- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093874526
感想・レビュー・書評
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著者の中西進さんは国文学者で、元号「令和」の発案者のようだ。
この本は、いろいろな日本古来のことばを語源から考えて紹介している。著者は『万葉集』など古代文学の比較研究をされているだけあって、言葉の説明のために『万葉集』などから引用される歌もおもしろい。
文中で何度か登場する、柳田国男さんが警告した〝どんな字病〟はそのとおりで、あとから漢字を当てられているのだから、音で考えるのが道理なのだなと納得させられる。
紹介されているおもしろい例はたくさんあるが、以下に少しメモを。
○「みち(道)」
ち=長く伸びるもの、風を意味する。「はやて(疾風)」の「て」と同義
み=尊いものに冠する接頭語
○断り・理(ことわり)の古語「ことわり」
「こと(事)」を「わる(割る)」=分析する
○さいわいの古語「さきはひ」
はひ=ある状態が長く続くこと(けはひ、あぢはひ)
さき=花が咲くの「さき」
さきはひ=心の中に花が咲きあふれてずっと続く
○ひがし にし
ひがしの古語「ひむがし」
ひ(日)+むか(向)+「し」
「し」=風のこと。おそらく西の「し」も
○はる
陰鬱に覆われていた自然が晴れやかになる
さあっと野山が開けて輝き始める
「冬ごもり 春さりくれば……」(万葉集)
・晴る
・張る(芽が膨らむ、強く盛んになる)
・墾(は)る(田畑を耕して開く)
→総じて「明るくなる、見通しが良くなる」
・広く平らなところ「はら(原)」も仲間
・はる+ふ=はらう(祓う、古語は〔はらふ〕)
お祓い=悪いものを取り除いてきれいにする
・冬が取り払われてやってくるのが「春」
・新しい年が始まる大きな区切り
○ふゆ
ふゆは寒くて冷える、「ひゆ(冷ゆ)」
震えるほど寒い、「ふゆ(振ゆ)」
○あき
十分に食べられる収穫の季節。「あき(飽き)」
満ち足りる、十分すぎてもういらない、明らかにする、あきらめる(諦める)も仲間
○なつ
語源ははっきりしない
「あつ(熱い)」が変化するとする説もある詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2013年に、中西進さんの文化勲章受賞がニュースになり、万葉集をなつかしく思った
黒田夏子さんの『abさんご』は未読なのだけれど、ひらがなの文章が話題になったのも気になっていた
言語系の本を何か読みたくて図書館で目にして、読みやすそうだったので借りた
国文学者(古代文学)の著者による、日本語とことばに関する本
日常的に使うことばを例に、それぞれのことばを漢字から解放してひらがなで見つめて、語源の共通性から日本語の魅力を紹介している
「日本語って、おもしろい!」、「ことばの成立って万国共通なのかも」、と思わせてくれる興味をそそる本だ
私も柳田国男が言っていた「どんな字病」だ
実は私も、ひらがなやカタカナよりも、漢字が万能だと思っていたのかもしれない
ひらがなやカタカナは漢字からうまれたけれど、それは表記法の問題であり、古来からのやまとことばが漢語に浸食されたのではないのだな、と感じた
確かに、ひらがなにしてみると、しっくりくるものごとが多く、あたまがやわらかくなっていく気がした
私は、自分が、普段意識していないものごとの本質について考えされてくれる本が好きなんだな、ということにも気づけた -
もうちょっとつっこんだ内容を期待してたけど、やまとことばの神秘というか、言霊を感じることはできました。
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同音異義の言葉をリンクさせて、単語や故事の成り立ちを説明。一文字の仮名にも意味があることや古事記からくる言葉の歴史など、脈々と受け継がれる日本語に唸ることしきり。このページ数だけでも本の初歩とさえ思うくらい、奥が深い。もっと知りたいと探究心が起こる本。
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興味深い内容でしたが、「なるほど」と思うことと「そこからその展開?」と思うことが半々くらいで混じっています。
他の人が書いた日本語に関する本も読んでみたいな、と思うきっかけになりました。 -
読めば読むほど、柔和な「ひらがなことば」が心に沁みる。
「みみ」は「み(実)」の意であり、二つあるからそのまま「みみ」、
なるほど。
古に生きた人々の考え方そのものをあらわす、やまとことば。
それはとてもシンプルで、だからこそ物事の本質をあらわしている。
むかしのひとたちは、素直な感性で得たものを遺してくれた。
民俗学者の柳田国男は「どんな字を書くの」と尋ねることを「どんな字病」と名づけ警告したそうな。
漢字は字を見ただけで状況説明をするテレビ的言語と学んだ。
けれどそれは、物事の本質を理解する際にはミスリードとなりかねない。 -
言葉のルーツがわかります。ただここに書かれる仏教観は「?」です。