臨床の砦

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866118

作品紹介・あらすじ

緊急出版!「神様のカルテ」著者、最新作

「この戦、負けますね」
敷島寛治は、コロナ診療の最前線に立つ信濃山病院の内科医である。一年近くコロナ診療を続けてきたが、令和二年年末から目に見えて感染者が増え始め、酸素化の悪い患者が数多く出てきている。医療従事者たちは、この一年、誰もまともに休みを取れていない。世間では「医療崩壊」寸前と言われているが、現場の印象は「医療壊滅」だ。ベッド数の満床が続き、一般患者の診療にも支障を来すなか、病院は、異様な雰囲気に包まれていた。
「対応が困難だから、患者を断りますか? 病棟が満床だから拒絶すべきですか? 残念ながら、現時点では当院以外に、コロナ患者を受け入れる準備が整っている病院はありません。筑摩野中央を除けば、この一帯にあるすべての病院が、コロナ患者と聞いただけで当院に送り込んでいるのが現実です。ここは、いくらでも代わりの病院がある大都市とは違うのです。当院が拒否すれば、患者に行き場はありません。それでも我々は拒否すべきだと思うのですか?」――本文より


【編集担当からのおすすめ情報】
現役医師としてコロナ禍の最前線に立つ著者が
自らの経験をもとにして克明に綴ったドキュメント小説。
2009年に第十回小学館文庫小説賞を「神様のカルテ」で受賞し、シリーズ(既刊5冊で累計337万部)を書き継いでいる夏川草介氏は、現役の内科医でもあります。コロナ禍の最前線で多くの患者さんと向き合う日々が、一年以上続いています。本書は、著者が2020年末から21年2月にかけて経験したことを克明に綴った、現代版『ペスト』ともいえる記録小説です。

感想・レビュー・書評

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  • 三章からなり、初出は小学館宣伝誌「STORY BOX2021年3月号」。つまりコロナ第三波が少し落ち着いた頃だ。二章三章は書き下ろしで、4月に発行だから、ホントに急いで書いたのだ。鬼気迫るドキュメンタリー的な小説。現役医師の著者は、刊行後おそらく更に酷い第四波、そして最悪だった第五波をモロに受けたのだと想像する。著者や同僚たちの健康が心配だ。

    忘れやすい日本人は、去年のことさえもはや忘れつつあるのではないか?

    ひとつの病院の検査で、陽性者が数人出ていた状態から日々倍々で増えてゆき、(県内で唯一の)感染症指定病院ではあるが、6床だった病床は直ぐに満杯、20床に増やして直ぐに満杯、最終的に36床に増やす。

    あの頃テレビでは、煮え切らない政治家たちに対して医療関係者が「医療崩壊寸前です」と語っていた。病床占有率が50%を超えたと報道された。寸前でもなければ、現実的に5割でもない。ということを四波五波の辺りで我々は聞くことになるのだが、既に三波の時に「医療崩壊」が起きていたことを、私は愕然ととして読んだ。

    酸素飽和度が90%を切った。医者は「危ないです。直ぐに入院します」という。けれどもケロッとしていた自宅待機者をテレビで見たことがある。主人公の敷島は、この症状を「Happy Hypoxia(幸福な低酸素血症)」とよぶ。こんなに早くから医者の間では知られていたのだと、私は初めて知った。四波五波のときに自宅待機中に急変して亡くなった、ということを我々は何度も聞いた。このひとつとっても、未知の感染症に取り組む医師の心労はどんなだったろう。そして我々の危機意識は、あまりにも低かったのではないか?

    「肺炎があるのに、ホテルで本当に大丈夫なんでしょうか?」
    この自宅待機基準が、政府の方針として出た時に、私は耳を疑い、つい笑ってしまったことを覚えている。敷島もなんの根拠もなく「大丈夫、責任もって対応する」と答えざるを得ない。
    こんなことにならないように、一波ニ波とのきにやるべきことはなかったか?

