北京陳情村

  • 小学館
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897136

感想・レビュー・書評

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  • 著者自らが北京の駅近くの陳情村に通い、何人かの陳情者と交流をしている。著者自身が仕事として請け負ったために通ったと文中で度々触れているが、逆にそのあたりが淡々と妙に入れ込むことなく、見たこと、聞いたことを淡々を描いていてよかった。

    地元で理不尽な現実に振り回され、最後の可能性を求めて北京に陳情に来るが、それでもどうしようもなく、ひくにひけなくなってしまっている人々の姿は非常に痛々しくもある一方、ここのストーリーがある種似通っており、またあまりに数が多いため、国際世論に訴えることもなんだか難しくなってきてしまっているとのこと。中国人を見ていて不思議なのは、こういった不運な境遇の人たちをみてあまり憐憫の思いを抱く人が多くないことがあげられる。そういった市民レベルからのなんとかすべきといううねりが、社会の自浄作用になると思っているので、その辺りに関してはとても残念である。陳情村に長くいると頭がおかしくなってしまう人が多くいるらしい・・との表記もあったが、理不尽さの前にどうしようもない現実、そして陳情をすることが地元でマイナスになってしまうために、退路を絶っていることから、こうなってしまうのだろうか。フィリピンなんかで垣間見た貧困層とはちょっと違う印象を持つ。

    P.194
    陳情研究で知られる社会科学院の于建嶸教授に話を聞く機会があった。(中略)于教授は、陳情村について、「制度の問題だ」と話す。元来、裁判所がきちんと機能していれば、そこで処理できる問題が、次から次へと中央の陳情局に流れ込んでくる。しかし、陳情局に調整能力はなく、そもそもそれだけの数もさばけるわけもないため、問題は蓄積し、沈殿していく。(中略)于教授が提示した資料には、六〇年代初め、すでに処理しきれなくなった陳情について、逮捕などの手段で統制するように指示する政府通達が記されていた。
    こうした状況の中、陳情制度の改善や改革が打ち出されているが、それよりもまず、法制度を整えることが先決だというのが、于教授の主張だった。(中略)いっそのこと、陳情局をなくしてしまえばよいのではと、以前、バイ姐にも話した話をすると、「毛沢東の作った制度だから」
    と、于教授は苦笑した。実際、毛沢東が発案した制度を廃して、責任をとれるだけの人物は、今の中国にはいないだろう。毛沢東はそれだけ、「神」のような存在だった。そうしてエンドレスの陳情は続く。
    「陳情村には、本当に『退路』はないんでしょうか」
    聞くと、「ない」と、于教授は即答した。
    理由の一つは、「これほど不当な目に遭って、屈してなるものか」というメンツの問題。もう一つは、中央に陳情することで、地方政府にプレッシャーを与えられ、政府を動かせるという自尊心の問題。それから移動の自由の問題もあるという。中国は今でこそ、出稼ぎ労働などで移動が自由になったように見えるが、出稼ぎはあくまで「臨時」の移動にすぎない。農民は戸籍のある土地にしばられており、戸籍を別の土地に移すことは非常に難しい。日本のように問題が起きた土地を離れ、別の土地で新しい生活を始めるということは、簡単なことではなかった。「それに、もう一つの問題は」と、于教授は続ける。中央に陳情すると騒ぎ立てることで、できれば面倒事を避けたい地方政府が、数万元(数十万円)の金を握らせ、解決を図ろうとするケースも最近は増えている。政府の役人にとって、陳情者に騒ぎ立てられれば自分のキャリアの前途に関わる。脅す、殴る、逮捕するといった「ムチ」に対し、「金を流す」という「アメ」も、陳情をやめさせる手段の一つだ。ただ、政府が金で解決したつもりでいても、陳情者は全く納得しておらず、また、陳情を繰り返す。それを見た他の者も、例えば離婚騒動などの小さな案件でも騒ぎ立てれば金になると、さらに陳情の数が増える。

    P.203
    五輪を通じて、北京の町には近代建築群が誕生し、新しい地下鉄も開通した。開催期間中は、学生ボランティアたちの笑顔が、中国のイメージアップに貢献した。しかしその一方で、街の美観と安全のため、出稼ぎ労働者は北京を去り、外力北京への人の流入は厳しく規制された。地域を指定されたデモも申請許可は下りず、「チベット独立」のスローガンを掲げた外国人が、あっという間に高速されたことが海外で報じられた。ネットはあいかわらず、一部のサイトがアクセス禁止の状態で、掲示板の書き込みは削除されたり、禁止されたりしていた。IOCは中国を開催国として選出するにあたり、「言論の自由」や「人権保障」の向上を取り決めていたはずだったが、それは何一つ守られていないと、西欧を中心とする海外メディアは中国とIOCを責めた。しかしそれでも北京五輪は、「大成功」のうちに終わり、国内ではその様子が華々しく伝えられた。

  • もう少し深い実態解明を期待しないでもないが(お国柄無理か…)、著者が客観的に陳情者を観察する態度に好感

  • 【図書館】
    普通

    作品の紹介
    土地の強制収用、冤罪、国営企業の不正、役人の腐敗…「人権がない。希望もない。でも、訴え続けるしかない」陳情者は数千人とも1万人ともいわれる。女性ルポライターが陳情村に潜入取材。虐げられた人々に密着した。解決率0.2%の「陳情制度」に命を賭ける人々を追った衝撃の記録。第15回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞。

  • サクっと読めます。が、内容は重い。
    本筋である(と思われる)陳情村の「住民」と筆者との交流部分も相当読ませるのだけれども、基調になっている陳情に至った理由部分が悲惨。
    でも今の中国はこういうこと平気であるだろうな、というのが容易に想像ついちゃうわけで。
    「全面的な小康社会の実現」の早期実現を!!

  • 2009/08/01-08/02
    天神
    何をも訴えない、主張しない、むしろ傍観者でいたい、というような内容。フツーの人が伝える陳情村

  • 陳情村に住んでいる人たちのリアルなこわれた日常こわいです

  • ドキュメント、ルポルタージュとしては突っ込みも足りないし、問題提起も薄い感じがしますが、何もできない、ただ話を聞いてあげるだけという素直な著者の態度がきわめて等身大なので好感が持てます。

  • 北京陳情村のルポ、小学館ノンフィクション大賞優秀賞

    オリンピック直前の北京陳情村、北京南駅周辺、五輪後北京の空はかってないほど澄んでいた

    中国が抱える混沌と不条理、ギラギラと生きている人々、

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