あんぽん 孫正義伝

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著者 : 佐野眞一
  • 小学館 (2012年1月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093882316

作品紹介

今から一世紀前。韓国・大邱で食い詰め、命からがら難破船で対馬海峡を渡った一族は、筑豊炭田の"地の底"から始まる日本のエネルギー産業盛衰の激流に呑みこまれ、豚の糞尿と密造酒の臭いが充満する佐賀・鳥栖駅前の朝鮮部落に、一人の異端児を産み落とした。孫家三代海峡物語、ここに完結。

あんぽん 孫正義伝の感想・レビュー・書評

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  • ここに書かれているのは我々が知ることがなかった孫正義一族の三代に渡る『海峡』の物語です。ありきたりなサクセスストーリーとは一線を画す『血と骨』を凌駕するような凄まじい「物語」の上に彼の存在があります。

    この本は2011年に週刊ポストに連載されていたものを中心として掲載後にあきらかになった事実を加筆したものです。雑誌に掲載されていた当時、僕はパラパラと飛び飛びに読んでいましたが、こうして単行本化されたものをじっくりと読むにつけ、ここ近年自分が読み進めてきた本の数々は、実はこの本を読むためにあったのではないかと錯覚してしまうほどでありました。

    『孫正義とは何者か?』ここに描かれている彼の姿は筆者の真骨頂による徹底した取材力で全4回の本人取材はもちろんのこと近親者への徹底した聞き込みや彼の一族のルーツである朝鮮半島の現地取材によって僕もある程度は読み込んでいましたが彼自身の華々しいコンピュータや通信事業を中心としたサクセスストーリーとは一線を画すような『血と骨』を中心とする梁石日の小説を地で行くような孫正義の理屈抜きの生々しい世界を抉り出しております。

    僕が読んでいてのっけから孫正義をして『無番地』と言わしめたバラックの中で豚に酒粕を食わせて育て、その豚をしめて正肉やホルモンをとって売り歩き、雨が降って豚の糞が浮かぶ水が床上や床下から浸水するところで孫正義はヒザまでその水に漬かりながら机にかじりついて勉強をしていた、というまことにもってみもふたもない『破壊力』抜群の話が全編にわたって描かれております。

    『孫正義本人も知らない孫正義』を描き出している、ということで、彼の人格形成をする上で決定的な影響を与えたといわれる父親の三憲や『海峡』を14歳で渡ってきてリアカーにドラム缶をつめて飲食店から残飯を集め、養豚や『頼母子講』という小口の金融業まで行った祖母の李元照の『仔豚に自分の乳を含ませて母乳を与えていた』というまさに常軌を逸したエピソードがものすごく印象に残っていてページをめくりながらその一つ一つに圧倒されてしまいました。

    『3.11』後の原発事故の際、孫正義は100億円の義捐金をポンと出し、その後も反原発、脱原発の旗を振り続ける彼の母方の叔父に、かつて日本の『国策』としてエネルギーを担っていた炭鉱で過酷な労働に従事し、筑豊炭鉱の爆発事故で命を落としたという箇所は以前読んだ山本作兵衛翁の書いた著作や画文集が本当に彼らの実態を類推するために非常に役立ちました。その中で事故の描写は作兵衛翁の事故の絵と自筆による解説の画文が頭の中にありありと思い浮かんできました。時は流れて日本の『国策』で推し進められた原発に反旗を翻す孫正義の姿に、すさまじいばかりの『縁』というかなんというか…。並々ならぬ深い『業』という一筋ならないものを感じて戦慄を憶えました。

    筆者は彼ら三代に渡る血脈を『魑魅魍魎』という言葉で表現しましたけれど、そうでもしなければ生きていくことが出来なかった彼らのことを想い、同じく『海峡』を渡ってきた半島にルーツを持っている人間の物語、僕は伊集院静、梁石日、そして柳美里の小説やエッセイに描かれている物語の数々を連想し、そうした『物語』を一身に体現した存在が孫正義なのだということを読んだ後に思いました。

    ありきたりの『成功物語』という範疇にはまずくくられることのない、『孫正義』という『怪物』の物語は筆者いわく『日本のスティーブ・ジョブズの物語を描きたい』という大願に沿うものであると思いました。僕はジョブズの評伝も読みましたけれど、彼のドラマチックな人生に勝るとも劣らないすさまじいばかりの三世代にもわたる人生の記録がここに記されております。

  •  孫正義は朝鮮部落生まれ、豚の糞尿と密売酒で家族は生計を立て、後に父親はパチンコ業界で大成する。著者が宣うには、この話を何度も繰り返すことに本書を出版した意味があるのだとか・・・孫正義の情報革命に関する本については山ほど出版されているので、それについて本書にはほぼほぼ記載なしって・・・知っていたら、この本は読まなかったわ(怒

