絞め殺しの樹

  • 小学館 (2021年12月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784093866262

作品紹介・あらすじ

あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ

北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。

「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)


【編集担当からのおすすめ情報】
絡み付いてね。栄養を奪いながら、芯にある木を締め付けていく。最後には締め付けて締め付けて、元の木を殺してしまう。その頃には、芯となる木がなくても蔓が自立するほどに太くなっているから、芯が枯れて朽ち果てて、中心に空洞ができるの。それが菩提樹。別名をシメゴロシノキ。

みんなの感想まとめ

壮絶な人生を歩んだ女性の物語が描かれています。主人公ミサエは、厳しい環境の中で育ち、数々の苦難を乗り越えながらも、心の中には揺るぎない信念を抱いています。彼女の生涯は、時代や土地の影響を受けつつも、哀...

感想・レビュー・書評

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  • 2022年に手にしたおそらく最後となる一冊は辛く苦しい親子(母と息子)の物語でした。

    タイトルである「絞め殺しの木」とは菩提樹を意味します。

    それは芯となる木に絡みつき、締め付け、栄養を吸いとり、芯となる木を殺してしまう。

    一度絡みつくと時間をかけてジワジワ相手の命を奪っていくのが菩提樹。

    そんなタイトルがつけられた物語、読んでいても苦しくなりました。

    戦前の根室を舞台として始まった本作、第一部の主人公は根室で生まれ、新潟で育ったミサエ。

    ミサエは自分の両親の顔すら知らずに育ち、根室の元屯田兵である吉岡家に引き取られてます(実際には金銭で売られてしまうのですが)。

    そこで始まった過酷な扱い。

    わずが10歳のミサエは給金も休日すら無い中で、早朝から深夜までこき使われます。

    そんなミサエの過酷な人生を綴ったのが第一部。

    第二部はミサエの息子で養子に出された雄介が主人公となりますが、雄介の人生もまた過酷そのもの。

    辛く苦しい物語でした。


    説明
    あなたは、哀れでも可哀相でもないんですよ

    北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。しかし、吉岡家出入りの薬売りに見込まれて、札幌の薬問屋で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、そして長女の幼すぎる死。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの人生の道のりを辿ろうとする。数々の文学賞に輝いた俊英が圧倒的筆力で贈る、北の女の一代記。

    「なんで、死んだんですか。母は。癌とはこの間、聞きましたが、どこの癌だったんですか」
    今まで疑問にも思わなかったことが、端的に口をついた。聞いてもどうしようもないことなのに、知りたいという欲が泡のように浮かんでしまった。
    「乳癌だったの。発見が遅くて、切除しても間に合わなくてね。ミサエさん、ぎりぎりまで保健婦として仕事して、ぎりぎりまで、普段通りの生活を送りながらあれこれ片付けて、病院に入ってからはすぐ。あの人らしかった」(本文より)


    【編集担当からのおすすめ情報】
    絡み付いてね。栄養を奪いながら、芯にある木を締め付けていく。最後には締め付けて締め付けて、元の木を殺してしまう。その頃には、芯となる木がなくても蔓が自立するほどに太くなっているから、芯が枯れて朽ち果てて、中心に空洞ができるの。それが菩提樹。別名をシメゴロシノキ。

    • ヒボさん
      pさん、こんにちは♪

      ブクログユーザーの評価も高く、気になっていた一冊でしたが、なかなか辛い作品でした。

      語彙力がないので、私の感想だと...
      pさん、こんにちは♪

      ブクログユーザーの評価も高く、気になっていた一冊でしたが、なかなか辛い作品でした。

      語彙力がないので、私の感想だとあまり参考にならないと思いますが、機会があれば是非とも手にとってみてください。
      2023/01/12
    • pさん
      ヒボさん
      こんばんは

      語彙力ありますよ
      めっちゃ参考になって気になってしまいましたもん
      ヒボさん
      こんばんは

      語彙力ありますよ
      めっちゃ参考になって気になってしまいましたもん
      2023/01/12
    • ヒボさん
      pさん、こんばんは♪

      褒め言葉だと受け止めて喜んでおきますね
      ^o^
      pさん、こんばんは♪

      褒め言葉だと受け止めて喜んでおきますね
      ^o^
      2023/01/12
  • 第一章で何度読むのをやめようと思ったか(-_-;)
    「おしん」どころじゃなくないか?
    皆さんのレビューの評価が高いから
    きっと幸せになるのね!
    辛いけど頑張れミサエ!!