    もちろん、誰も責任を取らない。もちろん、最善のことを毎日やっていた医師たちに責任を取らせられるわけがない。三波四波五波の前に、十分な臨戦態勢をとらなかった、世界的な行事にうつつを抜かしていた行政が、1番の責任者だったろうし、未だに総括文書を出す指示はおろか、反省の弁ひとつも語らない政治家にこそ責任を取らせるべきだと思う。

    「何を怒っているのですか?先生」
    突然の三笠の大きな声と、文脈の読めない問いかけに、室内のざわめきが、潮を引くように遠のいてゆく。(略)
    「私は怒っていますか?」
    「怒っているように見えました。気のせいですか?」(略)
    「もしかしたら、怒っているのかもしれません」(174p)

    主人公敷島は常に冷静沈着が周囲の評価である。これは著者自身への周りの評価なのかとずっと思っていたら、「神様のカルテ2」に匹敵する、最終盤の見事な会話劇の伏線だった。小説を読む限りでは、こんなにも忙しいのに、ちゃんと小説としても成り立つように構成しているのが凄い。

    「大学病院でも、一部の内科系の医局が、動き出してくれているようです。消化器系の教授が、かなり積極的に動いてくれているという話も出ていました」(183p)
    という一言は、おそらく近い将来「神様のカルテ」とのコラボを意識しているとしか思えない。あの一止が既に「教授」になっているとは思えないけれども。

  • 長野県の医療機関で新型コロナの第3波と戦う医師らの姿を描いた作品。

    感染者数が毎日、過去最高を更新しているまさに、現在、読むべき作品です。

    現在感染者数は一昨日東京で五千人超、全国で一万五千人超という非常事態を迎えています。
    「仮にワクチンが有効だとしても、世の中に行き渡るのに、あと数か月はかかりますね。気の長い話です」
    「それまで、僕らはカミカゼということかい」
    「本当にカミカゼみたいな目に遭うのは私たち以上に、外来に来ている患者さんだと思います」

    この作品が描かれる以前に医療の逼迫を優先して考えるべきか、経済をまわすべきかという議論になっていたGoToキャンペーンなどもありました。
    また、東京五輪を開催すべきかどうかという話もありました。
    今、感染者が急増しているのは五輪とは直接関係ないとは思います。
    でも、この作品を読んで医療現場の現実を目の当たりに知れば、両方とも医療を優先すべきが、正しい答えであることが歴然とすると思います。

    苛酷すぎる医療現場の実態がこの作品には描かれています。
    「ベッドの使用率五十パーセントの長野県がこのありさまだ。八十パーセントを超えている東京は地獄なんだろうね」

    私事で恐縮ですが、私の一番上の姪がこの春かねてからの希望であった看護師になるための学校に入学しました。付属の大学病院は大々的にコロナ患者受け入れをしている病院です。
    入学してすぐに医療従事者の枠でワクチンは打ったということですが、このコロナの時代にあえて看護師の道を選んだ彼女を誇りに思うと同時にとても心配しています。途中でやめたくなるのではないかとか、まだ、先ですが看護師の子どもはいじめに遭うということもこの作品に描かれていました。

    早くこの異常な、まるで戦時下のような、コロナの時代が収束することを願ってやみません。

  • 長野県の小さな感染症指定病院…コロナ感染症に立ち向かう消化器内科医敷島の視点から、第3波の感染状況を記録した頃(2021.1~)の実体験に基づいたストーリー。医師や看護師は感染の危険に曝されながらも誠意をもって治療を行っていたが、感染者は増加し医療提供体制がひっ迫…医師や看護師の疲労・疲弊も最高潮を迎える…。

    医師や看護師が自宅にも帰れず家族との時間も持てず、時には誹謗中傷に曝されることもあったあの頃、私はこの現実をちゃんと見つめていただろうか…今この作品を読んで自問自答しています。作中、敷島が陽性者かもしれない患者と接触したことから、自らがコロナであったらと得も言われぬ恐怖心を抱く場面…私も同じような経験をしたことがあります。本当に怖かったです…。今日からコロナ感染症が5類に位置づけられることになりました。そんな節目でもあるこの日に、この作品のレビューを作っていること…なんだか不思議な感覚です。5類に位置づけられるようになったからとはいえ、コロナウィルスはまだ存在し今後も変異を繰り返し、この時以上の医療ひっ迫を起こす可能性だって充分にあります。過去のことではない、これからもこの時のようなことが起こるかもしれない…そのことを忘れることなく、感染予防対策をしつつ医療職への感謝の思いを持ち続けていきたいと思います。

    • Manideさん
      かなさん、こんにちは。

      すご〜い、よくわかります。
      意識が弱くなってますが、患者がゼロになったわけではなく、現場は忙しいままという医院もあ...
      かなさん、こんにちは。

