- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093897822
作品紹介・あらすじ
NHKスペシャルでも特集!
ある日、筆者に一通のメールが届いた。
〈寝たきりになる前に自分の人生を閉じることを願います〉
送り主は、神経の難病を患う女性だった。全身の自由を奪われ、寝たきりになる前に死を遂げたいと切望する。彼女は、筆者が前作『安楽死を遂げた日本人』で取材したスイスの安楽死団体への入会を望んでいた。
実際に彼女に面会すると、こう言われた。
「死にたくても死ねない私にとって、安楽死は“お守り”のようなものです。安楽死は私に残された最後の希望の光です」
彼女は家族から愛されていた。病床にあっても読書やブログ執筆をしながら、充実した一日を過ごしていた。その姿を見聞きし、筆者は思い悩む。
〈あの笑顔とユーモア、そして知性があれば、絶望から抜け出せるのではないか〉
日本では安楽死は違法だ。日本人がそれを実現するには、スイスに向かうしかない。それにはお金も時間もかかる。四肢の自由もきかない。ハードルはあまりに高かった。しかし、彼女の強い思いは、海を越え、人々を動かしていった――。
患者、家族、そして筆者の葛藤までをありのままに描き、日本人の死生観を揺さぶる渾身ドキュメント。
【編集担当からのおすすめ情報】
NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(6月2日放送)も、この女性を特集――。同番組には、筆者が取材コーディネーターとして関わっています。番組に興味を抱いた方は、その舞台裏も描いた本書をお読みください。
感想・レビュー・書評
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遺伝子までいじる事が出来るようになった現在も、死だけは回避する事は出来ません。
死ぬ事は全てが無に還る事、この確かに活動している精神活動が一瞬で終了してしまう事。愛しい人々とも永遠に別れる事。自分を取り囲む全ての事から切り離される事。
死ぬことはとても怖いです。だからこそ毎日毎日に感謝して生きています。
翻って、寝たきりになって全ての生命活動を他者に委ねなくてはならなくなった時に、それでも生きていたいかと言われれば答えは「否」です。
この本は「安楽死」をスイスで遂げる事が出来た女性を主な登場人物として、安楽死を望みつつ果たせなかった人、今現在も望んでいる人。そして安楽死を受け入れる家族の精神のあり方。安楽死と尊厳死、そして緩和ケアの考え方の違い。色々な事を考えさせられて読みやすい本なのに、決してさくさく読める本ではありません。
安楽死自体を僕は概ね肯定しています。そしてこの本は安楽死を遂げ、家族に愛されつつ最後まで自分の意思を貫いた姿に胸を突かれます。が、読んでいる最中自分なら安楽死したいけれども、家族がしたいと言った時に受け入れられるかと考えた時にとても戸惑いました。
この女性は次第に小脳が委縮し、体の全機能が働かなくなる病です。本書の末期では言語障害、体を動かす事も困難になり、排せつも何もかも家族に任せなければならない状態でした。それでいて思考は明晰な状態なので、このまま意思表示出来なくなる前に死にたいというのは物凄く理解出来ます。
しかし意思の疎通が出来る彼女を見送らなければならない家族の喪失感を僕は想像出来ないし、想像しようと試みましたが、手足が冷たくなって考える事頭が拒否している感じでした。
わざわざ他国まで行って安楽死をしなければならないというのは、その他国からしてみれば自国内で行って欲しいというのが偽らざる真実でしょう。しかし日本国内でそれが認められるかと言えば本当に難しいと思います。
全体主義が染みついている我々は、死に向かう時でさえ残された人の事を考えるし、なんなら死ぬ寸前でさえ自分勝手だと誹られる可能性があるくらいです。これは自分もその一人であり、個人主義に一気に鞍替えするのはとても難しい事だと思います。
しかし誰でも死ぬという事から逆算した時に、死に方を自分で選ぶことが出来ないという事は当事者からすると、とても理不尽であるとも感じました。難しい、とても難しくて自分の中でも答えは出ません。でも読んで本当に良かったと思う本でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前作「安楽死を遂げるまで」で各国の当事者の最期を
追っていた著者に初めてスイスで安楽死を
遂げようとしていた日本人女性からメールが届く
この方がスイスに赴き自らの意思で命を終えたことは
昨年のNHK番組でみていたので結末はわかっています
なぜこの選択をしたのか そこに至るまでの
細かな心の動きや家族との赤裸々なやりとりを描いています
ご本人のブログから抜粋された内容はつらすぎるのですが
この方の意志の強さと周りへの気遣い
家族への愛情を直に感じることができました
どのような最期を迎えるか 迎えたいのか
選べるのか そうでないのか
今を生きている自分もいつかは迎えるその時
そうしたことを考えるようになったのは十数年前に
ALSの告知を受けて自死した知人の家族の話を聞いてからです
体が徐々に動かなくなるが意識ははっきりしている
でもなにもできない 死にたいと意思表示することすらができない
想像するだけでも怖くてたまりません
本人および家族やかかりつけ医 介護関係者が話し合い
本人の価値観や人生観を日ごろから共有する
人生会議(ACPアドバンストケアプランニング)
の必要性は理解はしているものの
なかなか実行できていないのが現状です -
日本人で初めて安楽死を遂げた人を生前から丁寧に取材。緩和ケアについてもよく分かった。
自分が同じ立場に置かれたら、もう一度よく考えたい。 -
安楽死と尊厳死の違いなどはっきりしてなかったことが良くわかると共に考えさせられることも多かった.実際自分だったらどうするだろうと思いながら読み進んだ.日本も法律が変わらない限り選択肢が限られるが,生きる権利が大切なら死ぬ権利も大切なので,この本がもっと読まれて欲しいと思った.
