少年の名はジルベール

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 450
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093884358

作品紹介・あらすじ

少女マンガで革命を起こした漫画家の半生記

少女マンガの黎明期を第一線の漫画家として駆け抜けた竹宮惠子の半生記。

石ノ森章太郎先生に憧れた郷里・徳島での少女時代。
高校時代にマンガ家デビューし、上京した時に待っていた、
出版社からの「缶詰」という極限状況。
後に大泉サロンと呼ばれる東京都練馬区大泉のアパートで
「少女マンガで革命を起こす!」と仲間と語り合った日々。
当時、まだタブー視されていた少年同士の恋愛を見事に描ききり、
現在のBL(ボーイズ・ラブ)の礎を築く大ヒット作品『風と木の詩』執筆秘話。
そして現在、京都精華大学学長として、
学生たちに教えている、クリエイターが大切にすべきこととは。
1970年代に『ファラオの墓』『地球(テラ)へ…』など
ベストセラーを連発した著者が、「創作するということ」を
余すことなく語った必読自伝。

感想・レビュー・書評

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  • 24年組ファンとしては神様ばかりが登場する眩しさで目が潰れんほどの才能咲き乱れる現場のお話で、ありがた過ぎて泣きながら一気に読んでしまった。

    増山法恵になりた過ぎる。(正直な告白)
    私はこういう人間になりたかったのよ。
    中途半端なただの漫画好きにしかなれなかったけど。


    増山さんの存在感が半端ない。竹宮さんが彼女に出会い飛躍的に世界を広げていく様子や、打てば響くやまないおしゃべり、ジルベールを見つけた夜に電話で次々に話を創り上げていく場面、高揚感と興奮がよく伝わってきた。

    当時はまだまだ男社会で少女漫画も産まれたてで表現の規制もあって、という中で女性作家達は自分達の自由な権利を獲得すべく奮闘していくわけだけど、その反面こんなはねっかえりの娘におじさん達は随分と優しいんだなぁと思ったりした(笑)女がどうとかは置いておいて、才能に対しては敬意と矜持を持って仕事をされてたんだろうな、とYさんの話なんかを読んで思ったりした。

    『風と木の歌』の連載を勝ち取るためにアンケート1位を取る、という話は他のインタビューで読んでいたけれど、それまでの制作過程にこれほど増山さんが深く関わっていたとは知らなかった。

    リアルタイムの読者ではないので『風と木の歌』の完成度の高さが作者の印象になっているけど、そこに至るまでの手探りの葛藤ぶりにまた別の感動を覚えた。

    受け手と創り手で作品を鑑賞するポイントが全く違う、という話も大変具体的で興味深い。
    ヨーロッパ旅行の増山さんには特にシンパシーを感じた。

    そしてやはり萩尾望都は別格なのだなぁと。
    萩尾先生に対する感情がとても率直に述べられていて涙腺に来たけど、大きな才能の近くにいることの幸せと焦燥はほんとに凡人が想像するよりキツいものなんだろう。

    アンケート1位を取るぞ!の下りはまさにバクマン。圧倒的才能(萩尾望都)を前に挑む竹宮さんと増山さん。
    増山さんも凄いよな。美の信奉者で、確かな審美眼を持っていて目の前には煌めく才能が溢れてるわけで、自分も、という業はあったと思う。少女漫画に革命を起こすという強い志を持っていたとしても、端から見ても自分としてもよく分かんないポジションで自分を定義してくれるものがない状況で自らの全てを竹宮さんの作品に捧げるって、言うのは簡単だけど、誰にでも出来ることじゃない。
    そして増山さんには実際捧げるだけの潤沢な中身があった。
    その結果としての作品を享受することの出来た私は本当にありがとうございますとしか言いようがない。

  • うーん、そうだったのか…。少女マンガのオールドファンとしては、複雑な感慨に浸らされることがいくつも書かれている。

    その一。「大泉サロン」の実態がそんなボロ家だったとは。赤裸々に書かれる暮らしぶりに驚いた。みなさん若かったのだなあ。

    その二。萩尾望都先生に対する思いが、そこまで書くの?と思うほど率直に綴られていて、ちょっととまどう。そのずば抜けた才能に打ちのめされ、近くにいることで心のバランスを崩すほどだったとか。表現者というのは厳しいものだなあとあらためて思う。

    その三。「風と木の詩」が世に出るまでに、これほどの壁があったのか。少女マンガが多様な表現の場として花開くには、多くの人の苦闘があったのだと思い知らされる。ただただ楽しく百花繚乱の作品を享受していたあの頃の読者は、幸せものだったんだなあ。

  • 萩尾先生の作品は網羅しているつもりだが、竹宮先生は「風と木の詩」と「地球へ…」しか持っていない。
    きっとそれで充分なのだ。そして稲垣足穂を読んでいないワタシはきっとモグリだ。

  • 少女漫画の世界に「少年愛」を持ち込んだ革命児・竹宮惠子先生の自伝。プロの漫画家として上京してから「風と木の詩」の連載が始まるまでの7~8年の出来事が詳細につづられている。短期間ではあるが大泉で同居した彼女の最大のライバル・萩尾望都先生や、彼女のプロデューサー的な存在であり戦友(?)でもあった増山法恵氏との出会い、この3名に山岸凉子先生を加えた4人で出かけた40日間のヨーロッパ旅行、そしてジルベールと風木の設定が出来上がった深夜の8時間の電話などを活写している点は、今後、少女漫画の歴史を紐解く上で重要な参考文献となるであろう。

