豊田章男が愛したテストドライバー

著者 :
  • 小学館
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897655

作品紹介・あらすじ

この男なくしてトヨタ再生は語れない!

社長就任発表後、試練の嵐は吹き荒れた。
59年ぶりの赤字転落。レクサス暴走事故を巡って米公聴会出席。東日本大震災の対応にも追われた。

“どん底”の豊田章男を支えたのは、開発中の事故でこの世を去ったテストドライバー・成瀬弘の言葉だった。
「人を鍛え、クルマを鍛えよ」

育ちも立場も世代もまるで異なる
師弟が紡いた巨大企業再生の物語――。


これは世界最大の自動車メーカーの開発の現場に立ち続けたテストドライバーと、その後ろ姿を追い、今は社長の座に就いた男が、長年にわたって築き上げた師弟の物語である――本書序文より。


【編集担当からのおすすめ情報】
大宅賞作家・稲泉連氏による初の「ビジネスノンフィクション」です。これまで戦争や災害などを取材対象としてきた稲泉氏は、今回、自動車業界のイロハを一から学びつつ、テストドライバー・成瀬弘氏の足跡を追い、さらには豊田章男氏に3度のインタビューを重ねました。完成には、なんと約5年の歳月を要しています。

感想・レビュー・書評

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  • カテゴリをビジネス、とするか、生き方、とするか、とも思ったけれど。。 2019年6月1日に名古屋に異動になって、お客様で自動車業界を相手にすることになり、
    勉強中。

    「トヨトミの野望」を読んで勉強し、その小説で「速水さん(速水徹)」という名前でテストドライブの鬼、トップガンと呼ばれる最高技量の持ち主、と表現されていた、トヨトミ統一を指導する人物。

     トヨトミの野望においても以下のようなやりとりがある
    『こっちは命がけで走ってるんだ。おれは自動車の運転もしらないやつにアドバイスするほど暇じゃありません。 あれこれ言われたくもない。 豊臣家の人間ならなおさらです。あしからず』 『おれは今のトヨトミのあり方が納得できません』『トヨトミはおカネを作る会社じゃなくて自動車を作る会社です』

    『会社が巨大化して莫大な利益を追い続けているうちに、よいクルマとはなにか、というごくベーシックなことを考えなくなった。 重役も社員も本気でクルマに乗らなくなった。 若者のクルマ離れを嘆く前に、クルマに情熱と愛情を持たなくなったわがトヨトミ社員のことを心配したほうがいい。次長、そうは思いませんか』

    『トヨトミは札束を刷っている会社じゃない。 素晴らしいクルマを世に出し、人々を感動させる、誇り高き自動車メーカーなんです』
    と。 


    いや、これはあくまでフィクションのトヨトミの野望、に記載されていた内容であって、この内容のもととなる実話が、本の主人公の『成瀬弘(ひろむ)』さんである。 すごい人だ。 勉強になった。


    豊田章男さんは、少なくとも僕の友人は、元気をもらっていた。(僕も講演を聞いて元気をもらった。公聴会の対応も)

  • 正直、豊田章男のメディアへの露出やレース好き、彼の「うるさくてガソリン臭い車が好き」という発言はある種のコマーシャル、ブランディング、あるいは現場マネジメントのための詭弁として見ていた部分がある。否定的な意味では無く、その徹底ぶりが素晴らしいという思いを込めて。だが、この本を読んでその見方も少し変わった。無理に演じている訳ではないのだと。心底、車が好きなのだろう。

    メカニック職人でありテストドライバーである成瀬弘は、2011年に自らの運転中に事故死した。豊田章男との関係を中心に、成瀬弘の人物像を本著は語る。朴訥とした派手さの無い人生だったからこそ、信頼される技術と共に、豊田社長に師事されたエピソードが光る。良い話だなと思った。

    豊田章男は言う。自らがレースで命を賭ける事を思えば、米議会に対する大規模リコールを巡る公聴会は命を取られるものではない。ニュルブルクリンクでの走りを経験した事で乗り切れたのだと。経験は勇気を与える。

