九十歳。何がめでたい

著者 :
  • 小学館
3.45
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本棚登録 : 3053
感想 : 408
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093965378

作品紹介・あらすじ

待望の単行本がついに発売。実にめでたい!

『九十歳。何がめでたい』というタイトルには、佐藤愛子さん曰く「ヤケクソが籠っています」。2016年5月まで1年に渡って『女性セブン』に連載された大人気エッセイに加筆修正を加えたものです。

大正12年生まれ、今年93歳になる佐藤さんは2014年、長い作家生活の集大成として『晩鐘』を書き上げました。その時のインタビューでこう語っています。
「書くべきことは書きつくして、もう空っぽになりました。作家としての私は、これで幕が下りたんです」(「女性セブン」2015年2月5日号より)

その一度は下ろした幕を再び上げて始まった連載『九十歳。何がめでたい』は、「暴れ猪」佐藤節が全開。自分の身体に次々に起こる「故障」を嘆き、時代の「進歩」を怒り、悩める年若い人たちを叱りながらも、あたたかく鼓舞しています。

自ら災難に突進する性癖ゆえの艱難辛苦を乗り越え92年間生きて来た佐藤さんだからからこそ書ける緩急織り交ぜた文章は、人生をたくましく生きるための箴言も詰まっていて、大笑いした後に深い余韻が残ります。
ぜひ日本最高峰の名エッセイをご堪能ください。

















【編集担当からのおすすめ情報】
収録されたエッセイの中には、15年に大阪・寝屋川市で起きた中学1年の少年少女殺害事件や、16年に発覚した広島・府中市の中学3年生の「万引えん罪」自殺問題から、高嶋ちさ子さんのゲーム機バキバキ事件や橋下徹元大阪市長のテレビ復帰に至るまで、折々の出来事と世間の反応について歯に衣着せぬ物言いで迫ったものもあります。

とりわけそうした時評からは、怒れる作家と称される佐藤さんのあたたかな眼差しが心に沁み入ります。世間で論じられていた視点とは全く違う、佐藤さんならではの視点にも注目してください。

感想・レビュー・書評

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  • R3.8.16 読了。

     長生きをされた作者だから、見える世の中の動きや変化なのかもしれませんね。技術の進歩が生活は楽にしても、人の心まで決して豊かにするものではないといわれている気がしました。
     「グチャグチャ飯」「私の今日この頃」が面白かった。

    ・「もう『進歩』はこのへんでいい。更に文明を進歩させる必要はない。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力である。私はそう思う。」
    ・「ふりかかった不幸災難は、自分の力でふり払うのが人生修行というものだ。」

