戦争をしない国 明仁天皇メッセージ

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897570

作品紹介・あらすじ

明仁天皇の言葉でたどる、日本の戦後70年

衝撃のベストセラー『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の著者・矢部宏治は、なぜいま、明仁天皇の言葉に注目したのか。

戦後日本最大の矛盾である「沖縄問題」と真正面から向かい合い、その苦闘のなかから「声なき人びとの苦しみに寄り添う」という、象徴天皇のあるべき姿を築きあげていった明仁天皇。その平和への思いと重要なメッセージの数々を、写真家・須田慎太郎の美しい写真とともに紹介します。

サイパン、パラオ、中国、沖縄、広島、長崎、福島・・・。単行本としては空前の海外&国内ロケを敢行!



【編集担当からのおすすめ情報】
戦後70年がたち、いま日本は大きな曲がり角に立っています。

そうした時代のただなかにあって、折にふれて発信される明仁天皇の考え抜かれたメッセージ。

その根底にあるのは、「平和国家・日本」への強い思いです。

本書は、天皇という地位ではなく、ひとりの人間としての明仁天皇にスポットライトを当て、大きな苦悩と長い苦闘の中からつむぎだされた、その珠玉の言葉を美しい写真とともに紹介します。

目次
1章 I shall be Emperor.
2章 慰霊の旅・沖縄
3章 国民の苦しみと共に
4章 近隣諸国へのメッセージ
5章 戦争をしない国
6章 美智子皇后と共に
あとがき

【付録】世界はなぜ、戦争を止められないのか――国連憲章と集団的自衛権

感想・レビュー・書評

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  • 平成の明仁天皇のメッセージや行動を矢部宏治氏が戦後の象徴天皇として考察しまとめたもので、写真は須田慎太郎氏
    (出版当時平成27年標記のままで載せます)

    天皇としての覚悟や苦悩、慰霊の旅沖縄、国民の苦しみに寄り添う行動、近隣諸国へのメッセージ、美智子皇后との歩みなど美しい写真とともに歌や言葉を載せている
    皇太子時代に47都道府県訪問、即位後も強い希望で2003年鹿児島訪問をもって15年間で47都道府県すべて訪問
    人々の幸願ひつつ国の内めぐりきたりて十五年経つ(2004、歌会始)

    短歌だけでなく沖縄へ心を寄せた琉歌は何度読んでも心を打たれる 琉歌は八八八五で詠む琉球王朝来の伝統的歌の形式
    花ゆうしゃぎゆん(花を捧げます)
    人 知らぬ魂(人知れず亡くなった多くの人の魂に)
    戦ねらぬ世ゆ(戦争のない世を)
    肝に願て(心から願って) (魂魄の塔、1975)

    疎開児の命抱きて沈みたる船深海に見出だされけり (明仁天皇、1997)
    我もまた近き齢にありしかば沁みて悲しく対馬丸思ふ (美智子皇后、2014)
    (対馬丸記念館、2014 沖縄10度目の訪問)

    原爆のまがを患ふ人々の五十年の日々いかにありけむ(広島、1995)
    大いなるまがいのいたみに耐へて生くる人の言葉に心打たるる(東日本大震災、2011)
    今ひとたび立ち上がりゆく村むらよ失せたるものの面影の上に(美智子皇后、東日本大震災、2012)
    患ひの元知れずして病みをりし人らの苦しみいかばかりなりし(水俣、2013)

    1995年8月15日(11歳)の作文
    「いまは日本のどん底です。(略)つぎの世を新日本建設に進まなければなりません。それもみな、私の双肩にかかっているのです」
    天皇職業性という根本的に改革する意志を持って皇居を開放して大衆向けの公園として使ってほしい、街の中に住みたいと語っていたらしい。
    A級戦犯の起訴は1946年4月29日昭和天皇誕生日、絞首刑宣告の処刑は1948年12月23日明仁皇太子の15歳の誕生日。
    1948年はドイツ、イタリア、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニアなど欧州敗戦国の王室はすべて廃止された。日本だけ王室が残された意味。
    1975年7月17日(41歳)明仁皇太子が初の沖縄訪問時「ひめゆりの塔事件」
    天皇に対する沖縄の怒りは「沖縄が本土防衛のために捨て石にされた」米軍上陸の時に日本軍攻撃はなく本土決戦まで時間稼ぎの「出血持久戦」多くの住民民間人を犠牲となり自分たちだけが米軍攻撃の盾とされた沖縄戦、戦後米軍統治下に残したままでの「独立」という二度目の裏切りによりさらに高まる
    ひめゆりの塔の前で火炎瓶を投げられたが、スケジュールを変えず着替えず魂魄の塔へ 摩文仁の丘 くろしお会館で遺族代表との面会
    魂魄の塔は「ひめゆり学徒隊」で二人の娘を失った金城和信氏が建立 戦後、遺骨の収集や慰霊は反米的抵抗活動を生み出すからと厳しく禁止していた米軍透谷を命がけで説得 軍人も民間人も日本兵も米兵もわけへだてなく身元不明の戦死者すべての遺骨を収集した沖縄で最初の慰霊碑
    この事件後沖縄有識者への調査にて人々の想いの着地点として無意識の共同作業がなされたのではないか
    「摩文仁」の琉歌 上記の体験をよんだ
    ふさかいゆる 木草めぐる戦跡 くり返し返し 思ひかけて(深く生い茂る 木草のあいだをめぐった 戦争の跡に何度も何度も 思いをはせながら)
    「平和の礎」への琉歌(1995年)
    沖縄のいくさに失せし人の名をあまねく刻み碑は並み立てり
    第二次世界大戦中魚雷攻撃で撃沈した学童疎開船対馬丸の事件概要説明時
    「護衛艦は救助に向かわなかったのですか」(実際は救助せず護衛艦は全力で逃げた)「みんな、ぎりぎりいっぱいだったんですね。本当にいたわしいことですね」