  • 「きのう何食べた?」っていうドラマを娘と二人で見ていたら、ジルベールというあだ名で呼ばれる人が出て来た。画面の人物は髪型しかジルベールに似てないけれど、懐かしいあの「風と木の詩」に出て来たジルベールの顔が私の頭の中をいっぱいにした。
    一緒に見ていた娘はジルベールを知らないので、娘に本物のジルベールを見せようと検索したときにこの本「少年の名はジルベール」の存在を知った。
    そして昨日やっと図書館に行くことができ、借りて、一気に読んだ。

    題名の「少年の名はジルベール」は竹宮惠子さんがデビューして間もない頃に、当時の友人(後のプロデューサー?)の増山法恵さんに深夜の長電話で、思いついたばかりの漫画のストーリーを語ったときのひとことである。
    この電話から全てが始まった。
    ここから実際に「風と木の詩」の連載が始まるまでの、話はもう、冒険物語である。
    さすが竹宮さん、漫画だけでなく文章でも、ドキドキワクワクさせてくれます。

    読み終わって表紙のジルベールを見ていたら、はるか昔に読んだ「風と木の詩」をもう一度読みたくなりました。

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  • デビューから「風と木の詩」を描くまでの葛藤と戦いと友情と挫折、青春時代を振り返る濃い随筆。その昔のマンガ人脈や、当時珍しいヨーロッパ旅行の話も面白い。現代の少女マンガは解放され過ぎた感もあるし、逆に恋愛が形式化されてる気もするけど、こうして制約を破ってきた先駆者の実験作は本当貴重で、今でも新鮮だったりするんだよね。肝心の「風と木の詩」連載時のことに関しても、ぜひまた書いて頂きたいところ。

  • 竹宮先生がデビューしてから「風と木の詩」連載開始までのお話。萩尾望都先生との関係も興味深かったです。少女漫画の革命的なできごとだったことは、当時読者として皆感じていたことだったのでは?でも実は最後まで読んでいなかったことに気づき、風木を全巻読み返したくなりました。

  •  すでに各所で評判になっている、少女マンガの大御所による自伝である。

     手に取った瞬間、「意外に薄いな」と思った。いまどきの単行本としては平均的な分量(240ページ)だが、竹宮惠子のキャリアからしたら、いくらでも重厚な自伝にできるはずだからだ。

     だがそれは、20歳での上京(マンガ家デビューは17歳)からの約7年間に的を絞ったがゆえの薄さである。それ以前の人生も、30代以降の人生も、サラリと触れられるのみ。上京から代表作『風と木の詩』の連載開始までの、人生でいちばんドラマティックな期間に照準が定められ、残りはバッサリと切り捨てられている。

     また、その間の出来事の中でも、伝説の「大泉サロン」でのエピソードにウエートが置かれている。
     ともに新人マンガ家であった竹宮惠子と萩尾望都が同居し、山岸凉子、佐藤史生、坂田靖子らが集い、「24年組」の拠点となったアパート。「女性版トキワ荘」ともいわれるマンガ史のレジェンド。その舞台裏を、最大の当事者である竹宮惠子が綴るのだから、面白くないはずがない。

     これは少女マンガ史の貴重な資料であり、普遍的な「表現者の青春物語」でもある。とくに胸を打つのは、ライバルであり親友でもあった萩尾望都の才能への嫉妬に苦しんだことを、竹宮が赤裸々に明かしている点だ。

     萩尾望都は表現者としてつねに竹宮の一歩先を歩み、竹宮は劣等感と焦燥感を感じつづける。そして、ついには大泉サロンから出て行くことを決意する。
     伝説の大泉サロンを終焉させたのは、竹宮惠子の萩尾望都に対する嫉妬であったのだ。そのことに、萩尾は気付いていたのか、いなかったのか……。

    《私が実はもう下井草(東京都杉並区)に部屋を見つけていることを話すと、萩尾さんも「じゃあ、私も近くにしようかな」と言った。「それはいやだ」という言葉が頭をかすめる。萩尾さんが遊びに来れば、また焦りや引け目を感じるに決まっている。本音が言えないまま、「うん、そうだね」。私にはことが運んでいくのをどうしようもなかった。》

     なんとも切ない話である。
     萩尾望都が天才であるように、竹宮惠子もまた天才であり、だからこそ嫉妬が生まれた。はなから手が届かないほど才能の懸隔があったなら、嫉妬など感じもしなかっただろう。

     だが、その苦しみをバネとした竹宮の懸命の努力が、やがて『風と木の詩』による「少女マンガの革命」として結実する。その意味で、萩尾との共同生活は、竹宮が才能を開花させるために不可欠な“イニシエーション(通過儀礼)”でもあったのだろう。

     表現者としての苦悩と葛藤、そして歓喜が、丹念に書き込まれた第一級の自伝。マンガ好きのみならず、すべての分野のクリエイターおよび志望者に一読を勧めたい。

  • 徳島から上京した新人漫画家だった竹宮惠子が、同じく新人だった萩尾望都とそのペンフレンド、増山法恵と共に暮らし、やがて増山と共に保守的な少女漫画雑誌に『風と木の詩』を載せるべく奮闘するノンフィクション。
    こうすれば売れるという従来のノウハウを押し付けてくる編集部と闘い、スランプに陥り、萩尾望都の天賦の才に憧れ嫉妬し焦る様子もありのままに描かれている。
    所々に『風と木の詩』のカットが差し込まれてはいるものの、できれば漫画の表現方法を視覚的に説明するためのカットも入れてもらえればもっと分かりやすかったのに、と思う。

    久しぶりに「少年愛」という言葉を見て懐かしかった。男性同士の恋愛物は今はBLと呼ばれどこか即物的な印象に変わってしまったけれど、当時の少年愛は単なる同性愛ではなく耽美と退廃を伴う美しく哀しい世界だったように思う。
    あれからすっかり年をとっていろいろ経験した今読んだら『風と木の詩』にまた違う感想を持てるのかもしれない。

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