十の輪をくぐる

著者 :
  • 小学館
4.03
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本棚登録 : 560
感想 : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865982

作品紹介・あらすじ

2021年へ!時代を貫く親子三代の物語

スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」「泰介には、秘密」と呟いた。泰介は、九州から東京へ出てきた母の過去を何も知らないことに気づく。
51年前――。紡績工場で女工として働いていた万津子は、19歳で三井鉱山の職員と結婚。夫の暴力と子育ての難しさに悩んでいたが、幼い息子が起こしたある事件をきっかけに、家や近隣での居場所を失う。そんな彼女が、故郷を捨て、上京したのはなぜだったのか。
泰介は万津子の部屋で見つけた新聞記事を頼りに、母の「秘密」を探り始める。それは同時に、泰介が日頃感じている「生きづらさ」にもつながっていて――。
1964年と2020年、東京五輪の時代を生きる親子の姿を三代にわたって描いた感動作!前作『あの日の交換日記』が大好評!!いま最も注目を集める若手作家・辻堂ゆめの新境地となる圧巻の大河小説!!


【編集担当からのおすすめ情報】
今作は、半分は母・万津子が青春時代を過ごした1950年代、60年代を舞台にしています。紡績工場の女工たちの過酷な労働や、炭鉱で働く男性たち、夫から虐げられる女性の日常が、鮮やかに、ときに生々しく描かれていきます。
万津子が話す大牟田弁は、著者の大牟田出身のお祖母様が監修してくださったとのこと。さらに当時のことをたくさん取材したという当時の背景描写も相まって、20代の著者が書いたとは思えないリアルさには、どこか懐かしさすら感じられるほどです。

景色も価値観も、めまぐるしい速度で変化していく東京。女性の社会進出や、LGBTQ、人種問題など、個性の在り方、捉え方は、日々アップデートされていきます。この作品は、時代とともに変化する生き方の指針にもなる傑作だと思っています。(このあたりはネタバレになってしまうので、ぜひ、読んでお確かめください!)
2020年の東京オリンピックは幻の中に消えてしまいました。明るい未来を2021年に託し、この作品を送り出したいと思います。
辻堂さんがひときわ力を入れて書かれた今作が、さらに次の世代へと読み継がれる作品になりますように。祈りを込めて編集しました。ぜひ、お手にお取りください

感想・レビュー・書評

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  • 私は東京五輪は大反対で、反対の署名までしました。
    でも、この物語を読むと、オリンピックが開催されることにより、こんなにも生きる気持ちを明るく持てるようになる人も存在するのだと思いました。
    今回の東京五輪・パラリンピックも開催まであと3週間をきりました。ここまできたら、とにかく本当に安心・安全にどこの国の選手も国民も楽しめるよい大会になりますようにと願うのみです。


    以下、最後まで全部ネタバレで書いていますので、これから読まれる方はお気をつけください。


    物語はオリンピックを9カ月後に控えた2019年10月から始まります。
    佐藤泰介は1964年の東京オリンピックの時、3歳でした。1940年生まれの母の万津子は当時24歳。
    今はくも膜下出血による認知症を患っています。
    大学のバレーボール部で出会った妻の由佳子。
    高校二年でやはりバレー部の娘の萌子がいます。

    そして物語は1958年9月の万津子が結婚前一色紡績という会社で女工をしながらバレーボールをやっていたパートと交互に進みます。
    万津子は19歳で見初められ見合い結婚をします。
    ところが夫となった佐藤満は酒乱で暴力をふるう男性でした。
    泰介と弟の徹平が生まれますが夫は息子たちにも手を挙げる毎日。しかし満は三井鉱山の爆発事故で1963年に亡くなります。
    万津子は実家に帰りますが、泰介が情緒不安定で毎日、暴れて実家の家族に嫌われます。満に似たのだろうかと万津子は悩みます。
    そして泰介は川に溺れてしまい、一緒に溺れた少年が亡くなり、万津子は実家にもいられなくなり、東京へ飛び出していき、東京で泰介にバレーボールを教え始めます。

    2020年。泰介は気が荒くスポーツ用品会社で仕事は降格され、うまくいっていませんが萌子に「お父さんはADHD(発達障害)じゃない?」と受診を勧められます。
    果たして受診すると萌子の言った通り泰介は発達障害だったのです。
    泰介は素直に病気に対応する術をみつけていき、運も手伝って昇進することができます。

    萌子の高校は春高バレーで決勝に進みます。
    そして、エースの萌子の活躍により見事優勝。
    万津子は病院で萌子の試合を観戦後、泰介に「もうバレーはやらなくていい」と言い残し息をひきとります。
    萌子は高校卒業後、実業団に入りオリンピックへの道を目指します。

