「堪ヘ難キヲ堪エ‥」 -2005.12.13記
昭和の初めから終りまで、流行り言葉から昭和を読むというモティーフで、演劇雑誌「せりふの時代」に連載したものを大幅に加筆して2003年4月に小学館から出版されたもの。
60年代以降の小劇場運動を先端的に開いてきた実践者らしい批判精神が、庶民の視点から昭和史を読み解く作業となって、読み物としてはかなり面白い。
「堪ヘ難キヲ堪エ忍ヒ難キヲ忍ヒ」はいわずと知れた終戦の詔勅、この玉音放送をその時、人々はどのように聞き、受け止めたかの章がある。
外地で放送を聴いた堀田善衛は「放送がおわると、私はあらわに、何という奴だ、何という挨拶だ。お前のいうことはそれっきりか、これで事が済むと思っているのか、という怒りとも悲しみともつかぬものに身がふるえた」と著書「橋上幻想」に記しているのを引き、しかし、堀田のように感じた日本人は少なかったとし、軍部指導者たち、当時の著名文人たち、或は庶民層に及ぶまでその輻輳したリアクションを活写しながら、玉音放送の果たした意味そのものに肉薄する。
章末、著者によれば、終戦の年の暮れ即ち昭和20年12月の世論調査では、天皇制支持が軒並み90%を超えていたそうだ。