若葉荘の暮らし

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 1809
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866552

作品紹介・あらすじ

40歳以上独身女性限定のシェアハウス 畑野智美作家デビュー10周年記念作品。感染症の影響を受け、望月ミチルのアルバイト先の飲食店の売上が激減。バイト代が減ってしまったミチルは家賃の安い家に移ることを余儀なくされる。そんな彼女に友人が紹介してくれたのが、40歳以上独身女性限定のシェアハウス「若葉荘」だった。不安を抱えながら若葉荘の門を叩いたミチルだったが、温かく迎えてくれた管理人・トキ子さんに出会い、ここに住むことを決める。同世代の千波さんと幸子さん、50代の美佐子さんと真弓さん、何かに傷つけられ、それぞれに重荷を背負いながらも、逞しく生きる住人達との交流の中で、ミチルは自分の幸せを自分軸で探す術を身につけていく。生きづらい世を懸命に生きる全女性へ送る人生賛歌。 【編集担当からのおすすめ情報】 就職氷河期を生きた40代、雇用機会均等法に翻弄された50代、理想の「女性像」という価値観に縛られ生きざるを得なかった60代以上、それぞれの年代にそれぞれの闘いがあった。懸命に生きてきた女性達の羽をそっと休められる場所「若葉荘」がリアルにあって欲しいと思わずにいられなくなる物語。何度も大きくうなずき、何度も胸が締め付けられ、それでも最後に明るい光が差し込む1冊です。

感想・レビュー・書評

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  • 40歳以上の独身女性だけが住むことができる若葉荘。コロナ禍でバイト先の洋食屋も時短営業になり、金銭的に不安を感じ若葉荘に引っ越しを決めた40歳のミチル。
    女性にとって40歳とは大きな節目の時だと思います。このまま一人で生きて行くのか?出産は?正規雇用でなくて大丈夫か?そういったミチルの迷いが綴られています。
    そして、若葉荘に住む年齢も境遇も過去も様々な女性たち。悩みはそれぞれだけど、うんうん、わかるわかる、のオンパレード。まるで女子会ランチしているような一冊。やっぱり女同士ってなんかいいんですよね。聞き上手で共感してくれるからかな(世の男子たち、ごめん)
    でも、楽しいだけの女子会のお話ではないのです。なぜ、女性一人では生きづらいのか、どうしていけばいいのか。結局は自分自身を信頼できるかどうかなんだ、ということに気付いていくお話です。
    正直、面白い本ではありませんでした。でも、それだけリアルな内容だったんだろうな。

  •  40歳以上の独身女性限定の古いアパート「若葉荘」。光熱費他込で家賃5万円。鍵なしの部屋以外のリビング、キッチン、風呂等は共同‥。ここが物語の主な舞台で、当然ながら、いろんな人が暮らしています。

     生きづらい今の世の中に、畑野智美さんは「ひとつ屋根の下」とも言える「若葉荘」を見せてくれました。住人同士の適度な距離感、悩みや愚痴をこぼして苦しみを共有できる場として、望ましいシェアハウスです。住人それぞれ癖はあっても、基本的に皆いい人。
     人に依存し過ぎず、それぞれ自立し、協力して生きていく‥、うーん、理想ですね。
     帯に「生きづらい世を懸命に生きる女性へ贈る人生讃歌」とありますが、男女関係なく楽しめ、生き方について考えさせてくれる物語でした。

     読了後、改めていろいろと考えてしまいました。
     一つは、日常での人との距離感です。人は誰しもその時々で、「一人が気楽で居心地が良い」と思ったり、「一人は淋しいし将来が不安」と考えたりするものだと思います。加えて、いろんな欲望や願いが複合的に絡み合っています。だからこそ、人との距離感が難しいんですね。
     もう一つが、男女差を含めた格差です。現実に、結婚や仕事上でまだまだ男性優位なのが現代日本です。更に、生きていく上で、年齢だけではない、コロナ禍もあり心理的・社会的・経済的な不安が常に障壁となり、息苦しさを感じさせます。改善していくための知恵や相談できる相手・システムは、絶対必要ですね。

     自分の将来について、良くも悪しくもあれこれ想像を膨らませてくれる物語でした。

  •  主人公は望月ミチル、40歳ながらアルバイトで生計を立て、未婚、彼氏なし。コロナ禍でもありバイト代が減っていたことから、今後の生活に不安を感じ、 40歳以上独身女性限定のシェアハウス「若葉荘」に引っ越すことに決めた…。管理人のトキ子さんをはじめ、入居しているのは、様々な事情を抱えながらも今を精一杯生きている女性達と出逢い、自身のことを見つめ直すことにつながっていくストーリ…。

