- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093878401
作品紹介・あらすじ
これほどまでに迫真に満ちたハンティングの記録があったでしょうか。著者の久保俊治はいまも北海道・知床半島で羆を追う孤高のハンター。20代の頃より羆専門のハンターとして活躍、猟歴40年以上を誇ります。アイヌ語で火の女神を意味する「フチ」と名付けた北海道犬を相棒に小樽から知床半島まで羆を追い駆けめぐります。さらにはアメリカにハンター留学もしてさまざまな体験をします。初著作とは思えぬ卓越した筆力で壮絶な猟の一部始終を活写しています。ワクワクするような冒険譚に加え、大自然の春夏秋冬を繊細に描写。そして心を打つ「フチ」との悲しい別れのシーン。つまり著者は言葉を持ったハンターなのです。端的に評せば戸川幸夫氏+北方謙三氏。質の高い新たな動物文学の書き手が誕生しました。
感想・レビュー・書評
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北海道の「本物の」猟師による半生記。
猟師としてのドキュメントに加え、
「優れた羆猟犬には一生涯に一度めぐり会えるかどうか」と
いわれる程難しい、羆猟犬とのエピソード。
さらにはハンティングの本場アメリカへの
単身修行記と、ただでさえ魅力的な題材の数々を、
見事な文章で表現に昇華させている。
やはり何かに秀でた人の文章というのは
巧拙をこえて心に迫るものがある。
久しぶりに良い文章を読んだ、という気がした。 -
北海道でプロの猟師だった著者の半生が書かれた本。
狩猟生活について、作者のの実体験がとても興味深くて新鮮だった。
探し追いつめていく過程、研ぎすまされていく感覚におどろく。
その鋭さを持っての観察力と予測はほんとうに見事で感動する。
大自然を深く知る作者の経験からあふれ出てくるような自然の描写がとても良い。誰かの書評で森の中にいるようだと言っていたそうだけれど、とてもよくわかる。
そして五感を働かせひたすら目標に向かっていく猟をする作者がうらやましいような憧れるような気持ちになった。
羆は多くの人にとってはあまり縁がないが、おそるべき自然の驚異だと思う。
土饅頭のくだりは本当に怖かった。
作者は狩猟をするにあたり、獲物の命に対して敬意をもっている。
芯の通った誠実さを感じた。
そして忘れられない、猟犬フチとの生活を書いた何章かについて、うまく言葉にできない。一生のうちで出会えた奇跡ともいえるフチ。
気持ちが入り込んでしまった。
自分もフチのことが愛しい。
猟犬としての賢さ、優秀さが嬉しい。
そして命あるもの、別れから逃れられないことがただただ悲しい。
最後は涙なしには読めないのであった。 -
日本で唯一の羆ハンターである著者の自叙伝。北海道に住み、大学を卒業してから40年間、最初は一人で、数年後からは猟犬「フチ」とともに羆、鹿をはじめとする動物と闘う日々を過ごす。また、狩猟の本場アメリカにも修行に出かけ高い評価を受けている。若い時の著者は専業プロハンターのため、自然動物に近い繊細な感性を持っている。その著者が表現する北海道の大自然の風景、気象状況、動物の動きの描写は絶妙で、犬とともに雪をかき分け羆を追いかける風景がありありと浮かんでくる。マタギと同じく、斃した動物たちに感謝し、皮、肉、内臓に至まで、そのほとんどすべてを無駄にすることなく活用するといった自然とのつきあい方にも感銘を受けた。一般社会と距離をおき生活する人間の生き様を知る感動の一冊である。
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実話である、ということが更に感動します。フチというアイヌ犬との出会い、羆を倒すその1点にかけて過ごす日々。自然への畏敬、自然の一部としての自分。今となっては望むべくもありませんが、あこがれの生き方です。
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自然に対する畏敬。中型日本犬はいいね。
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羆撃ち
羆を撃って生計をたてる
山に籠もり羆の気配を追い仕留める
命をかけたやり取り、向き合い、緊迫感が迫ってくる
相棒となったアイヌ犬、フチとの絆、信頼もとても伝わってくる
何と言ってもフチ、かわいい
2023年、羆出没の多さ、人が襲われる事件もあり
羆のことが知りたくて読んだ本
1975年あたりのことが書かれている本書
時代が変わっても羆が強くのは変わらず
生身の人間では敵わないことを肝に免じてどう距離を取っていけるか 考えねば -
羆ハンターの話である。途中から育てたアイヌ犬フチの健気さや可愛さに惹かれ、心揺さぶられる。
羆の生態について詳細に綴られており、これまでは単純に怖いだけの存在であった羆が、以外に臆病でよほどの事がない限り人を襲う事はないのだとわかった。(但し時期や子連れかどうか、また人を襲った事があるかないか等細かい事により状況は大きく変わるが…) -
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