      すご〜い、よくわかります。
      意識が弱くなってますが、患者がゼロになったわけではなく、現場は忙しいままという医院もあるんですよね。

      この作品の臨場感というか、リアルな感じが、すごい現場の声が聞こえてくる感じなんですよね。

      今も亡くなっている人はいるわけで、適切に対応していく必要がありますね。
      2023/05/08
    • かなさん
      Manideさん、こんにちは!
      共感して頂けて嬉しいです(^-^)

      コロナ感染症が5類になって、
      様々なことが緩和されて…本当にい...
      Manideさん、こんにちは!
      共感して頂けて嬉しいです(^-^)

      コロナ感染症が5類になって、
      様々なことが緩和されて…本当にいいのかなって
      つい、思っちゃうんです…。
      こうしてお返事を考えている今も
      コロナ感染者がいて、治療にあたる医療従事者がいる…
      そのことを、忘れてはいけないと思ってます。
      コメント、ありがとうございました。
      2023/05/09
  • ふつふつと怒りが湧き、その後、恐ろしさに身震いする。
    コロナの治療に身を挺した医師、看護師をはじめ医療関係者に謝意を。

    臨床の砦
    2021.04発行。字の大きさは…小。
    青空、凍てつく時、砦の3話。

    2021年1月。信州の地方病院でコロナと格闘する医師の物語です。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ちょうど1年前、横浜からクルーズ船の患者を受け入れた時の恐怖を、医師・敷島は、忘れることが出来ない。

    わずか1年前、コロナウイルスは、完全に正体不明のウイルスであった。感染形態は不明、治療法も不明、予後も不明、後遺症も不明。どのように隔離するかも明確でなく、患者を受け入れが決定した感染症指定医療機関には、恐怖が広がっていた。信濃山病院でも、最初の患者受け入れ当日に、病棟で泣き出した看護師もいたのである。

    信濃山病院は、地域で唯一の感染症指定医療機関だが、規模の小さな施設である。病床数は二百床に満たず、呼吸器や感染症の専門家はいない。その外来には、果てしない車列が連なっている。

    発熱外来の受診者は原則院内に入ることができない。車で来院した発熱患者は全て駐車場に車を停めて、そのまま車内待機であり、防護服を着た看護師が車にiPadを運んで、屋内に居る医師がオンラインで診察を行う。

    6床で始まった感染症病棟は、拡大につぐ拡大で36床まで拡大し。医師も、看護師も治療方法も判らない未知のウイルスと戦い。本来診療可能な病床数を超えて行きました。そうせざるおえなかった信濃山病院の内科、外科のチームは、よく戦い、よく守りましたが。
    院内感染が発生しました。

    あえなく亡くなった患者は、感染症病棟から、感染者用の真っ黒な袋に詰められ、テープで目張りされた白いシーツに包まれて。見送るものもないまま運び出されて行く遺体(涙) 
    それらを見つめて、呆然と立ち尽くしていた看護師。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    読んでいて胸が苦しくなる。
    そう、いま私が思っていることがここに書いて有ります。コロナを受け入れて治療を行っている病院は、ほんの一部の病院でしかないのだ。ほとんどの病院は、コロナを他人ごとのように知らん顔をしている。

    そんな中で、一番感染者の多い東京で、あと一ヶ月ほどでオリンピックが開催される。それにより多くの外国人が来て、多くの興奮した人が東京に集まって来る。全く迷惑なことである。集まるのであれば、隔離した場所で行えばいいのだ。そしてコロナが発生しても、その中から出さない。これしか方法はない。

    このままでは、コロナが大量発生するとしか思えない。政府も、議員も、都も、選手も、大会関係者も、コロナを何かよそごとのようにとらえている。自分たちは、特別な人間でワクチンを打ち、若く健康的だから、コロナに罹らないと思っているのか。
    怒りがふつふつと湧いてくる。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    【読後】
    テレビで「飲食業やら旅行会社が死活問題」と、言っているのは分かりますが、
    私は、経済よりも、感染の拡大を抑えてほしいです。
    その為には、人の動きを止めるしかない。
    コロナは、人災です。

    そんなとき国民に出歩くな、テレビで観戦してと言いながら、観客を入れて
    お祭り騒ぎのオリンピックを行うのは間違っているのでないか。
    そもそもオリンピックの開催そのものが間違っているのでは。
    2021.06.13読了

  • 緊急事態宣言下でも、平気で酒出して24時まで営業している満員御礼の居酒屋もあんだよなぁ…
    なんなのかね、店も客も。

    一方、コロナ治療の現場では、この小説で描かれているような医療職の命がけの戦いが起きている。
    この時代に生きている人は読んでおいた方がいい一冊だと思う。

    政府もこういう本を無償で国民に配って啓発すれば良いのに、と思う。

  • 長野県にある病床数200という信濃山病院が舞台。
    大病院でもなく、大都会にあるわけでもない 中小病院。
    医師たちが必死の思いで 新型コロナ感染に立ち向かう
    ノンフィクションに近い作品のようです。