    「私は子どものころから、沖縄慰霊の日、広島や長崎への原爆投下の日、そして終戦記念日には、両陛下とご一緒に黙とうをしており、その折に、原爆や戦争の痛ましさについてのお話を伺ってきました(略)両皮下から伺ったことや自分自身が知っていることについて、愛子に話をしております」(徳仁皇太子、2015)

    初夏の光の中に苗木植うるこの子供らに戦あらすな(美智子皇后、1995)

  • 天皇陛下のお言葉が書かれた本。
    沖縄についても沢山御発言されてました。

    沖縄の友人から勧められた本。

  • 戦後70年、アメリカ追従法案が成立しそうな今、日本のことを思ってくれている「公人」の話が聴きたいと思うと、もう陛下しかおられないわけで…。(その対極が●●)

    庶民には当然のものである言論の自由すら認められていない中で、ぎりぎりの言葉とその行動で表現され続けている陛下の思いの一端に触れることができました。
    特に、沖縄の人々を思って詠まれた琉歌には感動しました。

    天皇の言葉を自分の主張に引き付けて引用するのはあまり感心しませんので、その辺は控えめな方が良かったとは思いました。

  • 本書は著者の主張を、明仁天皇のお言葉を借りて表現されたものです。タイトルが『戦争をしない国』なので、主に戦争についてのお言葉が取り上げられていますが、原発事故の「収束宣言」にただおひとり、懸念を示されたことを国民のどれくらいの人が知っていたんでしょうか。某公共放送も、懸念の部分はカットして放送したそうなので、自分たち国民は「宣言」の方だけ耳にすることになったわけです。
    著者の矢部氏は、その明仁天皇のメッセージを「頼り」にしています。戦争をどうやったらしないで済むのか?させないで済むのか?それを考えなければならないのは、現在のの主権者である私たち国民なんです。
    著者は鋭い指摘をしています。国際法への知識の欠如は、日本人の伝統的な欠点、といいます。恥ずかしいことに(まさに自分も日本人の欠点を思い知らされたわけですが)本書で初めて知ったのは、国連憲章第53条でこれには驚きました。詳しくは本書などを読んでいただきたいですが、これじゃ、よほどの努力をしない限り、日本はずっと「敵国」の不信感をぬぐえないし、それによって国としての”危機”にずっとさらされることになります。
    沖縄への思いは、明仁天皇が象徴天皇としてどうあるべきかの「原点」のひとつとしています。天皇に即位してから海外も含めて多くの慰霊の旅をされてきましたが、それは皇太子時代から、そして少なくとも「ひめゆりの塔事件」から、ずっと変わらずになされてきたことだと知りました。
    本書で知らなかったことを多く知ることができて、一読する価値のある本と思います。はじめは明仁天皇・美智子皇后の”お言葉集”かと思って読んだのですが、矢部氏の熱い思いが伝わる本です。

  • 大戦の映画を何本か観たところ、天皇のことが気になってきたので読んでみた。
    立場を受け入れる態度だけでも、計り知れないものがある。

    短歌、心にしみた。

  • 疎開先の日光から戻った東京の街は一面の焼け野原だった。
    小学生であった今上陛下と、1歳年下の美智子皇后陛下は
    共に先の大戦をご存じである。

    だからこそ、おふたりの折々のお言葉には平和への願いが込め
    られている。それは日本一国のみの平和ではなく、全世界が平和
    であることへの願いなのだと感じる。

    東日本大震災発災後、今上陛下は異例のビデオメッセージを
    発表された。「平成の玉音放送」と言われたお言葉は心に沁み
    るような、温かで、安心感を与えさえした。