  • 1.著者;佐藤さんは小説家。人の良い佐藤さんは、元夫の莫大な借金を返す為に、身を粉にして働いたそうです。ワイドショー出演や作家活動と、馬車馬のように働き続けた奮戦記である「戦いすんで日が暮れて」で直木賞受賞。その他に「幸福の絵」で女流文学賞、「血脈」で菊池寛賞、「晩鐘」で紫式部文学賞を受賞。著書多数。エッセーが専門の純文学同人誌の“随筆春秋”指導者でもあります。
    2.本書;「女性セブン」に、2015年4月~1年間連載。爽快なテンポで綴られたミリオンセラーエッセイ。29項目の構成。「第1項;こみ上げる憤怒の孤独」~「第29項;おしまいの言葉」。現代社会の違和感に着目し、歯に衣を着せぬ言葉で叱りつける。愛子節炸裂。共感の手紙・ハガキが多数届いたそうです。投稿例;『知的な分析力と表現力で、文章を読んだ後にドッと笑いに包まれる。この余韻をいつまでも、大切にしたい! オモシロイ!』。
    3.個別感想(心に残った記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
    (1)『第2項;来るか?日本人総アホ時代』より、「“文明の進歩”は我々の暮しを豊かにしたかも知れないが、それと引き替えにかつて我々の中にあった謙虚さや感謝や我慢などの精神力を摩滅させて行く。・・もう“進歩”はこのへんでいい。更に文明を進歩させる必要はない。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力である。私はそう思う」
    ●感想⇒この話には前置きがあリます。「こんなもの(スマホ)が行き渡ると、人間はみなバカになるわ。調べたり考えたり努力をしなくてもすぐに答が出てくるんだもの」。確かに便利になりました。隔世の感です。昔は、分らない事があると、広辞苑・英和辞典・百科事典・・で調べたものです。今は、スマホがあれば、大抵の事は分かります。私もその恩恵に預かっています。しかし、辞書類は今でも手放しません。佐藤さんの言うような「もう“進歩”はこのへんでいい」は現代の競争社会では難しいでしょう。便利さを是認しつつ、“人間の精神力”を養う仕掛け、例えば、親・教師は子供に“謙虚さや感謝や我慢など”をキチンと教える、読書等で“先人に学ぶ”癖をつける・・等、私達が知恵を絞る事が大切です。
    (2)『第15項;グチャグチャ飯』より、『私はハナ(犬)のご飯は昔ながらの残飯主体の汁飯にしていた。15年目の春が過ぎた頃から、お医者さんから“腎不全”だと言われた。何も食べず飲まず、昼は居間、夜は私のベットの下で二か月ばかり寝起きして、ある夜死んだ。・・あの昆布入りの汁飯がいけなかったのか?冷たい飼い主なのにハナの方は失望せずに慕ってくれた。・・「(霊能女性)ハナちゃはあのご飯をもう一度食べたいって言っています」・・途端に私の目からどっと涙が溢れた』
    ●感想⇒「途端に私の目からどっと涙が溢れた」を読んで、感涙にむせびました。私事です。昨年、愛犬を亡くしました。2匹目(“ダイ”という名のコーギー)です。犬を飼うキッカケは、家族の言葉でした。「動物を愛せない者は思い遣りに欠ける人間」と。決め付けで失礼。愛犬を土間で飼っていました。散歩を始め、犬との時間は安らぎでした。水衰弱気味でしたが、死んだ日の朝もいつも通り、庭に出してやると排尿しました。外出中に訃報(14歳)が入り、死に目に会えず、今でも無念の思いです。それから、ブグログを始め、ペンネームを“ダイ”にしました。“ララ(1匹目)”と“ダイ”との交遊をいつまでも忘れません。
    (3)『第26項;テレビの魔力』より、『当節は人が顔を合わせると「この頃のテレビはつまらないねえ」と言い合うのが挨拶代わりになっいるが、それはどうやら制作に携わる人達(構成作家?プロデューサー?ディレクター?)の「視聴者は他愛にない事を喜ぶ」という思い込みの為だろうと私は考える。この国の大衆はそういう事(日本の未来を考える)に関心がない愚民である、と考えているようだ。失礼じゃないか。テレビは人間を操り人形にしてしまう。人の抵抗力を失わせる』
    ●感想⇒テレビに関する佐藤さんの意見に同感です。テレビは情報を一方的に与えるマスメディアなので、理解した上で見ています。苦言です。テレビのワイドショーと言えば、高視聴率を狙い、内容よりも、人気者出演でお茶濁し。有益とは言えない番組が多いと感じます。民放はスポンサーに迎合する体質なのでしょう。NHKは、ドキュメンタリーに良い番組があるものの、モノ言う論客を辞めさせる等、理解に苦しむ面があります。所で、私の情報源は、書籍・新聞・雑誌・ラジオ、最後にテレビの順です。物事の判断には、広い情報収集と自身の哲学(見聞と読書で磨く)を鍛える事だと考えます。
    4.まとめ;私は長く民間企業に勤め、人間関係に配慮しつつ、日々を送ってきました。佐藤さんの様に思った事を口に出来ず、飲み込んできたことも間々あります。作家と企業人という違いがあるとしても、佐藤さんの卒直な物言いと他人に対する優しさに感服です。本書の最終項(おしまいの言葉)の中で、「人間はのんびりしようなんて考えてはダメだ」と書いています。元気な佐藤氏に羨望です。(以上)

  • 90歳になった著者が書いたエッセイ。
    高齢者の視点から見た日常の不満が描かれていて、おもしろかった。
    気楽に読めて、楽しめるエッセイです。

  • 社会の風潮など構わずに物申す。時代の変化。自身の老い。人生経験が長い著者だからこそ書けること。
    文明の発達により生活は便利になったが、おおらかさや謙虚さは失われた、というのは確かだと思った。なんでも一長一短があるよね。
    すべてに共感したわけではないが、バシッと斬る物言いがなんとも気持ちいい。声をあげて笑った。
    90代でこれだけ仕事に情熱を注ぎ続けられる精神力がすごい。のんびりしちゃダメになっちゃうのね。
    いくつになっても輝き続ける著者に心から敬服。