    作者は、現役の医師として長野県で臨床の現場にいる方ですが、
    見たこともないような景色を目にしたと発言されていました。
    病院の外に並ぶ診察待ちの車の列に、タブレットPCでの診察。
    人生の最期に、顔を見ることさえできない 患者と家族の現実。
    自分と向き合うために、書かないと進めないと思われたそうです。
                                                                                                                                                                               
    この物語の舞台は2021年1月。
    現在、2021年9月とは状況が異なります。
    ワクチン2回接種を終えた人が全国平均で5割になりました。
    それでも、デルタ株という変異株の出現で
    都市部では、まだ緊急事態宣言が解除されません。
    マスクなしの日々が戻ってくることがあるのか、それさえ分かりません。
    2020年、クルーズ船でのウイルス発見から2年半が経つというのに。
    2020年4月早々に、ある友人がこんなことを言っていました。
    「これって、明治維新くらいの大きな異変だと思う」と。
                                                                          
    《特定の立場から大きな声を上げることには、危険が伴う。
    立場の違う人間同士の繋がりを断ち切っていくことになるだろう。
    負の感情のクラスターは何も生み出さない》

    作品中のこの文言は、ぐさりと胸に刺さりました。
    事業の経営者、雇用されて働く人々、介護や医療の関係者。
    それぞれの立場で それぞれの利害がありますが、
    お互いに負の感情をぶつけ合うことだけは避けなければ。
                                                                                                                                                                               
    作品の中で、医師たちは暗中模索しながら必死で闘いますが
    その様子に とても危ういもの を感じました。
    こんなことは、続けられないかもしれない…。
                    
    今必要なのは、全体を見通す司令塔ではないでしょうか。
    てきぱきと采配を振ることのできるヒーロー、現れないかなぁ。

  • 地域の〈感染症指定医療機関〉である、信濃山病院。
    新型コロナの第3波と、奮闘する医師たちを描く。

    ノンフィクションを読んでいるような、圧倒的なリアリティ。
    ニュース報道よりも、よっぽど具体的で真に迫る内容。

    現役医師として、コロナ禍の最前線で経験したことをつづった〈ドキュメント小説〉だそう。

    実際に最前線に立っている筆者ならではの濃密な内容で、勉強になることもおおく、物語としても何度も泣ける。

    無知で無策の、国のトップと行政。
    しかつめらしく感染状況を伝えながら、オリンピックは開催可能という、マスコミ。
    コロナを恐れ、患者の受け入れをしない病院。

    理不尽さがやるせなかったり、憤りを感じたり。

    一方、不可能なことを可能にしろ、と言われているような状況で、懸命に戦いつづける医療関係者に対して、改めて頭が下がる。

  • 現役の医師で、実際にコロナの最前線で働く著者の渾身の一冊。
    時は2021年1月。
    日本は新型コロナの第3波を迎えていた。
    血中酸素濃度が落ちて来た患者を中核病院へ移送する敷島の様子から描かれる。
    敷島は感染初期から、受け入れを行ってきた信濃山病院で働く消化器内科の医師。呼吸器は専門ではないものの、落ち着いた性格から、患者からも他の医師からも一目置かれていた。
    搬送していた患者は呼吸状態こそ悪いものの、まだ若く、専門病院で治療を受ければ、助かる…この時はまだそう信じていた。
    しかし、1月も日を追うごとに新規の陽性患者が増えて来る。第3波の訪れだった。
    受入病床数を増やしても、全員を入院させることが出来なくなり、重症化しても、専門病院に送ることが出来なくなり、信濃山病院では高齢や認知症の患者は、信濃山病院で看取ることに…いわゆる「命の選別」だ。
    北アルプスの稜線を見ながら、救急車で患者を搬送した時から、ここまでわずか10日足らず。
    医療崩壊はあっという間に訪れることが、手に取るように分かる。
    発売当初は200ページちょっとのハードカバーで、買うのを少しためらった。200ページぐらい、一気に読めるだろうと思った。
    でも、読めなかった。
    何故なら、敷島を始め、コロナ病棟で先の見えない状況で患者に誠心誠意対応する医師や看護師さんの様子を読んでいたら、涙が溢れて、先に進まなくなるから。
    この作品は「神様のカルテ」の作者の作品ではなく、コロナの最前線で闘う医師の心の叫びなのだと思う。
    長野県はかなり早い段階から、コロナの流行に合わせて、他県との移動の自粛を呼び掛けていた。そのせいか、大きな観戦爆発が起きたとは聞かない県である。それでも、ここまでの悲惨な状況。他の都道府県は…と想像するのも心が痛い。
    経済がなんだ!オリンピックがなんだ!
    全ては命があってこそ!
    何で、それが伝わらないんだろう。
    自分の不謹慎で、これだけの医療従事者が苦しんでいるのに。
    他の方のレビューにもあったが、こういう本こそ、いろんな人に読んで欲しい。
    200ページなんて、って思ったけど、コロナと闘いながらも、本を出すことで、医療の実情を伝えてくれた作者に感謝の言葉しかない。
    作品では1月1ヶ月の出来事を描いているが、その後の第4波で協力体制が強化されたことを祈るばかり。