    ずっと不幸でした(゚-゚*;)(;*゚-゚)
    ただ何回も人生を選択できるチャンスはあったのですよ?何故そっちにいく?ちょっと冷静に読めなくなるミサエの行動や決断…
    何度読むの中断したか笑
    でもよくよく考えると、もう自分の気持ちとか他人に利用されるとかを考えられない人に育ってしまうのかもしれないなぁと(꒪⌓︎꒪)

    もうどん底気分の第一章から息子雄介の第二章でやっとわたしの気分も浮上しました♪

    雄介はこの腐り切った場所から逃げずに頑張るって決めたんだね…負けるな雄介!!
    絞め殺しの木にならず、絞め殺すこともない人生
    であるように祈りたい

    もうこのタイトルが絶妙すぎる。゚(゚´ω`゚)゚。
    壮絶な話だから元気な時に読んでくださいね笑



    • 土瓶さん
      タイトルは好み。
      これでホラーだったらよかったのに。
      タイトルは好み。
      これでホラーだったらよかったのに。
      2025/04/30
    • みんみんさん
      菩提樹にことを絞め殺しの木って言うらしい
      菩提樹にことを絞め殺しの木って言うらしい
      2025/04/30
    • 1Q84O1さん
      みんみんさん

      やだ!
      Мっ気はないです(ヾノ・∀・`)ナイナイ
      みんみんさん

      やだ!
      Мっ気はないです(ヾノ・∀・`)ナイナイ
      2025/04/30
  • 最果ての地、北海道根室で生を受けて亡くなるまでのミサエの足跡。
    彼女の生きざまは、壮絶であるが故に哀しくて切ない。
    だが、哀れという一言で済まされないものが彼女の中にある信念だろうか。

    時代がそうさせるのか、土地がそうさせるのか…。
    理由を探したくはないが、違った生き方はなかったのだろうかと思ってしまった。

    久しぶりに圧巻の大河巨編を読み感慨深い気持ちになった。


  • 主人公への仕打ちがあまりにも酷すぎて、心折れて途中で何度も読むのをやめようかと思ったけれど、この物語の着地点が知りたくて最後まで読み切った。
    こんなに辛く重苦しい気持ちになったのは久しぶり。

    どこでボタンをかけ間違えたのだろうか。
    大人の都合で勝手に下働きに出させられ、挙げ句に色街に売り飛ばされそうにもなって。
    けれど味方となってくれる大人たちが現れて良い方向へと導いてくれた。それは泣きたくなる程嬉しいことで、今度こそ救われると思った。
    それなのに。
    守ってくれる身内が皆無の状況で、幼い頃から常に周囲の目を気にしなくてはならず、理不尽な仕打ちにも耐え思ったことを告げることも禁じられていた。
    大人にさえなればきっと、と思っていたのに大人になればなったで新たな障害が待ち受けていた。
    周囲の人たちから勝手に寄りかかられ重荷を背負わされて、逃げ出すことも出来なくなる。
    いったいどうすればこれら負のループから抜け出せたのか。

    この世を生きる上で血の繋がりも大切だけれど、人と人を結びつける縁はもっと大切だと思えた。そして縁を呼び起こせるのは普段からの心掛けなのだと。
    実の親子なのに親子として一度も対面することのなかった母と息子。けれど物事に対する誠実な姿勢が母から息子へと見事に遺伝していて、読んでいて救われた。
    母には叶わなかったあれやこれやも、この芯の通った息子ならきっと叶えてくれる。息子の穏やかで光の差す未来を予感させるラストに、ほっと胸をなでおろした。

