牙: アフリカゾウの「密猟組織」を追って

著者 :
  • 小学館
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レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093886949

作品紹介・あらすじ

アフリカゾウ虐殺の「真犯人」は誰だ!?

アフリカで、年間3万頭以上のゾウが、牙を抉り取られて虐殺されている。
野生のゾウは絶滅の危機に瀕し、今後十数年のうちに地球上から姿を消してしまうと言われている。

その犯人は、象牙の国際密猟組織。
元アフリカ特派員の筆者は、密猟で動くカネが過激派テロリストの資金源になっている実態に迫り、背後に蠢く中国の巨大な影を見つける。

そして問題は、象牙の印鑑を重宝する私たち日本人へと繋がっていく。

密猟組織のドン、過激派テロリスト、中国大使館員、日本の象牙業者。
虐殺の「真犯人」とは、いったい誰なのか――。

選考委員満場一致の第25回「小学館ノンフィクション大賞」受賞作。

◎高野秀行(ノンフィクション作家)
「ショッキングな現実が勢いある筆致で描かれ、『ザ・ノンフィクション』の醍醐味がある」

◎古市憲寿(社会学者)
「実は日本が加害者だった? ゾウと我々の意外な関係性が明らかになる」

◎三浦しをん(作家)
「私は、今後も象牙の印鑑は絶対作らないぞと決意した」

【編集担当からのおすすめ情報】
開高健ノンフィクション賞、石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞も受賞した筆者による、
すべてのノンフィクション好きにお読みいただきたい一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • このままだと絶滅してしまう…アフリカにて象牙の密輸組織を追う。
    最後の方にありましたが、やはり、無関心。注目されないと気付かないものがある。この本を読んで、像のこと、象牙のこと、現状を知りました。無関心なのかもしれません。気づきが必要でした。衝撃的な事実、真相に迫る著者、なかなか興味深い本でした。象の頭がえぐられ、なんて思いつきもしなかった。こんなにも象が殺されていたなんて。黒幕を追う内容で読み応えがありました。そして、玉虫色の日本。象、象牙の実情を語る貴重な一冊。

  • 象牙というものは生活から遠く、日本とはあまり関係ないじゃないかと思っていました。
    日本ではで主に印鑑に使われるけれど、ワシントン条約前に入ったものが流通しているんだろうと軽く考えていたのです。
    現在象の密猟が後を絶たず、あと十数年でアフリカから象が消滅するであろうという実態が書かれています。
    密猟の方法は、銃で群れごと皆殺しにして、顔を抉り取って象牙だけ持ち去る。小象も何も全て虐殺します。
    通信機器と武器が発達した現在、ひとたまりもなく群れごと消滅させられる象達。1970年代には130万頭ほどいたのに2016年には40万頭余りに減少しました。主に人間が虐殺した事によって1/3になってしまったのです。
    密猟は主に地元の人達によって行われています。そしてその象牙を買い上げる中国。さらにその象牙を世界で一番消費しているのは何と”日本”なのです。大事な事なんでもう一度言います「「「日本」」」です。
    買う人がいるから売る人がいる。これは経済の基本です。誰も買わなければダイヤモンドだって金だってゴミでしかありません。「これからは象牙は輸入しない取引全面禁止」と何故ならないのか。実際に国際的に取引を禁止しようという動きになり、当事者の中国自身が取引全面禁止という方針をぶち上げ、中国の象牙女王と言われている人物まで逮捕したのに、日本は、違反している訳ではないから取引を継続するという。
    世界中で完全に取引禁止になれば、全てが闇取引になる為マーケットが縮小していつか虐殺が無くなるはず。なのに日本一国が頑なに取引を続けることによって、値段が下がっても現地の人は虐殺を止める事はないのです。何しろ他に現金を得る方法が無いから。
    日本さえ全面取引禁止にさえ同意すれば、アフリカゾウが殺される事は激減するはずなのに、それでも象牙を使いたいですか?そういう風に僕らが他国の人から聞かれたらどう答えればいいのでしょう。
    これ相当重要な国際問題だと思うのですが、誰も知らない事ですよね。日本国内では報道しないようにしているのでしょうか。本書には顔を抉り取られた象の写真も載っています。これを見ても象牙の印鑑欲しがる人いるんですかね。
    最後に書かれている無知と無関心によって引き起こされている事だという意味の言葉が印象的です。僕らはくだらないニュースばかり与えられて飼育されているんではないでしょうか。お笑い芸人の不祥事なんて正直どうでもいい事です。
    しかもこの象牙売買の利益は、現地テロリストの最大の資金源となっているそうです。罪深い、本当に罪深いです。
    本屋大賞ノンフィクション部門にノミネートされています。是非この事実を広めるために大賞を取って頂きたい本です。

