オリオンは静かに詠う

  • 小学館 (2025年1月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784093867429

作品紹介・あらすじ

私は勝つ。聴こえない世界で、戦い抜く。

宇都宮のろう学校に通う高校1年生の咲季。重度の難聴である咲季は、他者とのコミュニケーションを避けがちだ。ある日行われた交流会で、聴者だが手話を使いこなす女子高生に出会う。しかし彼女が発したある言葉に、咲季はショックを受ける。落ち込んだままの帰り道、見つけたのは「おひとりさま専用」と書かれたカフェ。店に入った咲季を迎えたのは百人一首の歌を冠したパフェメニューだった。

競技かるたの読手でもあるカフェのオーナー・陽子に誘われるまま競技かるたを体験した咲季は、持ち前の負けん気と抜群の記憶力を発揮。そこに現れたのは交流会で出合った女子高生、カナだった。なぜか咲季に対抗心を燃やすカナも競技かるたに挑み、やがて二人はライバルに。

咲季が大会で戦うためには、読手が読む句を手話通訳してもらう必要がある。ろう学校の担任で手話通訳士の資格も持つ映美の通訳は、正確でタイミングも完璧。しかし映美は初めての大会直後、通訳を降りると言い出した。それにはある過去が起因していて……。

四人が抱える葛藤は計り知れない。しかし、かるたを通じ心を繋ぐことでそれを乗り越えていく。緻密な取材をもとに描き出した、著者渾身の青春小説。


【編集担当からのおすすめ情報】
競技かるたは金色に輝く未来を見つけてくれる。
――かるた永世クイーン・渡辺令恵さん推薦!

構想10年! ろう学校の生徒と共に、手話通訳のために競技かるた大会に出場した――という、ろう学校教師の新聞インタビュー記事から着想を得て生まれた本作は、著者の綿密な取材によるリアリティと、地元・宇都宮への想いもたっぷりと詰まったものになりました。

オリオン座のようにそれぞれの人生が輝くラストは、読者の心にいつまでも煌めきます。

感想・レビュー・書評

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  • 生まれつき重度の難聴である咲希
    両親が聴覚障害者でコーダのカナ
    共に高校一年生の2人が、出会い、競技かるたを通して成長していく物語

    聴覚障害がありながら、百人一首を耳ではなく手話と口の動きで読みとり、札を取る
    果たしてそんなことが可能なのだろうか…と想像しながら熱く読んだ

    競技に向き合い努力する咲希、
    聴覚障害者の家族という苦労を背負うカナ、
    カナの叔母ママン、
    ろう学校の教師映美、
    それぞれの目線で競技かるたを軸に語られていく

    ゆるく、優しく、登場人物たちが関わりあって、最後伏線回収していくストーリーはお見事
    宇都宮が百人一首の盛んな街というのも、この作品で知りました

    ぜひ学生に読んでもらいたい意味を込めて、YA文学のカテゴリーに入れました
    入試問題にも使われそうな作品

    余談だけど、ちはやふるを読みたくなった(笑)

  • 聴覚障害のある咲季が競技カルタと出会う。
    きっかけとなるカフェオーナーの陽子、ライバルとなるカナや、担任の映美による物語。

    私も学生の頃、百人一首をすべて覚えて、少しだけ大会にも参加したことがあるので、懐かしい気持ちを持ちながら読み進めました。
    が、聴覚に障害のある方が競技カルタにどのように取り組むのかなどは全く知らず…
    耳で上の句を聞きながら同時に札を探すことはできないので、札の配置を全て覚えて、読み手の手話による上の句を目で読みとりながら、記憶をしている札の場所に手を伸ばす。

    主人公たちの世界は決して平坦なものではないけれど、明るさや前向きさが感じられる素敵なお話しでした。
    子どもにも勧めようと思っています。

  • 聾者の咲季、コーダのカナ、カナの叔母で双子の妹が聾者(ソーダ)のママン、咲季の聾学校の先生の白田先生。一章ずつ4人それぞれの視点で描かれており、それぞれの思いや感情が分かりよい。

