濃かったなあ。最後の方のチェロのシーンとか印象に残ってます、最後のおばあさんもね。受け継ぐもの、歴史、そして再生、読んで良かったです。

  • 180年前の海難事故からすべては始まっていた。小笠原諸島に流れ着いた一行がいかに本土に戻るかという、これまでも何冊か読んだ事実を基にした漂流譚かと思いきや、話はいきなり現代に飛ぶ。こちらでは一見なんの関係もなさそうな中年男と、中学生の男の子が主人公だ。やがてすべては繋がり、歴史に埋もれた真実が暴かれる。中学生の男の子が失ったものを取り戻すシーンでは涙で目が曇った。が、すべてを詳らかにする手法にはちょっと疑問も……。エピローグは必要だっただろうか? まあ、好みの問題だとは思うが。多少の減点はあっても、読み応えのある作品だった。

  • これは面白かったー。

    時間の軸が2つに分かれ、江戸時代と現代の小笠原諸島の歴史が語られる。

    小笠原諸島が国籍入り混じった島だという事を初めて知る。
    知らないことばかりだ。

    文字から伝わる島、海の綺麗さ。
    海に入るのは苦手だけれど、いつか小笠原へ行ってみたい。

    ラストはぐるっと回って過去と現在が全て繋がる。
    宇佐美まことは面白いなぁ。

  • 素晴らしい作品。小笠原の歴史と風土を時間軸を使い、しかもミステリーの要素も盛り込み、更に親子・家族の結びつきをも鮮やかに描く。賢人と時ちゃんの会話は涙無しには読めなかった。ひとつだけ残念なのはボニンアイランドに一人だけ残留した吉之助のその後が全く語られていないこと。ただ全体の構成も流麗な文章もほぼ完璧で言うことなし。

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著者プロフィール

(うさみ・まこと)1957年、愛媛県生まれ。2007年、『るんびにの子供』でデビュー。2017年に『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。2020年、『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に、『展望塔のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に選ばれる。2021年『黒鳥の湖』がWOWOWでテレビドラマ化。著書には他に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』などがある。

「2023年 『逆転のバラッド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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