  • 北海道の歴史には、この様な辛い話がいくつも語り継がれている。北海道開拓の大きな目的は国力増強、食糧増産、そして士族への授産だったのだろうなと思う。士族ばかりでなく内地では食べていけない人達も希望と夢を抱き移住したに違いない。
    しかしこの政策には当然闇の歴史もある。
    このお話を読んでいると《貧すれば鈍する》と言おうか貧しさは人の心をも貧しくさせるのかと思ってしまった。雄介さんが家庭教師先のお母さんを見《金で担保出来る心の豊かさや優しさというものもある》と感じ自分の置かれた境遇にはない世界を知る。
    それにしてもミサエさんの一生は壮絶と言うしかない。《絞め殺しの樹》というタイトルに禍禍しさを感じ読み始めたが、どんな境遇にも負けず生き抜いたミサエさん、そして卒業後は故郷に帰り酪農家の後継者として生きようと決めた雄介さん。
    切ないお話だったけれど希望を感じさせてくれた。





  • こういう一代(二代?)を追う作品好きとしては評価を甘くせざるを得ない。
    これはどう考えても次作でますね。楽しみ。 ★4.0

  • ミサエの報われなさを
    雄介が 母親の過去を知ることで
    段々昇華してくれていくのは
    ほっとしました

    菩提樹の別名をシメゴロシノキというそうで
    元の木を締め付けて殺してしまう

    仏教的な死生観 善人も悪人も
    生々流転していくさまが
    描かれてると思います

  • 舞台となる根室は雪が少なく(雪は暖気を保つので雪が降る地方がしのぎ易い)乾いた風が吹き付け竹林や柿の木がないと描写してあった。竹林がないなんて私には全く想像できない。私が生まれ育った九州では竹林が里山を荒らすという話は良く耳にする。それと同じように、温暖な地域で育った者の根性のなさから来るものなのか、両親が居てくれたからなのか分からないが、本書にあるような理不尽さには激しい憤りを感じた。
    屯田兵の歴史も初めて知った。初期の頃、屯田兵は武士から募られ、最初に入植した屯田兵は後から入植した農家出身の屯田兵を見下し、差別感を露わに接している。
    お寺に嫁いだユリが長女を自殺で失い離縁されたミサエに「ミサエさんはちゃんと生きていらっしゃいましたよ。誰しもそうであるように、働いて、眠って、働いて、眠って。立派に生きていらっしゃいましたよ」。でも、あなたこそが特別ではない。あなただけが苦労したのではない。それでもきちんと生きてきたとミサエを諭す。そして、ミサエもその言葉を聞き心穏やかに落ち着いていく。そして誰にもしられることなくこの世を去りたいという願いをユリに語り、ユリも「左様ならば」と、彼女の言葉をしっかり受け取り別れを告げる。
    第二部は養子に出された雄介の視点で始まった。ミサエの最期が微塵も描かれていないのは歯がゆいが、上記の流れからだろう。
    でも、雄介が北大を卒業後に根室に再び戻る決心をするのは、百歩譲っても認められない。小山田への復讐もないとはいえないが。
    締め殺しの樹が『菩提樹」だったとは驚いた。 釈迦が悟りを開いた木の別名にしては禍々しすぎる。日本で云われる菩提樹はシナノキで、本当はインド菩提樹、樹ではなく蔦、狙った木に絡みついて栄養を奪いながら芯にある木を締め付け、最後には元の木を殺してしまう。そして芯となる木がなくても蔦が自立するほどに太くなり、芯は枯れて朽ち果て中心に空洞ができる。しかし、いつか締め殺しの樹も枯れていくのだとユリの話は終わっている。これは間違いなく諦観の境地だろう。
    でも、これから生きていく雄介には当てはめてはいけない。最後のページを読み終えどうして雄介、あなたは根室を出ないの!と胸の裡で叫んだ。母親のミサエが生きていたらきっとそう言って反対したはず、と考えるのは私の一方的な捉え方なのだろうか?
    もしかすると、ミサエも雄介と同じ結論を出したのもしれないとも考える。
    強い強靭な木があるとする、まっすぐで何もかもを受け入れる木、そんな木には安心して蔦は絡みつく、縋るなら揺るぎなく強い木。人の中にはすごく優しくて強い人が奇跡的にいる。そういう人は、他の人に倚りかかられ重荷を負わされ泣くことも歩みを止めることもできなくなる。それがミサエなのだ。
    彼女は”便利な存在”にさせられたとも思えて、読後以来、私の苛立ちはずっと燻りっぱなし。