  • Amazonの紹介より
    宇都宮のろう学校に通う高校1年生の咲季。重度の難聴である咲季は、他者とのコミュニケーションを避けがちだ。ある日行われた交流会で、聴者だが手話を使いこなす女子高生に出会う。しかし彼女が発したある言葉に、咲季はショックを受ける。落ち込んだままの帰り道、見つけたのは「おひとりさま専用」と書かれたカフェ。店に入った咲季を迎えたのは百人一首の歌を冠したパフェメニューだった。競技かるたの読手でもあるカフェのオーナー・陽子に誘われるまま競技かるたを体験した咲季は、持ち前の負けん気と抜群の記憶力を発揮。そこに現れたのは交流会で出合った女子高生、カナだった。なぜか咲季に対抗心を燃やすカナも競技かるたに挑み、やがて二人はライバルに。
    咲季が大会で戦うためには、読手が読む句を手話通訳してもらう必要がある。ろう学校の担任で手話通訳士の資格も持つ映美の通訳は、正確でタイミングも完璧。しかし映美は初めての大会直後、通訳を降りると言い出した。それにはある過去が起因していて……。
    四人が抱える葛藤は計り知れない。しかし、かるたを通じ心を繋ぐことでそれを乗り越えていく。緻密な取材をもとに描き出した、著者渾身の青春小説。



    あらすじだけで、全体の6割くらいまで紹介されているので、そこまで書かなくてもとツッコみを入れたくなるのですが、全体的に良かったです。
    かるたのイロハを学べただけでなく、「聴覚」によって苦悩された四人が、かるたにより発揮した姿に感動しました。

    競技かるたで活躍する四人の群像劇なのですが、章が変わるごとに主人公が異なります。なので、同じ出来事でも違った視点で楽しめることができるので、この時のこの人物はこう思っていたんだといった色んな発見があって楽しめました。

    競技かるたでも、耳が聞こえないということで、読み手の隣に手話通訳士がいるということに個人的に初めて知りました。「言う」とは違い、同じタイミングで手話で表すことは高度のテクニックであり、それを見逃さず、すぐにかるたを取っていく咲季も凄かったです。

    それぞれが抱える「聞こえない」ことによる弊害や苦悩が、あまり知ることがなかったので、知れましたし、何事もめげずに頑張る姿に勇気をくれました。「表」の顔とは違い、「裏」の顔では、こんなに苦労しているんだという発見があったので、より頑張っている姿が輝かしく映りました。

    また、本作の舞台が宇都宮ということで、宇都宮の魅力も詰まっていました。

  • 生まれたときから耳の聞こえない聴覚障害者である木花咲季。両親が聴覚障害者であるコーダの日永カナ。
    二人の少女が百人一首を通して成長していく姿を描く。
    音のない世界と、読手によって彩られる百人一首が、どうやってつながっていくのか。
    そもそも声が聞こえないのに札を取ることができるのか。
    耳が聞こえないことは競技としての百人一首において圧倒的に不利だと思う。上の句一文字で、もっと言えば一文字を発する直前の息の始まり札をはじくというその戦いの中で、どう戦うのか。
    聞こえない咲季、聞こえるカナ。カナの伯母であり二人の百人一首の師匠であるママン、咲季の担任の映美。それぞれの家族との関係、生まれる希望や直面する絶望、そしてそれを乗り越えていくための葛藤。
    知っているようで知らない百人一首という競技を、そして知っている気になっていた聴覚障害という困難を、まっすぐに受け止め、その先に視線を向けて行こうと思える一冊。

  • 本書の題がオリオンとあるから星座の話しかな?と思い求めたがいやびっくり!聴覚不自由な方の百人一首の源平合戦や百人一首の和歌の話し等々多彩な話しだった。素晴らしい実に素晴らしい!若かりし頃を思い出じた。小生、小学生時代はいろはカルタで中高になって百人一首に、ムスメフサホセの決まり字や上の句の決まり字から下の句の決まり字を100首覚えた事やそれをノートに、そのノートは今も大事に持っている事を思い出した!今でも年賀状には毎年新年に相応しい和歌を永年書き込んでお送りしてきた。感無量の一冊大事に書架に飾って保存しよう❗️ 少し個人的な事を書き過ぎたかな!

