原発再稼働「最後の条件」: 「福島第一」事故検証プロジェクト 最終報告書

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897426

作品紹介・あらすじ

国会事故調も政府事故調も問題の本質を見誤っている。電源1つと冷却源さえあれば、福島第一原発はメルトダウンしなかった。これまでの事故調査報告書にはなかった「時系列分析」。

感想・レビュー・書評

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  • 詳細な報告書。
    youtubeの説明が素晴らしかった。
     ↓↓
    40年前炉心設計をしていた。
    そこから離れてはいたけれど、世界の技術者は愕然としている。
    確率論で事故の起きる確率をなるべく低く、低くしていった。
    その確率論で考える事自体が、間違っていた。

    5重の防壁と言っていたが、5重の内「止める」機能のスクラム
    のみしか機能しなかった。残り4つは機能していない。

    核物理、炉心専門の人材が原子力のまわりに少なすぎる。
    塩水を入れたら問題が無いかなんて事に即答できないのはお粗末。
    専門家はきちんと何と何がどのような特徴を持って相互作用するなんて
    基本技能。

    規制、どこで非難するかなどの緊急事態管理を国が行うことは不可能。
    一点集中突破で規制してやろうとして失敗したのが今回で、その事への
    反省も見られていない。
    地方自治体、県知事が判断を下すべきだと思っていたけど、知事と話すと
    実際にはそこまで手が回らないだろうと言う。国は無理。ならば、事業者がきちんと行うしかない。

    設備稼働率が風力20%、太陽光12%(一番日照が長い山梨で)夜や冬は
    ゼロ。もし、太陽・風力エネルギーで全エネルギーの16%を補おうとした時、平均設備稼働率が16%なので、100作らないと平均16が出ない。風が強くて、日照があるときは、消費エネルギーの100%を出すくらいの設備を作らないといけない。火力や原子力はその間止められない。蓄電するといっても、多分場所が足りないし、コストも算入されていないので、倍ではきかない。自然エネルギーは代替エネルギーに成り得ない。

    福島の事故の主要因は津波ではなくて、ステーションブラックアウト=電源喪失を想定しなくて良いとしていたこと。

  • 大前さんのプロジェクトが昨年末発表した調査結果をより一般向けにわかりやすくした本。他の原発と福島第一との比較から事故が拡大した原因を特定し再発防止策をとく。日本の原発において住民を説得する事が目的となり思考のブラックアウトが起きていた、とする指摘は一般化されうる命題だ。自ら作った理屈に自分自身が騙される…そんな風景ありますよね?それはさておき年末の報告を知らなかった人、難しそうと敬遠した人、大飯の再稼働によくわかんないけど反対だった人もこの本必読(文字量むちゃ少ないです)。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB09859531

  • 客観的かつ論理的に福島第一原発事故を徹底的に検証し、なぜこのような大事故が怒ったのか、なにが問題だったのかの原因を分析し、問題解決方法までひとつひとつ丁寧に解説されている。

    見方は様々だと思うけど、政府の安全指針というハイレベルな意思決定や、一体誰が承認したのかすら不透明な責任の所在の欠如がそもそもの大きな間違いであり、指針を決める国や組織のリーダーの責任の重さを改めて痛感する。この教訓を生かして、政府、自治体、電力会社の果たすべき役割が最後にまとまっていて、グランドデザインとしてはさすが大前さん、素晴らしい内容だと思う。東電さんにも真剣に読んでもらいたい。

  • イデオロギーや感情論で「脱・原発」「再稼働反対」の意見に、「なんとなく賛成」思っている人にこそ読んでもらいたい。著者はMITで原子力について学び、マッキンゼーでコンサルタントを務めた大前研一氏。福島第一の原子炉の仕組みから、政府の対応のどこが問題だったのか、なぜすぐに廃炉にできないのか、様々な疑問に、わかりやすく応える1冊。youtube の動画と合わせて観ると、日本のエネルギー政策の問題点と、今後の課題がより立体的に見えてくる。

  • 地元住民を説得する過程において自分たちが「説得」されてしまい思考停止してしまった。「神」を説得できるか?

    基本的な問題発見解決のロジックを学ぶ上でも参考になる良書。

  • 事故から1年少しでここまで纏めるとは流石の一言。技術的なところまで全てを理解したとは言えないが、極めてニュートラルな記述になっていると思う。
    この事故で得た教訓を余すことなく世界に伝えていくことが日本の使命です。

  • 元原子炉設計者としての知見を生かして、大前研一がまとめた本。
    大前氏がGEの設計ミスを指摘する発言をしていたため、とせこら辺がGEの設計ミスなのか知りたくて読みたくなった。
    また、一国民としても原子力発電に対して、是か否かを判断するために読みました。記述は平易で読みやすいです。

    個人的には、地震と津波により
    ①海水冷却系の停止、それによる非常用発電機停止
    ②搬入口からの浸水により非常用発電機、電源盤の浸水

               などが設計ミスにあたるかなと思いました。

  • 大前氏のよいところは、読者に理解してもらおうと工夫しているところ。写真や図、とくに表を使い、概要の把握から細部への落とし込みがわかりやすい。

    あの箇所が生きていたけれど、この箇所がやられたからこうなった、というのがよくわかった。1号機から6号機の状況を表で並べたり、他の原発の状況を並べたりして、全体を把握しやすかった。
    2号機はこれでもかというくらい不運だった。作業者の無念が伝わってくるようだ。

    再稼働の是非の言及が原発と電力の範囲に閉じているので、そこをもう少し広げてくれたら、と感じた。

  • 現場での対応策はわりと最善に近いものが尽くされていたのと、大飯原発にもこの反省が活かされていることに関して、少し電力会社を見直しました。しかし同時に、どんなに対応がよくても予防・準備ができていないと事故を防ぐことができないことも分かります。どういう予防策をもってよしとするか。最後に筆者が言う「"神様"を説得できるか」というのは納得できます。

  • ここにある提言が、コストとの兼ね合いでどれだけ実現性があるのかは不明ですが、目標みたいなのは理解できるのではないかと。当時、重要施設が水没と聞いたときに、こんなのは水密区画にあって当然と思っていました。スリーマイル島原発事故の知見とかは、まったく生かされていないのが悲しいところです。まるで、珊瑚海海戦の戦訓を生かせなかった、太平洋戦争のミッドウェイ海戦みたいです。

  • 時系列で事故の様子を写真で並べられると、臨場感があり、過酷な状況だったことがわかる。
    原発関連については下手に口を開くととんだことになりそうだが、あくまでも事実ベースで状況を分析し、原因の特定、対策と、問題解決のお手本のようなストーリー展開であり、技術的な内容もある程度理解しやすい。

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著者プロフィール

1943年、福岡県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、東京工業大学大学院原子核工学科で修士号を、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。(株)日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年、マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。 以来ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を務める。現在はビジネス・ブレークスルー大学学長を務めるとともに、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして活躍のかたわら、グローバルな視点と大胆な発想で、活発な提言を行っている。

「2018年 『勝ち組企業の「ビジネスモデル」大全 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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