安楽死を遂げた日本人

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 440
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093897822

作品紹介・あらすじ

NHKスペシャルでも特集!

ある日、筆者に一通のメールが届いた。
〈寝たきりになる前に自分の人生を閉じることを願います〉

送り主は、神経の難病を患う女性だった。全身の自由を奪われ、寝たきりになる前に死を遂げたいと切望する。彼女は、筆者が前作『安楽死を遂げた日本人』で取材したスイスの安楽死団体への入会を望んでいた。

実際に彼女に面会すると、こう言われた。
「死にたくても死ねない私にとって、安楽死は“お守り”のようなものです。安楽死は私に残された最後の希望の光です」

彼女は家族から愛されていた。病床にあっても読書やブログ執筆をしながら、充実した一日を過ごしていた。その姿を見聞きし、筆者は思い悩む。
〈あの笑顔とユーモア、そして知性があれば、絶望から抜け出せるのではないか〉

日本では安楽死は違法だ。日本人がそれを実現するには、スイスに向かうしかない。それにはお金も時間もかかる。四肢の自由もきかない。ハードルはあまりに高かった。しかし、彼女の強い思いは、海を越え、人々を動かしていった――。

患者、家族、そして筆者の葛藤までをありのままに描き、日本人の死生観を揺さぶる渾身ドキュメント。


【編集担当からのおすすめ情報】
NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(6月2日放送)も、この女性を特集――。同番組には、筆者が取材コーディネーターとして関わっています。番組に興味を抱いた方は、その舞台裏も描いた本書をお読みください。

感想・レビュー・書評

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  • 遺伝子までいじる事が出来るようになった現在も、死だけは回避する事は出来ません。
    死ぬ事は全てが無に還る事、この確かに活動している精神活動が一瞬で終了してしまう事。愛しい人々とも永遠に別れる事。自分を取り囲む全ての事から切り離される事。
    死ぬことはとても怖いです。だからこそ毎日毎日に感謝して生きています。
    翻って、寝たきりになって全ての生命活動を他者に委ねなくてはならなくなった時に、それでも生きていたいかと言われれば答えは「否」です。
    この本は「安楽死」をスイスで遂げる事が出来た女性を主な登場人物として、安楽死を望みつつ果たせなかった人、今現在も望んでいる人。そして安楽死を受け入れる家族の精神のあり方。安楽死と尊厳死、そして緩和ケアの考え方の違い。色々な事を考えさせられて読みやすい本なのに、決してさくさく読める本ではありません。
    安楽死自体を僕は概ね肯定しています。そしてこの本は安楽死を遂げ、家族に愛されつつ最後まで自分の意思を貫いた姿に胸を突かれます。が、読んでいる最中自分なら安楽死したいけれども、家族がしたいと言った時に受け入れられるかと考えた時にとても戸惑いました。
    この女性は次第に小脳が委縮し、体の全機能が働かなくなる病です。本書の末期では言語障害、体を動かす事も困難になり、排せつも何もかも家族に任せなければならない状態でした。それでいて思考は明晰な状態なので、このまま意思表示出来なくなる前に死にたいというのは物凄く理解出来ます。
    しかし意思の疎通が出来る彼女を見送らなければならない家族の喪失感を僕は想像出来ないし、想像しようと試みましたが、手足が冷たくなって考える事頭が拒否している感じでした。
    わざわざ他国まで行って安楽死をしなければならないというのは、その他国からしてみれば自国内で行って欲しいというのが偽らざる真実でしょう。しかし日本国内でそれが認められるかと言えば本当に難しいと思います。
    全体主義が染みついている我々は、死に向かう時でさえ残された人の事を考えるし、なんなら死ぬ寸前でさえ自分勝手だと誹られる可能性があるくらいです。これは自分もその一人であり、個人主義に一気に鞍替えするのはとても難しい事だと思います。
    しかし誰でも死ぬという事から逆算した時に、死に方を自分で選ぶことが出来ないという事は当事者からすると、とても理不尽であるとも感じました。難しい、とても難しくて自分の中でも答えは出ません。でも読んで本当に良かったと思う本でした。

  • 前作「安楽死を遂げるまで」で各国の当事者の最期を
    追っていた著者に初めてスイスで安楽死を
    遂げようとしていた日本人女性からメールが届く

    この方がスイスに赴き自らの意思で命を終えたことは
    昨年のNHK番組でみていたので結末はわかっています
    なぜこの選択をしたのか そこに至るまでの
    細かな心の動きや家族との赤裸々なやりとりを描いています

    ご本人のブログから抜粋された内容はつらすぎるのですが 
    この方の意志の強さと周りへの気遣い
    家族への愛情を直に感じることができました

    どのような最期を迎えるか 迎えたいのか
    選べるのか そうでないのか
    今を生きている自分もいつかは迎えるその時

    そうしたことを考えるようになったのは十数年前に
    ALSの告知を受けて自死した知人の家族の話を聞いてからです
    体が徐々に動かなくなるが意識ははっきりしている
    でもなにもできない 死にたいと意思表示することすらができない
    想像するだけでも怖くてたまりません

