タイワニーズ 故郷喪失者の物語

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897792

作品紹介・あらすじ

彼らがいたから、強く、深くつながり続けた

戦前は「日本」であった台湾。戦後に「中国」になった台湾。1990年代の民主化後に自立を目指す台湾。戦争、統治、冷戦。常に時代の風雨にさらされ続けた日本と台湾との関係だが、深いところでつながっていることができた。それはなぜか。 台湾と日本との間を渡り歩いて「結節点」の役割を果たす、多様な台湾出身者の存在があったからである――まえがきより

台湾をルーツに持ち、日本で暮らす在日台湾人=タイワニーズたち。元朝日新聞台北支局長の筆者が、彼らの肖像を描き、来歴を辿りながら、戦後日本の裏面史をも照らす。

【目次】
・蓮舫はどこからやってきたか
・日本、台湾、中国を手玉にとる「密使」の一族 辜寛敏&リチャード・クー
・「江湖」の作家・東山彰良と王家三代漂流記
・おかっぱの喧嘩上等娘、排除と同化に抗する 温又柔
・究極の優等生への宿題 ジュディ・オング
・客家の血をひく喜びを持って生きる 余貴美子
・「551蓬莱」創業者が日本にみた桃源郷 羅邦強
・カップヌードルの謎を追って 安藤百福
・3度の祖国喪失 陳舜臣
・国民党のお尋ね者が「金儲けの神様」になるまで 邱永漢



【編集担当からのおすすめ情報】
2017年、民進党(当時)・代表の蓮舫氏の「二重国籍問題」が取り沙汰されました。その是非はともかく、メディアやネットで取り沙汰されたやりとりを眺めていると、日本人は、在日台湾人が歩んできた道をほとんど知らないのではないかという思いを抱きました。日本は台湾を二度も捨てた、と台湾では言われているのをご存知でしょうか。一つはポツダム宣言による台湾の放棄、もう一つは1972年の中華民国との断交。それでも両国がつながり続けたのは、両国を行き来した「人(タイワニーズ)」のおかげである、と筆者は述べます。タイワニーズの営みと歴史を教えてくれる本書は、同時に、国とは何か、国籍とは何か、という問いを我々に与えます。

感想・レビュー・書評

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  • 読破。
    哈日族という単語がもてはやされていた2000年初頭から台湾人と関わるようになり、当時の20〜30代が付き合ってきた台湾人の中心層であった自分にとっての台湾人らしさを持ち合わせていないと何となく感じられていた台湾ルーツの人々も取り上げられており、その歴史の紐を解いていっていて興味深い。その辺りは外省人ルーツで台湾より大陸により強い想いを持つ家系なのかなと思っていたが、必ずしもそうではないらしい。

    また国連が中国大陸を正式な中国として認めていく過程において、日本なりに台湾のことを気にかけ、国連残留を画策した人々の話が少しあり、結果的にうまくいかなかったとはいえ、何だか少しほっとした。

    何より著者が一人一人の取材相手に対して非常に敬意を払っている感じが伺えたので読んでいてなんだか気持ちよかった。

    P.30
    台湾にはあちこちに外省人の軍人とその家族が暮らす地域「眷村」がある。日本人が暮らしていた住宅を改築したところも多い。陸軍や海軍の大きな基地がある高雄にはとりわけ大型の眷村が目立つ。
    眷村の中や近くには、美味しい料理店が多いというのが台湾通の間では常識だ。「小籠包」や「牛肉麺」などの名物料理は基本的に眷村の外省人たちが作っていた料理から発展したものだ。豆乳料理の「豆漿」の店もたいてい眷村の近くにある。

    P.52
    辜寛敏は、当時の駐日英国大使ジョン・ピルチャーと顔見知りであった。(中略)ピルチャーに会ってみると、こんな話を聞かされた。
    「この秋の国連総会で台湾が国連に残れる可能性はないが、英国政府は台湾が国連の一会員として残留することを望んでいる。しかし、英国政府は最初に中華人民共和国を承認した(西側の)国であり、蒋介石政権との関係は最悪だ。そこで相談がある。日本は蒋介石との関係は良好だ。英国政府は、日本サイドから、国連に残るよう蒋介石を説得して欲しいと思っている。台湾の将来に関わることなので、このメッセージを台湾に伝えてもらえないだろうか」

  • 【大日本帝国から戦後へと続く日本,分断された中国,そして出身地の台湾という東アジアの境界を行き来しながら,失われてしまった自分の帰属すべき祖国・故郷を探し求めてきた人々がタイワニーズなのである】(文中より引用)