     一気に読みました!ミチルにはその都度共感できました。ちょっとだけ、会話がまわりくどいかなって思っちゃうことはあったけど…憎めない性格というか、ミチル自身では気づいていないようだけれど、まわりを和ませるキャラですね!女性特有の生きにくさを、すべての登場人物から感じさせるさせます。ちょっと笑えちゃう描写もあっておもしろかったですね!でも、幸子さんのことをもっと知れるとよかったかな、あとトキ子さんがなぜ「若葉荘」を 40歳以上独身女性限定のシェアハウスとしたのかが、描かれてなかったのがちょっと心残りです。

  • 木皿泉さんの『すいか』を思い出した。年齢も職業も抱えている悩みもバラバラな女性たちがひとつ屋根の下で暮らす。みんな個性的で楽しそうだったな。ワイワイお喋りしながら食事してたっけ。

    今回の『若葉荘』の女性たちもそんな感じ。
    40歳以上の独身女性限定のシェアハウス。集まった女性たちが絶妙な距離を保ちつつ仲良く暮らす。
    人と距離をとり孤独感に苛まれそうになりがちなコロナ禍にあって、精神的に助け合える仲間がいてとても羨ましい。
    それぞれが抱える闇も案外深かったけれど、無理に理解しようとしないところが良かった。互いを干渉することもしないし。それぞれが適度にマイペースなところもいい。

    「十代や二十代の時は、何かあるとすぐに友達に報告してた。でも、三十代になると、それぞれで環境も違うし、家族のこととか話しにくいことも出てくるし、自分の内側におさめておかないといけないことが増えていった。四十歳を過ぎたら、悩みなんてなくなると思っていたのに、そんなことはない。むしろ、増えていく。身体のこととかお金のこととか老後のこととか、全てがリアルになっていく」

    「二十代や三十代だったら、物語のような奇跡を信じられたかもしれない。でも、わたしたちは四十歳を過ぎている。現実は、そんなにうまくいかないということを知ってしまっている」

    みんなと年代が近いせいか、悩みや思っていることに共感することが多かった。
    若葉荘のような女性に優しい居場所がたくさんできれば、女性ももっと暮しやすくなるだろう。
    みんながその後どんな生活を送っているのかが気になる。

  • こちらの献本企画に当選した本‼︎
    当選したことが嬉しくて、じっくりと時間をかけて楽しみました。
    大人の女性が暮らすシェアハウス最高です。

    主人公は、40歳の望月ミチル。
    緊急事態宣言の短縮要請のなか、洋食屋でのアルバイト生活では厳しくて、貯金を取り崩すのも限界に…という状況になり。
    出入りの酒屋のメグミさんの紹介で、40歳以上の女性限定のシェアハウス「若葉荘」に住むことになる。

    大家さんで管理人さんでもあるトキ子さんは、年齢不詳で80代後半か90代くらい。

    真弓さんは、50代の一流企業に勤務のキャリアウーマン。
    千波ちゃんは、10代でデビューした小説家。
    美沙子さんは、調剤薬局で働く50代後半。
    ミチルの後に入居した幸子ちゃんは、介護の仕事をしているが、ちょっとコミュニケーションをとるのが苦手。
    トキ子さんが、ここではみんな下の名前で呼んでいるのだと言う。
    それには、やっぱり理由があったわけで。
    みんな家族というか、実家のことを一切といってもいいくらい口にしないのである。
    それぞれ事情を抱えているからとトキ子さんはさらりと言う。
    悪口や陰口や無駄なおしゃべりもここではない。
    詮索するということがなく、話したいときに話すという感じ。
    みんなが自分のペースで暮らしている。
    こういうラク〜な感じがいいなと思わせる。

    それぞれが、この場所を居心地の良いところ、そしてできればずっと暮らしていたいと思えるところなんだと感じているのが、とてもわかった。

    ひとりひとりにそれまでのドラマがある。
    そして、わかってくれる人がいる。
    何もできなくても話しを聞いてくれるだけでも良い。
    そんな繋がりが、この若葉荘にはある。

    ひとりだと虚しさや息苦しさを覚える。
    わちゃわちゃ喋りっぱなしではなく、ぽつりぽつりと身体の不調やお金のことや老後のことを話せるのは、やはり40歳以上だからだろう。

    ミチルが、バイト先で20代のユキちゃんに「ずっとアルバイトで、彼氏もできないままでは、生きていけません!知らないおばさんたちとボロアパートに住むみたいな将来になったらって考えると、生きていくのが嫌になります」って八つ当たり的なことを言われたのにどう返していいかわからず、力の抜けた返事をしてしまう。
    たぶん、そうなるよなぁ、呆気にとられて何も言えなくなる気持ちもわかるなぁ…。