  • このところ、百人一首に遭遇することが多い。
    というのも孫娘が中学生になり、日本文化部なるものに入部し、百人一首を始めたのがきっかけなんだけど、百人一首、競技カルタって案外あっちこっちで大会など開かれているんだね。
    今夏は「ちはやふる」がドラマでもやっていたし、孫娘より私がハマりそうだ。
    この話は百人一首、競技カルタを通して、聴覚障害者の世界が描かれている。
    健常者が何気なく発する言葉、態度に障害のある人は心を痛めている。
    そしてコーダと呼ばれる親が聴覚障害者の子どもの状況も描かれている。常に親の通訳をしなければならない状況も。
    聴覚に障害があっても、競技カルタに挑戦している高校生が実際にいることにも驚いた。
    聴覚に障害がある人は星がキラキラ、と言うとキラキラと言うと音を出して輝いていると思っている、と言う文章が印象的だった。聴こえたい事を、聴こえる人間と同じように想像することは難しい。
    世の中の基準は全て健常者の基準で構成されているのでは。
    オリオ座の星々のように登場人物みんな輝いてほしい。

    これを機会に私ももう少し百人一首を覚えよう、孫娘に負けないように。



  • 聴覚障害があっても競技カルタが出来るんだということを初めて知ってびっくり。
    デフの人、コーダの人、ソーダの人等、色々な視点があってそこが良かったです。
    高校生の真っ直ぐな力強さとカルタにかける思いが描かれているので、前向きな明るさに満ちていてすがすがしい。

  • 聴覚障害を題材にしてるとは思わなくて面食らった。地元ネタが多くて笑った

  • 令和7年6月発行のYAだよりで紹介された本です。

  • 競技かるたといえば、どうしても「ちはやふる」の影響が大きく、いくら初心者の大会とはいえ、この2人で決勝戦というのは、出来過ぎでは??とつい思ってしまいました。でも、こうやって日本文化が障害の有無関係なく、参加できて、周りも協力してくれる対応は、現実であってほしいです。
    2025/6/26読了

  • 高校生のときにろう学校の生徒損たちとのコミュニケーションを図る授業があったことを思い出したな。なんかいろいろと考えさせられる一冊でした。せつなくも温かいストーリーで、それぞれの人生が各々の目線、主人公となって話がすすんでくことで、感情移入しやすかったです。面白かった。

  • 聴覚障害者が競技かるたへ挑戦するという題材に驚いた
    出来ないだろうという決めつけはいけないなと思う

    競技かるたについての説明も詳しいので面白かった

  • 啓光図書室の貸出状況が確認できます
    図書館OPACへ⇒https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50396802
    他校地の本の取り寄せも可能です

  • 張り詰めた空気の会場から、流れるような詩が聴こえてくるようでした。緊張したー。誰もがお互いを思いやり、やさしい世界で生活できますように。

  • ろう者の主人公が手話ができる聴者の少女と出会い、手話通訳で競技かるたに挑む作品。YA向け。

  • 競技経験者の私に母がこの本を勧めてくれた。
    正直ドラマティックすぎて共感できない部分も多くあったが、ところどころで自分の青春を思い出し、かるたに懸けていたときの気持ちを思い出した。百人一首だけでなく星や聴覚障害のことも詳しく扱っていて、作者がたくさん勉強したことが伝わり感銘を受けた。

  • よかった。すごい。いろんな話が一つになって味わい深い。

  • こんな世界もあるのだな。

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著者プロフィール

1971年、栃木県生まれ。2004年の開設以来毎日更新を続ける食べ歩きブログ「47都道府県 1000円グルメの旅」が、22年「ライブドアブログ OF THE YEAR ベストグルメブロガー賞」を受賞。ライター活動のかたわら、19年に結婚したトマト農家の夫を手伝う。30年以上の公募歴を経て、21年、『百年厨房』で第三回日本おいしい小説大賞を受賞し、翌年デビュー。ローカルな食文化や食材をこよなく愛す。

「2023年 『ナカスイ!海なし県の水産高校』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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