  • いやあ久々にスカッとした!!面白かった!!
    佐藤愛子さんの本は、学生時代に(タイトル忘れるほど前)読んだきりだったので、こういう人だったのか!という驚きもあり。

    私が年齢としては、ちょうど中間管理職世代なので、90歳の佐藤さんの言う昭和もそれなりに知ってるし、その考えだけで色々突っ走ってはいけない令和時代にもとりあえず対応できていると思っている。ああ、昭和ってこうだった、そして私もどちらかと言えば頭の中佐藤さん寄りだー。最近自分の発言に気を遣いすぎて、なんだこのテンプレは?って自分で思う時ありますもん。いや、そうはいってもとっても大事なんですよ、気遣いも(こういうとこよ…)

    90歳代にしてこの考え方、ある意味での柔軟さ、文体の強さ、素晴らしいです!おうちにおいておこう本たちの仲間入りします!
    でもそんなこと佐藤さんは言ってほしくないだろうけど。
    佐藤さんの本、もっと読んでみようっと。

  • 佐藤愛子さんの作品、ブクログ登録は5冊目。
    思ったよりも読んでいました。

    著者、佐藤愛子さん、ウィキペディアなので、どのような方か、再確認しておきます。

    佐藤 愛子(さとう あいこ、1923年11月5日 - )は、日本の小説家。
    大阪市生まれ・西宮市育ち。小説家・佐藤紅緑と女優・三笠万里子の次女として出生。異母兄に詩人・サトウハチローと脚本家・劇作家の大垣肇。甲南高等女学校(現・甲南女子高等学校)卒業。

    遠藤周作はエッセイの中で『灘中学校時代、通学電車で乗り合わせた彼女は我々のマドンナ的な存在だった』と書き記している。

    で、今回手にした、『九十歳。何がめでたい』の内容は、次のとおり。(コピペです)

    待望の単行本がついに発売。実にめでたい!

    『九十歳。何がめでたい』というタイトルには、佐藤愛子さん曰く「ヤケクソが籠っています」。2016年5月まで1年に渡って『女性セブン』に連載された大人気エッセイに加筆修正を加えたものです。

    大正12年生まれ、今年93歳になる佐藤さんは2014年、長い作家生活の集大成として『晩鐘』を書き上げました。その時のインタビューでこう語っています。
    「書くべきことは書きつくして、もう空っぽになりました。作家としての私は、これで幕が下りたんです」(「女性セブン」2015年2月5日号より)

    その一度は下ろした幕を再び上げて始まった連載『九十歳。何がめでたい』は、「暴れ猪」佐藤節が全開。自分の身体に次々に起こる「故障」を嘆き、時代の「進歩」を怒り、悩める年若い人たちを叱りながらも、あたたかく鼓舞しています。

    自ら災難に突進する性癖ゆえの艱難辛苦を乗り越え92年間生きて来た佐藤さんだからからこそ書ける緩急織り交ぜた文章は、人生をたくましく生きるための箴言も詰まっていて、大笑いした後に深い余韻が残ります。
    ぜひ日本最高峰の名エッセイをご堪能ください。

    • ダイちゃんさん
      私も読みました。90歳の達人の言葉に脱帽です。後日、レビュー書きます。
      私も読みました。90歳の達人の言葉に脱帽です。後日、レビュー書きます。
      2022/05/24
    • seiyan36さん
      ダイちゃんさん、コメントありがとうございます。
      90歳(現在は98歳)で、このパワー。
      私の方が、励まされます。
      ダイちゃんさん、コメントありがとうございます。
      90歳(現在は98歳)で、このパワー。
      私の方が、励まされます。
      2022/05/25
  • 90代になっても超パワフル、頭の回転もはやい。
    のんびりしたいと思ってはいけない、老人性うつになるそうです。
    普段は老化はやだなー。どうやって今を維持するかを考えるけど、この本を読むと老化って当たり前だと思える。私もブチブチいいながら、老化をたのしめるといいなと思えた。

  • 昨日、今日のファンではないので
    大抵は、佐藤愛子「さすがに呼び捨てはね」先生なぞというと
    怒られそうですが。

    相変わらず痛快!してやったり、佐藤愛子衰えず!