    • mei2catさん
      読んでみたくなりました。
      読んでみたくなりました。
      2021/07/04
    • まことさん
      mei2catさん。
      コメントありがとうございます!
      是非是非読まれてみてください。
      五輪開催に合わせて読まれるとよいかと思います。
      mei2catさん。
      コメントありがとうございます!
      是非是非読まれてみてください。
      五輪開催に合わせて読まれるとよいかと思います。
      2021/07/05
  • 前半、あまりにも読むのが辛くて何度も読むのをやめようかと思ってしまいました。
    80歳の母ともうすぐ定年になる息子が一章ごとに交互に語り手になるのですが、どちらもあまりにも辛くて辛くて‥‥。
    母が若き日に見た東京オリンピックと、今回の東京オリンピック。母、息子、そしてその娘、3代にわたってバレーボールでのオリンピック出場を夢見る。そのくらいの前情報で読んだこの作品。
    母はなぜそんなにバレーボールにこだわるのか?その謎が分かってからはもう心が震えてページを捲る手を止められませんでした。
    「この世の中には、普通の人もいないし、異常な人もいない。どんな脳の特性も、人間社会にとって必要なものだからこそ、今の今までDNAが残ってるんだよ。」
    これ以上は書けません。ぜひともネタバレなしに読んでもらいたいので。
    娘がとても聡明な女の子。なんていい子なんだろう。

    • aoihitoさん
      こっとんさんのレビューに大共感です!この父親、、、と最初はストレスを感じながら読んでましたけど、エンディングに向かうに連れてどんどん引き込ま...
      こっとんさんのレビューに大共感です!この父親、、、と最初はストレスを感じながら読んでましたけど、エンディングに向かうに連れてどんどん引き込まれていきました。娘さん本当に良かったですね(^^)
      2021/05/22
    • こっとんさん
      aoihitoさん、コメントありがとうございます。
      そうなんです!前半と後半の感じさせ方の差!辻堂ゆめさんってすごいなぁと思いました。後半ま...
      aoihitoさん、コメントありがとうございます。
      そうなんです!前半と後半の感じさせ方の差!辻堂ゆめさんってすごいなぁと思いました。後半まで読んで良かった!
      娘さんみたいな人がいっぱいいると優しい世の中になるのかなぁ、なんて思いました。
      2021/05/22
  • 涙が込み上げた一冊。

    1964年と2020年、東京五輪を絡ませ認知症の母、介護する息子、家族の想いを紡ぐ物語。

    過去と現在を交互に描きながら明らかになる母の辿った道、秘密に涙が込み上げた。

    この時代の女性の決められたかのような人生、理解してもらえない苦しみ、誰も味方はいない孤独さを思うほどまた涙。

    魔法の言葉を胸にボールに込められた母の想い。

    個性はバネに、マイナスには何かをプラスしていく大切さ。
    母の愛情もその一つ。

    どれだけ息子の心にプラスされ未来へと結実したか…。

    長い愛のリレーを想像し最後は大きな涙が込み上げた。

  • 帯には「ニつの五輪を貫く、三世代の大河小説」とある
    1964年の東京オリンピックと2020開かれるはずだった東京オリンピック、それで「十の輪をくぐる」なのかとタイトルに納得したが、母万津子の人生があまりに辛く、悲しずぎ強烈だったので、佐藤万津子さんの伝記?半生記のように思った

    集団就職で行き着いた名古屋の紡績工場、辛い中にも将来の夢を語り合う同世代の友達がいたこの頃が万津子にとっては、一番輝いていた時だったのかもしれない

    夢に描いた幸せな結婚生活と現実はあまりにかけ離れ、日々の夫の暴力に怯える日々、そして、図らずも夫の事故死で暴力からは逃れられるが、戻った実家での無理解な家族のもとでの辛い日々

    その中でも、たとえ他人に何と言われようとも防波堤となり、我が子の可能性を信じ、守り抜く強い母としての万津子の愛に心打たれた

    苦労するためだけに生まれてきたかのようなこの人の人生は一体何だったのだろうかと、胸が苦しくなった

    しかし、そうではなかった。こんな辛い万津子さんの人生にも夢が残っていた!
    この現実に甘んじていてはいけないと奮起するきっかけを与えてくれた『東洋の魔女 日本女子バレーボール』