  • 孫正義を生んだ環境が知りたくて読んだ本。
    ・サラ金やパチンコで一財をなし、商才があり、バイタリティーのある父三憲から、「お前は天才だ」と言われ続け、実地教育を通して帝王学を叩きこまれた
    ・過剰なまでの自信はどこから生まれたのでしょう?→親父が、際限のないレベルで僕を褒めたからでしょうね。「お前は俺より頭がいい」って。僕は親父に怒られたことが一度もないんです。
    ・中一の一学期で母と移住し、県内屈指の市立進学校に転校。子供の成長の為に、金銭,親の生活を度外視した協力が、感じ取られる。
    ・高一の二学期頭に、担任に渡米を相談。翌二月に渡米。英語学校を経てハイスクールに編入。その後大学入試検定試験に合格後、カレッジに入学。二年で修了後にカリフォルニア大学バークレー校経済学部に編入。
    ・アメリカ時代の孫が青春を思いっきり謳歌できたのは、父三憲からの潤沢な仕送りがあったからである。
    ・大学時代に「自動翻訳機」を発明。一億円の資金を手にしたことから、事業家人生がスタートする。
    ・幼稚園時期に朝鮮人差別を受けた、在日の劣等感の裏返しのコンプレックスが、上昇志向の原動力になった、とも考えられる。

  • 孫さんに興味津々だったので読んでみました。
    著者は話題の佐野さん。
    孫さんの人生と佐野さんの取材方法や発表方法の両方が面白い!2度おいしい作品でした。

    孫さんの生い立ちを先祖にまでさかのぼって解きほぐし、
    なぜ孫さんなる人物が誕生したのか、
    彼のルーツを探ることで孫さんがやってること・発言することの根幹にあるものはなんなのかを探ろうという1冊。

    とりあえず孫さんの源体験はすごい。
    小学生とか中学生のときには日本という社会の既存の枠組みで歯車になっては生きていけないことを強烈に自覚させられてる。
    私の源体験はなんだろう、と真面目に考え込んじゃった。

    そして孫さんの体験以上に実は今回面白いなと思ったのが佐野さん。
    佐野さんといえば橋下さんで燃えに燃えた人。
    まだ彼の執筆者としての人生は残っているのだろうか、ってくらい燃えた人。
    橋下さんの一件の是非は全く読んでないからわからないし、盗作疑惑についても全く読んでないからわかりません。

    ただ、この1冊はめちゃくちゃ面白いし、盗作はあり得ない。

    読みながら、確かにこの1冊も孫さんが抗議したっておかしくないかもな、とは思った。
    取材方法と取材対象があまりにディープなことが1つ。
    孫さんの一族とか関わった人、しかも孫さん自身というより孫さんのお父さんに関わった人、とかでちょっと遠い、みたいな人がいーっぱいでてきていろんなこと言ってる。
    本当よく孫さんこんなことまで書かれて何も抗議しなかったな、って感じ。
    むしろ孫さんすごーいって孫さんの人生よりもその対応に感服。

    もう1つは発表方法。
    彼は週刊誌で連載という形式で発表している。
    連載ってことはある情報が多面的に検討される前に世の中に発表される、ということでもある。
    この本の中でも連載で発表されて、「事実誤認だー!」って孫さんのお父さんが怒りくるってたり、新しい事実が出てきたりしている。
    彼としてはその当たりを期待して連載にしているのかもしれない。
    ということで本で読むにはいいのだけど、連載で1回だけ読むとすごーい偏った内容を読まされるかもしれないということ。

    あとは書き口?
    いわゆる優等生じゃないから、佐野さん、笑
    客観的な書き口でもないし、きれいな書き口でもない。
    週刊誌らしいスキャンダラスな言い方だったり、無駄に人の感情を煽るような言い方も多い。
    優等生的なジャーナリズムからは遠いよね。

    で、怒られたのかしら、と。

    なんというか、佐野さんって清濁併せ持つというか、いやもっとドロドロした世界を生き抜いてきたすごいグレーな人なんだろうな。
    とにかく世の中ではたたかれまくってる佐野さんですが、一読の価値はありありです。
    面白いです。
    読み手がフィルタリングすればよいのです。

  • 日本一、お金持ちで大企業の孫正義が、日本の最下層で生まれ育ったとは…。壮絶なイジメにもあっている。
    彼が生まれた頃は「もはや戦後ではない」といい、日本人の生活は豊かになってきていた時代であった。その裏に最低な生活をしていた人たちもいたのだ。
    今だに、孫正義に対して、人種差別な発言をする輩(前の都知事とか)が、たくさんいるらしいが情けないことだ。欧米ヘ行けば、日本人もしっかり人種差別されるのに…。そう言う輩こそ、この本を読みな!といいたい。
    ★をひとつ減らしたのは、孫正義のみの話じゃなく、孫一族の話が主だったから。