    波乱万丈を今持って
    生きてらっしゃる。

    結論幾つになっても、のんびりなぞするとろくなことはないみたい!
    鬱にもなるしと、エッセイ連載を引き受けられた


    犬の話「はな」
    覚悟の話、本文よりー
    たとえ後悔し苦悩する日が来たとしてもそれに負けずに生きていくぞという「覚悟」
    覚悟とは
    同意すること多い!

    かの佐藤家の一員であるから
    豪傑で、話の桁がちがうがー

    勢いというか、すっぱり断言するというか
    生き方が似てるので
    我が身は反省することもしきりである。
    あっという間に読んでしまった。
    変わらずお元気であるのは
    先の我が身を見る思い!

  • audio bookの聞き放題対象ということで聴読。
    書店でもよく目にし、気になっていたが素通りしてきた本だったので、良い機会の到来ということで、ウォーキングの伴に選んでみた。

    ストレートに面白かった。タイトルは「90歳」となっているが、本書を書かれたのは「92歳」の時のようである。

    なんといってもこの年齢で現役の作家としてヒットを飛ばすこと自体が驚きだ。人生のほぼ100%を完全燃焼しきっている、そういう人生がすごいと思う。

    自分が90歳という年齢を迎えたらどうなるのか未知ではあるが、本書では90歳を迎えた人の視点を鮮やかに感じることができる。

    まず時代についていけてない自分をネタにされる。「スマホってなんやねん」という、年をとって時代に取り残されたパターンのよくあるネタ。よくあるネタではあるが、その語り口が面白い。たぶん関西人として育ってきたその土壌に培われたオチみたいなものが、それぞれのエッセイの中でスパイシーに効いている。

    次に健康ネタ。佐藤さんのは聴力の話がよく出てくる。20歳の半分しか聞こえていない。それによる弊害などをネタとして面白おかしく語られる。体力の低下に悲鳴をあげるような生き方ではなく、それを笑いのネタとする逞しさがいい。

    そして、「昔に比べて、今の時代はなっとらん」というボヤキとそこからにじみ出る92歳にも息づいている威勢のよさ。「新幹線が3分速くなったらどないやねん!」というボヤキ(もちろんもっと上品な文章ではありますが、心の叫びはこのような感じでしょう)。

    佐藤さんが愛読されているものの一つに新聞等の「人生相談」の記事があるという。そのネタも結構出てくる。
    「今どきの若いやつは、しょうもないことで悩み、わざわざメディアを使って相談してきよる。いったいどんな性分じゃい」と。「昔は、そんなちっちゃなことに悩んでるヒマもなかったわい」というような調子だ。

    我々読者は、佐藤さんに批判されている世代ではあるのでしょうが、「そうだよね~」となぜか同調したくなってしまう。

    花粉症の話で、鼻から食塩水を吸い込んで口から出すという症状の緩和法は、大阪在住の母親がよくやっていたのを久々に思い出した。これは大阪で流行っていたのだろうか?こういう昭和の昔を思い出すネタが満載だ。

    本書のあとさらに最近、『九十歳。何がめでたい 増補版』や『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』を出されていることを知り、いまだ最前線で戦われている姿に感動を覚える次第です。

  •  本音。本質。実直。ガムシャラ。割り切り。
     この世を生きる難しさ。過酷な現実。後悔する覚悟。
     義理人情より自分の都合。正論?いちいちうるせえ。
     ヤケクソ人生。爽快。

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著者プロフィール

大正12年、大阪生まれ。甲南高等女学校卒業。昭和44年、『戦いすんで日が暮れて』で第六十一回直木賞を受賞。昭和54年、『幸福の絵』で第十八回女流文学賞を受賞。平成12年、『血脈』の完成により第四十八回菊池寛賞、平成27年、『晩鐘』で第二十五回紫式部文学賞を受賞。平成29年4月、旭日小綬章を授章。近著に、『こんな老い方もある』『こんな生き方もある』(角川新書)、『破れかぶれの幸福』(青志社)、『犬たちへの詫び状』(PHP研究所)、『九十歳。何がめでたい』(小学館)などがある。

「2018年 『新版 加納大尉夫人 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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