  • 第25回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

    悠々とした体躯、長い鼻、大きな耳。
    巨大な哺乳動物、ゾウは、動物園でも人気者だ。
    だが、野生のアフリカゾウは現在、1日100頭もの勢いで狩られている。
    彼らのもう1つの大きな特徴、そう、「牙」のために。
    このままでは絶滅も時間の問題と言われる。

    密猟者たちは、食用にするためにゾウを狩るのではない。
    牙を得るためだけに殺すのだ。
    手っ取り早く牙を取り除くために、顔を抉られた痛ましいゾウの写真を目にした人もいるかもしれない。
    大きな牙(tusk)を持つ「タスカー」と呼ばれる雄は、どんどん減ってきている。

    本書ではこの実情を丁寧に追う。
    さまざまな証言から浮かび上がってくるのは、「密猟組織」の存在だ。組織には、ゾウの生息域の政府の内部の者も関わっている。賄賂やコネ、利権。その裏には、外部の者が容易に切り込むことのできない、意思決定プロセスがある。

    牙を手に入れれば大金が手に入る。
    元々はレンジャーとしてゾウを守る仕事についていた者が、失業して密猟に手を染めることもある。背に腹は代えられぬのだ。

    黒幕として存在していたのは、中国資本である。中国人は金払いもよく、象牙市場の大きな支え手であり続けた。
    しかし、2016年、中国政府は1つの重大な決断をした。国内の象牙市場を閉鎖するというのだ。このニュースは世界的にも大きな驚きを持って迎えられたが、実際、2018年以降、中国での象牙取引は違法となった。
    ではこれでアフリカゾウは絶滅を免れたのかといえば、残念ながらどうもそうではないようだ。象牙取引が引き続きなされている国もあるからだ。金が動くのならば、取引はなくならない。中国国内でも闇の取引が続くことにもなろう。

    そして引き続き象牙取引を行っている国の1つは日本である。

    著者は、実際に現地で自ら象牙取引の「闇」に迫っていく。
    密猟のキーマンに、もう一段、迫り切れなかった部分はあるのだが、そこも含め、緊迫した状況がよく描き出されているノンフィクションと言えるだろう。
    現地の取材助手に対する敬意にも、著者の誠実な姿勢が感じられる。

  • これからアフリカゾウを絶滅させるのは僕たち日本人なんだ。という。
    知らない事は罪なのではないかと思えてくる衝撃のルポ。
    小学館ノンフィクション大賞受賞作。全員見るやつ。全員見るやつ!

    日本人ルポライターとマサイ出身の助手というバディものになっているのも熱い。
    彼らそれぞれがどんな思いでアフリカ(と日本)の闇を暴くのか・・・。


    とはいえ読む時間のない人のためにまとめ書きます。ネタバレです。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

    世界的にも傑出した牙を持った、ケニアで最も愛されたゾウ「サタオ」が2014年、密猟者によって殺害された。
    その、牙ごと顔をL字に切断する残酷な手口は世界に衝撃を与えたが、これは昨今の密猟では通常の手法だという。

    密猟の根は深く、ケニアの政府内にも警察にも、あらゆるところに外国資本の賄賂が横行し、止めることは不可能と言われている。
    アフリカにとってゾウが貴重な観光資源である事は誰もが知っているが、保護活動をしている者の隣で同じアフリカ人がゾウを殺している。
    保護団体の中にも密猟者とつながっている者がいるほど腐敗が進んでいるのだ。

    このままだとアフリカゾウは次の世代で絶滅するのが確実視されている。

    ゾウの絶滅などアフリカに住む人はだれも望んでいないというのに、なぜ止められないのか。
    本書では新聞記者でありルポライターである著者が、現地マサイ出身の助手とともにその実情に迫る。

    まず衝撃を受けるのが中国政府の主体的な関与が垣間見える部分。
    どのレンジャーも、元密猟者のインタビューでも、中国人が象牙を高く買っていることは周知の事実になるのだが、
    さらに取材が進む中で、中国大使館で働いていたというドライバーの証言を取ることに成功する。
    彼いわく、大量の象牙が中国大使館のロビーに集められ、車に載せられ、税関も通さずに大使館用のプライベートジェットに積み込まれていたという。
    さらに本件での重要な人物の名前にまでたどり着くが、
    そこから手がかりを失ってしまい、取材は暗礁に乗り上げる。

    そんななか、
    2016年9月24日、第17回ワシントン条約締結会議が南アフリカの最大都市ヨハネスブルクで開幕。
    なんと中国はここで全世界の象牙市場を閉鎖するよう訴えた。
    いままで密輸の元凶と見られていた中国の発言とは思えなかったが、参加各国は歓迎した。
    これで象牙の価値は暴落し、密輸も減るはずだと誰もが思った。