    これもなかなかキツいことばで、ちょっと圧倒されもしたけどこれからの未来ある若者だとこう思うんだなぁと思った。

    今の時代、明日はどうなるかわからないのが現状。
    コロナがこんなに長引くとは誰も予想さえしてなかったはず。
    若葉荘の訳ありな女性たちが、迷いながらも逞しく生きる姿を見てミチル自身も前向きになっていることを嬉しく感じた。
    それは、一人暮らしではけっしてわからなかったことだから。






  • 若葉荘。
    40代以上の人しか入居できない。
    古くて外見を見る限りでは、強く抵抗を
    感じるシェアハウスらしい。
    そこに住む人達は、皆様々な事情を
    抱えている。

    主人公のミチルは、このコロナ過に
    契約社員を追われ、今は小さなレストランで働いている。このままでは今住んでいるマンションの家賃が払えなくなる。
    人に相談したところ、家賃5万のシェア
    ハウスがあるという。ミチルは40才に
    なったばかり。この若葉荘に住める。
    抵抗は感じたが、ここに住むほかに方法
    はない。
    ミチルは引越してきた。

    今の世の中、コロナ過のせいで職を探すはめになった人は、沢山いる。
    私はコロナが憎い!コロナのせいで
    変わってしまったもの、人、もう元には
    戻らない!タイムマシンに乗れるのなら
    2020年のお正月に戻りたい。

    ミチルは“自分自身を信頼できるようになりたい”と言っている。
    いい考えを持っているなぁと思う。
    強くなりたい!


    2023、6、24 読了

  • 40歳以上の独身女性の人が入居できる若葉荘。
    みんな、それぞれに女性であるがための悩みを抱えている。住民間の関わりのなかで、考え、気づき、人生を切り拓いていく様子が爽快です。
    若葉荘みたいな場所って素敵だなと思う。
    女性は選択肢が増えたことが貧困を招いた。 男性は選択肢が少ない
    納得した、選べるものが多いからこそ難しい。
    お金が全てじゃないけど日本は独身女性に冷たい。最低賃金で働いていても、国から支給される給付金はもらえない。独身は仕事で成功してお金持ちという、イメージが強いのかな?
    そこにも多様性は存在してるんだけどね。

  • コロナ禍の収入減で限界を感じ始めた、洋食屋アルバイトのミチル。
    紹介されたのは、40歳以上の独身女性限定の古アパートで……。

    さまざまな年代、職業、背景を持った女性たちが暮らす、シェアハウス。
    ゆるくつながり、支えあう関係が心地よかった。

    特に、大家さん兼管理人のトキ子の存在が大きい。
    穏やかで懐深く、あたたかな若葉荘の雰囲気を支えている。

    たまたま気の合うメンバーがそろった、奇跡的な環境で、女性の生き方と向き合っていく物語。

  • 畑野智美さん2冊目。40代以上の独身女性限定のアパート「若葉荘」に、40歳になったばかりの主人公ミチルが入居してから1年間程度の話。時はコロナ禍真っ只中の2020年~2021年。ミチルのバイト先の飲食店「アネモネ」と若葉荘関係者が主な登場人物。新卒の時は就職氷河期で思い通りの就職がかなわず、契約社員や派遣社員を経て「アネモネ」でバイトするミチルだが、「アネモネ」での仕事は性に合っている。仕事外では、年齢も境遇も様々な個性の強い若葉荘の住人との交流を通じ、自身の考え方も変化してゆく。感染症という特殊な状況下、アルバイトという身分に一層の不安を感じたり、40代という年齢や今後も独身でいるのかという迷いのようなものがリアルに描かれているが、それでもいたずらに悲観したりはしない。作中、ミチルが「わたしはわたしとずっと付き合っていく。だから自分のやりたいことをやる」というような発言をしていたが、自立した力強い言葉だと思った。コロナ禍での日常生活を描いた作品だが、読後感は良く面白かった。

  • 自分の個室はあって、お風呂やトイレ・洗濯機は共用って学生寮で生活していた頃のことを思い返し懐かしくなった。
    自分のことだけして過ごすっていいなぁ…こんなシェアハウスで生活したいと思う気持ちが大きくなる。
    つい、自分が若葉荘に入居するならどんな風に生活したり、そこでの生活に楽しみを見つけるだろうなーと想像するのも楽しかった。ら
    一人暮らしは一人暮らしの、家族との生活は家族との生活の、それぞれ良い面もあれば寂しさや煩わしさ、不安や不満などなど、表裏一体なことがあったりもする。
    あー、とにかく、なんだか今と違う生活環境に身を投じたくなった。引越した後の新鮮な感じを感じたいなぁ…という思いが顔を出した読了後のひととき。

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著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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