    国際情勢の荒波に揉まれながらも,日本・中国・台湾という国家の国境をひらりと越えて自らの思うところに従った,台湾と関係を持つ「タイワニーズ」たちの半生を記した作品。著者は,『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』等の台湾をテーマとした作品でも知られる野嶋剛。

    国際社会の荒波をもろに被り続けてきた人々の一人ひとりのエピソードが中心となっているため,非常に読みやすいというのがまず高評価に値するかと。著者の丹念な取材活動を基に記録されていますので,それぞれの章が抜群に読み物として興味深い点にも驚かされました。

    ジュディ・オングのエピソードが特に印象に残ります☆5つ

  • 登場する一人一人のタイワニーズのエピソードが大変興味深い。陳舜臣の著作は手広く読んでみたいと思った。

  • 友人知人であっても、国籍や個人のプライバシーについては、面と向かって質問しにくい。歴史に明るくない場合は、敢えて口に出すことも憚られる。先方が何かのきっかけで語ってくれることが無い限り、これらの情報は知るよしも無い。
    気になりながらも知る術がなかった数々の物語を、この本で知った。日本で馴染みのある著名人らの側面が、ありのままにレポートしてある。先祖、生まれ育った環境、国や国境とは何なのか。それぞれの想いは様々のようである。作家として活躍する人々の関連著書にも興味を持ったので、追っていくつか読みたい。

  • 連坊の回から始まりやや違和感を覚えたが、彼女の祖母を含め選ばれた人物やそのエピソードはどれも興味深く、主に客家である日台両方にルーツを持つ人々が両国を結び付けるよすがとなっていると強く感じる。

    一方で、日本ー中華民国ー台湾と外力によって帰属を変えさせられた歴史を持つ人々がコスモポリタンとなる必然性も思わされる。
    東洋のユダヤというべきか。

  • 「日本は二度台湾を捨てた」この言葉は日本の敗戦と、その後の台湾との断交〜中国との国交正常化について書籍や映画などでよく出てくる言葉だ。日本にとっては苦渋の選択だったかもしれないが、それ以上に台湾という国と、そこから巣立って日本に来て活躍した多くの政治家や文化人、作家などにも多くの影響を及ぼした。
    日本と台湾の文化的な距離は非常に密接になっているなかで、日本に住んでいるタイワニーズの存在がぽっかりと空いているのをこの本を読み終わって改めて痛感した。
    台湾への興味や関心の次のステップとして歴史と政治、そして二重国籍問題なども含む人間のアイデンティティーについて考えを巡らすことが出来る良作。

  • 日本に縁のある台湾人を通した日本感。
    蓮舫に安藤百福。551の蓬莱に作家の面々。
    日本にもたらした多様と歴史を本書の丁寧な取材から読み取れる。

  • 日本にゆかりの深い、また日本で成功し、著名になった台湾出身者やその2世、3世の人生を描きながら、日本と台湾との歴史を紐解いている。
    台湾の人たちは日本人に対して友好的な気持ちを持っている人が多いと、私は感じてきた。確かに第2次大戦までの長期にわたる日本における植民地状態が続いたが、その中でお互い経済的、文化的な面で多々享受しあってきた。また戦後の国民党の支配や政治的な弾圧などがあり、それと対比して日本に対して好感を持ってもらったという面もあるのだろう。
    しかしそれだけではない、同じ台湾の人でも元々台湾に住んでいた人、中国本土からやってきた人、戦後、共産主義を恐れて台湾にやってきたい人等、色々な立場の人たちが台湾に生活しており、それぞれが複雑な感情を持っていることもわかる。
    身近な国であり、日本に住む人も多く、日本に帰化した人も多いがその詳しい歴史は知らないことをこの本を読んで痛感した。
    この機会に台湾の歴史等を調べてみたくなった。

  • とにかく面白い本。色々な台湾と日本に関係がある人々タイワニーズについてまとめた本。この本がそのまま中国や台湾で翻訳出版されると面白いのだが。

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著者プロフィール

野嶋 剛(のじま・つよし):1968年生まれ。ジャーナリスト、大東文化大学教授。朝日新聞入社後、シンガポール支局長、政治部、台北支局長、国際編集部次長、アエラ編集部などを経て、2016年4月に独立。『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『認識・TAIWAN・電影――映画で知る台湾』(明石書店)、『蒋介石を救った帝国軍人――台湾軍事顧問団・白団の真相』(ちくま文庫)、『台湾とは何か』『香港とは何か』(ちくま新書)、『新中国論――台湾・香港と習近平体制』(平凡社新書)など著書多数。著書の多くが中国、台湾で翻訳刊行されている。

「2023年 『日本の台湾人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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