    本会議前に作成された決議案にも、
    「すべての締結国及び非締結国は、その未加工及び加工象牙の商業取引が行われる国内市場が、密猟及び違法取引の一因とならないように、閉鎖する〜」
    と言う文言が記載された。

    しかし、ここである奇妙な質問をした国があった。
    「違法取引の一因とならない市場は閉鎖の対象とならないという理解で良いか?」と。
    日本である。

    日本は以前からこの「例外」を求めていて、
    自然に死亡したゾウの象牙ならば取引できる。と定めて国内市場を維持してきたが、
    それが自然死したゾウの牙であるかどうかの判定は事実上機能していないことが、
    国際環境NGO「EIA」の調査で明らかになっていた。(事実、審査を口頭でパスできた)

    さらには、ヤフーオークション内で今も象牙が大量に出品されている事が判明し、欧米社会を激怒させた。
    2012年から2014年の間に803本(重量合計約4トン)の全形象牙が落札され、
    切断された象牙の落札件数を加えると約1万6500件。総重量は12トンにも及び、同期間に5万5000本もの象牙印章が落札されていた。

    とかく流通経路がある限り密猟がなくならないことはもはや世界の常識であった。

    日本のこの質問に対し中国側は反発し
    「どの国の市場が違法取引の原因になっているかなど、誰にもわからない。すべての市場が密猟、違法取引の原因となっているというしかない」
    と発言して会場をどよめかせた。
    これまでがどうであれ、とにかく中国は本気で市場を閉じようとしていると世界にアピールした。

    しかしその後も日本は例外を設ける旨の主張を続け、ブラジルやアラブなどの一定の味方をつけたすえ、
    条文には「例外の設定は保証されることを認識する」と言う文章が加えられ採決された。

    そして、世界は変わったのか?
    否。

    2017年3月6日、サタオ2世と呼ばれたアフリカで最大級かつ最高齢のゾウが殺害された。
    今なおアフリカではゾウが殺され続けている。

    アフリカゾウを我々の孫の世代に見せることは難しいだろう。
    極論すれば、いまゾウを殺しているのは我々日本人なのだ。

  • アフリカで起こっていることだが
    日本、中国などの東アジアにとって
    対岸の火ではない
    簡単に地球の裏側のことだから知らなくていい
    と言えなくなる

    贈答品や高級志向での象牙は
    アジア圏でのハンコとして使われている、いた

    象牙があるからこそ
    アフリカでは争いが起こっているという事実
    象牙が好まれる理由とは
    高級感があるだの
    見栄えがいいなど身勝手な理由でしかない

    アフリカゾウを絶滅から救うには
    買わない、使わないしかない。

    簡単なことではない
    見栄えだけを気にして
    解釈をいくらでも忖度する私たちが
    目先の欲だけにとらわれないで
    進むことができないなかで
    それでも突き進むのは簡単じゃない

  •  アフリカの象牙の密売組織に迫ったノンフィクション。

     末端の象狩りをしている人たちは一般人。だが、全滅の危機にある象の顔をえぐる蛮行を犯す。だんだんとその先の犯罪組織に近づいていき、さらにそれが中国政府とつながっているかもで。。。
     と、最後にそこからこのノンフィクションは意外な展開を見せる。象牙の取引の全面禁止を提案する中国とそれに反発するわが日本。日本政府の言い分も分かるが、これは厳しい。
     結局、密売とは消費する末端がいる限り続いてしまうのだ。象牙の密売を巡るこの物語が自分達の物語であるこの結末は見事。

  • 恐らくこれが今年最後の本になるだろうがいい本だった。
    それにしても凄いのは中国の外交力というか、恥を知らない駆け引きの上手さ。
    東アフリカの一部の国と共謀して象を殺して牙だけを取って、その牙を密かに売り捌いているのは中国だと誰もが思っているのだが、そんなことはおくびにも出さず、国際会議の場で、国内取引絶滅を提案する図々しさ…。
    それに引き換え、わが日本の姑息なこと。
    国内に象牙の取り扱いで生計を立てている人がどのくらいいるのかは知らないが、彼らを守ることの方がアフリカ象の絶滅より大事なのだろうか…。

  • 著者 三浦英之さんの作品は読み終わって、始まる。読み終わったことが、新しいスタートとなる。

    象牙に限らず、そのものの背景を知ることで見えなかった事が、見えてくる。

    象牙の密猟だけではなく、著者が自身の子供に、「人間と象の共生」について話す場面があるが、これを載せた事の意味についても、深く考えていきたい。

  • 日本の見通しの悪さに辟易する気持ちになる。

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