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ルポルタージュ自体あまり読んだことなかったけれど、引き込まれた。NHKでの番組を見ただけでは分からない感情などが描かれており、安楽死される場面は自分も泣きそうになってしまった。「死」は常に自分の近くにいるかもしれない、ということに気づくことができない日本という場所に住んでいる今の自分たちは、死生観について今一度考え直す地点に来ているのかもしれない。
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前作でスイスの自殺幇助団体ライフサークルを舞台に安楽死の現場を徹底的に取材した著者は、身体の機能が次第に喪失するという難病を抱えた一人の日本人女性から連絡をもらう。本書は彼女が様々な障壁を乗り越えて、遠いスイスの地でライフサークルによる安楽死を遂げるまでを取材した続編である。
難病を抱えて姉と妹に介助され、数度の自殺未遂を経て彼女が行き着いたのは遠い異国の地の自殺補助団体、ライフサークルである。治る見込みのない難病などから安楽死を希望する患者は、ライフサークルのような団体による安楽死の計画が決まることでかえって心身の安定を得ることがあるという。本書で描かれる女性もそうであり、”いつでも安心して死ねる”という選択肢を持つということが、あたかも金融におけるリアル・オプションのように、患者の不安を軽減するというのは、このような話を聞くまで、全く知り得ない世界であった。
件の女性は介助してくれた姉たちに看取られ、静かにスイスにて息を引き取る。本書に収められた写真からも、その安らかさが痛切なまでに伝わってくる。 -
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衝撃。こんなにも死ぬことに、精力を尽くしてしっかりと準備していく心情。 生きるのは苦しい。けれど、衝動的にではなく自分で終わらせることを決めるという心情。 良いとか悪いとか、まだ考えられないな。 ただ、生きていきたいと思ってもらえるような繋がりを作れるようにしたいとは、思う。決して、簡単なことではない。
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宮下氏の安楽死に関しての第2作。今回は新潟に住んでいた多系統萎縮症の女性を軸に話が進む。40代になって多系統萎縮症という次第に全身が動かなくなる神経難病に侵された小島さん。彼女は外国人の自殺幇助を受け入れるスイスに行き、前回の宮下の著作で紹介されたフライシック医師のもとに安楽死(スイスの法律的には自殺幇助)を求めに行く。彼女には2人の姉と1人の妹がおり、当然彼女たちは最初は反対する。が、本人が2回の自殺企図をした後、次第に本人の希望を受け入れていく。その葛藤を丹念に書いたこの著作を通じて日本でも安楽死論がきちんとできると良いと感じる。相変わらず著者は日本人には向かないというスタンスで、その点で私は非常に落胆する部分はあるのだが。
尚、小島さんの死はNHKが取材しており、本書を読むなら番組もオンデマンドで診るべきと思う。
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009051076_00000 -
昨年放送されたNHK番組を観て大変衝撃深く、よくここまで個人に迫った、安楽死という難しいテーマにそったドキュメンタリー内容を作られたなと感慨を受けていた。その取材の詳細、安楽死までのご本人の経過と著者の考察について書籍化されたもの。
つい先日に安楽死幇助の事件があり、個人の死ぬ選択、生きる選択についての話題に触れ、日本での安楽死の制度化については、もっと広く議論されるべきだし、安楽死を希望する重度障害者の存在やその気持ちを少しでも知るべきだと思う。
この小島ミナさんと姉妹の沢山の苦悩、ミナさんと関わる様子や心の葛藤、揺れる気持ちの機微が読む者にすごく伝わり良本でした。安楽死に賛成ではない著者のご家族に寄り添った丁寧な取材の様子も伺えて安堵しました。賛否に関わらず読んで欲しいです
著者プロフィール
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