国家の謀略

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897327

作品紹介・あらすじ

異能の外交官が初めて公開する「インテリジェンス」の技法。この「情報工学」を官僚だけに独占させておく手はない、ビジネスマン必読。

感想・レビュー・書評

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  •  戦時中、楠公信仰が流付していたことは知っていましたが、その淵源が陸軍中野学校にあったとは初めて知りました。

     この本で称揚されている陸軍中野学校の「愛と誠」式インテリジェンスは、ほかの本で佐藤氏自身がその限界を指摘されていたことを申し添えておきます。

    『紳士協定: 私のイギリス物語』に見られる通り、愛国心だけでは、外交官はやってられないし、やってはいけないのではないかなと思いました。

  • "ビジネスの世界でも外交の世界でも、相手となる国、組織、人物がどんなことを考えているかがわかればおのずと自らが有利になる戦略通りの行動ができる。
    その究極の活動が諜報活動、スパイ。
    深い洞察力と(気が付く能力と)、自分の気持ちを抑えた行動ができて、想像力が豊かであれば一流の諜報活動ができる人物になりえる。
    そんな世界の一端を覗き見ることができる。多くの情報は公開されているものからがほとんどで、点と点を線にして面にできるかを問われている。
    "

  • 1 インテリジェンスという名のゲーム(「情報大国」日本はどこへ行ったのか
    「ヒュミントVSエリント」論争の落とし穴 ほか)
    2 ニッポン・インテリジェンスの潜在能力(ガードの堅いエリツィン側近の胸襟を一発で開かせた「猪木カード」
    外務省「対外情報機能強化」案に欠けている「プロの常識」 ほか)
    3 陸軍中野学校という最強インテリジェンス機関(「酒」「カネ」「セックス」を超える日本的謀略の精髄「愛と誠」
    「生きて虜囚の辱めをうけず」の正反対をいく情報屋の「死生観」 ほか)
    4 ワールド・インテリジェンス―世界情勢を読む(アメリカ1 マキャベリがすでに喝破していた米「国家情報長官」新設の落とし穴
    アメリカ2 ウォーターゲート事件「稚拙な接触」に仕掛けられた「壮大な罠」 ほか)
    5 今日から使えるインテリジェンスのテクニック(ネット時代でもインテリジェンスのプロが「新聞切り抜き」にこだわるわけ
    「エルメスのネクタイ1本」の贈り物には「2本買って」誕生日プレゼント ほか)

  • 国家としての諜報活動、リベラルアーツとしてのインテリジェンスをひしと感じる。必読書は、理解しやすい政治経済、情報のさばき方、古事記。

  • 2007年刊。◆インテリジェンスに関する雑誌連載の論考を加筆したもの。著者の実体験を生々しく語ってインテリジェンスの実像を公開する件と、インテリジェンス的思考を駆使し現代社会を解明する件とに分けられようか。◇「インテリジェンスは国(民族?)の文化が反映する」というのはさもありなんと思えるし、忍者が日本のインテリジェンスの基層文化の一というのは苦笑できる。が、真面目すぎる独・日(外務官僚)が似ている点は、インテリジェンス分野としては余り笑えない。人材や取得情報を画一的に捉え過ぎる弊害を懸念してしまうからだ。
    ◆「日本のユダ」と称される東京裁判検察側証人の田中隆吉が、国体護持のため売国奴の汚名をきたというのは知られたことかもしれないが、目的はそれだけ?。中野学校が「愛と誠」をも謀略の基軸に据えていたのならば、陸軍上層部への批判的目線というのも存在したのではないか?(少々、穿ちすぎかな)。この観点からみる陸軍中野学校の有りようは興味深いところ。◆また、ウォーターゲート事件の真相が、FBIによるニクソン追い落としにあり、ウッドワードは駒として使われたという著者の推理は興味深い。
    ジャーナリズムとインテリジェンスのスリリングなせめぎ合いを感得させるに十分。この仮説をウッドワードが聞けば、いかなる感想を持つか?。◆ところで、著者の記憶術はとても真似できそうもない。確かに、1日15分程度、短文の暗記であればチャレンジしてみたい(だが、著者の言うように2週間くらいで文庫本20~30頁まで暗唱できるようになるとは到底思えない。著者だからできるのだろう)。◆著者は「インテリジェンス能力は国力を反映する」から「経済大国日本のそれは高度である」と説明する。
    その一方で、米国のイラク戦争における大量破壊兵器情報の欺瞞は彼の国のインテリジェンス能力の欠如を反映しているとあり、些か矛盾を感じる。しかも、戦前日本の高いインテリジェンス能力を指摘するが、本書では、日米開戦後の1942年になって、欧州戦線(米英ソ対独伊)の帰趨予想を陸軍インテリジェンス部門が実施(独伊敗退の結論)とある。普通対米開戦前にすべきだろう。つまり、日本の政府を含めたインテリジェンス能力が高いとは俄かに納得し難い。