  • 未知の感染症に立ち向かう医療の最前線を少しでも多くの人に知ってもらいたい、という夏川さんの決意。医療の現場を知らない者にとって、たいへん貴重な一冊でした。困難な状況でも冷静に対処するお医者さんや看護師さんに唯々頭の下がる思いです。

  • 1.この本を選んだ理由 
    一時期よく目にしていた作品なので、いつか読みたいと思っていました。
    読み始めたのが2022年5月なので、コロナに対する危機感はかなり薄れている状態。
    私の子どももコロナに感染しており、その症状は、発熱、腹痛、喉の痛みと、つらそうではありしたが、2日目には症状は緩和されてきて、3日目には何事もなかってかのような感じでした。私自身は2週間程度ずっと子どもと過ごしていましたが、感染することなく(無症状というだけかとしれませんが)、普通に過ごしていました。そんな経験もあり、さらにコロナに対しては、危機感は低い状態でした。
    そんな中、この本が読めたことはよかったと思いました。

     
    2.あらすじ 
    コロナと戦った医師や看護師たちのお話。2021年の1月が舞台の中心になっている。
    地方病院の信濃山病院は、その地域で唯一コロナ診療に携わる病院だった。その病院での医師たちの戦いの姿が、とてもリアルに描かれている。


    3.感想
    物語はノンフィクションを思わせる内容で、相模原論文とか、実在するものが登場するので、リアルに物語に入っていくことができます。
    コロナ感染者は減ったり、増えたりを繰り返しており、ゼロになることはないことが予測できる今日この頃。コロナに対して、果敢に戦っているであろう人たちの姿が、目の前に浮かんできました。
    この作品を読んで、しっかり3回目の予防接種も受けないとだめだなと、あらためて感じました。

    最後まで三笠先生がかっこいい。
    完全な脇役でありながら、「一度も他者を攻撃するような軽薄な発言をしてこなかった。」「自分だけが辛いと思えば、人を攻撃するようになる。自分だけが辛いのではないと思えば、踏みとどまる力が生まれる。」などなど、その取り組みや、セリフは、素晴らしいリーダー像でした。
    登場人物たちがかっこよく、こういう人たちが実在して、日本を支えてくれたことに、あらためて感謝するきっかけとなる作品でした。


    4.心に残ったこと
    知らない用語が出てきたので、調べてます。
    アビガン
    レムデシビル
    相模原論文



    5.登場人物  
    (信濃山病院)
    敷島寛治 内科医 42歳
    龍田 たつた 外科医
    三笠 内科部長
    千歳 外科医 龍田上司
    日進 肝臓内科 48歳
    音羽 内科医 女性
    富士 循環内科 62歳
    春日 神経内科
    千早 情報部長
    南郷 外科医 院長

    敷島美希
    敷島桐子
    敷島空汰


    (筑摩野中央医療センター)
    朝日遼太郎 呼吸器内科責任者


    (患者)
    平岡大悟 62歳
    根津九蔵 70歳
    山村富雄
    山村静江

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著者プロフィール

1978年大阪府生まれ。信州大学医学部卒業。長野県にて地域医療に従事。2009年『神様のカルテ』で第10回小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。同作は10年に本屋大賞第2位となり、11年には映画化もされた。著書に『神様のカルテ2』『神様のカルテ3』『神様のカルテ0』『新章 神様のカルテ』『本を守ろうとする猫の話』『始まりの木』『臨床の砦』『レッドゾーン』など。

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