    本人および家族やかかりつけ医 介護関係者が話し合い
    本人の価値観や人生観を日ごろから共有する
    人生会議(ACPアドバンストケアプランニング)
    の必要性は理解はしているものの 
    なかなか実行できていないのが現状です

  • 日本人で初めて安楽死を遂げた人を生前から丁寧に取材。緩和ケアについてもよく分かった。
    自分が同じ立場に置かれたら、もう一度よく考えたい。

  • 安楽死と尊厳死の違いなどはっきりしてなかったことが良くわかると共に考えさせられることも多かった.実際自分だったらどうするだろうと思いながら読み進んだ.日本も法律が変わらない限り選択肢が限られるが,生きる権利が大切なら死ぬ権利も大切なので,この本がもっと読まれて欲しいと思った.

  • ルポルタージュ自体あまり読んだことなかったけれど、引き込まれた。NHKでの番組を見ただけでは分からない感情などが描かれており、安楽死される場面は自分も泣きそうになってしまった。「死」は常に自分の近くにいるかもしれない、ということに気づくことができない日本という場所に住んでいる今の自分たちは、死生観について今一度考え直す地点に来ているのかもしれない。

  • 前作でスイスの自殺幇助団体ライフサークルを舞台に安楽死の現場を徹底的に取材した著者は、身体の機能が次第に喪失するという難病を抱えた一人の日本人女性から連絡をもらう。本書は彼女が様々な障壁を乗り越えて、遠いスイスの地でライフサークルによる安楽死を遂げるまでを取材した続編である。

    難病を抱えて姉と妹に介助され、数度の自殺未遂を経て彼女が行き着いたのは遠い異国の地の自殺補助団体、ライフサークルである。治る見込みのない難病などから安楽死を希望する患者は、ライフサークルのような団体による安楽死の計画が決まることでかえって心身の安定を得ることがあるという。本書で描かれる女性もそうであり、”いつでも安心して死ねる”という選択肢を持つということが、あたかも金融におけるリアル・オプションのように、患者の不安を軽減するというのは、このような話を聞くまで、全く知り得ない世界であった。

    件の女性は介助してくれた姉たちに看取られ、静かにスイスにて息を引き取る。本書に収められた写真からも、その安らかさが痛切なまでに伝わってくる。

  • 著者の前作もNHKの特集も知らない状態での読了です。

    内容について興味があったので読みました。
    安楽死というものを漠然と逃げ道の様に捉えており、きちんと理解しようとしたことはなかった自分に気づかされました。
    自分の健康状態は、今はまだ終わり方を具体的にイメージできる段階ではないです。しかし、いつか必ず向かい合わないといけないときが来ます。(向かい合う時間もなく終るということもありますが。)
    そんなときに知識不足で視野が狭くなるということは避けたいです。安楽死だけでなく、セデーションや緩和ケアといった方法への理解も深めておきたいと思いました。

    内容は面白かったのですが、著者の文章は自分には単調で少し押し付けがましく感じました。記者らしい文章というか、客観的でないといけないのは解りますが人を寄せ付けないような一歩離れた文章でした。

    内容に興味がある方は読んでみてもいいかもしれません。NHKの特集の方は機会があれば見たいと思います。

  • 読み進めながら、この本に出てくる小島ミナさんのこと、知っているような気がしていた。NHKの番組を観たことがあるんだと思う。
    たまたまついていたのを、引きこまれて観た記憶がある。
    安楽死、尊厳死、セデーション、私はどれもちゃんとわかっていなかった。そして筆者が書くように、本の中で色々な人が言うように、日本では「死」について議論があまりなされていない。
    自分が同じような状況になったときに同じ選択をするかはわからない。
    けど、選択肢があることでそれが光になる人もいるし、簡単には決められない問題なのだろうなぁ。
    とここまで感想を書いたものの、モヤモヤまとまらないので追記。
    幡野さんの言うように、患者の気持ち優先という気持ちもわからなくはない。でも筆者の言うように、残された家族側の気持ちも完全に無視していいものだとは思わない。
    自分が患者の立場だったら……自分が家族の立場だったら……といろいろ考えたけど、結局こう言うことを自分だけで考えて終えてしまうからダメなのかな。会話にしにくいけど、私はこうしてほしいと伝えておくのも大事だし、家族がどうされたいのか聞いておくのも大事だなぁ。あと、自分の希望を伝えた後、それについてどう思うか聞くのも大事なのかもしれない。こういうことを含めて、日本は話し合う機会が少ないんだと思う(海外事情は知らないけども)

  • 具体的な安楽死のプロセスが書かれていて、精神的にも身体的にも病んでいたときに読んで救いになった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2020年 『外国人ぎらい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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