  • 河﨑秋子さん『絞め殺しの樹』 | 小説丸
    https://shosetsu-maru.com/interviews/authors/quilala_pickup/160

    Misato Ogihara
    https://misatoogihara.com/

    絞め殺しの樹 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09386626

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      根室舞台に苦難の女性描く [評] 杉江松恋(書評家)
      <書評>絞め殺しの樹:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkai...
      根室舞台に苦難の女性描く [評] 杉江松恋(書評家)
      <書評>絞め殺しの樹:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/article/642688?rct=s_books
      2022/02/07
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      直木賞候補作家・河崎秋子氏が同郷の作家・桜木紫乃氏と握手を交わした日【前編】|NEWSポストセブン
      https://www.news-pos...
      直木賞候補作家・河崎秋子氏が同郷の作家・桜木紫乃氏と握手を交わした日【前編】|NEWSポストセブン
      https://www.news-postseven.com/archives/20220619_1764803.html?DETAIL

      直木賞候補作家・河崎秋子氏が同郷の作家・桜木紫乃氏と握手を交わした日【後編】|NEWSポストセブン
      https://www.news-postseven.com/archives/20220619_1764805.html?DETAIL
      2022/06/19
  • 昭和十年、十歳で根室の元屯田兵・吉岡家に引き取られたミサエは、ボロ雑巾のようにこき使われた。危ないところを薬屋の小山田武臣に助けられ、十五の春から札幌の薬問屋で働くこととなる。
    働きながら看護師の資格を取り、希望を抱き、人の役に立ちたい、恩返ししたいと懸命に働いているミサエだったが、恩人である小山田武臣の頼みで根室に戻ることになる。
    ミサエ本人の意思決定によるもの、しかし、この話を聞いたときミサエの手は震えているのだ。
    逃げ出せたはずなのに恩義に絡みとられてしまう。

    一見いい人であった小山田武臣という人物が、なんとも薄気味悪く感じた。彼には彼の事情があるのだが、、理解するのが難しかった。


    第二部は、吉岡家の養子として育てられた息子の雄介が主人公。困難を乗り越えていく様がすごすぎる…
    雄介には逃げ切って欲しいと願いながら読んでいたのだが、札幌の大学を卒業したら、根室にもどり家を継ぐ決心を固める。そして、育ての母親を「家」から逃すのだ。
    ラストは、雄介の決意、何にも脅かされることがない、静かで、温かで、光差す場所を作るのだ、という言葉で終わる。


    つらい話だが、ユリと猫の存在が温かい。第一部、お寺でミサエとユリが交わした会話が心に残っている。

    「左様なら」
    「別れの言葉として使われているさようなら、って言葉はね。あなたが、そう、あるならば、って意味なんですよ」
    「ミサエさんが、そう、望むのであれば、他の誰にも、あなたの生き方に異を差し挟ませたくないのであれば。左様で、あるならば。私は、さようならと、言う他ありません」