    万津子と泰介を救う唯一の道、バレーボール
    その夢は途切れることなく、しっかりと孫萌子に引き継がれることになる

    年老いて認知症を患う万津子の様子や息子泰介の心ない言動に心が傷んだが、嫁由佳子と孫萌子の思いやりのある言動に救われた

    また、この本は発達障害.特にADHDに対する理解を深めるためにも大きな役割を果たしたのではないかと思う
    研究が進み世の中に広く認知され出したのは1990年以降だという

    私も子供のADHDについては、ある程度知識があったが大人のADHDについては、初めて知った

    娘萌子の勧めで、心療内科を受診する泰介の様子やその後の経過など、かなりページを割いて書かれているので、大変参考になった
    本のように一朝一夕にうまくはいかないだろうが、こういう障害は、より多くの人の理解を得ることが、何より大切だから、その一助を担っていると思った

  • 定年前に異動した部署でも家庭内でもトラブル続きな癇癪持ちの泰介。ある日の認知症の母の「私は…東洋の魔女」という謎の発言の真相を解き明かそうとする過程で自分自身を見つめ直していく。現代の泰介パートと交互に語られる母、万津子の過去の壮絶さが重く読み応えがある。夢見た通りの結婚からどんどん不幸な道に進む姿が辛かった。それでも前を見つめる万津子の強さや一人背負い続けた苦しみが最後に開放される流れ、万智子から泰介の娘、萌子までをバレーボールで繋げる設定の巧みさ、萌子の指摘をきっかけに泰介の特性が明らかになり自分が変わる事で周りも変わる展開と骨組みも綺麗でとても心に響く話なのにどうもいまいち乗り切れなかったのは何故だ。前半の癇癪をすぐ爆発させる泰介がクズ過ぎて想像ついた特性が原因とはいえ後半救われ方が安易だと思ってしまったせいか。

  • 戦後の時代背景からくる今とは違う日本の(特に地方の)家族のあり方、現在の介護や病気の難しさ、職場や夫婦関係における相手を敬う心の大切さ。様々なことが詰まった人間ドラマあふれる作品でした。

    親から子へ、そしてそのまた子へ、1964年の東京オリンピックから2020年の東京オリンピックという長い年月を重ねてようやく成し遂げられた想いが綴られてます。

    現代の場面に出てくる定年間近の泰介は、思ったことをすぐに口に出し、相手の気持ちを考えることなくいつも自分を肯定し主張するサラリーマンで「こんな男になりたくないわ」と思いながら読んでいたけど「もしかしたら自分も…」とちょっと自らの行動を振り返ってしまうことも(^^;

    この作品は雑誌で紹介されていたので図書館で予約して借りたのですが、期待のさらに上をいく中身の濃い作品でとても満足できました。

  • 1964年、2020年それぞれの東京オリンピックと共に人生を歩む家族の話。主人公の泰介みたいな父親はひどいな…と思いきや、そーゆーことかというオチがありました。最後はほっこりするので、家族ものの小説が好きな人にはオススメです!

  • 泰介は、頑固で自分の思い通りにならないと機嫌を悪くする見栄っ張りな性格で、しかも子供の頃から手のかかるいわゆる問題児だった。
    後半のADHD発覚の流れは正直予想していなかったけれど、娘の存在に救われてよかった。
    良隆くんは泰介のことを助けてくれたのか。
    徹平は色々とどう思っているのかも気になる。

    万津子の人生が波乱に満ちていて、苦労人だったんだなあ…。DV夫から逃げられたと思ったら実家でも冷たい扱いを受けて。他の場所に行ったのは正解だった。由佳子はとてもできた人だし、泰介がいい方向に変わった時にはもう十分な意思疎通ができる状態じゃなかったのは切ない。全部持って行っちゃうんだ。

  • 世間に受け入れられない息子の性質を、バレーボールを通して息子を活かすと密かに決意した母。だが認知症で綻びが。

  • 母の若い頃のことと母が痴呆症になってからにことが交互に出てくる
    そこに息子の人生が絡んでくる。
     どうしてこんな人とぶつかるのかどうしてうまく生きられないのか
     色々なことがあり
    そしてやっとわかったことがあり
    そこを境に変わっていく。
    人生はどこからでもやり直せる
    そして母の愛に感動した
    ぜひ読んでもらいたい一冊

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著者プロフィール

辻堂ゆめ

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。他の著作に『ようこそ来世喫茶店へ~永遠の恋とメモリーブレンド~』(スターツ出版)、『十の輪をくぐる』(小学館)、『あの日の交換日記』(中央公論新社)など多数。今注目の若手作家のひとり。

「2021年 『僕と彼女の左手』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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