  • 読み応えのある本だった。何がか、というと、インテリジェンスについて、その道のプロだった佐藤優がドップリとレクチャーしてくれる。後半の、今日から使えるインテリジェンスのテクニックの項も面白い。勿論、我々は多かれ少なかれ、組織の情報取り扱い上、自らの仕事の成功のために、ヒュミントやエリントを用いているのだから、本職の作法が役に立たないわけがない。我々にも勿論、サラリーマンにだって有効だろう。

    仕事力を増したいなら、自己啓発本を読むより、このような書を読む方が数倍良いと思う。

  • 外務省職員として、ロシアで情報収集を行った佐藤優氏が自身の経験を元に2004~2007年までの国際情勢を評論した本。内容はそれだけではなく、佐藤優氏自身が経験した日本のインテリジェンス工作についても詳しく書かれている。陸軍中野学校についての記述もあり、値段の割に濃い内容となっている。

  • 元・異能の外交官が語るインテリジェンス実践の書。そこらのスパイ小説よりずっと迫力があって面白い。こんなの誰にも真似できないでしょう。計算機で代替のきかない世界は厳然と存在する。

  • 本書は「異能の外交官」佐藤優氏による『インテリジェンスの技法』が初めて明かされた本です。今でこそいくつかインテリジェンス関係の本を出版している筆者ですが、その原点という意味で貴重なものだと思います。

    久しぶりにこの本を読み返してみましたが、やっぱり読み応えがあって、読み終えた後はしばらく頭痛がしました。少し、出版年月が前なので、文庫化されているかと思ったのですがいまだにされていないみたいです。なぜなんでしょうね?それはさておきここに書かれている内容は『異能の外交官』と言う異名をとり、インテリジェンス・オフィサーとして世界各国の諜報部員と丁々発止のやり取りを長年にわたって繰り広げてきた筆者による『インテリジェンスの技法』ともいえるべき本です。

    現在ではインテリジェンスに関していくつかほかにも出版をされているそうですが、この本は初めて筆者がインテリジェンスというものについて語っているという意味では貴重なものであるといえます。『インテリジェンスとは基本的に汚い仕事だ、だから品性のよい人間にしかできない』というこの言葉をあとがきのほうで紹介していますが、筆者同様、この言葉を再読した今だからこそ、真実であると思います。

    定番中の定番ともいえる『酒・女・金』に始まり、さまざまな手練手管を駆使して人を篭絡し、『協力者』に仕立て上げて、自国の国益に有利になるような情報を引き出していく姿を紹介してあるのですが、こういうことが日々、実際に行われているのかと思うと、背筋が寒くなるのを感じました。僕が一番読んでいて面白かったのは彼らがホテルというものをどのように使っているかというものに関する記事で、インテリジェンス・オフィサーにとってホテルというものがくつろぐ場所ではなく、まさに『戦場』とも形容したくなるような『やり取り』が繰り広げられている、という事実を読んでいると、某ドラマではありませんが事件は現場だけで起こっているのではないんだな、ということを実感しました。

    むちゃくちゃ分厚いですし、内容もディープなものがてんこ盛りですので、次官があるときしか読むことはできないとは思いますが、読んで決して損はすることは無いと思います。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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