  • つらいつらいつらい。
    読んでいる間ずっと、このつらさから逃れることができなかった。
    昭和初期という時代に子どもであり、女性であった主人公は、時代に翻弄され、不幸の連続だ。
    著者に筆力があるぶんだけ、その描写はよりリアルさをもって読者の胸に迫る。
    だがしかし、この主人公の受けた苦難は、現代を生きる私たちとは無縁のものになったのだろうかと考えるとき、それを否定できないと気づき、愕然とする。
    今だって、虐待される子ども、モラハラ夫に苦しめられる妻など、そこらじゅうに掃いて捨てるほどいるのではないか。
    いじめによる自死、親ガチャ、格差社会。
    問題点は、今なお私たちのすぐ身近にある。
    それに加え、やはりこの小説の舞台が北海道の根室だということも大きいのだろう。
    厳しい自然の中、何もない土地を死にものぐるいで開拓してきた先人たちの記憶が生々しくのこる時代であり、土地柄もあって、逃げられない閉塞感がつきまとう。
    怒濤のつらさの連続で、最後の最後に見えるか見えないかのわずかな光。
    個人的には、もう少し「希望」の要素が多いとよかった。

  • 1人の女性の壮絶な物語。
    戦前から戦後の北海道の根室、最果ての地の中で本当に壮絶としかいえない。
    主人公が生きる気力を失っていく場面で、生きなければならないと希望を見出すのではなく、ある種の諦観とゆうか覚悟を決める場面に心揺さぶられた。

    ーあなたは哀れでも可哀想でもないんですよ。
    わたしは、自分の悲しみに依存していたのかもしれない。この身の不幸によりかかることによって、存在を規定していたのかもしれない。自分の不幸に寄りかかり、そこから養分を得て生きていたのは、自分自信だ。
    ー中略ー
    立て限りは立つ。死ぬ時まで生きなければならない。

    救いがみえない物語の中で、希望があってもなくても、辛くても苦しくても理不尽でも、生きる覚悟を決めなければならないとそう思わせる一冊。

  • 優しくて真面目な人が搾取される。恩を感じるのは良いけど、それはだめだと思うところにジワジワとはまっていくのが読んでいて引き込まれる。菩提樹。
    白猫と佃煮おにぎり、がそれぞれ受け継がれているのが救われる。

    ミサエが「自分は苦労したのに」の考えになってしまうのが悲しい。

    分岐点でしっかり抵抗するところが気持ちいい。
    「違います!そんなことをした覚え、わたしにはありません!」
    「すみませんが、吉岡の家の両親に聞いてみないと、僕からはなんとも言えません」


    「気をつけて。あなた、自分で思っているほど、哀れでも可哀想でもないんですよ」あなたこそが特別ではない。あなただけが苦労したのではない。

  • タイトルがもう只事ではないですよね。仏教というか仏陀にまつわる逸話から取られているらしいことが本書の中で語られますが、タイトル見たときにもう「しんどい話だから覚悟して読めよ」感がまざまざ伝わります。

    …それにしても河﨑先生はどうしてこんな話が書けるのかと毎作毎作本当に驚かされます。
    まるで大河ドラマのようです。血の因縁、地縁の因縁が息苦しいほどに読み手に絡まって来て後半出てくる絞め殺しの木の話と相まってこちらが絞め落とされそうになります。
    二部仕立てにしたことで重厚感も半端でない。

    北海道の歴史を絡めた物語の種は先生の中にまだまだありそうです。これからもすべて読みたい。
    序盤から出てくる代々の白猫の存在に救われますね。先生の猫好きを感じさせる描写が辛い物語の、救いや清涼剤に感じられました。

  • 主人公のミサエがずっと苦しくてつらい。
    子どもの頃から一生懸命に働いて生きてきたはずなのに、どこに行っても周囲から追い詰められてしまう。

    特に、道子がミサエに何も言わず(言えず?)死を選んでしまったこと。それだけでもつらいのに、道子の死後にわかる事実がさらにミサエを苦しめる。
    生きていくことの難しさを感じた。

    印象に残った登場人物は、寺に嫁に行ったユリちゃん。
    道子を失ったミサエに「あなた、自分で思っているほど、哀れでも可哀想でもないんですよ」と告げて、独りの時間をもつよう勧める。ミサエが、❝いつか死ぬそのときまで❞生きなければならないとまた前を向けるように。
    (ユリちゃんがそこまで意図していたかはわからないけれど)