    大きな自然災害が発生した時だけではない。皇太子時代から
    沖縄県と沖縄の人々にお心を寄せられているのは、父上である
    昭和天皇が強く願いながら果たせなかった沖縄訪問を、今上陛下
    が担っているからだろう。

    あの「ひめゆりの塔事件」で過激派から火炎瓶を投げつけられて
    以降も日程を変更せず、当日には夜中までかかって沖縄県民に
    向けて自らのお言葉をお書きになり発表されたことでも分かる。

    今上陛下だけではない。陛下に寄り添う皇后陛下も陛下のご意思を
    汲み、ご一緒に「国民と共に」と言う「平成の皇室」の在り様を模索され
    て来た。

    被災地へ、高齢者施設へ、福祉施設へ、海外への慰霊の旅へ。
    両陛下のお姿こそ「声なき人々に寄り添う」のもっともたるものでは
    ないだろうか。

    本書は昨年の発行だが、それまでの天皇皇后陛下のお言葉や御製・
    御歌を通して、平和を希求されるおふたりのお気持ちを記している。
    だが、両陛下のお言葉・御製・御歌を安倍政権批判に利用している
    のではないだろうか。その点が残念だ。

    どのような状況でのお言葉・御製・御歌であったのかの解説だけで
    充分だったと思うんだよね。添えられている写真もイメージだしね。
    出来れば両陛下のお写真を掲載して欲しかった。

    なゐ(地震)をのがれ 戸外に過す人々に 
    雨降るさまを  見るは悲しき       
    天皇陛下御製(阪神・淡路大震災)

    大いなる まが(禍い)のいたみに 耐へて生くる
    人の言葉に 心打たるる          
    天皇陛下御製(東日本大震災) 

    今ひとたび 立ち上がりゆく 村むらよ
    失せたるものの 面影の上に
    皇后陛下御歌(東日本大震災)

    両陛下の御製・御歌は何度の読み返してしまうのだよね。そして、上記に
    引き写したような、自然災害に対する御製・御歌は詠むたびに胸にジンと
    来る。

    本書も著者の思想を排して、両陛下のお言葉・御製・御歌だけで構成すれ
    ばよかったのにね。両陛下を著者自身の思想の為に利用してはいけません。

  • 昭和天皇を父に持つ明仁天皇。
    彼であるからこそ、平和に対する思いは人並みならないものであるのでしょう。平和へのつきない歩みがわかります。
    「平和国家、日本」を一番希求しておられることが行動に表れていると知りました。
    とにかく一度読んでみても良いと思います。
    現在の天皇陛下を知ることは必要です。

  • 本書はタイトルに「明仁天皇メッセージ」とあるが、天皇陛下ご自身の纏まったメッセージが書かれているわけではなく、これまで陛下が発せられたいくつものお言葉を踏まえた上で、基本的には著者の文章が書かれた本である。

    少なくとも、この点に注意して読まなければならない。

    もちろん、天皇陛下が政治的な権能を何一つ持っていないことは日本国憲法第四条に書かれているし、この憲法下において天皇陛下が政治的なメッセージを発することは「タブー」とされているという事情を勘案する必要がある。

    内容的には、興味深いことが書かれていると感じた。さまざまな書物を引用して、事実を掘り下げている点は一読の価値があると思う。そして、なぜご高齢の陛下が、いまなお精力的に被災地や太平洋戦争の激戦地に足を運ばれるのか、その理由の一端はわかったような気がする。

    その一方で、本書にはところどころに断定的な表現があるのが気になった。さきほど「タブー」という言葉を使ったが、現代日本においても「天皇」はデリケートな存在である。その「天皇」を題材とする上では、慎重に慎重を期すべきではなかったかと思う。

    8月14日に発表された安倍首相の戦後70年談話と、8月15日の全国戦没者追悼式で天皇陛下が表明されたお言葉については、内外で評価が大きく分かれた。この機に、上記の2つを読みくらべてみたい。

  • だれもが弱い自分というものを恥ずかしく思いながら、それでも絶望しないで生きている。

  • 船橋市議の朝倉幹晴さんが「安保法制・戦争・平和・戦後70年を考える上で、この日本列島に住む人・日本人、皆におすすめの2冊の本」として挙げられていたうちの1冊。 http://asakura.chiba.jp/archives/692

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著者プロフィール

(やべ こうじ)1960年兵庫県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。株式会社博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社代表。著書に『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(以上、集英社インターナショナル)、『本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていること――沖縄・米軍基地観光ガイド』(書籍情報社)、共著書に『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社)。企画編集に「〈知の再発見〉双書」シリーズ、J・M・ロバーツ著「図説 世界の歴史」(全10巻)、「〈戦後再発見〉双書」シリーズ(以上、創元社)がある。

「2019年 『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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