    トヨタのレース熱は、一度、レーサー福澤幸雄がヤマハテストコースでトヨタ7走行中の事故死により、冷え込む。そこから月日が流れ、やはりレースに絡んで成瀬弘は命を落とす。よいくるまを作りたい。乗り心地もそうなのだが、人命を奪わぬ車が先だろうと、日和見な事を考えてしまう。

  • 豊田章男社長が、ニュルブリクリンクで成瀬氏の背中を追ってレースを走ったとき、 2人が何を語りあったのか?
    成瀬氏は何を豊田社長に見せよう(伝えよう)として、
    豊田社長は成瀬氏の背中から何を受け取ったのか?
    経営者と部下であり、先輩と後輩であり、師匠と弟子であり、敬意と信頼であり、
    社会人として、また人生の上で大切なことをニュルブルクリンクのドライバーシートの中で無言に語り合った貴重なストーリーが最高の醍醐味でした。

    成瀬氏の最後までやり遂げた信念の強さと、故人の背中を追い続ける豊田社長にとても敬意を感じます。

  • 生前TOYOTAのテストドライバーとして現社長の豊田章男氏から全幅の信頼を得た成瀬弘氏の半生を描いた一冊。

    本書を読んて、成瀬氏の車に対する愛情と飽くなき探究心を強く感じました。
    氏の車に対する知識や感覚や運転技術は眼を見張るものがあることを感じ、プロドライバーとの全幅の信頼や成瀬氏の手掛ける車への誰にも負けない思いは凄みを感じました。
    そして、現社長の豊田氏に運転の技術を教え、車への氏の想いも伝承し、それがリーマンショック後の同社の低迷期を乗り切れた原動力になったとも感じました。
    最後も自身が認めたLSIの車中で最期を迎えたことに運命めいたものを感じました。

    クルマに人生を全てを賭けた半生、そしてその想いが世界を代表するトヨタという企業に豊田氏を通して息づいているとともに「クルマは道がつくる」という言葉からいいクルマをつくるために妥協をせず、絶妙な乗り心地を追求してきた成瀬氏の意思を受け継いで、これからもますますいいクルマを生み出す同社の歩みが楽しみになった一冊でした。

  • こんなスポーツ選手みたいな、職人みたいな人でもトヨタの組織の中ではやっかまれたり、部品メーカーの情報もこそこそ集めなくてはならなかったり、思うがまま自由にはできないのがけっこう心に残った…。
    うまい人の運転は動きが少なくて、乗ってても怖くない、というのは納得。思い出すね、きこを。
    ニュルブルクリンクはGがすごい!縦からも横からも!一般道を何の問題もなく走ってた車がニュルブルクリンクではどんどん壊れる!読んで良かった…。
    豊田章男さんも好きになりました。前からそこそこ好きでしたが。社長1年目を成瀬さんに出会い、レースを通して強くなり、公聴会も乗り越えた。もともと強くて誠実な人だったのだとは思いますが、ほんとに人間に恵まれましたね!!

  • 豊田章男の「いいクルマをつくりたい」という思いと、テストドライバー成瀬がクルマや現場と真っ直ぐ向き合う想いがぶつかりあって、ジンと心が熱くなる。さらに、クルマとを取り巻くタイヤメーカーなど、クルマを通じたコミュニケーションが熱い。ステアリングとペダルで語り合うシーンなんかは堪らない。

  • 何かで紹介されていたので、手に取ってみた。面白かったところもあったが、購入してまで読むほどではなかった。

  • 現在の社長である章男氏と彼が師事した1人のテストドライバーとの物語。企業トップと現場との関係構築について、多くの示唆が本書には含まれている。
    車に全く興味の無い私でも、心が熱くなった。『トヨタ』というブランドは、車好きには微妙な位置づけのようだが、本書を読めば、イメージが変わるのではないだろうか。

  • 亡くなられた後に書かれた本なので、美談っぽく仕立ててる感は何となく感じられたが、豊田社長のカーメーカーのトップとしての車への向き合い方がとても印象に残った。

  • 大企業トヨタの中で、車の良し悪しを自ら手を汚し、人間の有する感覚全てを注いで評価し続けた技術者の実話です。日本のものづくりがこれからも強くあり続けるために、これからも忘れてはいけない仕事への姿勢が学べました。分野は問わず技術、技能を仕事としている方へお勧めの本です。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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