    ユリちゃんはミサエの息子・雄介にもかかわる。
    菩提樹のことを「シメゴロシノキ」と呼ぶとは知らなかった。絡みついて栄養を奪いながら芯にある木を殺していく木。お釈迦様はその木の根元で悟りを開いた。
    ミサエは絞め殺されてしまった木なのかな。ミサエの元で暮らすことはできなかったもののミサエの元で生まれた雄介は、物語の最後、生まれた場所に根をおろして生きていくことを決意する。
    彼は何を悟って生きていくのか。


    「でもどんな木でも、いつかは枯れる。芯の木がそうであるように、絞め殺しの木もね、いつかは枯れるの」

  • 菩提樹という植物が、
    雪もあまり積もらない渇いた根室の土地で
    本当に群生しているようなイメージが膨らみ、
    作品になんとも言えないひとつの重みを
    与えている気がします。

    締め殺される側と殺す側との絡み合い
    の中でストーリーがどう転んでいくのかを、
    密かに楽しみながら読めた一冊だった。

  • 凄みのあるタイトルである。
    これは他の木に絡みつき、栄養を奪いながら締め付け、元の木を殺してしまう蔓性の植物をそう呼ぶらしい。
    物語は北の大地に生きる女の辛苦の一代記。ただなかなか共感出来ずに読み進めることになる。
    なによりも理不尽であり底意地が悪く、暴力的な虐待がこれでもかと続いていく。
    そして主人公に主体性が無く、登場人物もとても狭い範囲内で描かれており、それがまたほぼ全員一貫していつになっても変化がない。
    もちろん戦後の北海道にはこのような意志の弱い人々がいたのだと思う。
    ただ読者を救いもなく、暗く苦しめるような過剰な物語性に共感は生まれてこない。
    ただ面白いのは確かであり、堪能したのも事実。

  • 両親がいない身の上、自分の人生の選択が選べない時代のせいか、10歳で奴隷同然の待遇で厳しい環境の北海道で生きて行かなければならず、ミサエの生涯が辛すぎて目を逸らしたくなるのに物語の先を読まずにはいられなかった。境遇・故郷・人間関係が菩提樹を絞め殺すようにミサエの息子にも絡みつくけれど、実母ミサエのようにただ耐えるのではなく運命に立ち向かって蔓を刈りに行くようなラストにもう少し物語を読んでいたくなった。

  • 借り本

    つらいつらいミサエの子供時代、優しい小山田さんいてよかったーーーと心から思っていたのに、まさかそれが自分の隠し子だったからだったとは…
    第二部読んで、えー!って声が出てしまいました。

    ミサエもなんで辛い目にあった吉岡家に自分の子供を渡しちゃったんだろう
    色々納得できない

    でも、辛くても逃げ出さないところと賢いところが雄介に引き継がれていると思った

    表紙絵が素敵だわーと思っていたが
    猫が道子が自殺した場所に案内してるシーンの絵だったとは…複雑な気持ちです。

    雄介の覚悟が、一筋の希望
    がんばってほしい

  • ミステリーと間違えた。本作は昭和10年から始まる女性の一代記が一部。二部は女性の息子が母親の事を知ろうとする物語。
    今から90年前に人権さえなかった日本の重い内容に終始していて読んでいて辛かった。
    締め殺しの樹とは菩提樹の事らしい。

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著者プロフィール

1979年北海道別海町生まれ。実家は酪農家。2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・ 評論部門)受賞。14年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で15年度JRA賞馬事文化賞、19年『肉弾』で第21回大藪春彦賞、20年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞。24年『ともぐい』で第170回直木三十五賞受賞。その他の著書に『清浄島』『私の最後の羊が死んだ』『森田繁子と腹八分』『夜明けのハントレス』などがある。

「2026年 『隣の畑は青々と』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河﨑秋子の作品

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