  • あの件で話題になった著者。
    孫氏の両親の祖父母のルーツまで調査に行かれている著者は、もともと出自が人生に大きく影響すると考えている方なんだなぁと感じた。(私は否定的だけど)
    くどいほどに「在日であるから」ということに焦点をあてている。

    私は311以降の孫氏の言動でファンになった。
    この著書でも後半のほうが好意的な文章になっている。(おそらく311以降)
    著者も少なからずファンになっているのかも。

  • 「豚の糞尿と密造酒の臭いが充満した佐賀県鳥栖駅前の
    朝鮮部落に生まれ、石を投げられて差別された在日の少年は
    、いまや日本の命運を握る存在までになった」
    (本文より)

    私は、昔から偉人伝、伝記が大好きなんですが、
    ま、、、ここまで1人の人間の半生を生々しく描いた本は
    読んだ事ないですね。
    壮絶な内容ですね。

    「強い人」ですね、孫さんは。
    ま、読むだけで勇気づけられる内容です。

    笑いもあり、涙もあり、、、
    特に「第5章 脱原発のルーツを追って」の箇所は涙が
    出てきましたね~。

    そうそう、この本を読むと多くの人は、
    正義さんより、正義さんのお父さんの三憲さんに会いたく
    なるんじゃないですかね(苦笑)

  • 生きた評伝って難しいよ それが成立した本

    佐野さんの本は、敵も作るだろうなあと別海を読んで思っていた。
    取材協力した方が読んだら、ここまで書くのか、と思わざるを得ないようなことまで書くので。

    生きているうちにここまで書かれることが、テーマとされた人にとっても書くのをやめてくれ、と言ってもいいくらいの内容。

    これを本人取材を経て出版に至るのは孫正義だからだと思いました。
    孫さんは自分が恥ずかしい、とか、思ってもおかしくないところよりもスケールが大きいから。

    「われわれの携帯がつながっていれば、何人かの方の命は救われたんじゃないかと思うんです。自分の力のなさのせいで犠牲者が増えてしまったかと思うと、腹をかっさばきたいくらいの気持ちになりました。」

    という東日本大震災での強烈な「自分事」意識。
    もはや地球クラスの出来事が自分ごとだから生まれる言動なのでしょう。
    まさに社会の子。

    社会の子というのは、お父様が

    「三憲はそんな大人びた正義の表情を見て、この子は自分の子じゃない、社会のために使わなければと思ったという」

    とお話しているくだりがあるのです。

    本人も、商売をしているのではなく、事業を行っている。お金儲けをしているのではなく、人のためになること、日本のためになることというのを第一義に考え、行動している方なのですね。

    この本を読み、日本に住む様々な環境の人たちに影響を与え、ときに奮起する礎になるものとなるならば、孫さんは全てを書かれても良いのでしょうね。

    また確かにこの本で、孫さん自身も知らなかった情報、ルーツを辿った諸外国含む情報でしたり、そこで出会った人からの思いも得ることが出来たことは孫さんにとっても得るものがあったのでしょう。

    ただ、それは孫さんだから成り立ったもので、橋下徹さんについて書かれた連載は第一回発表時点で問題となり、連載が終わってしまった。
    これは佐野さんが橋下さんと直接会話をしていなかったようなんですよね。

    佐野さんの書き方も読者を大いにリードしていくような断定的な書き方をされると別海のときに感じたので、その部分は問題にされてしまっても仕方ないかなと思いますが、「橋下徹は部落の鬼っ子」 部落解放同盟委員長に聞くにも書かれているように、表現に注意し、訂正した上で連載は続けて欲しかったなと思います。最終的に佐野さんが何を伝えたいのかが伝わらないまま連載が終わってしまったら、宙ぶらりんで本当におしまいです。

    佐野さんと橋下さんが対峙した上で、進めて欲しかったと思います。

  • 孫正義を産んだ在日一族の三代期。面白いんだけど、佐野眞一が孫家三代期を書くことで何を言いたかった伝えたかったのかは私には分からない。作中に何度も取材の意図は述べられるんだけど、読み終えても「誰得?」という感想しか出てこない。
    中内功一代記の「カリスマ」や、小渕首相の「凡宰伝」に比べると、佐野眞一独特のおどろおどろしさと情念だけが残っていて輪郭が不明確なままに終っている。端的に言えば佐野眞一も「老いた」ということですな。
    佐野眞一も橋下徹と刺し違えておしまいというのは悪い終り方ではないような。
    なお、過去の傑作と比べるとオチルというだけで、この本は「孫正義を産み出した在日三代期」として読めば十二分に面白いです。でも、ここまで他人の過去や暗部を白日の下に曝け出してまで書かなきゃいけなかった意味は分からない。

  • 福岡のまずしい韓国人町から育った孫。 その環境が孫を成長へと誘った。

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